チオカルバミン酸系抗真菌剤tolciclateおよびアリルアミン系抗真菌剤naftifineに対して高い感受性を有する二形性真-菌
Sporothrix schenckii野生株ならびにこの株から誘導したtolciclate耐性変異株の酵母形細胞を用い, 新規ベンジルアミン系抗真菌剤butenafine hydrochloride (butenafine) の抗真菌作用メカニズムについて検討を行い, 以下の成績を得た.
(1)
S. schenckii野生株はbutenafineに対して高い感受性を示し, 本剤の50%発育阻止濃度 (IC
50) は0.005μg/m
lと低かった.一方, tolciclateおよびnaftifineに対して耐性化した7株の変異株は, 例外なく, スクアレンエポキシダーゼ活性を欠損するものとしないものとに分けられたが, いずれの変異株もbutenafineに対して交叉耐性を示し, IC
50値は0.04~0.63μg/m
lの範囲にあった.
(2) Butenafineを5μg/m
l以上の高濃度で感受性株およびスクアレンエポキシダーゼ活性を欠損する耐性変異株の両者の静止期細胞に作用させると, 細胞内のK
+が迅速に放出された.その放出量は薬剤濃度に依存し, また同一薬剤濃度下では感受性野生株と耐性変異株との間で明瞭な相違はみられなかった.
(3) 感受性野生株および耐性変異株の発育培養に0.04~40μg/m
lの範囲で種々の濃度のbutenafineを添加し, 培養した場合, いずれの菌株においても培養6時間目の時点ではいかなる薬剤濃度によっても殺菌的作用を受けなかった.しかし, 培養24時問以後では, 野生株においては0.04μg/m
l以上, 変異株においては0.63μg/m
l以上の薬剤濃度で殺菌的効果が認められた.
(4) 以上の成績から, 少なくとも
S. schenckiiのような高度感受性菌においては, アリルアミン系およびチオカルバミン酸系薬剤と同様, スクアレンエポキシダーゼ阻害作用がbutenafineの一次的作用メカニズムとして働き, 直接的細胞膜阻害作用は二次的な役割しか持たないと考えられる.しかし, 低度感受性菌においては後者の作用が抗菌活性により大きく関与する可能性も否定できない.
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