日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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8 巻, 2 号
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奨励賞
—総説—
  • 角田 由理, 吉岡 俊正, 岩本 典子, 白髪 宏司, 服部 元史, 野村 馨, 清水 昭一, 久保田 令子, 福田 豊, 川口 洋, 伊藤 ...
    1995 年 8 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児特発性ネフローゼ症候群 (NS) では大部分の症例がグルココルチコイド療法により寛解するが,NSの発症病理に関するグルココルチコイドの役割は十分に解明されておらず,また治療抵抗性を認める症例の原因も明らかではない。我々はNS患者を中心にステロイド感受性に関するグルココルチコイドの分子作用機序についてその遺伝子転写調節の細胞内メッセンジャーであるグルココルチコイドレセプター (GR) とその発現制御因子についての解析を行った。その結果,頻回再発型ならびにステロイド抵抗性ネフローゼ症候群にGR発現量の低下を高頻度に認め,これらの症例ではGR Down regulationによるステロイド依存性転写調節障害が示唆された。またレセプタ一結合蛋白である熱ショック蛋白はGR発現量と相関することよりグルココルチコイドーGR系の情報伝達が阻害されステロイド抵抗性の原因となることが示唆された。
  • 中西 浩一, 吉川 徳茂, 井上 祐司, 下村 真由美, 飯島 一誠, 中村 肇
    1995 年 8 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     X連鎖型アルポート症候群はIV型コラーゲンα5鎖遺伝子の異常により起こるが,α5鎖以外にα3,α4鎖蛋白にも異常を認める。α5鎖遺伝子の異常がα3,α4鎖蛋白の異常を起こす機序は不明である。X連鎖型アルポート症候群の重症度はα3,α4鎖蛋白の異常の程度と相関し,α3,α4鎖蛋白異常の発現機序解明は極めて重要である。
     X連鎖型アルポート症候群におけるα3,α4鎖mRNAの発現を検討する目的で,α3,α4,α5鎖蛋白の発現に異常を認めたX連鎖型アルポート症候群患者の腎生検組織皮質から総RNAを抽出し,ランダムヘキサプライマーを用いてreverse transcription-polymerase chain reaction法を行い,glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseを内因性コントロールにしてα3,α4鎖mRNAの発現を半定量的に検討した。重症型家系の男性および女性患者,軽症型家系の男性患者のいずれも,対照に比してα3,α4鎖mRNAの発現に明らかな差はなかった。X連鎖型アルポート症候群におけるα3,α4鎖mRNAの発現は正常であり,蛋白レベルでの異常はα3,α4鎖蛋白の糸球体基底膜への組み込み異常の結果起こると考えられる。
優秀賞
—原著—
  • 谷澤 隆邦, 綾部 信彦, 大島 圭介, 川口 悟, 椿田 重彦, 川口 真, 服部 益治, 和田 博義
    1995 年 8 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児期IgA腎症の47症例の腎生検前後3カ月以内の尿蛋白分析を施行し,腎組織病理像と比較した。男女比は26/21例,生検時年齢: 5.5~23.6歳,観察期間: 0.1~10.3年である。SDS-PAGE法では分子量7万以上分画の比率 (≥MW7万%) は予後スコアとは負の相関,壊死病変,メサンギウム沈着物の有無とは正の相関を示した。アルブミン分画比率 (Alb%) は間質単核球浸潤,ボウマン嚢との癒着の程度と正の相関を示した。分子量4万以下分画の比率は半月体スコアと正の相関を示した。アルブミン/≥MW7万比は予後スコア,癒着の程度と正の相関を示した,HPLC法では主にγグロブリンであるI分画は予後スコアと負の相関,壊死病変と正の相関を示した。また,間質の単核球浸潤,線維性半月体と正の相関を示した。V分画比率は主にアルブミンである。線維性半月体,分節性硬化と正の相関を,また,球状・全節状硬化,メサンギウム沈着物と正の相関を示した。V/I比: 癒着の程度,球状硬化と正の相関を示した。
  • —Dipyridamoleとの比較—
    二宮 誠, 大川 俊哉, 清 保博, 中嶋 隆二, 中村 茂行, 桑畑 眞人, 永松 省三, 宮田 晃一郎, 徳永 正義, 武 弘道
    1995 年 8 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児IgA腎症18例に対してAngiotensin変換酵素阻害剤であるEnalaprilまたは抗血小板剤であるDipyridamoleを2年間投与し,尿所見および組織所見を比較検討した。Enalapril投与群 (E群),Dipyridamole投与群 (D群) 共に,軽症例は単独投与とし,中等症例にはPrednisolone,Azathioprine,Heparin,Warfarinをそれぞれ併用した。
     E群では尿所見の有意な改善を認め,組織所見で増悪の所見は認めず,急性病変の一部に有意な改善を認めた。D群では尿所見で改善は認めず,組織所見で細胞増殖スコアの有意な減少を認めたが,慢性病変とChronicity Indexの有意な増悪を認めた。2年の治療後,E群はD群に比し尿所見は改善し,組織障害も軽度であった。以上より小児IgA腎症に対してEnalaprilは,Dipyridamoleに比し有効である可能性が示唆された。
  • 藤枝 幹也, 大石 尚文, 倉繁 隆信, 伊藤 克己
    1995 年 8 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     川崎病 (KD,n=19),アレルギー性紫斑病 (HSP,n=9),紫斑病性腎炎 (HSPN,n=9) およびIgA腎症 (IgAN,n=18),対照として健康小人 (n=20) を用い,EILSA法で免疫グロブリン型別抗内皮細胞抗体 (AECA) と内皮細胞障害性を検討した。その結果,1) KDは急性期にIgG型,IgM型共にAECA値は対照に比して有意 (P<0.01) に高値を示し,IgM型AECAが検出される割合が多かった。IgA型AECA値は,HSPNとIgANが対照に比して有意 (P<0.05) に高値で,蛋白尿の多い例が高値であった。2) 細胞障害性は,補体要求性でKDで有意に認められた。3) 内皮細胞をTNF-αで前処理すると,KDでは細胞障害性の増強が認められた。4) KDでは,IgM型AECA値と細胞障害度は正の相関を示した。KDの細胞障害性はγ-グロブリン (γ-Glb) 添加により減弱した。以上,KDでは,AECA (特にIgM型) が検出され,補体依存性の内皮細胞障害性が認められた。HSPNとIgANはIgA型AECA値が病勢の指標になる可能性が示唆された。
  • 金子 一成, 鈴木 与志晴, 大友 義之, 福田 豊, 藪田 敬次郎, 桑鶴 良平, 片山 仁, 宮野 武, 山高 篤行, 藤原 利男
    1995 年 8 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     膀胱造影は小児の尿路奇形,とくに膀胱尿管逆流症 (以下,VURと略す) の検索には欠かせないが,放射線被曝があるため超音波による検討も試みられている。しかし通常の超音波検査ではVURの検出率は低い。近年,超音波用の静注造影剤 (アルブネツクスR) が開発された。著者らはこれを用い,放射線被曝のない膀胱造影 (以下,本法と略す) を行い,VURの検出に利用可能であるか否かを検討した。対象は国際分類でII度からV度のVURを有する小児5例 (10腎) で,本法で【軽度逆流】と判定された腎尿路はすべてII度またはIII度,【高度逆流】と判定されたものはすべてIV度またはV度のVURであった。したがって本法は逆流の有無のみならず,逆流の定量的評価も可能であると思われた。
  • —二次性副甲状腺機能亢進症の程度による差異—
    宿谷 明紀, 村松 康男, 赤司 俊二, 臼井 信男
    1995 年 8 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児CAPD患児15例 (男8例,女7例,5~15歳) を対象とし,高感度PTH (HS-PTH) について,10,000pg/ml以上の時期,10,000pg/ml未満の時期の2群にわけ,骨密度変化量 (DEQCT法) と骨代謝マーカーの変化との関係について比較検討した。血清HS-PTH濃度とCAPD導入後の年数に有意な正の相関を認めた。皮質骨骨密度はHS-PTHが10,000pg/ml以上の群で低下傾向,10,000pg/ml未満の群で増加傾向を示した。血清オステオカルシン,プロコラーゲンI型C末端ペプチドは,HS-PTHが10,000pg/ml以上の群で10,000pg/ml未満の群より有意に増加した。以上より小児CAPD患児では,導入直後のPTHの上昇が比較的軽度の時期では骨密度が増加する例が多く,その後のPTHの上昇により骨代謝回転が亢進し,骨密度の低下が認められた。
  • 和田 尚弘, 高橋 昌里
    1995 年 8 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     今回我々は,小児ネフローゼ症候群 (ネ症) 患児における多剤耐性遺伝子 (multidrug resistance (MDR) gene) の関与について,ネ疾患児13名 (無治療2例,副腎皮質ステロイド剤 (ス剤) 単独3例,シクロスポリン併用8例) の患児リンパ球よりmRNAを抽出し,RT-PCR法後,電気泳動し,デンシトメトリーにて検討した。結果は,無治療およびス剤単独例では,対照群 (1.87±0.09) と比較しMDR geneの発現が低い傾向にあった (1.46±0.22)。一方,シクロスポリン併用例は高い傾向にあり (1.99±0.57),2以上の症例が5例認められた。またシクロスポリン併用例ではMDR geneの発現量にばらつきがみられたが,CD4/8比と有意な相関が認められた。ネ症におけるシクロスポリンの作用機序には,その免疫抑制作用以外にス剤のリンパ球からの排泄に拮抗してステロイド作用を増強する可能性が示唆された。
—総説—
  • 竹村 司, 吉岡 加寿夫, 岡田 満, 赤野 則久, 村上 佳津美, 日野 聡, 八木 和郎, 牧 淳
    1995 年 8 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     Protooncogene (p-onco) の中のimmediate early gene (IEG) の発現を各種ヒト腎組織やラットの巣状糸球体硬化症 (FGS) (アドリアマイシン腎症) および微小変化型ネフロ一ゼ (MCNS) (puromycin nephrosis: PAN腎症) モデルを用いて検討した。IEGの発現は,ヒトおよび動物モデルともに,糸球体内ではメサンギウム細胞と一部の浸潤細胞上に陽性であった。ヒトでは,IEGの発現は,正常腎組織や微小変化型ネフローゼでのこれらの発現頻度はごく低値であったが,ループス腎炎,IgA腎炎やFGS例で高率に観察された。IgA腎炎例での,メサンギウムの増加の程度と糸球体内でのIEGの発現頻度には有意な相関性が認められた。また,これらの発現数は,増殖細胞核抗原 (PCNA) の発現頻度および1日尿蛋白量とも関連していたことから,これらの疾患の進展課程には,IEGの過剰な発現が関与している可能性が示唆された。また,アドリアマイシン腎症の糸球体内におけるIEGの発現は,12から16週目でピークとなり,PAN腎症と比較して発現頻度は有意に高値であった。これらの成績からFGSの進展には,IEGの過剰な発現が関与している可能性が示唆され,このような,両疾患における,IEGの発現態度の相異は,両疾患の発症・進展課程を考える上で興味ある所見であると思われた。
  • 安友 康二, 岡田 要, 香美 祥二, 黒田 泰弘, 姫野 國祐
    1995 年 8 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     アポトーシスは生体の恒常性を維持するのに非常に重要な役割を担っており種々の遺伝子がその制御に携わっている。その中でFas抗原はアポトーシスを細胞内に誘導できる細胞表面分子である。Fas抗原は多種類の細胞に発現しており,我々はそのうち腎臓のメサンギウム細胞にこの分子が発現していることに注目し,メサンギウム細胞上のFas抗原を介したアポトーシスがメサンギウム増殖性糸球体腎炎の病態に及ぼす影響を検討している。培養マウスメサンギウム細胞上のFas抗原の発現は活性化に伴い低下し,Fas抗原を介したアポトーシスを引き起こすためには新たなmRNAや蛋白合成を抑制する事が必須であった。さらにメサンギウム細胞そのものにFasリガンドが発現しており,少なくとも部分的にはメサンギウム細胞のFasシステムは自己制御されていることが推測された。以上のことから,メサンギウム細胞においてFasシステムを使ったアポトーシスがメサンギウム増殖性糸球体腎炎の病態進展において何らかの役割を果たしうることが推測された。腎炎とアポトーシスという研究分野は始まったばかりであり,その関係を論じるにはまだまだデーターが不足しているのが現状である。今後はin vivoの実験系で実際にどの程度,Fas抗原を含めたアポトーシスに関与する分子群がメサンギウム増殖性糸球体腎炎の病態発症に関わっているかを明らかにする必要がある。
  • —当科における過去10年間の検討—
    田中 完, 杉本 和彦, 貫井 清孝, 柿崎 良樹, 和賀 忍
    1995 年 8 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児期IgA腎症に対する副腎皮質ステロイド (ス剤) 療法の有用性,適正投与量を検討するために当科におけるス剤療法の現状を後方視的に検討した。過去約10年間に当科で免疫抑制剤を併用せずス剤療法を施行したIgA腎症は27例,24例で平均22カ月後に追跡腎生検を施行した。ス剤を投与しなかった39例を対照群とした。ス剤はプレドニン1mg/kg隔日を3~12カ月投与し漸減,2年間で中止した。臨床的評価は1日尿蛋白の推移,腎組織の評価はActivity score (AS), Chronicity score (CS), Picture Analyzerによるメサンギウム面積/糸球体面積 (M/G) の変動を検討した。ス剤投与群では非投与群に比べて1日尿蛋白 (0.9±0.7g vs 0.2±0.1g),AS (3.9±1.2 vs 2.3±1.1),CS (4.3±1.4 vs 2.3±1.6) は有意に高値であった (P<0.001)。ス剤投与群は追跡腎生検時には1日尿蛋白 (0.3±0.3g),AS (2.1±0.9) の有意な低下 (P<0.01) を認めた。CS,M/Gは不変であった。平均50カ月後の最終観察時点でス剤投与群はス剤非投与群に比して軽微血尿化例,尿所見消失例の割合に有意差を認めず,腎機能低下は1例であった。以上から比較的低用量の長期プレドニン隔日投与の有用性が示唆された。
  • 竹田 篤, 大串 博章, 瀧本 浩幸, 吉野 篤範, 水沢 慵一, 下田 益弘, 新村 文男, 松谷 秀智
    1995 年 8 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     ステロイド剤 (ス剤) 感受性ネフローゼ症候群 (ネ症) 107例,合計589回の初発・再発後の寛解維持率をKaplan-Meier法にしたがって解析した。初再発後の寛解維持率は最初急速に低下したが,3~4年後はほぼ横ばいとなった。この傾向は非頻回再発,頻回再発群でも,初再発時の年齢で区分した場合も,免疫抑制剤 (chlorambucil,cyclophosphamide) 併用の有無で分類した場合も同様にみられた。初再発後の寛解維持期間からみると,3年以上寛解を維持した場合75%以上が10年まで寛解を維持することができた。少量ス剤で長期間寛解を維持した場合も,中止後の寛解は高率に維持された。以上よりネ症においては3~4年寛解を維持すればその後の再発は少なく治癒と考えられた。さらにその期間をス剤により作り出してもその後の再発が少ないことから,頻回再発型ネ症に対する少量ス剤やcyclosporin Aなどその効果が薬剤依存性の薬剤の維持投与は,可能であれば3~4年続けることが望ましいと思われた。
  • 飯島 一誠, 井上 祐司, 伊藤 誠子, 中西 浩一, 下村 真由美, 吉川 徳茂, 中村 肇, 大西 真
    1995 年 8 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     血管透過性亢進因子 (VPF/VEGF) は正常腎では糸球体上皮細胞により産生され,血管透過性亢進作用,血管内皮細胞増殖作用,Monocyte/macrophage遊走,活性化作用などを持つ糖蛋白であり,VPF/VEGFでラットの腎臓を灌流すると尿中アルブミン排泄が増加する事が知られている。
     我々は,ヒト培養メサンギウム細胞もVPF/VEGFを産生するpotentialを持ち,TGF-βやPDGFなどの刺激によりVPF/VEGFの産生が亢進することを明らかにした (Kidney Int44: 959-966,1993)。そこで,その発症進展にTGF-βやPDGFの関与が示唆されているIgA腎症などのメサンギウム増殖性腎炎を中心に,各種腎疾患 (n=29) を対象とし,ヒトVPF/VEGFの34番目から51番目に相当する合成ペプタイドでウサギを免疫し作成した抗ヒトVPF/VEGF抗体を用いて,VPF/VEGF蛋白の発現を検討した。
     組織学的に微小変化の例では,一部の糸球体係蹄とメサンギウムにわずかにVPF/VEGFが認められた。一方,IgA腎症などのメサンギウム増殖性腎炎では,係蹄よりもメサンギウムに優位にVPF/VEGFが認められ,その発現はメサンギウム増殖が高度な症例に強い傾向が認められた (P<0.05)。
     以上より,IgA腎症などのメサンギウム増殖性腎炎では,メサンギウム細胞などによるVPF/VEGFの産生が亢進し,蛋白尿の発現やマクロファージのメサンギウム領域への侵潤などの病態に関与している可能性が考えられた。
  • 片岡 哲, 橋本 尚士, 柿原 敏夫, 田中 篤, 川崎 琢也, 菊池 透, 高橋 秀雄, 内山 聖
    1995 年 8 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     アンジオテンシノーゲン遺伝子の第2エクソンのアミノ酸 (235番) がメチオニンからスレオニンに置換した型をもつ者が,白人や日本人の成人の高血圧患者に多いことが報告されている。今回,日本人小児131名についてアンジオテンシノーゲン遺伝子多型をPCR法によって調べた。235番目のアミノ酸がメチオニンからスレオニンに置換した型をもつalleleの頻度は0.76,またそのホモ接合型の頻度は58.8%であった。このホモ接合型を持つ小児と他の遺伝子型を持つ小児の間では,男女比,年齢,身長,体重,body mass index,上腕周囲長,拡張期血圧および本態性高血圧の家族歴に,明らかな差を認めなかった。しかし,収縮期血圧については,統計学的に有意差はなかったものの,ホモ接合型を持つ小児が他の遺伝子型を持つ小児より高い傾向にあった (p=0.069)。
  • 平岡 政弘, 橋本 剛太郎, 林 修平, 堀 親秀, 土田 晋也, 塚原 宏一, 須藤 正克
    1995 年 8 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     有意なVURの診断におけるエコー検査の有用性をprospectiveに検討した。初めて尿路感染症を発症した乳児27人 (男24人,女3人) を対象とした。エコー検査により,腎盂のballooningを4人の5腎で,尿管遠位部の4mm以上の拡張を10人の13尿管で,水腎水尿管症を2人の2腎で認めた。これらの所見を認めた10人にVCGを行い,6人の8腎にVURを認めた (IV度3腎,III度2腎,II度3腎)。ballooningを認めた5腎ではいずれもIII度以上のVURを認めた。II度の3腎のうち,2腎では尿管の拡張のみを認め,1腎では全く異常を認めなかった。VCGを行わなかった17人のうち,3人は排尿時のエコーによる観察ができず,尿路感染症が再発したのはこのうちの1人だけであり,再度のエコー検査によりballooningを,VCGによりVURを認めた。尿路感染症を発症した乳児のVURの一次診断として排尿時のエコー検査は極めて有用であった。
  • 石原 令子, 木野 稔, 東野 博彦, 吉村 健, 寺口 正之, 禹 満, 安原 昭博, 小林 陽之助
    1995 年 8 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     結節性硬化症の腎病変は中枢神経系・心臓病変とともに予後を左右する重要なものである。過去8年間に当科で経験した患児について,腎病変の保有率とその臨床経過,さらに症状や画像所見の評価方法を後方視的に検討した。
     患児23名中13名に超音波検査による腎病変の検索が行われ,そのうち腫瘤や嚢胞の腎病変がみられたのは8名であった。腫瘤は直径2~90mm大でエコー輝度は高く,腫瘤発見の最小年齢は7歳であった。大部分は無症状で初期には検尿異常もなかった。一方,発熱や高血圧などの症状を認めたものでは,直径50mm以上の巨大な腫瘤や嚢胞が認められた(2名)。腫瘤は画像から血管筋脂肪腫と考えられた。2例とも発熱は熱源不明のまま長期にわたっていたが,経時的に行った全身Gaシンチの集積様式と摘出標本の検索から熱源は腎腫瘍の感染と考えられた。腎病変の進行は腎不全をもたらすため,結節性硬化症では積極的な病変検索が望ましい。
原著
  • 藤本 陽子, 都築 一夫, 岡田 雅子, 柴田 元博, 露木 ますみ, 伊東 重光
    1995 年 8 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     抗好中球細胞質抗体 (以下ANCAと略す) と,pauci-immune typeの半月体形成性糸球体腎炎との関連がいわれている。我々は学校検尿により発見されたperinuclear pattern ANCA (以下P-ANCAと略す) が陽性の半月体形成性糸球体腎炎の症例を経験したので報告する。この症例はステロイドパルス療法,サイクロフォスファマイド内服療法に良好な反応を示し,寛解にいたった。また経過中のANCA定量値は病勢とよい相関を示した。
  • 武市 幸子, 美濃和 茂, 矢崎 雄彦, 新家 雪彦, 岩田 光良, 河口 信治, 千原 克
    1995 年 8 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     微少変化型ネフローゼ症候群 (以下MCNS) 16例の,初期治療時に使用したアルブミン製剤の投与量から0.5g/kg/day未満投与したI群 (8例) と,0.5g/kg/day以上投与したII群 (8例) に分けて,アルブミン製剤投与のMCNSへの影響について検討した。両群の初発時の臨床所見や,副腎皮質ステロイド剤の投与量に差はなかった。初回寛解までの期間に差はなかったが,初回寛解から再発まではII群で短く,発症後1年間の再発回数もII群で多い傾向が認められた。その後の経過において,ステロイド依存性を示した症例はI群で8例中2例 (25.0%),II群で8例中5例 (62.5%) であった。
     アルブミン製剤の投与量が多い場合,MCNSの再発率が高まる可能性が示唆され,今後,小児期MCNSにおけるアルブミン製剤の投与方法について考慮する必要があると思われた。
  • 藤本 陽子, 岡田 雅子, 都築 一夫, 柴田 元博, 露木 ますみ, 伊東 重光, 美濃和 茂
    1995 年 8 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     間欠的cyclophosphamide大量静注療法が症状のコントロールに有用であったループス腎炎の1例を報告する。
     5歳時にネフローゼ症候群 (以下ネ症) で発症した膜性ループス腎炎 (WHO分類のV型) で,初期には経口ステロイド剤 (以下ス剤) を中心に治療していた。怠薬を契機に再燃をみて,ス剤に対する反応が不良となり,副作用も顕著になってきたため,間欠的cyclophosphamide大量静注療法を試みた。その後ネ症は寛解し,ス剤の減量が可能となった。制吐剤を併用し,感染症併発時に休薬したが,脱毛以外は問題となるような副作用もみなかった。
     本例はV型ループス腎炎であったが,間欠的cyclophosphamide大量静注療法は,ネ症の寛解導入,維持に有効で,ス剤の副作用の軽減が可能であった。
  • 岡空 輝夫, 漆原 誠, 宇都宮 靖, 林原 博, 常井 幹生, 星加 忠孝, 大谷 恭一, 森田 元章, 平尾 正人
    1995 年 8 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     特発性ネフローゼ症候群 (以下,ネ症) の中には緩徐な経過でネ症に至る症例や病初期にはネ症の診断基準を満たすが,経過観察のみで自然に軽快する非典型的な経過をとる症例がみられる。鳥取県では平成3年より鳥取県小児腎疾患患者登録を実施しており,平成3年~5年の3年間にネ症は25例登録された。その中に,非典型ネ症は4例含まれていた。ステロイド剤 (以下,ス剤) を3日間服用しただけで軽快した症例が1例,緩徐な経過の症例が1例,いったん自然に尿蛋白が消失した後に再燃した症例が2例であった。全例ス剤に感受性があり,1例のみ再発したが,すべて経過は順調である。非典型的ネ症は言い換えれば軽症のネ症と考えられ,ス剤長期投与の副作用を考慮すればネ症診断直後より早期にス剤を開始すべきではなく,一定期間の観察期間をおき,ス剤を必要としない症例を発見する努力が必要と考えられる。
  • 美木 学, 服部 益治, 大島 圭介, 川口 悟, 椿田 重彦, 川口 真, 谷澤 隆邦, 和田 博義
    1995 年 8 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     症例は16歳女性で,14歳時に特発性ネフローゼ症候群を発病し,発病後の1年以内に3回再発した頻回再発型ネフローゼ症候群である。ステロイド剤依存性のため,連日投与法による減量を行っていた。投与量が0.9mg/kg/日の時,ハトがいる公園で半日間過ごした。その12日間後,頭痛が出現し続いて嘔吐そして意識障害も加わり,髄液検査を施行したところ墨汁染色でクリプトコックス・ネフォルマンスの菌体が認められ,真菌培養でも陽性であったためタリプトコックス髄膜炎と診断した。フルコナゾールとフルシトシンの併用療法を行ったところ,臨床症状,髄液所見の改善および髄液培養も陰性となり救命しえた。その後,ステロイド剤の減量を進めているがネフローゼ症候群およびクリプトコックス髄膜炎の再発はなく,また,その他の日和見感染もみられていない。
  • 金子 一成, 吽野 篤, 高木 正稔, 丸山 剛志, 大日方 薫, 堤 直葉
    1995 年 8 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2009/12/15
    ジャーナル フリー
     小児の上部尿路感染症は局所症状に乏しく,診断に苦慮することがある。今回,小児の急性腎盂腎炎診断におけるDMSA腎シンチグラフィー (以下,本法と略す) の有用性を検討した。本法を施行した急性腎盂腎炎患児10例中8例で異常所見を認めたが,その他の発熱性疾患患児9例においては異常所見を呈した例はなかった (鋭敏度; 80%,特異度; 100%)。また経過を追って施行した例では発症から3カ月目には異常所見は消失していた。
     以上より,本法は急性腎盂腎炎の診断に有用であり,発熱の原因の確定しない乳幼児において積極的に施行する意義があると思われた。しかし1回のみの本法で炎症性変化と腎瘢痕による恒久的変化を区別することは困難であると考えられた。
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