土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
地圏工学
論文
  • 樺 真緒, 菊本 統, 崔 瑛, 薮本 篤
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00209
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,石積構造物に近接して浅いトンネルを掘削する際の力学的相互作用を把握するため,石積構造物模型を用いてモデル実験を行った.トンネルの掘削は降下床の下降で模擬し,石積構造物とトンネルの水平方向の相対位置や土被り,石垣の形状を変え,石積構造物の変形や周辺地盤の反応を観察した.その結果,石積構造物に及ぼすトンネル掘削の影響は石垣とトンネルの位置に支配され,石垣前方の地中を掘削する場合は石垣が陥没,転倒するモードで変形を生じること,石垣直下の掘削の場合,地盤とともに鉛直下に沈むように変形する,石垣背面側での掘削の場合,石垣を含む地盤内で円弧すべり面が生じる,と両者の位置関係によって出現するモードが分類できることが明らかになった.

土木計画学
論文
  • 林 倫子, 尾崎 茉央, 安室 喜弘, 窪田 諭, 加藤 直子
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00007
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     滋賀県犬上郡豊郷町にある龍ケ池揚水機場は,「石積造水源井」の構造をもつ現役の農業用地下水揚水機場である.本研究では,実測調査をもとに龍ケ池揚水機場の現存施設の状態を把握し,文献資料調査結果と合わせて,竣工後の井戸の改修履歴を明らかにした.その結果,水不足や増水,木製部材の劣化などの理由で,現在に至るまで何度も改修されてきたことが確認できたものの,基本的な水利システムや井戸構造は継承されていたことが明らかとなった.特に石垣および木製の第二枠は,建設当初の部材が現在もそのまま使用され,極めて貴重である.オリジナルの施設ではないが,建設当初と同じ技術・材料を用いて建設された木製の増築枠は良い状態で現存している.

  • 織田澤 利守, 足立 理子, 石川 遼
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00042
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,我が国における広域道路ネットワーク整備が地域経済の成長に及ぼす影響について検証を行う.1971年〜2010年の40年間,全国215の都市雇用圏に含まれる1,241市町村を対象として,広域道路ネットワーク整備による連絡性の改善が製造業の立地や雇用,生産性に及ぼす因果効果を推定する.道路ネットワークの階層性に着目し,都市圏間の連絡性と同一都市圏内における地域間の連絡性という異なる空間スケールのアクセス性指標を用いて,各階層の道路ネットワークがもたらす効果とそれらの相乗的な効果について明らかにする.内生性の問題に対処するために,「戦時下に策定された道路計画ルート」と「投資選択とは無関係な(inconsequential)ルート」から操作変数を算定し,2段階最小二乗法による推定を行う.

  • 曽 翰洋, 鹿島 翔, 土井 健司, 葉 健人, 吉岡 正樹
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00045
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,街路空間を車中心の空間から歩行者中心の空間へと転換することに関心が高まっている.また,深層学習による画像認識技術の様々な分野での応用が期待されている.そこで本研究では,国内都市部の街路を対象として画像認識技術を活用し,歩行空間の「歩きやすさ」や「居心地の良さ」に与える影響の分析,および歩行空間の利便増進と快適増進に向けた道路空間再配分の効果分析を目的とする.まず,筆者らの先行研究にてファインチューニングを行い,精度を向上させた画像認識AIモデルを用い,道路構造や利用状況の違いによる利便・快適増進評価の結果の差を分析した.次に段階的な道路空間再配分を実施した場合の効果を確認した.以上より,ウォーカブルシティの推進に資する歩行空間の共創に向けた,画像認識技術の活用の新たな方向性を示した.

  • 合田 哲朗, 中村 ゆかり, 辻井 純平, 中野 雅章
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00050
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,下水道ネットワークを対象にレジリエンスの定量評価に基づく被災後の応急復旧計画及び事前防災対策としてのストックマネジメント計画の最適化に向けた基礎検討を行った.下水道ネットワークは流末人孔を根とする有向木でモデル化し,流末人孔での累積流量を機能と捉え,被災後の機能損失と復旧過程を再現してレジリエンスを定量評価した.応急復旧計画の最適化では,混合整数線形計画法(MILP)により被災後に生じる管渠の閉塞を効果的に解消する復旧順序を求めた.ストックマネジメント計画の最適化では,複数年に渡る段階的な管渠の改築を想定し,遺伝的アルゴリズム(GA)でレジリエントな改築順序を探索した.被災の影響をネットワーク全体の機能推移で評価することで,エビデンスに基づく効果的な対策が可能となることを示した.

  • 畑 喬介, 谷川 陸, 山口 敬太, 川崎 雅史
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00085
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,行政資料では把握しきれない京都植物園の設立過程と計画・設計案の展開を,新聞資料をもとに関係主体の意図や役割に着目して明らかにした.大森鍾一知事(任期1902-1916)の計画思想を中心に,大典記念京都博覧会から大遊園地計画,さらには萬祥園(京都植物園)への転換過程を詳細に検討し,その政策的意図と計画内容を分析した.大森は,京都市の北方への遊覧的発展を視野に入れ,博覧会から植物園計画に至るまで,既存の風致を活かしつつ,文化的・教育的価値を高める計画を推進した.また,大森は予算制約にも対応し,地主や専門家,民間の協力を得て,京都北部における都市発展の基礎を築いた.これにより,半木神社周辺に林泉を造成し,堤防道路と合わせて桜の一大名所を創出する大幅な設計変更が行われたことを明らかにした.

  • 久米山 幹太, 松浦 海斗, 谷口 守
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00144
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,居住地からの生活圏を重視するx-minute cityが世界的に注目されている.我が国でもCOVID-19を経て政策的展開が期待される一方,兼ねてより生活サービスを集約するコンパクトシティ政策にも重点的に取り組まれており,これらの概念の両立が重要となるといえる.本研究では政策的展開へ向けた基礎的情報として,東京都市圏において居住地から生活サービス施設までの徒歩での到達時間を算出し,現状の都市機能誘導区域との対応関係を整理した.結果,徒歩圏に必要な施設としてのニーズが高い商業・医療・金融機能には,全地域の施設を対象とすると20分で90%の人が全ての機能に到達可能だが,都市機能誘導区域内の施設のみを対象とすると,全ての機能に到達可能である割合が10%にも満たない都市が存在することが明らかとなった.

  • 石倉 智樹, 横松 宗太, 松島 格也
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00175
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     地震や火山のような地質・地殻変動に起因する災害と,台風や集中豪雨のような気候変動に影響を受ける気象現象由来の災害では,災害の発生する頻度・確率と,社会経済に及ぶ被害規模の空間的範囲に違いがある.本研究は,稀に発生する災害リスクと定常的かつ不確実に生じる災害リスクの特性を差別化して考慮した上で,最適な防災投資計画のための数理計画モデルを提示する.具体的には,アセットプライシング分野で発展してきたjump-diffusion過程により災害被害リスクを明示的に考慮した,長期的な経済損失の最小化計画を,確率制御理論のアプローチによりモデル化した.さらに,数値的に最適値関数を導出する演算手法を開発し,数値シミュレーションにより災害特性と最適政策の関係性について考察した.

建設材料と構造
論文
  • 杉橋 直行, 岸 利治
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00064
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     土木分野における温度ひび割れ照査は,一般的にコンクリート標準示方書に示されるひび割れ指数とひび割れ発生確率の関係図を用いて実施されている.本論文では,この図の本来的な意味を確率論的に検討し,その改訂の変遷を整理することで課題を明らかにした.引張応力と引張強度を正規分布とし,ひび割れ発生確率はその変動係数とひび割れ指数をパラメータとした関数で表されることを示した.この算定式を用いて提案した新たなひび割れ照査方法により,従前ひび割れ対策として評価できなかった高品質な施工管理状態や,変動係数を制御する新たな対策系の評価が可能となることを示した.

  • 相内 豪太, 菅野 日南, 前島 拓, 岩城 一郎
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00155
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は凍結防止剤散布環境下におけるコンクリート舗装の高耐久化を目的に,フライアッシュ(FA)と膨張材(Ex)を併用した連続鉄筋コンクリート舗装(CRCP)を開発し,東北地方の直轄国道に実装したものである.開発・実装にあたっての手順は1)室内試験における配合選定と各種物性評価,2)大学構内での実物大モデルによる課題の抽出,3)現場プラントでの実機試験,現場施工試験,4)本施工である.その結果,FAをセメントに対して外割置換することで,フレッシュ性状や強度特性に関する要件を満たしつつ,優れた塩分浸透抵抗性とアルカリシリカ反応抵抗性を示すとともに,Exの添加により水和熱や乾燥収縮に伴うひび割れを抑制可能な配合を見出し,外気温38℃という酷暑の施工においても優れた性能を有するCRCPの現場施工に成功した.

  • 松浦 好宏, 中村 秀明
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00218
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     温度ひび割れが予測されるマスコンクリート構造物については,事前に温度応力解析が実施されることが多い.温度応力解析を行う手法として最もよく用いられているのが3次元FEMである.3次元FEMは,複雑な形状の構造物に対しても温度応力を正確に計算できるという利点がある反面,解析モデルの作成にある程度の経験が必要であり,3次元のメッシュ作成には多大な労力と時間を要する.一方,CP(Compensation Plane)法は,温度応力の簡易的な解析手法であり,構造物を限れば3次元FEMと同等の解析精度で計算することができる.しかしながらCP法では,外部拘束係数を適切に設定する必要がある.そこで,本研究では,粒子群最適化を用いて現行の示方書に準じた外部拘束係数を同定することで,CP法の解析精度の向上を図った.

土木技術とマネジメント
論文
  • 石黒 龍之介, 須﨑 純一, 大庭 哲治, 石井 順恵, Marek OSOSINSKI , 中岡 翔平, 松岡 陽太
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00084
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     昨今の建設現場では労働者不足が問題であり,とりわけクレーン操縦者の減少が喫緊の課題となっている.この解決策として,クレーンの自動化による作業効率化が挙げられる.本研究ではクレーンのブームに取り付けられた単眼カメラから取得された動画像をもとに移動体検知を行なった.本論文では事前学習済みの物体検知モデルであるYOLOv8と状態推定のアルゴリズムであるカルマンフィルタを組み合わせて,時間的一貫性が保たれた物体検知手法を提案する.提案する手法の実用性を評価するために,精度・安定性・リアルタイム性を測定する指標を用いて,既存の手法と比較した.そして,クレーンの動作環境を模したシミュレータと実際の試験場で撮影された動画像における比較結果から提案する手法がクレーンの事例にふさわしいものであることを示した.

  • 西村 紘明, 荒若 佑美恵, 渋谷 基信, 近藤 孝則, 遠藤 俊太郎, 長野 博一
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00196
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     バリアフリートイレについて,乳幼児連れ等も含め多様な人が利用しやすいよう,多様な機能を集中させることを推奨してきた結果,利用者が競合する利用集中という課題が指摘され,今日ではバリアフリートイレから一般トイレへの機能分散が推奨されている.本研究では,鉄道駅等の各施設の機能分散の実態を調査し,機能分散が着実に進められていることを明らかにした.また,欧米との比較により,機能分散を推奨する我が国の政策には独自性がある可能性を示した.一方,機能分散の前提となる利用集中という課題は,アンケート調査結果を主として設定されたもので,実態把握が必ずしも十分ではないまま政策が進められてきたことを指摘し,施設の個別性により必ずしも機能分散をせず,多機能トイレによる対応の方が効率的である可能性を示した.

報告
  • 山根 隆志, 佐藤 久文, 吉武 勇
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00059
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     高速道路の老朽化に伴うプロジェクトが全国で本格化しており,このうち鋼橋の床版取換工事がプロジェクト費用の大半を占める.その中でも人力作業の割合が高く,それに伴う作業の長時間化を避けられない鋼合成桁橋の既設床版撤去の合理化技術を開発した.開発にあたり,二つの合理化技術の有効性を確認するための要素実験と,その結果を踏まえて選定した技術の施工性を確認する実物大実験を実施した.まず要素実験では,床版上面から大型ウォールソーでスタッドジベル胴部を切断する方法が有効であることを確認した.次いで,橋梁床版部を実物サイズでモデル化した供試体で施工実験を実施し,既設床版コンクリートを破砕せず,形状を保持したままブロック毎に撤去できることを確認した.本技術は高速道路橋の鋼合成桁橋で試行し無事施工が完了している.

環境と資源
論文
  • 金 主鉉, 増田 周平, 富野 玲奈, 大友 渉平, 西村 修
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00149
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     1991年より田沢湖の酸性化対策として玉川中和処理施設が稼働しているが,田沢湖のpHは依然として環境基準を下回っており,自立した生態系は機能しない状況にある.そこで本研究ではWET手法を用いて玉川中和処理施設での中和処理前後,中和処理水をpH 6.7,pH 8.5に上げた場合の4段階で水生生物への毒性低減効果を評価した.

     その結果,3種類の水生生物全てにおいてpHの上昇に伴う毒性の低減が認められたが,現状の中和処理では水生生物に対する毒性低減効果は不十分であった.またpH変化に伴う毒性物質群の挙動を明らかにするためF,B,Al,As,Znの濃度測定を行った.現状の中和処理では毒性物質群を除去できておらず,pHを上げることで沈殿除去が期待でき,水生生物に対する毒性が低減することを明らかにした.

土木工学における人材育成と教育
論文
  • 宮原 史
    2025 年 81 巻 1 号 論文ID: 24-00203
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル 認証あり

     土木技術者の学習には経験が大きな役割を担っていると考えられる.このため,戦略的な人材育成を実現するためには様々な経験の学習効果を明らかにすることが重要である.近年,経験による学習の一形態として,越境学習が注目を集めている.しかし,土木分野においては,越境学習の効果やそのプロセスについて考察した研究は筆者が知る限りない.そこで本研究では,民間企業から国の研究所へ派遣された経験を有する土木技術者を対象にインタビューを行い,得られるテキストデータにSCATを適用し分析する.その結果,越境学習の効果とそのプロセスを具体的に明らかにするとともに,両者の相互関係を明らかにする.また,土木技術者の越境学習においては技術基準に対する立場が支配的な要素となっている可能性を指摘する.

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