土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 14 号
特集号(複合構造)
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集号(複合構造)招待論文
  • 永元 直樹
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14001
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     プレストレストコンクリート(以下,PC)は,コンクリートの引張力に弱い特性に対して,効果的に補強できる工法である.一方,近年ではその構造内部に配置した鉄筋やPC鋼材が腐食する劣化現象が確認されている.この劣化現象はコンクリート内部で進行するため,早期の発見が難しい.そこで,様々なPC構造物の耐久性向上策が開発されてきた.その一つの手法として,アラミド繊維を樹脂で棒状に成形したアラミドFRPロッドを緊張材として使用し,腐食する可能性がある鉄筋や通常のPC鋼材などの使用を一切排除した複合構造である高耐久橋梁が開発された.本稿では,その構造を実現するために行われた各種実験の概要を示すとともに,本構造を実構造物へ適用した事例を紹介する.さらに,このような新構造の適用拡大に向けた展望を示す.

特集号(複合構造)論文
  • 水谷 壮志, 前田 悠作, 石川 敏之
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14002
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     標識柱のようなコンクリートやアスファルトで埋め戻された支柱基部は隙間腐食により,他の箇所よりも早く腐食が進行する場合がある.これに対する補修・補強工法として,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を接着する工法がある.CFRP接着補修・補強では,補修・補強効果を十分に発揮するための定着長やはく離を防止する照査が必要である.本研究では,CFRPが接着された片持ち鋼管に対して,せん断遅れ理論を適用し,鋼管とCFRPの分担曲げモーメントおよび接着剤のせん断応力を導出した.導出した理論式の妥当性はFEM解析と比較することで確認した.また,CFRP接着補修・補強の設計に必要な定着長を提案した.リブを有する鋼管に対するFEM解析を行い,提案した定着長の有用性を示した.

  • 石村 颯太, 中村 一史, 杉浦 邦征, 日比 英輝, 古賀 崇
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14003
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     FRP水門扉は,設計基準に準拠して許容応力度,たわみ度に基づいて設計・照査されるが,実構造物を対象とした安全性,使用性に関する限界状態は十分に議論されていない.本研究では,小形FRP水門扉の構造特性の把握と合理的な設計法の構築を目的として,現行設計に基づいた2種類の小形FRP水門扉および小形鋼製水門扉を対象に,破壊に至るまでの水圧実験を行って,限界状態を把握するとともに,FEM解析により,設計水圧に対する合理的な断面の検討を行った.検討の結果,設計されたFRP水門扉は,たわみ度が設計に支配的であるが,十分に安全で余裕があることから,合理化できる可能性があること,また,たわみ度を満足する最小部材高さを検討した結果,部材高さをより小さくできることがわかった.

  • 手塚 理史, 中村 一史, 松井 孝洋
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14004
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     ブレース材の耐震対策として普及している座屈拘束ブレース(BRB)は,鋼やモルタルなどで作製されるが,部材の全体重量が大きいため,軽量化ができれば施工が容易になり,適用範囲も広がると考えられる.本研究は,軽量なCFRP製BRBの開発を目的としたもので,従来形式の鋼リブ付き拘束材と同等の剛性を持つCFRPリブ付き拘束材,CFRP箱形拘束材の試験体を製作するとともに,鋼リブ付きBRBおよび試作した2種類のCFRP製BRBの正負交番繰返し載荷実験を行って,その妥当性を検討した.検討の結果,CFRP箱形拘束材は,鋼リブ付き拘束材に対して1/6程度の質量で同等の性能を有することから,合理的な断面形状であることが確かめられた.

  • 梶原 淳生, 中村 一史, 小林 拳祐, 花村 光一, 新倉 利之
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14005
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     GFRP板に鋼板を接着し補強すると,継手耐力が向上し,摩擦接合が適用できるようになることが確認されている.しかし,GFRP板が板厚方向の圧縮力を受け続けると,クリープ特性により,ボルト軸力が経時的に低下し,特に高温下で顕著になることが課題であった.本研究では,クリープ対策として,GFRP板に座金径以上の拡大孔を明け,拡大孔と同径の有孔円形鋼板を挿入することで,軸力低下の抑制を試みるとともに,接着鋼板の薄板化を検討した.ボルト軸力の経時変化を,室温,低温恒温恒湿器による温度制御下で計測し,継手耐力を,高力ボルト摩擦接合継手の引張試験により確認した結果,室温下,高温下の軸力低下は対策前と比べて抑制されること,有孔円形鋼板を導入しても接合部は十分な継手耐力を有することが確かめられた.

  • 久保 圭吾, 酒井 圭一, 大山 理, 今川 雄亮, 浅野 貴弘, 綾地 諒, 上岡 一成, 太田 康介
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14006
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     近年,跨道橋や跨線橋では,点検及び維持管理の効率化のため,GFRP常設足場を設置する事例が増加しつつある.常設足場は,塗装の塗替え時の足場としても使用することが想定されるため,作業時に塗膜や溶剤が燃えた場合の足場としての性能を把握しておく必要がある.本研究では,試験片による燃焼試験により,燃焼温度と燃焼時間による物性の低下度を確認するとともに,火災を想定した加熱試験を実施することで,加熱後の材料特性に関する検討を行った.その結果,GFRP材は,340℃では材料特性に変化はなく,680℃とした場合,火炎側の表面は燃焼するものの,30分程度の燃焼では板厚5mmのすべてが燃えることはなく,燃焼後に載荷試験を実施しても,作業員が載る程度の荷重は保持できることが確認できた.

  • 神野 夢希, 久保 圭吾, 出口 哲義, 北根 安雄, 杉浦 邦征, 佐藤 顕彦
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14007
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     大規模更新事業などにおける床版取替え時,昼間交通開放を目的として,プレキャストPC床版の間詰コンクリートやアスファルト舗装の施工を省略し一時的に交通解放が可能となるGFRP舗装覆工板を開発した.本研究では,この覆工板に関して,実用化に向けた性能確認試験を行った.耐荷性状を確認するための静的載荷試験では,鉛直荷重,制動荷重に対して十分な耐荷力を有しており,取付ボルト部にも変状がないことが確認できた.実車両による走行試験および輪荷重走行試験では,覆工板本体や取付ボルトに変状が生じなかったことから,使用上問題ないことが確認できた.ただし,輪荷重走行試験において,角パイプが少ない場合,角パイプのWEB部が疲労破壊することから,耐久性を確保するには,角パイプを密に配置する必要があることが確認できた.

  • 池田 一喜, 宮下 剛, 大垣 賀津雄, 服部 雅史, 後藤 源太, 秀熊 佑哉, 櫻井 俊太, SYLL AMADOU SAKHIR
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14008
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     鋼橋における耐震補強は,鋼板を用いた当て板補強が一般的である.この工法はボルト孔による母材の断面欠損,死荷重の増加に伴う補強範囲の拡大,再劣化等の課題を有する.これらの課題を解決するためには,軽量で腐食の懸念がない炭素繊維(以下,CFRP)シートを補強に用いることが有効である.本研究では,鋼トラス橋の部材を対象とし,箱形断面を有する長柱供試体の単調および交番載荷実験を行い,CFRPシートによる耐震補強効果について検討した.その結果,CFRP補強は交番載荷においても耐荷力の向上が期待でき,局部座屈発生後もエネルギー吸収量が急減せずに保持されることが確認された.また,実験結果は耐荷力曲線に対して安全側となり,既往の耐荷力曲線を用いることで,CFRPによる補強効果を設計に取り込める可能性が見出された.

特集号(複合構造)報告
  • 野々村 佳哲, 内藤 勲, 三原 慎弘, 鈴木 宣暁, 大久保 誠, 齋藤 信人
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14009
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     道路橋橋脚の耐震補強工として広く普及している連続繊維シート接着工法において,外力損傷や経年劣化により表面保護工が剥落し,連続繊維シート部分が外部に露出するケースが確認されている.連続繊維シートは紫外線や降雨等の影響により繊維や樹脂が劣化する場合があることから,連続繊維シートの露出が曲げ補強効果に及ぼす影響を検討するため,連続繊維シートを接着したRC梁の暴露試験を行っている.本報では,炭素繊維及びアラミド繊維の暴露5年目までの結果について報告する.

     暴露試験の結果,炭素繊維シートは変化が生じない一方で,アラミド繊維シートは表層側から徐々に劣化して引張強度や補強効果が低下する場合があることを確認した.また,試験結果を踏まえ,連続繊維シートの露出を発見した際の現場対応について考察した.

  • 佐藤 顕彦, 北根 安雄, 杉浦 邦征, 日比 英輝
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14010
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     GFRP は重量比強度や耐久性に優れているが,損傷評価手法については不明な点が残されている.特に,疲労損傷として発生する樹脂内き裂や層間剝離は非常に微細であり,外観目視から発見することは困難である.そこで,本研究では,静電容量を用いた疲労損傷評価手法を検討した.まず,電極をGFRP両面に接着した試験体の引張疲労試験を実施し,初期の疲労損傷である樹脂内き裂の発生は静電容量に影響しないことを明らかにした.次に,電極を内部に埋設したGFRPを製作し,引張疲労試験を通して,静電容量と繰返し数,残存剛性の関係を調べた.実験の結果,疲労寿命中期以降で層間剝離の進展に伴い静電容量が低下し,静電容量の低下をもって疲労損傷を評価する可能性が示された.一方,実験を通して電極自体の耐久性も確保する必要性が明らかになった.

  • 大垣 賀津雄, 平田 桐也, 服部 雅史, 後藤 源太, 宮下 剛, 秀熊 佑哉, 櫻井 俊太, SYLL AMADOU SAKHIR
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14011
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     日本の道路橋は建設後50年以上経過しているものが数多く供用されている.1996年の道路橋示方書の以前の基準で設計された橋梁の主構造部材の多くは,耐震性能不足の状態にある.そのため,既存のトラス橋の斜材等部材の一部は大規模地震時に全体座屈や局部座屈が発生する可能性がある.従来,これらの耐震補強には高力ボルトによる当て板補強が一般的であったが,鋼材に比べて高強度,高弾性,軽量,腐食しない等の理由からCFRPを用いた補強方法が注目されている.本研究では,H形断面のトラス橋斜材を想定した長柱供試体にCFRPシートやCFRP成形材の貼付けを行い,圧縮と引張荷重の交番載荷実験を行った.本研究はその耐荷力やエネルギー吸収性能を明らかにするものである.

  • 小林 駿, 大垣 賀津雄, 中村 太一, 安田 翼, 秀熊 佑哉, 石田 学, 菊地 新平, SYLL AMADOU SAKHIR
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14012
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     近年,都市内高速道路の重要交通網に採用されている鋼床版橋梁において,デッキプレートのUリブ溶接部を起点とした疲労き裂が多数発生している.現在,その対策工事では渋滞による社会的影響が大きい.そこで鋼床版下面からUリブ内に充填する軽量樹脂モルタルと,Uリブ間に貼付けるCFRP成形材による下面補強法を検討している.この工法に対する補強効果の有用性は確認できている.本研究は3本のUリブを有する鋼床版供試体に対して,Uリブ内への軽量樹脂モルタル充填と樹脂の2次注入,およびUリブ間内へのCFRP成形材貼付けを行い,それらによる補強後の性能の確認を行った.また,移動輪荷重走行実験による,疲労き裂に対する進展抑制効果,長期供用時における補強効果を確認した.

  • 田原 慎太郎, 池永 周造, 樋口 彰悟, 野村 一樹, 中島 浩二, 今井 祐介, 杉本 慶喜, 松本 幸大
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14013
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     軽量・高強度・耐久性に優れるCFRPは,さまざまな分野で急速に応用が広がっているが,使用後の廃材は産業廃棄物として処理されており,有効な再利用法の開発が必要となっている.近年,CFRP廃材から炭素繊維を取り出すリサイクル技術が発展しているが,その有効利用法については実証が乏しい現状にある.本研究ではFRPの異方性により脆弱となる繊維直交方向および剪断方向に対してリサイクル炭素繊維(rCF)を用いて性能を補うことに注目する.そこで,まず,rCFを混合したマトリックス樹脂単体の物性評価を行う.次に,ハンドレイアップ成形法や引抜成形法を対象として,rCFをFRPのマトリックス樹脂に混合し成形した板材に対して,連続繊維と異なる方向の機械的性質に及ぼす影響や内部の非破壊観察を通して,その特徴を整理する.

  • 伊沢 温, 樋口 彰悟, 大槻 桃子, 中島 浩二, 松本 幸大
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14014
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     軽量・高強度なFRP材を用いた建設構造部材の補修・補強法に関する研究が盛んに行われている.FRP材を用いた既存構造物の補修・補強法は,既存構造部材の表面に接着剤を用いてFRP材を接着接合したり表面上に直接成形したりして,既存部材の負担応力を軽減することで,部材耐力の回復や向上を図る手法である.数多くの実績があるが,接着接合部の剥離により応力伝達が不可能となると性能が発揮できなくなるため,管理や剥離強度の把握が肝要となる.そのため,筆者らは剥離の検討が必要ない非接着による補強方法を提案してきた.本研究では,切断したGFRP管に,スリット入りパイプ状FRPを用いた非接着の継手により剛性を復元させる手法に関して成形法と施工法,設計法について,さらに基礎的な実験検討を行った結果について報告する.

特集号(複合構造)委員会報告
  • 土木学会複合構造委員会・Society 5.0に向けた社会インフラの 管理システム構築のための調査研究小委員会(H110)
    2025 年81 巻14 号 論文ID: 24-14015
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル 認証あり

     本小委員会では,第5期および第6期科学技術基本計画にて内閣府によって示されたSociety 5.0を社会インフラに対して実現するために,構造物管理に焦点を当てた検討を行った.求められる社会インフラの将来像をSociety 5.0の観点から考察するとともに,その実現に必要な技術をベースとしてインフラの設計,施工,維持管理の各段階の将来像についてまとめた.次に,これを達成するための鍵となるデジタルツインの現状について,実構造物等に取り入れられている技術を調査した結果を報告した.さらに,インフラ構造物のデジタルツインを実現するための現状の技術的課題を,サイバー空間の構築における課題,フィジカル空間での情報取得における課題,サイバー空間からフィジカル空間へのフィードバックにおける課題の3つに分けて整理した.

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