てんかん研究
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11 巻, 2 号
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  • 自律神経性前兆との比較を中心として
    兼本 浩祐, 馬屋原 健, 山田 広和, 河合 逸雄
    1993 年 11 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    本院にてんかんを主訴として来院し, 単純部分発作を示した563人の患者からdysmnestic seizure (記憶障害発作) を報告した72人の患者を対象として選択した。その内訳は, 既知感が34人, 現実感喪失が29人, 追想が20人であった。自律神経性前兆を示す患者群との比較において, dysmnestic seizureを持った患者は, (1) 発症年齢が高い, (2) 不安発作の合併率が高い, (3) 複雑熱性痙攣の既往歴が少ないという諸点が統計的に有意な差異を示していた。Dreamy stateやintellectual auraなどといった伝統的な述語と国際分類のdysmnestic seizureとの関係を論ずるとともに, 導きだされた結果に対して若干の文献的考察を加えた。
  • 2症例の健忘症状・発作時頭蓋内脳波の分析
    井上 有史, 清野 昌一, 三原 忠紘, 松田 一己, 鳥取 孝安, 馬場 好一, 八木 和一
    1993 年 11 巻 2 号 p. 110-120
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    側頭葉てんかんの2症例で観察された発作時および発作後の健忘状態を, 頭蓋内電極を用いた長時間発作・脳波同時記録により分析した。2症例ともに, 右側頭葉内側構造に起始した発作放電が同側側頭葉皮質と対側側頭葉へ波及したが, 前向性健忘発作のみを生じた1例では対側へは海馬に軽度波及したにとどまり, 前向性健忘とともに逆向性健忘が遷延した1例では対側側頭葉の発作放電が顕著に認められた。健忘発作 (Pure Amnestic Seizure) および発作後健忘状態 (Postictal Amnestic State) の存在を臨床発作・脳波関連から確認するとともに, 両者の記憶障害の相違と発生機序について考察した。また健忘発作の分類上の位置づけを論じた。
  • 頭蓋内脳波・発作同時記録による分析
    井上 有史, 三原 忠紘, 松田 一己, 鳥取 孝安, 渡辺 裕貴, 八木 和一, 清野 昌一
    1993 年 11 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    頭蓋内脳波・発作同時記録により捕捉された複雑部分発作を分析した結果, 61例の側頭葉てんかんのうち, 33例 (54%) の43発作で音声産出が認められた。発声vocalizationが23発作 (叫声が6発作), 発語が20発作で, 後者は言語学的に正しいappropriatespeech (11発作) と, 錯語からなるinappropriate speech (9発作) に分けられた。発語は言語非優位側に起始する発作でみられることがやや多く, 発声やappropriate speechがみられた発作の起始部位は側頭葉内側構造が外側皮質よりやや多かったが, 産出音声の内容から発作起始側あるいは起始部位を推測することは困難であった。音声産出時の発作発射のひろがりをみると, すでに両側化していることが多かったが, 発声では言語非優位側半球が発作発射にまきこまれたときに比較的多く, inappropriate speechでは逆に, 優位側半球に発作発射が波及したときに多くみられた。発作性の音声産出のメカニズムについて若干の考察を加えた。
  • 多施設共同研究
    福島 裕, 和田 一丸, 斎藤 文男, 熊代 永, 管 るみ子, 渡部 学, 宮坂 松衛, 吉川 順, 山口 成良, 木戸 日出喜, 前田 ...
    1993 年 11 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    側頭葉てんかんの長期予後予測の可能性を検討するため, 一定期間に受診し, その後, 10~20年間の治療, 経過観察をなしえた76例を対象として多施設共同研究を行った。治療開始後2年目の時点の臨床所見と長期予後との関係をみたところ, 治療開始後2年目に月1回以上の頻度で発作があり, しかも神経精神医学的合併症状がみられた11例では, 調査時点で全例が発作を有していたが, とくに, そのうちの7例は月1回以上の発作を示していた。これに対して, 治療開始後2年目の1年間に発作がみられず, その時点で神経精神医学的異常所見を示していなかった18例では, 16例 (89%) が発作抑制状態にあった。以上の結果から, 治療開始後2年目の臨床所見から長期予後の良否を予測することが, 少なくとも一部の例については, かなりの程度可能であるものと考えた。長期予後予測の治療的意義について若干の考察を加えた。
  • 頭蓋内脳波による発作発射との相関について
    井上 有史, 三原 忠紘, 松田 一己, 鳥取 孝安, 渡辺 裕貴, 八木 和一, 清野 昌一
    1993 年 11 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    頭蓋内脳波・発作同時記録により捕捉された複雑部分発作直後の物品呼称と見当識についての言語反応の回復を, 50例の側頭葉てんかん患者の202発作を対象として分析した。言語非優位側に起始して発作発射が一側半球にとどまる発作では, 発作後の呼称は頭蓋内脳波の発作発射終了後60秒以内に正常に復し, 発作発射持続中に回復することもあった。言語優位側に起始する発作の大多数は, 120秒経っても呼称および見当識についての言語反応が正常に回復しなかった。言語非優位側に起始して両側化する発作では, 言語反応の回復時間は様々であった。言語反応を質的に検討すると, 新造語や音素性錯語が優位側起始の発作のみならず, 非優位側に起始して両側化する発作でもみられた。また, 無関心な態度や注意集中困難をうかがわせる行動変化が両側化した発作でみられた。発作直後の言語反応とくに物品呼称の回復の時間経過の観察が, 発作起始の側方性の決定に役立つことを指摘した。
  • 藤本 伸治, 金山 学, 石川 達也, 杉山 成司, 大場 悟, 和田 義郎, 水野 久美子, 高阪 好充, 柴田 偉雄
    1993 年 11 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    生後6ヵ月に発症したepilepsy with myoclonic absencesの6歳女児例を報告した。症例は乳児期より重度の精神運動発達の遅れを伴っていた。上肢のclonic movementに加え, 転倒を伴う発作も認めたため, 症候性全般てんかんと考え投薬を行ったが改善せず, 5歳4ヵ月時に入院精査を行った。発作型は基本的に2つあり, 1つは前兆なく突然意識消失し両眼球偏位と両上肢の律動性ミオクロニーがみられ, 発作終了後は速やかに意識回復をするミオクロニーを伴う欠神発作であった。他の1つは意識混濁が軽度で呼名に反応する発作で頻度は約10回に1回の割るでみられた。発作時ビデオ脳波筋電図同時記録では約3Hzの全般性同期性棘徐波群発を認め, 上肢のミオクロニーは発作波と対応していた。転倒を伴った発作の分析では背筋群の強直性収縮が原因と考えられた。sodiumvalproate, ethosuximideの投与により, 5歳10カ月から6ヵ月間, 発作はみられていない。
  • 久郷 敏明, 三野 進, 細川 清
    1993 年 11 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    多施設共同研究として, 成人の通院てんかん患者652例を対象に日本語版WPSIを施行し, とくに3種類の妥当性尺度の動向を多角的に検討した。無答数, 虚構性, 稀な応答の平均値 (標準偏差) は, それぞれ2.3点 (3.3), 4.4点 (2.1), 2.9点 (1.7) であり, 本邦における虚構性尺度の高値が注目された。無答数が多かった設問は, 単純に回答しにくい内容のものであった。虚構性尺度は全臨床尺度との間に有意の負の相関を示した。虚構性尺度との相関係数は, とくに情緒適応, 対人関係適応尺度で高値であった。本尺度と臨床特徴との関係では, 発作抑制状況との関係が強く, 経過良好例の平均値は不良例に比し有意な高値であった。以上の結果について若干の考察を加え, 本邦における妥当性尺度について, 無答数は原著の基準に, い, 虚構性尺度得点が7点以上の症例のみを除外することが, 実質的運用ではないかと考えた。
  • 大日方 修
    1993 年 11 巻 2 号 p. 163-173
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児てんかんのうち10歳以後に発症するてんかん (遅発群) の特徴を明らかにするために, 遅発群109例と, 10歳未満発症の対照群207例について比較検討を行い, 以下の結果を得た。
    1) 局在関連性てんかんでは特発性, 症侯性ともにみられるが, 全般てんかんでは特発性が多く, 症候性は稀である。
    2) てんかん波は焦点性皮質性発射が50.4%にみられ, その焦点部位は前頭医, 側頭医に多く, 中心・頭頂部にはむしろ少ない。
    3) 推定原因として, 素因性および原因不明が多くみられ, 両者が68.7%を占めていた。
    4) 治療予後では, 予後良好例が多い (75.9%) が, 一方, 難治例 (11.5%) は乳児期に次いで比較的高率であった。
    5) 成人てんかんとは臨床的脳波学的に共通する点が多くみられた。
    6) 初診時に遅発群の予後を予測するチェックポイソトを提示した。
  • とくに法的制限に注目して
    橋本 和明, 和田 一丸, 斎藤 文男, 福島 裕
    1993 年 11 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 1993/06/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1990年12月現在での年齢が満20歳以上60歳以下で, 弘前大学附属病院神経精神科外来に3年間以上通院しているてんかん患者274例 (男141例, 女133例) を対象として, 職業と法的制限に関する調査を行った。ただし, 重い精神遅滞者および在学中の学生は対象から除外した。定職を有する者は男125例, 女63例であり, これらのうち法的制限のある職業に, 事している者が9例 (5%) に認められ, その内訳は, 絶対的欠格事由の調理師が5例, 相対的欠格事由の看護婦2例, 薬剤師1例, 歯科技工士1例であった。これらの中で, 過去に職場で発作を起こしたことが原因となって仕事を辞めることになった者が4例に認められた。今回の調査では, 欠格事由とされている職業についている者は少なかったが, このような法的制限の見直しが必要であることを述べた。
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