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山中 清孝
2017 年24 巻2 号 p.
1-3
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
Leitchらは,屈曲伸展両方向で転位の増強する,多方向に不安定性を有する小児上腕骨顆上骨折をModified Gartland IV型として報告した.当科にて手術加療を行った119例の小児上腕骨顆上骨折のうち2例を本骨折と診断した.いずれも9歳の男児で,受傷機転は自転車走行中の転倒と階段よりの転落であった.初診時神経麻痺,血行障害はなかった.受傷当日に腹臥位にて手術を施行した.X線透視側面像で外側より複数のKirschner鋼線を刺入し,対側皮質骨手前で止めた.患肢は動かさずC-armを回転させ,正面像を見ながら内外反を矯正したのち対側皮質骨を貫いた.さらに内側からの鋼線を追加した.骨癒合,可動域に問題はなかったが1例で外反肘変形が残存した.手術法,観血的治療の必要性についてもさらなる検討が必要であると考えられた.
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玉置 康之, 田中 康之
2017 年24 巻2 号 p.
4-7
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
今回われわれは,小児上腕骨顆上骨折に合併した神経麻痺の臨床像を検討した.対象は,小児上腕骨顆上骨折に神経麻痺を合併した12例である.男性7例,女性5例,年齢は平均7歳(4~11歳),観察期間は平均260日(90~720日)であった.以上に対し,骨折型,麻痺神経,診断時期,治療経過について後ろ向きに検討した.骨折型は,Gartland分類タイプII:1例,タイプIII:11例,麻痺神経は,橈骨神経:7例,正中神経:3例,尺骨神経:2例であった.全例,受傷当日に経皮的交差鋼線固定を行った.神経麻痺診断時期は,来院時:4例,術直後:3例,術後:5例であった.完全麻痺の症例が9例あり,そのうち開放骨折が3例含まれていたがpucker sign,動脈拍動消失はなかった.全例,経過観察を行ったが,最終的には全例完全回復した.完全麻痺でもpucker sign,動脈拍動消失がなければ,自然回復する可能性が高いと考えた.
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山崎 貴弘, 西須 孝, 柿崎 潤, 落合 信靖, 國吉 一樹
2017 年24 巻2 号 p.
8-11
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
目的:粉砕を伴う上腕骨顆上骨折の手術成績を明らかにすること.
対象・方法:1988年から2014年までに当科で経験した上腕骨顆上骨折手術症例の145例中,第3骨片を有する粉砕症例22例を対象とした.受傷時平均年齢8歳,男児11例・女児11例,右6例・左16例,Gartland分類type 2が2例,type 3が20例であった.検討項目は手術手技,粉砕の位置,神経障害の有無,矯正損失の有無,Flynnの評価とした.
結果:鋼線固定の方法は大きく3種類あり,遠位内側・遠位外側からのクロスピンニングが12例(MC群),近位外側・遠位外側からのクロスピンニングが5例(LC群),遠位外側からのみのピンニングが5例(L群)であった.矯正損失はMC群で0例,LC群で1例,L群で3例であり,3群間で有意差を認めた.(P=0.015)
考察・結語:粉砕を伴う上腕骨顆上骨折に対してはクロスピンニングを考慮すべきであった.
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杉浦 洋貴, 堀井 恵美子, 洪 淑貴, 山賀 崇, 井戸 洋旭, 長谷 康弘
2017 年24 巻2 号 p.
12-14
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
2009年4月以降経皮鋼線固定術を施行した小児上腕骨顆上骨折77症例79肢(平均年齢6.2歳),Gartland分類2型56肢,3型23肢の治療成績を検討した.鋼線刺入部位が橈側2~3本のみ(R群)15肢,橈尺側各1本(RU群)41肢,橈側2本尺側1本(R2U群)23肢であった.6肢で,小切開を用いて術中尺骨神経を確認した.2肢で一過性の尺骨神経障害を認めたが,後遺症は残存しなかった.術直後/最終調査時のBaumann角は17度/20度で,矯正損失は見られなかった.可動域は屈曲133度,伸展9度で臨床成績は良好であった.Gartland分類3型の粉砕骨折や通顆骨折といった不安定な骨折型では,矯正損失を回避するために尺側刺入が有効で,慎重に行えば尺骨神経麻痺を回避できると考えた.
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森崎 真介, 藤原 浩芳, 小田 良
2017 年24 巻2 号 p.
15-18
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小児上腕骨顆上骨折に経皮的鋼線刺入固定を施行し,骨癒合が確認できた56例症例に対して,鋼線の刺入方法に着目して術後成績を検討した.上腕骨の骨折部後方骨折部からintrafocal pinning(PI)を使用しない群30例,使用群26例を比較した.阿部の分類別症例数,X線学的評価およびFlynnの臨床評価を行った.PI使用群のうち,Kirschner鋼線(以下KW)を2本使用群(以下KW2)13例と3本使用群(KW3)13例の群間でも同様に比較した.結果はPI使用群に阿部の分類で4型が多く含まれていた.X線学的評価およびFlynnの臨床成績で有意差は認めなかった.KW2に比べ,KW3に阿部の分類で4型が多く含まれていた.鋼線の刺入方法による術後成績に差は認めなかったが,転位の強い症例で,intrafocal pinningを使用例,KWを多く使用する例が多かった.
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津澤 佳代, 川崎 恵吉, 八木 敏雄, 上野 幸夫, 稲垣 克記
2017 年24 巻2 号 p.
19-21
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
上腕骨顆上骨折は小児の肘関節周辺骨折の中で最も頻度の高い骨折であり,神経血管損傷や内反肘等,様々な合併症を伴うことがある.顆部壊死は稀な合併症であり,本邦においてはほとんど報告されていない.われわれは内側顆部の壊死を疑う所見を呈した2症例を経験したので,文献学的考察を加えて報告する.2006年から2015年までに当院において治療を行った小児上腕骨顆上骨折196例を対象とし,単純X線画像所見,臨床症状および合併症に関し調査を行った.保存的に加療を行った症例のうち2症例に単純X線画像上,上腕骨内側顆部の骨壊死を疑う所見を認めた.単純X線画像上は,同様経過を示したが,MRI上は異なる所見を呈した.一過性の血流障害であるのか,fishtail deformityを形成する途中経過を見ているのか定かではないが,受傷後数年してから疼痛や可動域制限を来す可能性があるため,長期の経過観察が必要と思われた.
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大久保 宏貴, 普天間 朝上, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 金谷 文則
2017 年24 巻2 号 p.
22-25
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
Modified step-cut osteotomyは骨切り部の接触面積が広く,安定性が良好で,lateral prominenceを生じにくい.本法に過伸展矯正を追加した2例を報告する.
症例1:9歳男児.左上腕骨通顆骨折後の内反肘変形(内反25°伸展10°内旋10°)に対して本法を施行した.術中,尺骨神経がOsborne靱帯部で牽引されたため,これを切開した.術後尺骨神経麻痺を生じたが3か月で完全回復した.最終観察時,外反5°伸展0°に矯正された.
症例2:6歳男児.左上腕骨顆上骨折後の内反肘変形(内反20°伸展20°内旋20°)に対して本法を施行した.あらかじめOsborne靱帯を開放し,術後尺骨神経障害はなかった.最終観察時,外反5°伸展0°に矯正された.
過伸展矯正の追加は可能であった.Osborne靱帯切開が尺骨神経麻痺の予防に重要と考えられた.
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齋藤 育雄, 小林 由香, 高木 岳彦, 清水 あゆ子, 石井 崇之, 池田 全良, 渡辺 雅彦
2017 年24 巻2 号 p.
26-29
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
上腕骨遠位骨端離開は,2歳以下での受傷が多く骨折の際には疑うが,10歳前後では外側顆骨折や肘関節脱臼骨折の骨片との鑑別が難しい.初療時にSalter-Harris 4型と診断した,9~12歳の3例について検討した.全例で関節造影は施行されず,2例は上腕骨外側顆骨折,1例は上腕骨外側顆骨折を伴う肘関節脱臼と診断していた.外側顆骨折と診断した2例は,外側顆のみを整復したため,滑車から内側顆の整復不良による遠位骨の回転変形が残存した.1例は肘関節可動域制限に対し矯正骨切り術を行い,1例は内反肘を認めたが手術は希望しなかった.学童期の肘関節の単純X線でThurston-Holland signを認めたときは,上腕骨遠位骨端離開,上腕骨外側顆骨折と上腕骨外側顆骨折を伴う肘関節脱臼の鑑別をするため,関節造影で正確に診断する必要がある.
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山本 博史, 池口 良輔, 藤田 俊史
2017 年24 巻2 号 p.
30-33
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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目的:小児上腕骨遠位骨端線損傷を外側顆骨折と誤り,治療に難渋した症例を経験した.救急病院では,手術的治療を行うことが多いと考えられるが,教訓して共有すべき症例として報告する.
症例:6歳男児.塀から転落して右肘の骨折を受傷.近医より紹介され当科受診.関節造影を行い外側顆骨折と診断し,外側切開により観血的にピンニングを行った.後日,診断の誤りが判明し,約40度の外旋矯正骨切りを施行した.関節周囲の骨棘形成により,可動域制限増悪し,洗顔,ボタン留めが困難となった.内反変形も生じていたため,9歳時に外反矯正骨切りと骨棘切除と窩部形成による関節形成術を行った.10歳の時点で,窩部再閉鎖と関節拘縮により,可動域制限を残している.
考察:小児上腕骨遠位端の骨化していない骨端骨折の場合,時に,骨折型の診断に難渋する.場合によっては直視も行って骨折型を確認し整復固定術を行うべきである.
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前田 篤志, 鈴木 拓, 岩本 卓士, 黒岩 宇, 長谷川 正樹, 志津 香苗, 早川 克彦, 鈴木 克侍
2017 年24 巻2 号 p.
34-37
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
近年,成人における上腕骨遠位端骨折に対して骨切りを必要としないlateral para-olecranon approach(以下LPOA)を用いて関節面の整復を行うアプローチの有用性が報告されている.今回,LPOAを用いた若年者の上腕骨遠位T字骨折の治療経験について報告する.LPOAは,膝関節で普及しているparapatellar approachに類似したアプローチで,上腕三頭筋を正中で縦割してさらに遠位の肘筋を尺骨から剥離して,肘頭外側まで展開できるため関節面を展開することができるアプローチである.上腕骨遠位関節面へのアプローチとしてparatricipital approach,triceps split,Bryan-Morrey,olecranon osteotomy,前方アプローチといった様々な報告があるが,各々問題点も報告されている.今回,若年者2例の上腕骨T字骨折に対してLPOA用いて治療を行い,整復位,骨癒合,術後可動域とも良好な成績を得ることができ,合併症も認めなかった.LPOAは若年者の関節内骨折(C1,C2)においても有用なアプローチと考える.
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野口 亮介
2017 年24 巻2 号 p.
38-39
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小児上腕骨遠位端T字型骨折に対して手術を行った1例を報告する.
症例は7歳女児.雲梯から転落し受傷した.X線にて上腕骨遠位端T字型骨折を認めた.関節面の離解は軽度であったが,内側皮質粉砕を認めた.徒手整復を行い,経皮的に顆間部を2本のKirchner鋼線で固定後,Kirschner鋼線3本で遠位骨片と骨幹部骨片との交差刺入固定を行った.術後12か月にて骨癒合・可動域に問題はないものの,肘の生理的外反が消失した.
骨格が未成熟で内側皮質粉砕のある症例では,術後に整復位の矯正損失が起こる可能性があり,術中の固定力を上げるために内側から2本鋼線刺入をするか,過矯正をかけて整復固定を行うなど,内反肘を念頭に置いた手術を行う必要がある.
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伊藤 雄也, 古島 弘三, 草野 寛, 清水 雅樹, 古賀 龍二, 綾部 敬生, 伊藤 恵康
2017 年24 巻2 号 p.
40-43
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
内反肘と上腕骨滑車・内側顆偽関節を合併した稀な症例を経験したので報告する.
症例1:14歳男児.右上腕骨離断性骨軟骨炎で手術施行したが,左肘に内反変形があり,CTで滑車偽関節が見られ,内反肘には上腕骨楔状骨切り術と滑車偽関節には骨釘を用いた骨接合を同時に行った.術後半年で骨癒合を確認した.
症例2:12歳男児.1年前に転倒し右肘痛が出現したが,受診せず,8か月後に近医を初診し,内反肘・内側顆偽関節と診断された.症例1と同様の手術を施行し,術後10か月で骨癒合を確認した.
上腕骨顆上骨折の骨癒合後も内反肘が進行する場合は,滑車への骨折の波及が考えられ滑車骨化核が成熟する14~15歳まで経過観察が必要である.内反肘では尺骨神経麻痺,後外側回旋不安定症(PLRI),また偽関節では疼痛や変形性関節症への進展が危惧され,上腕骨楔状骨切り術と骨釘による偽関節固定を行った.偽関節部は骨切りで摘出した骨片から採取した骨釘を用いて固定し,低侵襲かつ容易に施行でき,2例とも骨癒合し,同時手術は有効であった.
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小野田 亮介, 堀井 恵美子, 井戸 洋旭, 長谷 康弘, 山賀 崇, 杉浦 洋貴, 洪 淑貴
2017 年24 巻2 号 p.
44-46
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小児上腕骨外側顆偽関節に対する治療経験を報告する.1993年1月~2015年12月までに手術治療を行った上腕骨外側顆偽関節例を対象とした.男児4例,女児3例,受傷時平均年齢4.9歳,受傷から偽関節手術までの期間は平均2.9年,偽関節手術時平均年齢7.9歳であった.全例,偽関節部に対して自家骨移植・骨接合を行い,骨癒合を得た.7例中4例では,同時に内反矯正骨切り術も施行した.骨切り群の平均外反角度は術前32.5度,最終経過観察時0.3度であった.骨切りなし群の平均外反角度は術前18.3度,術後9.3度であり,1例で20度の外反変形が残存した.外側顆骨折偽関節に対しては小児期に偽関節手術を行うべきであり,高度の変形には矯正骨切りの併用が必要と考えられる.
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村上 賢也, 佐藤 光太朗, 古町 克郎
2017 年24 巻2 号 p.
47-50
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小児上腕骨外側顆骨折後変形治癒に対し関節内矯正骨切り術を施行した1例を経験したので報告する.症例は8歳男児.自転車で転倒し右上腕骨外側顆骨折を受傷.近医で保存加療が行われたが変形治癒となり当科を紹介受診した.当科初診時,高度の肘関節可動域制限と15度の内反変形を認めた.受傷8か月後に関節内矯正骨切り術を施行.手術は吉津法に準じて行い,術前には3D骨モデルを作製し骨切り位置や矯正方向の検討をした.術後滑車外側部の骨壊死が懸念されたが徐々に骨癒合は得られ,関節可動域と内反変形の改善も得られている.小児肘関節周囲骨折後の変形治癒は保存加療や関節外骨切りが治療として選択される場合が多いが,本症例では関節内の転位残存が可動域制限の原因と考え,関節内骨切りを選択した.関節内骨切りは関節可動域制限と内反変形を伴った本骨折変形治癒例に有用である.
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大村 泰人, 河野 慎次郎, 中山 太郎, 川邊 保隆
2017 年24 巻2 号 p.
51-54
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小児上腕骨外側顆骨折を治療する際に内固定に著者らはギプス固定を併用した鋼線固定術を行っている.今回その治療成績を検討し報告する.対象は18例(男児13例,女児5例).手術施行時平均年齢は6.2歳,術後平均経過観察期間50.3か月間.Wadsworth分類でI型2関節,II型8関節,III型8関節.I型は保存加療中に転位を生じたため手術した.最終診察時の疼痛の有無,ROM(屈曲+ 伸展),骨癒合,carrying angle(CA),fishtail deformity(FTD)の有無を調査し,治療成績をFlynnらの評価法とJOA-JES scoreで評価.結果は,全例疼痛なく,健側と同程度のROMが得られた.全例骨癒合は得られ,最終診察時患側のCAは平均169.1度で外反肘,内反肘を生じた症例はないがFTDが2例みられた.Flynnらの評価法でcosmetic factorは全例excellent,functional factorはexcellent 17例,good 1例,JOA-JES scoreでは全例100点であった.小児上腕骨外側顆骨折に対する鋼線固定術は有効な治療である.
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久保 和俊, 川崎 恵吉, 富田 一誠, 池田 純, 稲垣 克記
2017 年24 巻2 号 p.
55-59
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
今回われわれは,2001年から2014年の間に手術加療を要した小児上腕骨外側顆骨折106例を経験し,そのうち脱臼を伴った症例を6例認め,それらの治療成績を脱臼併発群,非併発群に分け比較検討したので報告する.脱臼併発群は非併発群に比較して有意に年長であった(P<0.05).両群とも全ての症例で骨癒合が得られた.最終観察時の関節可動域,carrying angleに有意差はなかった.脱臼併発群において術後関節動揺性を認めた症例はなかったが,20°以上の外反肘とfish tail deformityを1例ずつに認めた.脱臼方向は6例すべて後内側方向であった.Milch分類ではI型3例,II型3例であった.内側の支持機構に関して,内側上顆骨折を伴った症例に対しては鋼線固定を施行したが,その他の症例では骨片固定後に関節の動揺性を認めなかったため,軟部組織の再建は行わなかった.初療時の的確な病態把握と診断が重要であり,脱臼併発症例でも適切な治療によって良好な成績を獲得することができた.
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池田 和大, 岩指 仁
2017 年24 巻2 号 p.
60-62
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
緒言:MRIで診断可能であった小児上腕骨外側上顆sleeve骨折の1例を経験した.
症例:11歳男児 .スケートボードで左手を後ろ手について転倒受傷し,左肘関節痛を主訴に同日当科を初診した.単純X線像では明らかな骨折は認めず,CTにて腕橈関節後外側に4mm大の剥離骨片を認めた.肘上シーネ固定で保存的加療としたが,受傷14日後の肘関節ROMは-30~120度と伸展制限が著明であった.MRIでは肘関節後外側の小骨片には外側上顆および外側顆骨端軟が付着しており,腕橈関節に嵌頓していた.上腕骨外側上顆sleeve骨折の所見であった.観血的整復内固定術を実施し,術後4か月で疼痛なく可動域制限や不安定性も認めない.
考察:外側上顆sleeve骨折はX線・CT所見に乏しく診断が難しい.本症例ではMRIで軟骨損傷の評価が可能であり,骨端核出現時期の小児において同骨折を疑うときには,積極的にMRIを撮影するべきだと思われた.
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河野 慎次郎, 川邊 保隆, 大村 泰人
2017 年24 巻2 号 p.
63-65
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
上腕骨内側上顆骨折においてWatson-Jones(WJ)分類type IIIは絶対適応とされるが,それ以外のものは専門家間でも意見が分かれる.著者らは積極的にtension band wiring固定(TBW)による手術療法と術後早期から自動運動開始する後療法をおこなっており,その治療成績を検討した.対象は上腕骨内側上顆骨折で手術療法を行った8例(男5例女3例)であり,受傷時平均年齢11.9歳,WJ分類type II 4例,type III 1例,type IV 3例であった.手術は全例TBWによる観血的固定法を行い,術後平均6.4日のシーネ固定後,自動運動を行った.これらの症例の最終診察時の治療成績は,平均可動域伸展2.5°,屈曲143°,回外90°,回内90°,全例において疼痛なし,外反不安定性なし,神経麻痺なし,JOA -JES score全例100と良好であり,著者らの方法は有効な治療法である.
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成田 裕一郎, 千馬 誠悦
2017 年24 巻2 号 p.
66-69
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
目的:小児上腕骨内側上顆骨折に対してcannulated cancellous screw(以下CCS)を用いて骨接合を行った10例10肘について検討した.
対象と方法:男8女2,右1左9,平均年齢13歳で,Watson-Jones分類でtype IIが4,type IVが6であった.手術は3.5ないし4.0mm径のCCSを用いて行い,術後は2週間のギプス固定の後,可動域訓練を行った.
結果:8例で初回手術後に骨癒合が得られたが,2例で再手術を要した.骨片が破損して再転位しtension band wiring法で再骨接合したのが1例,偽関節となり掻爬して海綿骨および骨釘移植を行ったのが1例でいずれも骨癒合が得られた.全例でスポーツに復帰し,JOA-JES scoreは平均98.8点であった.
考察:本法は,簡便で強固な固定性が期待される一方,スクリューによる骨片の破損,圧着不足による偽関節を生じる可能性があり,適応と手技に注意して行う必要がある.
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難波 二郎, 宮村 聡, 岡本 道雄, 山本 浩司
2017 年24 巻2 号 p.
70-72
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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上腕骨内側上顆偽関節は稀に症候性となる.症候性に対する手術報告は散見されるが,術式は内側上顆切除と靱帯縫着,偽関節手術,内側上顆温存と靱帯再建など様々であり,手術成績は定まっていない.小児上腕骨内側上顆偽関節に対して骨成熟を待機後に施行した靱帯再建術を報告する.7歳時に上腕骨内側上顆骨折に対して保存療法を受け,10歳時転倒後に右肘関節内側痛を発症したため,同年,線維性癒合部断裂の縫合術を施行した.13歳時,十分な滑車部骨成熟を確認し,内側側副靱帯起始部の等尺性ポイントに留意した内側側副靱帯再建術を施行した.内側上顆骨片は切除し,滑車中心に骨孔を作成し長掌筋腱移植した靱帯を挿入固定した.術後19か月の時点で,生活や運動に支障なく臨床成績は良好であった.過去に再建手術時期が13歳時の報告はなく,内側側副靱帯前斜走線維成分の解剖学的再建であることが合理的と考える.
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岡崎 真人, 田崎 憲一, 石井 秀明, 佐藤 和毅, 西脇 正夫, 斉藤 憲太
2017 年24 巻2 号 p.
73-76
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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上腕骨内側上顆の偽関節が関与すると思われる症状で当院を受診した9症例を対象とし,その臨床像を後ろ向きに調査した.初診時7~71歳(平均36歳),男性7例・女性2例,右肘7例・左肘2例で,症状は運動時の肘関節内側痛が5例,新たに外傷性肘関節脱臼を生じたものが2例,尺骨神経麻痺が3例だった(重複あり).治療としては,運動時痛の3例と外傷性脱臼の1例で偽関節手術を行い,尺骨神経麻痺に対しては尺骨神経皮下前方移行術,あるいは単純除圧を行った.上腕骨内側上顆骨折の大部分は小児に生じ,保存的に治療するとその多くが偽関節となる.偽関節となっても愁訴がほぼ残らないので保存療法を勧める論文もあるが,今回報告したように残存症状で悩む例も存在する.手術手技や麻酔は日進月歩であり,無症候性偽関節の形成を期待するのではなく,新鮮骨折のうちにしっかり治療すべきだとわれわれは考えている.
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木村 洋朗, 佐藤 和毅, 関 敦仁, 稲葉 尚人, 大木 聡, 岩本 卓士, 高山 真一郎
2017 年24 巻2 号 p.
77-81
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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陳旧性Monteggia骨折の長期経過例に対する尺骨矯正骨切り術は,脱臼した橈骨頭の整復がしばしば困難である.このような症例に対し,橈骨短縮骨切り術を尺骨矯正骨切り術に併用した手術方法を行ったため報告する.症例は4例4肘,平均年齢12歳で全例男性,Bado分類type I,受傷から手術までの待機期間は平均7年であった.橈骨に対して前方進入で橈骨頭を確認して輪状靱帯を確保,橈骨頭が整復されるように橈骨骨幹部を骨切りしプレート固定,尺骨に対しては背側進入にて近位1/3高位で骨切りし,背側凸に矯正しプレート固定した.全例で橈骨頭は整復され,骨切り部の骨癒合を確認,経過観察期間(平均13か月)中の再脱臼は認めなかった.長年経過例に対しても,橈骨短縮骨切り術を併施することで橈骨頭の引き下げと整復を容易にし,短期ではあるがその維持と良好な可動域を確認した.症例数を増やし,長期的な経過観察が必要と考える.
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井戸 洋旭, 堀井 恵美子, 洪 淑貴, 杉浦 洋貴, 山賀 崇
2017 年24 巻2 号 p.
82-84
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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Hume骨折に尺骨塑性変化を合併したとする報告を散見する.当院でも類似の症例を2例経験した.受傷時年齢は6歳と14歳,新鮮例の1例(6歳)は橈骨頭の安定化は容易ではなく,慎重なリハビリテーションを要した.陳旧例の1例(14歳)は尺骨矯正骨切り術を行ったが亜脱臼が残存した.肘頭骨折,尺骨塑性変化が近位橈尺関節の関節適合性に影響を与える症例においては,尺骨の矯正または過矯正を行いながら,慎重に橈骨頭の安定性を評価することが必要である.
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黒岩 宇, 鈴木 拓, 長谷川 正樹, 前田 篤志, 志津 香苗, 早川 克彦, 鈴木 克侍
2017 年24 巻2 号 p.
85-87
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
症例は14歳男児,ハンドボール中に転倒し,受傷当日に当院を受診した.単純X線,CTにて橈骨頭脱臼骨折と尺骨急性塑性変形を認め,maximum ulnar bow(以下MUB)は7mmであった.翌日,伝達麻酔下に尺骨塑性変形に対して徒手整復術を施行し,MUBは3mmと改善を認めたが,橈骨頭の整復は不能であった.そのため,後日,尺骨矯正骨切り術と橈骨頭の観血的整復固定術を予定し,肘関節屈曲90°,前腕中間位で上腕から手関節までシーネ固定を行った.受傷4日目,全身麻酔下に橈骨頭を透視にて確認すると,橈骨頭は整復されており,MUBは3mmのままであった.橈骨頭を直視下に確認したところ,関節包や輪状靱帯の断裂はなく,橈骨頭の骨片の整復も良好で腕橈関節の対向も良好であった.そのため,尺骨の骨切り術と橈骨頭の観血的整復固定術は施行しなかった.自然整復の一因として,全身麻酔による筋弛緩や上腕二頭筋の牽引力が少なくなったことが考えられた.
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中村 厚彦, 尾上 英俊, 廣田 高志
2017 年24 巻2 号 p.
88-91
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
尺骨急性骨塑性変形に伴う橈骨頭脱臼は比較的まれな外傷であり,診断には前腕を含む正確な単純X線撮影を行い,健側の単純X線像と比較することが重要である.当科で治療を経験した5症例を報告する.症例は5例5肘であり,年齢は3歳が1例,4歳が1例,5歳が2例,10歳が1例であった.橈骨頭の脱臼方向は4例が前方で1例が外側であった.全例で神経麻痺や血管損傷の所見は認めなかった.初診時に無麻酔下で橈骨頭の徒手整復を試みた.受傷から徒手整復までの時間は全例4時間以内で,平均約2.5時間であった.4例で橈骨頭脱臼の徒手整復が可能であり外固定を継続した.1例は整復不能であり観血的脱臼整復を行った.最終経過観察時に尺骨に軽度の弯曲が残存しているが疼痛や可動域制限は認めず橈骨頭の再脱臼は認めていない.新鮮例で尺骨の弯曲が軽度であればまず橈骨頭の徒手整復を行うべきであると考えた.
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金谷 耕平, 射場 浩介, 山下 敏彦
2017 年24 巻2 号 p.
92-94
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
症例:8歳男児.3年7か月前に自転車で転倒して左上腕骨顆上骨折を受傷し,近医で経皮的ピンニングが行われた.術直後より橈骨神経麻痺となったが,術後3か月で自然治癒した.内反肘変形のために当科を紹介された.初診時,左内反肘変形が認められたが,疼痛や可動域制限はなく麻痺も認められなかった.X線像および3DCTで,上腕骨遠位骨幹端外側部に骨トンネルが認められた.内反肘変形に対する矯正骨切り術を計画した.肘外側部を展開すると,橈骨神経から分枝した数本の神経束が骨トンネルに巻き込まれていることを確認した.神経束は,ノミで骨トンネルごと浮上させた.上腕骨は17°の外反骨切りを行い,骨切り部でやや屈曲位となるように創外固定器で固定した.術直後より橈骨神経麻痺となり,術後4か月で運動麻痺は完全に回復したが,橈骨神経浅枝領域の知覚低下が残存した.
上腕骨顆上骨折後に形成された橈骨神経を巻き込む骨トンネルの1例を報告した.
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千馬 誠悦, 成田 裕一郎
2017 年24 巻2 号 p.
95-97
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
症例は4歳の女児,分娩麻痺による左上肢不全麻痺があった.2年前から左肘関節および前腕の可動域制限が生じ,左肘関節脱臼が疑われ,紹介された.左肘関節と前腕の自動可動域は伸展-55°,回内-10°と制限され,伸展と回内の筋力低下もみられた.単純X線像で左肘関節の内側脱臼が認められた.手術は内外側からアプローチし,尺骨神経を剥離,上腕三頭筋内側頭をZ延長し,関節周囲の軟部組織を剥離,前方関節包を切除,介在する軟骨や瘢痕肉芽組織を除去した.術後5週から可動域訓練を開始した.術後1.5年の時点で可動域が伸展-50°,回内-10°と制限されているが,再脱臼はみられていない.手術で軟部組織を解離し,緊張する腱は延長し,関節内に介在する組織の切除により整復が可能となった.予後不良となる要素もあり,今後も注意深く経過をみていく必要がある.
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土谷 正彦, 小泉 雅裕, 倉石 達也
2017 年24 巻2 号 p.
98-100
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
先天性橈尺骨癒合症は橈尺骨の分化障害であり,幼少期の前腕回旋障害を主訴に診断されることが多い.しかし今回,比較的年長となってから肘関節ロッキングを契機に診断された症例を経験した.症例は14歳の男児で,左肘関節を深屈曲した際にロッキングを生じ,他院で静脈麻酔下に解除された際,橈尺骨近位部の骨性癒合を指摘された.その後も同様のロッキングを繰り返したため,精査加療目的に当科へ紹介された.左前腕は約10°の回内位強直で,画像上,橈骨頭の前方脱臼を伴う橈尺骨癒合を認めた.頻回のロッキングに対する恐怖心のため,肘関節自動屈曲可動域は90°に制限されており,全身麻酔下に手術を施行した.直視下に確認すると,ロッキングの原因は輪状靱帯による橈骨頚部の絞扼であり,他動伸展時には強い弾発を生じてロッキングが解除された.輪状靱帯を部分切除することでロッキングは完全に消失した.
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仲宗根 素子, 宮城 若子, 大久保 宏貴, 金城 政樹, 普天間 朝上, 村瀬 剛, 金谷 文則
2017 年24 巻2 号 p.
101-104
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
目的:近年,先天性近位橈尺骨癒合症の前腕骨に対する3次元変形解析の結果,回内強直位が強い症例では尺骨の内旋変形が高度であることがあきらかになった.これをうけて当科では2012年より高度回内強直例に対して分離授動術に尺骨回旋矯正骨切り術を併用しており,その術後成績を検討した.
対象と方法:2007~15年に手術した,術前回内強直位が50°以上の14例18肢を対象とした.金谷法に基づく橈骨分離矯正骨切り術を行った群(金谷変法群)は11肢,さらに尺骨回旋矯正骨切りを併用した群(骨切り併用群)は7肢であった.両群間の最終観察時の回内外の可動域を比較した.
結果:術後の平均可動域は,回内が金谷変法群で65°,骨切り併用群で58°と有意差を認めず,回外は金谷変法群で-3.6°,骨切り併用群で27°と有意差を認めた.Total arcは金谷変法群で61°,骨切り併用群で85°と有意差を認めた.
結論:高度回内強直位の本症に分離授動術に尺骨の回旋矯正骨切り術を併用し回外とtotal arcが改善した.
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秋本 浩二, 西須 孝, 柿崎 潤, 落合 信靖, 藤田 耕司
2017 年24 巻2 号 p.
105-108
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
背景:病態について不明な点が多いPanner病の4例を経験し,その病態について検討を行った.方法:症例は全例男性で年齢は平均9.1歳,経過観察期間は平均35.5か月であった.調査項目は患者背景(スポーツ歴・家族の喫煙歴・ステロイド内服歴・骨年齢),症状,単純X線所見の変化,治療経過とした.
結果:スポーツ歴はドッジボール2例,テニス1例,野球1例であった.家族の喫煙歴は1例,ステロイド内服歴は2例にみられ,1例で骨年齢が暦年齢より若かった.症状は,全例に肘関節痛があり,肘関節可動域制限が3例にみられた.単純X線で骨端核が修復されるまでの期間は平均12.7か月であった.全例保存加療を行い,オーバーヘッド動作制限期間は平均15か月で,全例臨床症状は改善した.
結論:Panner病4例に対し保存加療を施行し,全例臨床症状は改善した.オーバーヘッド動作を伴うスポーツ歴,ステロイド内服歴はPanner病のrisk factorになりえると考えられた.
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安部 幸雄, 藤井 賢三
2017 年24 巻2 号 p.
109-111
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
目的:上腕骨通顆骨折に対するdouble plate固定法について検討した.
対象:17例,男4例,女13例,年齢58~87歳を対象とした.14例にMayo Clinic Congruent Elbow Plate System(Mayo plate)を,3例にA.L.P.S.Elbow Fracture System(ALPS plate)を使用した.
結果:術後平均5日にて外固定を除去した.2例で術後の転倒による骨幹部骨折を受傷した.追跡不能であった1例を除く16例全例で骨癒合が得られ,X線像上の骨癒合は術後平均6週で得られた.平均経過観察期間7か月における平均可動域は伸展-13°,屈曲125°,JOA-JES scoreは平均92.3点であった.
考察:Mayo plateおよびALPS plateを使用したdouble plate固定法による上腕骨通顆骨折の治療成績は良好であった.ただし本骨折は高齢者に多く生じるため,合併症や転倒による再骨折には注意する必要がある.
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加地 良雄, 中村 修, 山口 幸之助, 飛梅 祥子, 山本 哲司
2017 年24 巻2 号 p.
112-115
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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上腕骨通顆骨折は比較的骨癒合を得にくいが,近年ではロッキングプレートによる良好な治療成績が報告されてきている.今回in situ bendingが可能な単軸性プレートであるA.L.P.S. Elbow Plating System(以下ALPS)を用いた上腕骨通顆骨折の治療経験について報告する.
対象は上腕骨通顆骨折に対しALPSを用いて治療した9例であった.これらの症例に対し,プレートの設置状況,骨癒合,肘関節可動域,合併症について調査した.
プレートは3例で平行設置,6例で垂直設置されていた.遠位骨片へのスクリューは平行設置で平均4.3本,垂直設置で4.7本挿入されていた.骨癒合は全例で得られ,平均可動域伸展-9.7°,屈曲131.7°であった.皮膚障害は全例で認めなかったが,1例で尺骨神経領域の知覚障害を認めた.
ALPSを用いた上腕骨通顆骨折の治療成績は概ね良好であったが,尺骨神経障害の発生には注意が必要である.
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能見 修也, 坪 健司
2017 年24 巻2 号 p.
116-118
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
高齢者上腕骨通顆骨折に対して当科ではこれまで外側にtension band wiring,内側にscrewを用いる術式を行ってきたのでその術後成績を調査した.65歳以上の上腕骨通顆骨折9例を対象とした.男性2例,女性7例,手術時平均年齢は81.4(71~91)歳,受傷から手術までの期間は平均7.0(4~12)日であった.調査項目は骨癒合の有無,肘関節可動域,合併症,術直後と最終観察時の上腕骨角,tilting angleの変化量とした.全例において骨癒合が得られた.肘関節可動域は伸展平均-16.1度,屈曲平均116.7度であった.合併症としてK-wireのゆるみを1例に認めた.上腕骨角変化量は平均1.1度,tilting angle変化量は平均0.75度であった.本術式はロッキングプレートを用いた固定に比し低侵襲・安価であり,高齢者上腕骨通顆骨折に対して考慮されてもよい術式と思われた.
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長田 龍介, 頭川 峰志
2017 年24 巻2 号 p.
119-122
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
症例は30歳男性.左上腕骨遠位骨幹部遠位の第3骨片を有する斜骨折に対して初回手術として前外側のロッキングプレート固定がなされた.術後looseningが認められたが再手術を希望されず経過し,4年6か月後に左上腕の疼痛が強くなったため再手術となった.局所の腫脹と不安定性により肘,肩の運動制限があり,X線像では偽関節と各スクリュー周囲の広範な骨融解が見られた.固定性不足による偽関節に対して偽関節部新鮮化,内,外側プレート固定,腸骨移植を行った.術後6か月で骨癒合を確認し1年8か月の最終調査で日常生活の不都合はなかった.本症例は骨幹部骨折ではあるが,骨折部上下の十分なスクリュー刺入部位を確保するために初回から内,外側の上腕骨遠位部用プレートが使用されるべきであったと考える.骨欠損と不安定性の大きな偽関節に対する手術を計画するにあたり3次元模型を用いたシミュレーションが有用であった.
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石倉 久光, 平山 拓也, 岩崎 倫政
2017 年24 巻2 号 p.
123-125
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
高齢者の上腕骨遠位端骨折は低エネルギー外傷で発症し,不安定な骨折である.近年,新たな内固定材が開発され良好な成績が得られるようになってきた.われわれはその1つであるONI plateの当院での成績を調査したので報告する.対象は2010年以降上腕骨遠位端骨折に対して当院でONI plateを用いて手術を行い,6か月以上経過し2016年10月の時点で観察が可能であった男性2例,女性3例.評価項目は,骨折型,関節可動域,DASHスコア,JOA-JES score,Mayo Elbow Performance Score(以下MEPS),尺骨神経障害,皮膚のトラブルなど合併症を調べた.骨折型はAO分類A2:3例 C1:2例であった.関節可動域は伸展平均-11°,屈曲平均133°,回内平均82°,回外平均88°,であった.JOA-JES scoreは平均92.4,DASHスコアは平均1.7,MEPSは平均94であった.尺骨神経障害,皮膚のトラブルはなかった.
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曽我部 祐輔, 細見 僚, 恵木 丈
2017 年24 巻2 号 p.
126-129
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
上腕骨遠位部骨折術後に尺骨神経障害を発症した症例を後ろ向きに調査し,その危険因子を検討した.対象は,同骨折に対し,手術加療を施行した14例,手術時年齢は平均63歳,骨折型はAO/OTA分類type A:4例,type B:2例,type C:8例であり,columner型:12例,capitellar/trochlea型:2例,固定法は両側プレート固定:9例,内側プレート固定に外側追加固定を施行したもの:1例,外側プレートに内側追加固定を施行したもの:2例,プレート以外の固定法:2例であった.検討項目は,骨折型,内側プレートの有無,尺骨神経前方移動術の有無で,本障害との関連性を統計学的に検討した.術後尺骨神経障害の発生は2例 / 14例(12%)であった.各項目のいずれも統計学的有意差を認めなかったが,発症例はいずれもcolumnar type骨折で内側プレートを使用しており,プレート設置に伴う尺骨神経に対する術中操作が神経障害発症に寄与している可能性があると考えられた.
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別所 祐貴, 岩部 昌平
2017 年24 巻2 号 p.
130-133
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
緒言:肘筋への支配神経を温存する肘頭骨切りアプローチの試みを報告する.
症例および方法:症例は16歳男性,39歳男性,48歳女性,33歳男性の上腕骨遠位端関節内骨折4例で,AO分類C2型3例,C3型1例であった.内側は通常通り上腕三頭筋内側縁を展開し,外側は上腕三頭筋外側縁の展開を肘筋上腕骨付着部近位までに留め,肘頭骨切り後,上腕三頭筋と肘筋の連続性を保ったまま近位外側に翻転することで関節面を露出する.整復後,全例double plate固定を行った.C3の1例で展開が不十分となり通常の肘頭骨切りアプローチに移行した.全例で骨癒合が得られた.
考察:肘筋は動的な外側安定性も担うとされている.従来の肘頭骨切りアプローチでは,必然的に肘筋の脱神経を生じさせており,その機能を失うことになる.肘筋を温存する臨床的意義に関しては今後の検討を要するが,肘筋の発達した運動選手などでは温存する努力を払うべきと考える.
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岩田 勝栄, 北野 陽二
2017 年24 巻2 号 p.
134-137
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
症例は18歳女性で,車の横転により受傷した.肘関節外側部の皮膚軟部組織欠損を伴う開放骨折で,上腕骨外側上顆とともに上腕骨小頭の一部が欠損していた.受傷同日にデブリドマンを行ったのち陰圧閉鎖療法を開始し,受傷から9日目に肋骨肋軟骨を用いて骨軟骨欠損部を再建した.皮膚欠損は全層植皮で対処可能であった.術後9か月での可動域は肘関節伸展-5度,屈曲140度,前腕回内50度,回外90度と軽度の可動域制限が残存しているが,日常生活動作には問題を認めていない.肋骨肋軟骨移植は,上肢では肘離断性骨軟骨炎や手指骨軟骨欠損に対して用いられることが多い.今回われわれは上腕骨外側上顆から上腕骨小頭関節面に至る骨軟骨欠損に対し肋骨肋軟骨移植を行った1例を経験し,その成績は比較的良好であった.今後の長期経過観察を必要とするが,肋骨肋軟骨移植は肘関節新鮮外傷に伴う骨軟骨欠損に対し有用な手段と考える.
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伊佐治 雅, 尼子 雅敏, 藤巻 亮二, 高島 健一, 山田 真央, 有野 浩司, 千葉 一裕
2017 年24 巻2 号 p.
138-140
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
はじめに:上腕骨滑車部単独骨折の症例を経験したので報告する.
症例:19歳男性,スノーボード中に転倒し,右肘屈曲位で肘頭を強打して受傷した.CTにおいて右上腕骨滑車内側に骨折を認めたが,上腕骨小頭に骨折は認めなかった.治療は内側アプローチで吸収性スクリューを用いて観血的整復固定術を施行し,術後2週目より装具装着下で可動域訓練を開始した.術後6か月で骨癒合を確認でき,肘関節可動域は伸展0°,屈曲140°まで改善を認めた.スポーツへの復帰も果たしている.
考察:上腕骨遠位冠状断骨折はまれな骨折であるが,上腕骨滑車単独骨折はさらにまれである.本症例は肘屈曲位で肘頭を介した剪断力が上腕骨滑車に生じて受傷したと考えられた.吸収ピンを用いての観血的整復固定術で良好な成績が得られた.
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久保井 卓郎, 浅見 和義, 内田 徹
2017 年24 巻2 号 p.
141-144
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
フリー
小頭を含まない上腕骨滑車骨折は,国内外で報告が散見される程度の非常に稀な骨折である.上腕骨滑車骨折に対し観血的整復固定術を施行した症例を経験したので報告する.45歳,男性.スケートボードで後方に転倒した際に左手掌を地面について受傷した.左肘関節周囲の腫脹,疼痛が強く同日当院救急外来を受診した.単純X線像とCTにて尺骨鉤状突起骨折および上腕骨滑車骨折と診断した.第5病日に全身麻酔下に手術を施行した.手術は前方アプローチで進入し,滑車および鉤状突起骨片をヘッドレススクリュー(DTJスクリュー®,メイラ,愛知)を用いて固定した.術後1年での最終関節可動域は伸展-5°,屈曲120°,前腕回内90°,回外90°であった.本症例の受傷機転は,肘関節伸展位で手掌をつき,尺骨鉤状突起からの軸圧と内反ストレスが滑車の内側に衝撃を与え生じた,と考えた.治療は諸家の報告と同様に,観血的整復固定術を施行し良好な成績を得た.
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森田 晃造, 増田 秀輔, 西脇 正夫, 堀内 行雄
2017 年24 巻2 号 p.
145-147
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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上腕骨遠位端coronal shear fractureの中で顆部後壁の粉砕を伴うDubberley分類type B骨折症例の治療成績を検討した.対象は6例6肘で手術時平均年齢は67.6歳であり,骨折型はtype1B 2例,3B 4例であった.
手術では5例は後方アプローチでうち2例はparatricipital approachにて進入した.1例は外側アプローチにて進入した.全例とも小頭および滑車を整復,仮固定の後,headless screwおよび後外側ロッキングプレートにて固定した.
結果は全例で骨癒合し,最終観察時肘関節可動域は平均で伸展-21°屈曲123°,JOA-JES scoreは平均85.3点であった.
本骨折は後壁の粉砕が強く内固定に難渋することの多い骨折であるが,正確な整復およびロッキングプレートによる強固な内固定の施行により,早期からの可動域訓練が可能となり比較的良好な成績が獲得可能であった.
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増田 秀輔, 森田 晃造
2017 年24 巻2 号 p.
148-151
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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緒言:上腕骨遠位coronal shear fracture(コロナルシェアフラクチャー 以下CSF)は上腕骨遠位端骨折の6% 程度と比較的まれな外傷である.今回われわれは上腕骨遠位CSF Dubberley分類type 3Bに肘頭骨折・内側上顆骨折を合併した症例を経験したので報告する.
症例:82歳女性,転倒し受傷.上腕骨小頭後壁が粉砕し上腕骨小頭前方と上腕骨滑車骨片・内側上顆骨片の大きな転位を伴うDubberley分類type 3BのCSFを認め肘頭骨折を合併していた.受傷後8日目にSynthes社:VA-LCP Plate・Acumed社acutrack micro screwを用いて後方アプローチで手術施行.術後9か月で肘関節可動域は伸展-25°,屈曲115°JOA-JES scoreは88点であった.
考察:CSFに対する手術アプローチとしては,外側アプローチ・前方アプローチ・前外側アプローチ・後方アプローチなどが報告されている.今回われわれは,肘頭骨折を合併していることから後方アプローチを選択し手術を施行した.前方近位までアプローチでき関節面の修復も可能であった.肘頭骨折を合併するCSFでは肘頭骨折の部位によっては後方アプローチが第一選択となると考えられた.
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浅井 一希, 山内 大輔
2017 年24 巻2 号 p.
152-154
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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目的:稀な上腕骨小頭骨折を伴った肘関節側方脱臼1例を経験したので報告する.
症例:78歳,男性.路上で転倒した際に左手をついて受傷した.単純X線像では肘関節側方脱臼と上腕骨小頭粉砕骨折・上腕骨外側側副靱帯剥離骨折と肘頭部剥離骨折を認めた.全身麻酔下に肘関節を90度屈曲位で牽引し回外することで鈍い軋轢音と共に整復できた.上腕骨小頭骨片・上腕骨外側側副靱帯剥離骨片の骨接合術と内側側副靱帯の修復術を施行した.術後9日目より外固定を解除し可動域訓練を開始した.
結果:術後8か月で疼痛は認めず,肘関節は伸展-30度,屈曲120度で,回内外に健患差はなかった.単純X線像では小頭骨折部は骨癒合し,異所性骨化などの合併症はなかった.
考察:肘関節側方脱臼では前腕を回外し肘頭を誘導することで整復するとの報告が多いが,本例では上腕骨小頭が側方に転位し肘頭が上腕骨外側顆に噛み込むように転位していたため,屈曲位での牽引が有効であった.
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今泉 泰彦, 瀧川 悟史
2017 年24 巻2 号 p.
155-158
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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Posterior Monteggia fracture-dislocationの3例を経験したので報告する.
3症例の内訳は78歳,80歳,61歳女性で全例に鉤状突起骨折を伴った肘頭粉砕骨折,橈骨頭骨折を認めた.全例手術を行い,後方アプローチにて鉤状突起骨片を尺骨遠位骨片にKirschner鋼線で仮固定した後,橈骨頭骨折に対し症例1で骨接合を症例2,3で人工橈骨頭に置換した.肘頭にはプレート固定を行い,最後に外側側副靱帯修復を行った.術後最終調査時の日整会-日肘会肘機能スコアはそれぞれ75,82,85点であった.Posterior Monteggia fracture-dislocationは鉤状突起やさらに遠位部を含んだ三角形や四角形の骨片を伴う尺骨近位部粉砕骨折を認め,橈骨頭が後外側に脱臼し,橈骨頭骨折を合併することも多い.尺骨滑車切痕の再建のため鉤状突起骨片の整復,固定法については十分留意する必要がある.
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洪 淑貴, 堀井 恵美子, 大塚 純子, 小野田 亮介, 大島 明, 杉浦 洋貴, 山賀 崇
2017 年24 巻2 号 p.
159-162
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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観血的治療を施行した成人橈骨頭・頚部骨折32例(男18女14例,平均44歳)を対象に,骨折型,合併損傷,手術法,疼痛遺残,骨癒合の有無と可動域を調査し,Mayo Elbow Performance Score(MEPS)にて評価した.骨折型は,橈骨頚部骨折(A群)8例,橈骨頭部分骨折(B群)11例,橈骨頭完全骨折(C群)13例で,合併損傷は靱帯損傷25例(内側13,外側1,両側損傷11例),鉤状突起骨折13例,肘頭骨折3例であった.施行術式は骨接合27例,橈骨頭切除2例,人工橈骨頭置換術・骨片切除・観血的整復のみ各1例であった.骨癒合はA群7例,B群10例,C群6例で得られ,疼痛は2例,1例,6例で遺残し,平均肘屈伸可動域は133,129,124°,前腕回内外は148,160,153°,MEPSは93,98,92点であった.C群は全例同側肘関節に合併損傷があり,有意に骨癒合率が低く,疼痛が遺残しやすかった.
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藤巻 亮二, 尼子 雅敏, 高島 健一, 伊佐治 雅, 山田 真央, 千葉 一裕
2017 年24 巻2 号 p.
163-165
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
ジャーナル
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今回,著者らは肘関節後内側に逸脱する滑膜ひだによる弾発肘の1例を経験した.症例は16歳男性,小学2年時から野球を始めており内野手であった.2か月ほど前から明らかな誘因なく,投球動作時の疼痛と,日常生活で肘を完全伸展する際に弾発感を自覚するようになった.症状が改善しないため手術目的で当科を紹介受診した.初診時,肘関節屈曲10度から完全伸展する際に,肘関節内側に疼痛を伴う弾発現象を認めた.手術所見では,肥厚し腫瘤様となった滑膜ひだが,肘完全伸展時にのみ肘頭窩から後内側に押し出される様に逸脱していた.この滑膜ひだを切除したところ,弾発現象は消失した.術後9か月にて弾発現象の再発はなく,野球に完全復帰している.肘関節内側に生じる弾発肘の原因としては,尺骨神経脱臼や上腕三頭筋の異常に伴うものが報告されているが,滑膜ひだによる弾発肘はまれである.その成因等について若干の考察を加えて報告した.
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太田 壮一, 池口 良輔, 織田 宏基, 淘江 宏文
2017 年24 巻2 号 p.
166-168
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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乳癌多発骨転移に対してゾレンドロン酸を長期投与された症例に生じ,治療に難渋した尺骨近位非定型骨折後偽関節の1例を報告する.
65歳,女性.多発骨転移に対し,ゾレンドロン酸を8年間毎月投与されていた.机で左肘を打撲後,尺骨近位端骨折を生じ,保存的に治療したが,徐々に転位が生じてきた.そのため,同側の橈骨遠位背側より後骨間動脈を血管茎とした血管柄付き骨移植を施行,プレート固定した.4か月後外固定を除去したが,その1か月後にプレートが偽関節部で折損した.再手術は,左腸骨稜から遊離骨移植し,再プレート固定した.再手術後1年半経過したが,現在も装具を常時装着している.左肘の屈伸可動域は,10度~135度,回内80度,回外85度で疼痛なく,装具装着による煩わしさ以外にADL上支障はない.ゾレンドロン酸の長期投与は,骨代謝を著しく抑制する.そのような状況下では,保存的治療は無効で,偽関節に対する血管柄付き骨移植も骨癒合に有利とは言えなかった.今後の症例の蓄積による治療法のさらなる検討が必要と考える.
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本田 祐造
2017 年24 巻2 号 p.
169-172
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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近年,ビスフォスフォネート(以下BP)製剤の長期投与に関連した大腿骨非定型骨折の報告が散見されるが,尺骨に生じる非定型骨折は稀である.今回,短期間に両側尺骨骨幹部に非定型骨折を生じた症例を経験したので報告する.
症例は73歳女性.約5年間BP製剤を内服している.特に誘引なく左肘痛を自覚していた.尺骨には生理的なbowingが存在し,その頂点で横骨折を認めた.2週後に骨接合術を行ったものの,術後13か月の時点で骨癒合は得られず骨移植を併用した再手術を行った.さらに左術後の6か月で右肘痛が出現した.ほぼ左と同じ部位に横骨折を認めた.受傷6週で骨移植を併用した骨接合術を行い,さらにテリパラチド製剤(以下TP製剤)の投与を開始した.術後3か月で骨癒合が得られた.BP製剤に関連した非定型骨折は尺骨に生じることがあることを留意すべきであり,特に尺骨のbowingがあり,恒常的な尺骨へのストレスが存在する場合には注意が必要である.治療は積極的に骨移植を併用し,TP製剤を追加すべきと考えられた.
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廣田 高志, 尾上 英俊, 中村 厚彦
2017 年24 巻2 号 p.
173-175
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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今回われわれはスポーツ選手に発症した尺骨鉤状突起骨折に対し前方横皮切で手術を行った2例について検討したので報告する.
症例1:18歳,男性,硬式野球のキャッチャー.歩行中に芝生で滑って転倒し手をついて受傷した.O'Driscoll分類anteromedial-subtype 2の尺骨鉤状突起骨折であった.
症例2:15歳,女性,バスケットボール.プレー中に転倒し手をついて受傷した.O'Driscoll分類anteromedial-subtype 2の尺骨鉤状突起骨折であった.
いずれも前方横皮切にて骨接合術を行い,最終経過観察時に肘関節の疼痛や可動域制限,不安定性を認めずスポーツに復帰することができた.
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仲西 知憲, 小川 光, 石河 利之
2017 年24 巻2 号 p.
176-179
発行日: 2017年
公開日: 2019/06/05
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比較的稀に遭遇する肘頭骨折に尺骨鉤状突起骨折を合併した複合骨折を2例経験した.いずれも肘の直達外傷で,腕橈関節亜脱臼を認め,一次整復を施行した.肘頭骨折および鉤状突起骨折(2例ともRegan III, O'Driscoll 3-2)を認め,両症例ともnatural split approachにて手術を施行した.骨折部に対しては,鉤状突起のロッキングプレートおよび肘頭tension band wiringを施行した.術後疼痛は軽減し,骨癒合が得られ,関節不安定性は生じなかった.しかし,1例は機能良好,1例は著明な関節拘縮および尺骨神経障害を認めた.著明な関節拘縮を認めた症例ではPRUJ粉砕を強く認めており,関節拘縮の改善のためには治療オプションの検討が必要である.
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