日本医真菌学会雑誌
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38 巻, 3 号
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  • 赤川 清子
    1997 年 38 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ヒト単球をGM-CSFまたはM-CSF存在下に培養すると,形態,表面マーカー,機能(貪食能,活性酸素産生能,抗原呈示能,HIV感染感受性など)の異なる2種類のマクロファージ(Mφ)に分化すること,GM-CSFで分化誘導したMφは,ヒトの肺胞Mφに似ていることが知られた.またCSFによるヒト単球のMφへの分化はIL-4により修飾され,GM-CSFとIL-4によりCD1陽性の樹状細胞(DC)に,またM-CSFとIL-4によりTRAP陽性の破骨細胞様多核巨細胞(MGC)への分化が誘導されることが知られた.単球由来DCは,既にGM-CSFによりMφへ変換する能力は有していないが,M-CSFのレセプターであるc-fmsを有しM-CSFに反応してMφに分化可能である.しかしTNF-αで処理することによりc-fmsの発現が抑制されM-CSFによるMφへの分化能を失うことが知られた.また単球由来MGCの形成には内在性のIL-1とIL-6が重要な役割を果たしており,CD4/HLA-DR,LFA-1/ICAM-1及びCD14とそのリガンドの相互作用が必要なことが示唆された.
  • 伊藤 誠, 山岡 秀之, 松永 光太郎, 小木曽 暁, 宮田 和幸, 発地 雅夫
    1997 年 38 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ラットにCryptococcus neoformansを経静脈接種し,肝臓および血管内肉芽腫の構成細胞の形質を電顕的内因性ペルオキシダーゼ染色により検討し,さらに中枢神経系での肉芽腫性病変とミクログリアの活性化との関係を免疫組織化学的に検討した.肝臓ではクッパー細胞が主体となって肉芽腫が形成され,血行性播種の過程では血管内に単球由来のマクロファージ(Mφ)が主体となり血管内肉芽腫を形成した.中枢神経系では肝臓,脾臓の肉芽腫性炎症が消退した後も,持続性感染により脳内に肉芽腫性炎症が広がった.中枢神経固有のミクログリアは感染後9日目から活性化され,Class II MHC抗原,CD11b/cの発現が脳室周辺や白質に生じた.同時に経時的に数と大きさを増して感染性肉芽腫が皮質・白質を問わず多数形成された.しかし,皮質内の肉芽腫周辺には活性化されたミクログリアの分布は認められず,活性化されたミクログリアは白質の肉芽腫周辺に多く分布していることから,肉芽腫形成の場により活性化ミクログリアの関与は異なっていた.感染後期にはCD4+ T cellとCD8+ T cellの浸潤が肉芽腫内に多く認められた.臓器により,また感染の経過により肉芽腫形成の主体は在住性Mφであったり単球由来のMφであったり様々であり,Mφが直接肉芽腫形成に参画することも,炎症性メディエイターの分泌を介して肉芽腫性炎症の増幅に間接的に関与する場合もある.
  • 安部 茂, 丹生 茂, 内田 勝久, 山口 英世
    1997 年 38 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    深在性Candida感染に対する防御を担う主たる宿主細胞は,好中球とされているが,マクロファージもまた重要な役割を発揮していると考えられる.マクロファージは,直接Candidaを貪食・殺菌するエフェクターとしてのみならず,サイトカイン等の産生を介することによって間接的にも感染病態に影響を与える.したがってマクロファージの機能を適切に調節することによりCandida感染防御能を高めることができる.このような調節作用をもつ代表的な薬剤として,漢方製剤十全大補湯を例にとり,その効果について検討した私達の研究結果についても述べる.
  • 門田 淳一, 阿部 航, 佐々木 英祐, 掛屋 弘, 山本 善裕, 田代 隆良, 河野 茂
    1997 年 38 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Cryptococcus neoformansに対する感染防御にはCD4+T細胞やCD8+T細胞が重要であることが解っており,CD4+T細胞はTh1型とTh2型の2種の細胞に分類される.そこで今回我々は,C.neoformansの感染防御におけるTh1型とTh2型細胞の役割を検討するため,C.neoformansの強毒株と弱毒株の2種類をBALB/cマウスに経気道的に注入し,その肺内生菌数および気管支肺胞洗浄(BAL)液中のサイトカインを測定した.10日目までの観察では,弱毒菌では肺内生菌数が増加せず,強毒菌では経時的な増加を認めた.それにともない強毒菌接種マウスではTh2サイトカインであるinterleukin(IL)-4が10日目に優位となり,一方弱毒菌接種マウスではTh1サイトカインであるIL-2が優位となった.このことからC.neoformansの肺内増殖抑制にはTh1細胞が重要な役割を果たしているものと考えられる.ヒト肺クリプトコックス症患者のBAL液中には著明なリンパ球の上昇が認められ,それから分離したマクロファージ/リンパ球をConAで刺激すると著明なIL-10産生が認められた.このことは肺局所で産生されるIL-10がマクロファージの活性化を抑制し,C.neoformansの増殖に有利に働いている可能性を示唆している.IL-2やIL-4の産生は認められず,ヒトにおけるTh1あるいはTh2細胞の関与を明らかにすることはできなかったが,今後症例を増やしヒトにおけるこれら細胞の役割を検討する必要がある.
  • 川上 和義
    1997 年 38 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Cryptococcus neoformans(Cn)感染に対する防御機構は主に細胞性免疫によって担われ,NK細胞,γδT細胞及びヘルパーT細胞から産生されるIFN-γによってマクロファージが活性化され最終的な殺菌に関わっている.
    マウス腹腔マクロファージを用いた我々の実験では,IFN-γによって誘導された抗Cn活性はnitric oxide(NO)産生とよく相関しており,NO合成阻害剤によって完全に抑制されることから,NOが主要な殺菌メディエーターと考えられた.また,酸素系ラジカルのスカベンジャーであるsuperoxide dismutase(SOD)やカタラーゼの影響を調べると興味深いことにNO産生増強を介して抗Cn活性が高められた.
    一方ヒトマクロファージについては,マウスと異なりNOを全く産生できないとする報告と刺激方法によってはNO産生がみられ感染防御に関与しているとする報告があり未だ統一した見解が得られていない.我々のヒトマクロファージ細胞株U937を用いた実験では,種々の刺激によって全くNO産生が認められなかった.また,抗Cn活性はNO合成阻害剤やSOD,カタラーゼによって全く影響がみられなかった.
    このようにヒトとマウスではマクロファージの殺菌機構においてかなり異なっており,マウスで得られた知見がそのままヒトに適用できない可能性が考えられる.
  • Zhihong Zhong, Ruoyu Li, Dongmei Li, Duanli Wang
    1997 年 38 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Seventy-six clinical isolates of dermatophytes and 8 preserved strains of Arthroderma were investigated by random amplification of polymorphic DNA (RAPD) assay to determine the DNA types of common dermatophytes and find any relationships of DNA-based typing with morphology, teleomorphs, geographic origins and sites of human infection. It was found that each species showed a distinct DNA pattern, which can be used as an identification marker. Forty-two isolates of Trichophyton mentagrophytes were classified into 3 main types and intratype polymorphism was revealed with some primers. No simple relationship was found between DNA type and morphology, but the DNA types of strains were closely related to their geographic origins. The RAPD groups of Arthroderma benhamiae, A. vanbreuseghemii, A. gypsea and A. otae were distinctly different, whereas the 42 clinical isolates of T. mentagrophytes shared similar patterns with A. vanbreuseghemii. Among 30 clinical isolates of T. rubrum, 22 showed almost identical RAPD type, while the other 8 strains differed slightly in band patterns. T. rubrum exhibited great differences from A. benhamiae and A. vanbreuseghemii. In conclusion, RAPD provides a stable and reliable means of typing common dermatophytes, and is a powerful tool for dermatophyte identification and epidemiological study.
  • 飯塚 崇志, 二宮 淳也, 浜口 太造, 長瀬 真智子, 滝内 石夫
    1997 年 38 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    兎が感染源と考えられる,Trichophyton mentagrophytesによる白癬の2例を報告した.症例1は28歳,女性.初診の3か月前より,室内で2羽の兎を飼育していた.2か月前に1羽の兎に脱毛巣を生じ,その直後に別の兎に同様の症状が生じた.初診の10日前より胸部の皮疹に気づき来院,病巣よりT.mentagrophytesを分離した.兎は既に治療済みであったが,動物病院に保存されていた菌株についてT.mentagrophytesと同定できた.
    症例2は,3歳,男児.初診の約1か月前に体部白癬に罹患.某医を受診し治療をうけ,これは治癒したが,2-3週間前より頭部の鱗屑と脱毛に気づき,同じ医院を受診.頭部白癬の診断で外用抗真菌剤による治療を受けていたが,ケルスス禿瘡に進展したため来院.病巣よりT.mentagrophytesを分離した.内服抗真菌剤による治療継続中,亜鉛華軟膏を併用したところ,著しい増悪を招き,外用の中止により急速に改善した.初診の約2か月前より室内で飼育していた兎に,患児の臨床像に類似した鱗屑と痂皮を伴う脱毛巣があったという.兎は既に治療済みであったため,兎から菌を分離する事はできなかった.なお,患児より分離したT.mentagrophytesは,交配試験の結果Arthroderma vanbreuseghemii(-)株と同定された.
  • 加藤 卓朗, 木村 京子, 谷口 裕子, 丸山 隆児, 西岡 清
    1997 年 38 巻 3 号 p. 253-257
    発行日: 1997/07/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    基礎疾患のない高齢者を中心に,舌の直接顕微鏡検査とCandida albicansの分離率の検討を行った.対象は主訴が舌に関することではなく,その他のことで受診した61歳以上の基礎疾患のない健常人161例で,60歳以下の162例をコントロールとした.培地はchloramphenicolを加えたサブロー・ブドウ糖寒天平板培地を用いた.滅菌綿棒で舌の正中部を中心に擦過し,直接鏡検と真菌培養を行った.直接鏡検では菌糸形菌要素を認めるものを陽性としたが,菌要素は少数のことが多かった.直接鏡検陽性率は61歳以上では161例中12例(7.5%)で,60歳以下では162例すべてが陰性であった.陽性例の内訳は男10例,女2例で,年齢は68歳から90歳で平均80.3歳であった.舌の臨床所見は,平坦な発赤した舌が7例,剥がれにくいやや厚い白黄色調の舌苔を認めるものが4例,舌苔が灰黒色(軽い黒毛舌)が1例であった.味覚異常を2例が訴えた.一方,陰性例においても同様の臨床所見を呈する例があり,臨床所見から直接鏡検の結果を予想することは困難であった.直接鏡検陽性12例からはすべてC.albicansが分離され,それを含めた分離陽性率は,61歳以上では161例中87例(54.0%)で,60歳以下の162例中16例(9.9%)より有意に高値であった.以上,直接鏡検陽性例すべてが発病しているとはいえないが,61歳以上では健常人においても,C.albicansの分離率が高いのみではなく,直接鏡検陽性例も多いことが分かった.
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