土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 5 号
通常号(5月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 酒井 武志, 北根 安雄, 冨山 禎仁, 中嶋 浩之, 三ツ木 幸子
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00145
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
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     鋼橋の補修補強工事において多用されている高力ボルト摩擦接合継手について,接合面の一方は既設部材を想定したエッチングプライマー鋼板を動力工具による素地調整,もう一方は工場製作を想定した無機ジンクリッチペイント塗装(以下,無機ジンクと記す)としたすべり耐力試験を行い,すべり係数0.4を確保できる条件について検討を行なった.その結果,この試験で行なった条件では,無機ジンクの塗膜厚を100μm以上とすることですべり係数が安定することがわかった.すべり係数0.4を得られる適用条件として,動力工具による素地調整の程度を処理前に塗布されている塗膜の残存が目視で確認できない程度とし,無機ジンクの塗膜厚を100~200μmの範囲とすることを提案した.

  • 石原 陽介, 牧 剛史, 田嶋 仁志, 上平 謙二, 上山 俊一, 睦好 宏史
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00195
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     建設時より設置されている壁厚150mmの鉄筋コンクリート製壁高欄のみを,急速かつ容易に更新するために,筆者らは,既設RC床版を活用したプレキャストコンクリート壁高欄の更新工法を開発した.本工法は,PCa壁高欄と既設RC床版とを,拡底アンカーを用いたループ鉄筋継手構造にて接合する更新技術である.衝突荷重は,拡底アンカーを介し,引張力として既設RC床版に伝達されることから,既設床版厚の制約を受ける本工法では,拡底アンカーの有効埋込み長さが耐荷力の支配要因となる.本研究では実物大供試体を用いた静的載荷実験を行い,開発構造の耐荷力を把握するとともに,破壊メカニズムを明らかにした.さらに,実験結果に拡底アンカーの引張実験で得た知見を加え,本工法における拡底アンカー有効埋込み長さの設定方法を提案した.

  • 服部 紘司, 松岡 弘大, 田中 博文, 矢野 貴洋
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00262
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,車上計測された軌道変位差分による桁たわみ推定法の開発が進んでいるが,一般的な2台車方式の軌道検測車で得られる軌道変位差分には隣接橋りょうの影響が混在するため,その影響を考慮できる桁たわみ推定法がなく複数の単純桁が連続する区間への適用が困難であった.本研究では長大橋縦桁群を対象とした数値解析により,単純桁が連続する区間の軌道変位差分が各橋りょう分の重ね合わせで表現できることを明らかにし,各橋りょう単一の軌道変位差分を説明変数とした線形回帰により隣接橋りょうの影響を考慮して桁たわみを一括推定する方法を構築した.連続する5連の単純桁での検証の結果,提案手法は支承に変状がなければ,地上計測と誤差3%以内で桁たわみを一括推定できることを実証した.

  • 松岡 弘大, 服部 紘司
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00284
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     一部の高速鉄道では,列車通過時に共振状態となる橋りょうを適切に管理するため,多大な費用と労力を掛けて地上から桁たわみ計測を行っている.本研究ではこのような地上計測の大幅な省力化を目指し,走行列車上で計測される軌道変位を利用した共振状態の橋りょうの桁たわみ推定法を提案する.軌道変位として観測される共振状態の橋りょう動的応答を理論的に分析したうえで,先頭と最後尾車両の軌道変位の差分における3つのピーク値からMCMC法により桁たわみを推定する方法論を構築する.数値解析および実高速鉄道での検証の結果,提案手法により共振速度±10%の範囲であれば誤差0.5mm以内の高い精度で共振状態の橋りょうの桁たわみ最大値を推計できることを実証的に示す.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 岩﨑 安里, 岩本 大輝, 永田 靖
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00078
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     気候変動の影響を踏まえ,極値データの解析では非定常性を考慮する必要がある.本研究では非定常一般極値モデルを用いて日本各地の再現期間100年の確率降水量を算出し,特に九州における増加傾向を明らかにした.季節ごとの最大日降水量についても解析を行い,春は日本海側,夏は九州,秋は西日本で増加傾向がみられ,非常に大きな値を取る確率が高いのは秋であることが示された.また,非定常な極値データにおける外れ値判定のアプローチを提案した.複数地点で既往最大値が外れ値だと判定され,特に形状パラメータが外れ値の影響を受けることを確認した.年最大日降水量の分布における外れ値が季節ごとの分布では外れ値として判定されない場合があり,確率降水量の算出には各季節の分布のパラメータを用いたほうがよい場合もあることが示唆された.

地圏工学
論文
  • 宇田 誠, 梨本 裕, 砂金 伸治
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00241
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     地山挙動が時間依存性を有するトンネルにおいて,迅速に将来変位を予測し,その結果から対策工の効果の検討が可能となれば極めて有益である.本論文では,ひずみの増大に伴って構造が劣化するメカニズムをVoigtモデルに組み込んだ構造劣化型Voigtモデル(D-Voigtモデル)を提案し,このモデルの構成方程式から導出した解析解は,作用外圧が大きくなるにつれて,3段階のクリープ挙動を表現できることを示し,加速挙動の再現と予測を他モデルと比較し検証した.また,このモデルを用い,対策工の支保効果を内圧として評価する手法を検討した.さらに,D-Voigtモデルで対策工の効果予測式を導出し,対策工による内圧と効果予測式の関係を明確にした上で,過去の事例に基づき,予測式の妥当性を評価した.

土木計画学
論文
  • 外山 友里絵, 中村 文彦, 田中 伸治
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00044
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     自動運転レベル4に対応したモビリティサービスの実現に向け,様々な検討や実証実験が取り組まれている.車両の「運転操作」の自動化および運転主導が機械から人に切り替わるシーンに関する既往研究は多数あるが,モビリティサービスのとしての成立を見据えた,運転士の運転以外の業務も含めた自動運転時代の展望や課題が明らかになっていない.そこで本研究では,バス事業者へのヒアリングを通じ,現在のバス運転士の業務を可視化し,自動運転時代への展望を考察した.その結果「運賃収受」は運転士の業務負担軽減という点で期待値が高いことがわかった.また,「案内」や「事故対応」などの業務については,遠隔地係員と現地係員の役割分担について,運転士の負担軽減や自動運転時代に備え,今後,本格的に検討する余地があることが明らかになった.

  • 中村 恭輔, 山口 敬太, 谷川 陸, 川﨑 雅史
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00105
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     2022年3月,史蹟及び名勝等の指定に基づき景観保護が求められる桂川嵐山地区において,溢水対策として全国初となる可動式止水壁が完成した.本研究では,桂川嵐山地区河川整備検討委員会資料から検討過程を分析し,住民と行政の合意形成における論点の推移と対策案の創出の要因を明らかにする.景観価値の保全において重視された8つの評価軸を設定し,検討の各段階における景観価値の具体的内容を明らかにした.住民との協議では,フォトモンタージュを用いた眺望景観の検証や現場での模型・試験施工による検証を重ねて,守るべき景観価値が共有され,新たな技術を導入した対策案が生まれた.その過程に,地元住民らとの綿密な論点・対策案の共有,景観価値に基づいた治水対策の協議と発案,行政の柔軟な対応と合意形成への配慮,があった.

  • 菅原 優花, 青木 俊明
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00177
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,NIMBY施設など,忌避性を伴う施設整備を題材に,期待効用理論に即したフレームを用いて,事業者および受益者による感謝感情の表明が住民の態度に与える影響を検討した.高レベル放射性廃棄物処分場,ごみ焼却場,高速道路ICを題材に,謝意表明者と謝意の表明タイミングを操作したVignette実験を行った.その結果,謝意が高く認知されると事業への賛同態度が高まることや,忌避性が低い場合には,謝意表明の効果が大きくなることが分かった.早期の謝意表明は,行政への信頼感や社会貢献感を介して賛同態度を高めるが,遅い時期の謝意表明は,直接的に賛同態度を高めることが分かった.そのため,合意形成において謝意を表明する場合には,タイミングと方法を考慮する必要があると言える.

  • 平井 節生, 羽藤 英二
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00190
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,明治期における道路と鉄道に関する制度整備の進展,運送会社と軍部の輸送手段に関する思想の変遷,また,国及び地方自治体による道路整備の進展をレビューすることにより,低く評価されがちな明治期の道路整備の再評価を試みた.

     その結果,明治初期から道路整備の重要性は高位の政策担当者に認識されていた一方で道路整備予算は圧迫されていたこと,道路法の成立が遅れた背景には補助制度に対して財政当局の抵抗にあったこと,道路の認定権の問題があったことがわかった.

     長距離貨物輸送の主役は明治中期から道路から鉄道に移行し,兵站輸送も明治中期から道路から鉄道に傾斜していった.しかし,鉄道の整備は幹線道路の需要を生み,それに対応し,明治後期になっても,府県が幹線的な道路整備を進展させていたことがわかった.

  • 武長 玄次郎, 上村 繁樹
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00244
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     八田與一は第一次世界大戦中の1916年4月から6月までの約2ヶ月,南洋調査団の一員として東南アジア地域での衛生調査を行っている.八田は,新航路開発を機に結成された,台湾総督府官僚や大学教授,国会議員やジャーナリストおよび企業人など約60名からなる調査団に参加して地域を移動した.本論文は,南洋調査の実態を明らかにすることによって,八田與一という稀代の技術者の全体像解明に資することを目的とする.調査団の一員として行動の制約は大きかった中でも,八田は現地での上下水道や市街の衛生環境に関する報告書を作成した.本論では,南洋調査団の実態を明らかにするとともに,八田の調査復命書を手掛かりに,若き八田が,南洋で見聞した調査内容を分析する.

  • 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00253
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     ライトラインはネットワーク型コンパクトシティ形成のための幹線軸として計画され,2023年に日本初の全線新設のLRTとして開業した.導入に至るまでには,合意形成のために採算性や道路交通への影響が議論され,特に需要予測については,数々の調査が実施された.本研究はこれまでの需要推計に関わる議論を振り返り,実際の利用者数と比較することで予測の事後評価を試みる.具体的には,計画時の需要予測手法を再現し実際の利用状況と比較することで,LRTと既存交通手段の利用特性の違いを分析し,今後の需要予測に役立てることを目的とする.分析の結果,需要推計が高い精度であったこと,特に私事利用において予測を大きく上回っていることが分かった.また,沿線人口の増加やLRTと一体の商業施設開発が行われたことが原因と推測された.

建設材料と構造
論文
  • 市野 宏嘉, 山内 稔也, 別府 万寿博, 福井 秀平
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 23-00161
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     爆発事故や爆破テロによりコンクリート構造物の至近で爆発が生じた場合,部材は局部的に顕著な損傷を呈するとともに,部材が貫通されなくとも構造物内部に破片の飛散が生じる問題がある.本研究は,ポリウレア樹脂を塗布したコンクリート板が接触爆発を受けた際の,塗布による効果を実験的に調べ,その評価法を検討したものである.まず,厚さ50~80mmのコンクリート板に厚さ2~6mmのポリウレア樹脂を塗布し,これを15~175gの爆薬で爆破した際の損傷について調べた.その結果,樹脂によって爆発面の反対側への破片の飛散を防止する効果が認められ,その損傷の状態は樹脂塗膜の厚さなどにより変化した.次に,樹脂を塗布したコンクリート板が接触爆発を受けた際に,破片の飛散を防止できる板厚および樹脂塗膜の厚さの評価法を提案した.

環境と資源
論文
  • 納庄 一希, 山崎 智弘, 渡辺 研, 勝見 武
    2025 年81 巻5 号 論文ID: 24-00178
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり

     管理型海面処分場では,廃棄物の埋め立てに伴い保有水のpHが高アルカリ性となる事例が確認されている.高アルカリ性の保有水は大気中の二酸化炭素(CO2)を一方向的に吸収し,その吸収量は海水と比較し卓越していると考えられる.本研究では海水と処分場の保有水を対象に,季節ごとのCO2吸収フラックスをアクリル製の密封容器を用いた密閉式チャンバー法によって調査し,管理型海面処分場の年間CO2吸収量を評価した.CO2吸収フラックスはpH,水温,植物プランクトンにより季節変動したため,季節ごとの保有水の吸収量から処分場保有水の年間CO2吸収量を評価した.その結果,保有水は年間10.6t-CO2/haの吸収量と試算され,管理型海面処分場の残余水面が有力なCO2吸収施設となる可能性を示唆した.

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