土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 9 号
通常号(9月公開)
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
地圏工学
論文
  • 平川 大貴, 陳 金賢
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     盛土材への短繊維混合補強土技術の適用に向けて,砂質土と礫質土への直線状で硬い短繊維の混合による補強に対して種々の室内試験を実施して短繊維の選択方法,繊維混合量の決定方法,施工管理上の留意点の確認,得られる補強効果および補強メカニズムについて検討した.この結果,短繊維の均一的な分散の可否に基づいて短繊維とその混合量を選択・決定できること,短繊維混合によって砂礫材の強度変形特性を安定的に改善できることを確認した.補強効果の要因は短繊維の曲げ剛性によって土粒子のせん断変位を抑制する結果,土粒子のかみ合わせが向上することにある.

土木計画学
論文
  • 日下田 伸, 味戸 正徳, 長田 哲平, 大森 宣暁, 森田 哲夫
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00052
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     財政効率化とソーシャルファイナンスの台頭を背景に,社会課題解決に対する成果指標によって支払変動するPFS(Pay for Success:成果連動型民間委託契約)と投資モデルSIB(Social Impact Bond)の組合せがヘルスケア分野で実績を挙げてきている.2021年,まちづくり分野では国内初のPFS/SIBによる市街地空洞化対策が前橋市で開始された.本研究の目的は,前橋市での実践を通じてその有効性及び,次事業や他都市へ適用する際の課題を整理することである.結論としては,PFSでは受託者が実施内容を工夫しながら成果指標達成を目指すインセンティブ方式がまちづくりにおいて効果があることを確認した.また,財務基盤脆弱な民間まちづくり法人には成果支払いを待ってのキャッシュフローを確保が困難であり,SIBによる資金確保は有効であるがその組成には新しい仕組み故の課題があることを確認した.

  • 佐津川 功季, 原 祐輔, 川崎 洋輔, 井料 隆雅
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00206
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     都市交通サービスへの需要を容量に見合うよう制御する方法の一つにサービス利用権の予約制度が存在する.しかし,予約システムを介さずサービスを利用しようとする突発的な需要に対してはこの制度は機能せず,一方で予約制度の全面的な導入によりこれらの需要を排除することは社会的に望ましくない.本稿は,交通サービスを定常的に利用する主体と突発的に利用する主体が混在する状況において,超過需要を抑制しつつ交通システム全体の効率性を改善する新たな予約制度を提案する.さらにこの制度をオークション市場と組み合わせて運用することで,適切な利用権価格が設定され社会的余剰が期待的に最大化されるサービス配分が実現することを示す.

  • 何 ロク, 永田 右京, 楽 奕平
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     地方部では,多くの公共交通サービスが公的補助によって確保されているが,近年「補助が赤字補填となっており,事業改善インセンティブを削いでいる」という批判が多数なされるようになっている.本研究は,日本の地域公共交通の補助制度を対象に,学説と行政実務からその方法には「欠損補助,補助金入札制(総費用契約,純費用契約)」とが見出せることを指摘し,それに照らして近年の「赤字補填批判」が補助金入札制を必ずしも明示的に考慮しておらず,このために欠損補助と総費用契約を区別できなくなっていること,総費用契約が過小評価となっていることを明らかにした.上記の整理をもとに政策評価を行い,規制緩和後は欠損補助の存在意義が失われており,国庫補助制度の改善が遅れたこと,補助金入札制への移行が急務であることを示した.

  • 林 倫子, 尾崎 茉央, 加藤 直子
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00289
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     滋賀県犬上郡豊郷町にある龍ケ池揚水機場・砂山池揚水機場は,明治末頃から現在まで稼働を続けてきた地下水揚水機場である.本研究では,各種資料の記述をもとに,両揚水機場の土木遺産としての技術的価値について考察した.龍ケ池揚水機場の設計過程や井戸の構造の特徴を初めて明らかにした結果,両揚水機場が地下水確保の不確実性を克服して建設された初めての農業用地下水揚水機場であり,その池の構造は後に広く滋賀県内に普及した「石積造水源井」のオリジナルであると考察でき,両施設は土木遺産として高い技術的価値を有すると評価した.

  • 武長 玄次郎, 上村 繁樹
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 24-00035
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     1920年にはじまる嘉南大圳事業の前年に,台湾総督府の依頼によって神保小虎が水利事業対象地の調査を行った.神保は日本国内で有名な地質学者であった.彼は調査の結果として,ダム建設は安全という結論を出し,さらに事業に対する有益な助言を行った.神保による調査の結果,事業は実現に向けて大きく進展することになり,議会における予算の承認につながった.本論文では神保による調査の意義について詳しく検討する.

土木技術とマネジメント
論文
  • 渡邉 一旭, 内堀 大輔, 櫻田 洋介, 荒武 淳
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     通信用ケーブルを収容するトンネルの点検を効率化するため,デジタルカメラの撮影画像から劣化の大きさ(長さ)を自動計測する画像認識手法を提案する.提案手法は深層学習を用いて画像からケーブル添架鋼材(筋金物)と劣化(露出鉄筋)の領域を検出し,筋金物の検出結果と寸法情報から画素分解能(mm/pixel)を推定する.その結果,推定した画素分解能と露出鉄筋の検出結果から露出鉄筋の実寸長を計測できる.1,700枚の画像で検出性能を評価した結果,評価指標であるF-measureで筋金物は0.92,露出鉄筋は0.84であった.91箇所の露出鉄筋を用いて計測性能を評価した結果,計測値と実測値の相関係数は0.9773となり強い相関関係を確認した.提案手法の計測性能は劣化の規模を把握するためには十分であり,実地の点検に適用可能である.

  • 髙馬 太一, 北村 啓太朗, 杉山 友康, 里深 好文
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00263
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     鉄道沿線広域斜面において落石危険箇所を効率的に抽出する方法として,数値標高モデルを用いて斜面の状態を定量的に評価することが挙げられる.本研究ではグラウンド点自動フィルタリング後の空間数値情報を用いて斜面勾配とグラウンド点の個数を求め,この結果を利用した転落型落石斜面の概略的な抽出手法を提案した.次に,抽出された斜面において転石を含む細かな斜面形状の把握に適した点群フィルタリング方法を検討し,オフセットフィルタリングで得たグラウンド点の比高を用いて転石の多寡を客観的に比較するための分類手法を提案した.さらに数値標高モデルを用いた落石危険箇所の特定手法を事例により示した.

  • 大川 博史, 八木 笙太, 板野 誠司, 樫山 和男
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 23-00292
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,自律航行型無人ロボットに搭載したナローマルチビーム測深機から得られる水中点群データに対して,点群深層学習手法を適用して水中構造物の物体分類を高精度かつ効率的に行う方法を提案するものである.具体的には,水中構造物の三次元CADモデルから点群のトレーニングデータを生成する際に,CG技術のライティング効果を活用した自動生成手法を構築し,さらにその部分モデルであるカットモデルを追加することで,その作業効率と物体分類の正解精度の向上を実現する手法を提案している.提案手法によって生成したトレーニングデータを点群深層学習フレームワークであるPointNet++に適用し,実際の水中物体の分類精度を評価することで,本手法の妥当性と有効性を検証した.

  • 羽鳥 剛史, 中前 茂之, 池田 一郎, 南都 秀樹
    2024 年80 巻9 号 論文ID: 24-00005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

     現在,建設分野における技術力の低下が懸念されている.本研究では,地方建設分野に従事する技術者を対象に,彼らの技能水準の時系列変化に関するコーホート分析を実施し,技能水準の経年変化の実態を明らかにすることを目的とする.この目的の下,愛媛県内において土工事を受注した建設会社に所属する技術者(元請企業の技術者)を対象に質問紙調査を実施し,Age-Period-Cohort分析により彼らの技能水準の時系列変化を年齢・時代・コーホートの3効果に要因分解した.その結果,建設業への社会的批判が高まった1997年~2002年に入職した世代の技能水準が最も低い傾向が示された.また,若い世代の技能水準も,ベテラン世代に比べて,総じて低い水準に留まっていた.最後に,以上の結果を踏まえて地方建設分野における技術力低下の課題について考察する.

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