日本医真菌学会雑誌
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33 巻, 1 号
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  • 平谷 民雄, 浅黄 友季世, 山口 英世
    1992 年 33 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Terbinafine(TBF)およびtolciclate(TOL)に対して高い感受性をもつSporothrix schenckiiの野生株およびこの株から誘導したTOL耐性変異株7株を用いて,TBFの発育阻止作用および細胞膜障害作用に対する感受性を比較検討した.TOL耐性変異株はスクアレンエポキシダーゼ活性を欠損すると考えられるタイプの4株と欠損のみられないタイプの3株とに分けられた.IC50を指標として測定した場合,いずれのタイプの変異株もTBFおよびnaftifineに対して交叉耐性を示した.各タイプの変異株を1株づつ選び,K+および無機リン酸の細胞外放出レベルを指標としてTBFの膜作用に対する感受性を野生株のそれと比較した結果,欠損タイプ変異株は軽度の低下を,非欠損タイプ変異株はより顕著な低下を示した.以上の成績から,S.schenckiiのような高度感受性菌においては,スクアレンエポキシド化反応阻害が,TOLの場合と同様,TBFの抗真菌活性に一次的に関与すること,これに加えて高濃度の薬剤存在下では直接的細胞膜障害作用が本剤の抗真菌活性に一定の役割を演じていることが示唆された.
  • 平谷 民雄, 浅黄 友季世, 山口 英世
    1992 年 33 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    アリルアミン系抗真菌剤terbinafine(TBF)の抗真菌作用メカニズムを明らかにするために,Candida albicansを試験菌として用い,本剤と同じく真菌ステロール合成経路上のスクアレンエポキシド化反応の段階を阻害することが知られているチオカルバミン酸系抗真菌剤tolciclate(TOL)との比較検討を行った.その結果,以下の実験成績を得た.
    (i) TBFはC.albicansの生菌数の増加に対し1μg/ml以下の低濃度でも部分的に阻止し,5μg/ml以上の濃度では99%以上のほぼ完全な阻止を示した.一方,TOLは80μg/mlの高濃度でもほとんど発育を阻止しなかった.
    (ii) TBFを0.3μg/ml以下の低濃度で加えた場合でも,細胞エルゴステロール含量の低下とスクアレンの蓄積が認められた.同様の効果は,TOL80μg/ml添加の場合にもみられた.
    (iii) TBFは10μg/ml以上の濃度で細胞からのK+,無機リン酸などの放出を促進し,本剤が高濃度下で直接的細胞膜障害作用を発揮することが示された.一方,この作用はTOLにおいてはまったく認められなかった.
    以上の成績から,C.albicansなどのTBF低感受性真菌においては,本剤はエルゴステロール合成阻害により部分的発育阻止効果を示し,より高濃度ではこれに直接的細胞膜障害作用が加わってほぼ完全な発育阻止に至るものと推定される.これに対してTOLはまったく膜作用を欠くことが発育阻止を示さない理由と考えられる.
  • 山田 直子, 北條 江利子, 戸谷 美夏, 大隅 正子, 平谷 民雄, 山口 英世
    1992 年 33 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    チオカルバミン酸系抗真菌剤を代表する薬剤であるtolciclateが,Trichophyton mentagrophytesの発育に対してどのような形態的影響を及ぼすかを,高分解能走査型電子顕微鏡法を用い検討した。薬剤無添加対照培養においては48時間後ほぼ一定の幅をもつ菌糸がすでに旺盛に発育していた。また,菌糸表面は平滑であり,付着物はほとんどみられなかった。これに対してtolciclateを添加して培養した場合には48時間後,薬剤濃度によって以下の4つのタイプの特徴的な形態変化がみられた。(i)発育を見掛け上ほとんどまたはまったく阻止しない0.02~0.3ng/mlの濃度の薬剤添加培養では,大部分の菌糸は正常に発育しているが,一部に菌糸の不整形化,扁平化,萎縮などの形態変化がみられた。(ii)発育を部分的に阻止する1.3~20ng/mlの濃度の薬剤添加培養では,菌糸の伸長発育阻止がみられ,菌糸は部分的に厚膜胞子状または分節胞子状の著しく膨化,肥大した形態を示した。(iii)発育を完全に阻止する静菌的濃度である20~80ng/mlの薬剤添加培養では,ほとんどすべての菌糸は伸長することなく,全体的に強度の扁平萎縮像を呈していた。(iv)殺菌的濃度である≧320ng/mlの薬剤添加培養では,個々の菌糸細胞は著しく肥大し,細胞内容物が細胞外に大量に放出されていた。これら薬剤濃度依存性の形態学的変化を,本剤の生化学的作用機序との関連性の視点に立って考察した.
  • 山本 律子, 富永 静男, 遠藤 修, 高邑 裕太郎, 伊藤 章, 神永 陽一郎
    1992 年 33 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    今回,我々はクリプトコックス髄膜炎の一例を経験した.血清学的診断法として,ラテックス凝集反応が,高い抗原価を示し,診断に有用であった.また,髄液中のクリプトコックス抗原価の経時的測定が,治療経過の判定に有効であった.更に,この症例ではmiconazole (MCZ), flucytosine (5-FC)投与後の各々の血中濃度,またMCZ静注・髄注及び5-FC内服併用時の各々の髄液中濃度を測定した.MCZ大量静注療法は副作用なく,十分な治療効果が得られた.MCZ大量静注療法,5-FCの併用療法はクリプトコックス髄膜炎の治療法として有用であると考えられた.
  • 塩澤 伸樹, 稲葉 鋭, 伊藤 誠, 発地 雅夫, 久米田 茂喜
    1992 年 33 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    症例は基礎疾患を有さない50歳の男性で,胸部X線上で右下肺野に結節状異常陰影を指摘され,悪性腫瘍が疑われて右下葉切除術を施行された孤立性ムーコル症の1切除例である.病変は径約4cmの境界明瞭な黄白色の腫瘤であった.組織学的には,中心部に膿瘍が存在し,その周囲に異物型肉芽腫が形成されており,さらにその周囲に,形質細胞やリンパ球の浸潤を伴っていた.膿瘍や肉芽腫内に好酸性の不規則な菌要素が存在し,免疫組織化学的に,抗Rhizopus oryzae抗体で陽性に染色された.
    本症例は,健常者の肺内にやや大量の病原性のある菌体が吸入され,強い細胞反応が惹起された限局性の病変であろうと考えられる.
    従来より報告されている感染防御能の低下を背景としたムーコル症の病変と著しく異なった興味深い例である.
  • 加藤 卓朗, 西岡 清
    1992 年 33 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Microsporum canisによる頭部白癬に対して,ヘアーブラシ法による培養を行い,臨床症状および通常の鏡検・培養法との比較において本症の治癒判定について検討した.症例は7家族10例,内訳は男7例,女3例で,年齢は3か月から10歳(平均4.9歳)であった.臨床診断は頭部浅在性白癬5例,ケルスス禿瘡5例で,内服薬としてグリセオフルビンを8例,イトラコナゾールを2例に用いた.
    臨床的には鱗屑・痂皮の付着の有無を判定項目とし,菌学的には数本の抜毛を行い,半分ずつ直接鏡検と培養検査を行った.また同時にヘアーブラシ法による培養を行った.ヘアーブラシ法による培養が1ないし2回陰性になった時に治療を中止した.結果は治療期間は8から14週(平均11.7週)であった.鱗屑・痂皮残存期間は2から14週(平均8.3週)で,菌学的陽性期間は毛の直接鏡検が平均2.6週,培養が1.9週,ヘアーブラシ法が5.1週であった.10例中1例に再燃を認めた.またグリセオフルビンを体重1kgあたり10mg以下用いた症例では鱗屑・痂皮残存期間も菌学的陽性期間も長かった.
    以上より本菌による頭部白癬に対しては,グリセオフルビンによる治療では1日量として体重1kgあたり10mgかそれ以上が妥当で,落屑・痂皮が消失し,ヘアーブラシ法による培養が陰性化すれば,治癒とみなせると結論した.
  • 白血病患者における易感染性判別式
    望月 真弓
    1992 年 33 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    白血病剖検例のうち真菌感染群21例と非真菌感染群19例について,内臓真菌症に対する易感染性を左右すると思われる各種臨床検査値を調査し,それらを変数として2群間の判別分析を行った.その結果,末梢白血球数(X1),好中球数(X2),リンパ球数(X3),単球数(X4)および末梢白血球数が1,000/μl以下を示した連続病日数(X6),末梢白血球数の最低値日の最高体温(W1),および抗細菌剤の使用状況(V1およびV2)が判別効率の高い変数として選択された.これらの変数を用いた線形判別分析から得られた最も判別率のよい線形判別関数(易感染性判別式)は,
    Z=-100.5427-0.00401・(X2)-0.01057・(X4)+0.05622・(X6)+2.61331・(W1)
    であった.
    この判別式では先の真菌感染群21例中21例が真菌感染例として判定され,一方,非真菌感染群19例では2例のみが真菌感染例として誤判定されるにすぎなかった.
    さらに,上記の判別式を白血病臨床例に適用し,その値が1週間以上連続してプラスであった場合を内臓真菌症例と判別することとした場合,本判別式の感度は7/8例(87.5%),特異性は12/15例(80.0%),有効度は19/23例(82.6%)と良好な成績を示した.
    以上より,今回創案した易感染性判別式は,白血病臨床例の真菌感染の早期発見および早期治療の開始の決定に,極めて有用なものとなると考えられた.
  • 深沢 義村
    1992 年 33 巻 1 号 p. 65-66
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
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