症例は,62歳,女性で,急性骨髄単球性白血病の再発のため,寛解導入療法を施行したが,高熱,胸痛,呼吸困難の症状と,胸部レントゲン写真上,左肺の梗塞像が出現した.その後,陰影は左肺全体に広がり,胸水の貯留を認め,胸水培養にて,
Mucor sp.を検出したため,アムホテリシンBの点滴静注を行ない,患者は改善し,退院となった.その後,白血病の悪化と,DIC,重症の肝障害を併発し,死亡したが,剖検は得られなかったため最後の再発の有無は,不明であるが,胸部レントゲン写真上では,再発の所見は,認められなかった.ムーコル症は,発症が急激で,致死的であり,その生前診断は,非常に困難であり,ほとんどが剖検時診断である.本症例のように,生前,胸水培養よりムーコル菌を検出し,改善した症例は,非常に稀である.近年,血液疾患に併発する真菌感染症は,重篤で,死亡率も高く,重要な問題となっており,その感染予防,早期診断及び,すぐれた抗真菌剤の開発は,今後の重要な課題である.
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