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犬飼 直之, 小川 和真, 江尻 義史, 大竹 剛史, 山本 浩
2016 年72 巻2 号 p.
I_898-I_903
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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平成26年5月に新潟県の上下浜海岸において,突然襲来した高波浪で遡上した海水で児童3名及び救助者2名の5名が溺死する水難事故が発生した.本研究では,この水難事故の事故発生原因の解明を目的として,現地調査や波浪解析,数値計算を実施した.
本研究では,まず事故当時の海象状況を把握した後に,事故時と似た海象時に現地調査を実施し,縦断測量およびUAV(無人航空機,ドローンともいう)を用いて波浪が砂浜を遡上する挙動を把握した.また,UAV取得画像より地形データを作成して地形的特徴を把握した.この地形データを用いて水平2次元および鉛直2次元の数値計算をおこない,遡上時の流速および砂浜上の水位変動を把握した.数値計算の確からしさは実地形の1/20縮尺の造波水路実験で確認した.
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田島 芳満, 藤川 大樹
2016 年72 巻2 号 p.
I_904-I_909
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本研究では,浸透性の高い礫浜の形成過程を再現することのできるモデルの構築を最終目的とし,その重要な要素となる砕波帯,遡上帯での波の変形と断面地形との関係を整理し,その再現計算を試みる.まず地形変化が活発なサンゴ礫による礫浜に焦点をあて,1/10スケールの室内実験を実施した.サンゴ礫で構成した礫浜に周期の異なる規則波を作用させ,部分重複波を伴う砕波および遡上,さらに,礫層内への浸透特性を,画像解析に基づき抽出した.次に,透水特性を考慮するため,礫層内および礫層上の二層でそれぞれ断面積分した運動方程式に基づき,礫浜上で砕波,遡上,浸透する波の場の再現モデルを構築した.最後にモデルを実験条件に適用し,断面地形や周期によって変化する砕波を伴う部分重複波の再現を試みると共にその特性を分析した.
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犬飼 直之, Neam KOPY, Chamnab EM
2016 年72 巻2 号 p.
I_910-I_915
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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カンボジア沿岸域では,マングローブや藻などが多数生息し,カニなどの水産資源が豊富な海域である.そのため,この海域では多くの人が海辺付近に住み漁業に携わっている.このうち,Kampot川は,河口付近に位置するKampot市街地で下流方向に東西に分岐するデルタ地帯となっている.ここでも多くの人が川辺付近に住み,小型ボートで川を下り海へ漁に出る.しかし,この地域ではたびたび小型ボートが川の流れに対応できずに転覆する事故が発生している.
そのために,河川内および河口外の沿岸域で数回にわたり水深測量や気象観測,水質・水位観測などの現地観測を実施した.また地形情報を作成後,潮汐流や吹送流の数値実験をおこない,Kampot川河口部付近の流動機構の把握を試みた.
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山木 克則, 茅根 創, 大葉 英雄, 洪 永勲, 山本 将史, 田中 昌宏, 林 文慶, 上野 嘉之
2016 年72 巻2 号 p.
I_916-I_921
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本研究では,形成過程中と考えられる新しい年代のビーチロックを対象に,生態工学的視点による現地調査,その結果を基にサンゴ砂礫の固化実験を行い,ビーチロック形成メカニズムの検討をした.調査を行った石垣島吉原海岸のビーチロックは,現代の人工物が固着されているなど比較的新しい形成年代であり,現在も形成途中と考えられた.ビーチロックの表層面には緑藻,シアノバクテリア(藍藻)などが着生し,膠結部のSEM-EDXによる観察ではCa, Siの細粒分を含むセメント様物質が確認された.室内実験では,潮汐に連動した有機物反応による酸性化とアルカリ化の周期的な変動が計測され,Caの溶脱と結晶化に深く関係するなど,ビーチロック形成に係る新しいメカニズムを明らかにした.
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岡辺 拓巳, 青木 勇介, 加藤 茂, 村上 智一, 下川 信也, 河野 裕美
2016 年72 巻2 号 p.
I_922-I_927
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究では,漂砂調査の中でも主に浮遊砂を対象に用いられる捕砂器について,水理実験を基に土砂の捕捉性能を定量的に評価した.捕砂器は円筒型とし,排水穴にメッシュを貼ることで捕砂の指向性を強めた.実験の結果,メッシュの目開きが捕砂器への通水性に関係すること,スリット穴径が小さいほど流速増大に伴う捕捉率の上昇が顕著であることを明らかにした.穴径が大きい場合は目開きに捕捉率が依存する.また,捕砂器の指向特性も明らかにした.この捕砂器を2つの海域での現地調査に適用した.サンゴ礁海域ではシルト以下の細粒分を多層で捕らえ,設置水深の違いによる漂砂量の差を把握した.河口干潟では多方向観測を実施し,冬季風浪による漂砂の卓越方向を明らかにすることで,この捕砂器が現地観測でも実用的であることを示した.
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安本 善征, 田代 誠士, 野口 仁志, 松原 雄平, 栗山 善昭, 黒岩 正光, 重松 英造
2016 年72 巻2 号 p.
I_928-I_933
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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わが国で実施されているサンドリサイクル(養浜)は,重機や浚渫船で堆積した砂を掘削し,陸上運搬または海上運搬して侵食箇所に投入するという行為であり,毎年多くの予算を費やしている上,代替する効果的な対策がなかった.このことは鳥取県においても同様であり,さらに大型の重機や浚渫船が搬入できない泊地や岸壁沿いの砂浜などでは,土砂の撤去が困難であり,維持管理上の支障を来してきた.なお,このことに求められるサンドリサイクルの規模は1,000m
3~3,000m
3程度/yrである.
本研究では,低コスト化や地球環境保全に配慮し,鳥取県の地域特性に適合した恒久的なサンドリサイクルシステムの導入を目的とし,簡易な装置(砂除去装置)による浚渫工法を開発し,その実用化に向けた試験工事を実施して含砂率の制御機能の確認ほか,有効性を検討した.
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中本 健二, 仁科 晴貴, 樋野 和俊, 日比野 忠史
2016 年72 巻2 号 p.
I_934-I_939
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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ヘドロ(還元有機泥)が堆積した底質の改善を目的に,石炭灰を造粒・固化した海砂代替材(石炭灰造粒物)が覆砂材として活用されている.石炭灰造粒物を覆砂した干潟では,n-ヘキサン抽出物質に代表される油脂類の低減が確認されている.しかし,石炭灰造粒物を覆砂材に活用した場合の油脂類の吸着効果や底質酸素要求量の低減効果は十分に明らかにされていない.本研究は,石炭灰造粒物を覆砂材として活用する場合の油脂類の吸着量,底質酸素要求量の低減効果およびこれらに関係する覆砂層内のアルカリ環境保持特性を実験的に明らかとすることを目的とした.実験室で現地を模擬した覆砂層を再現し石炭灰造粒物を覆砂材として活用した場合の特性について実験し油脂類の吸着効果や環境温度毎の底質酸素要求量の低減効果が確認された.
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中本 健二, 松尾 暢, 樋野 和俊, 日比野 忠史
2016 年72 巻2 号 p.
I_940-I_945
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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石炭灰(FA)を造粒・固化した海砂代替材(石炭灰造粒物)が干潟再生材に使用され,その底質改善効果が確認されている.その材料特性による生物親和性や改善機能が報告されているが,実海域で長期間覆砂材に活用した場合の海砂代替材としての物理特性(強度,吸水率,形状)の維持や化学特性に伴う組成変化については明らかにされていない.本研究は,石炭灰造粒物を覆砂材として活用する場合の物理化学特性に基づく長期的な機能性維持について,実験的に明らかとすることを目的とした.敷設後13年および3年が経過した石炭灰造粒物を採取し,覆砂層の再現によるマクロ的手法と元素分析によるミクロ的手法により実験し,長期的な物理化学特性(強度,吸水率,元素構成,結晶組成物,および溶存態イオンの溶出)の変化について明らかとした.
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日比野 忠史, 金城 信隆, Touch NARONG
2016 年72 巻2 号 p.
I_946-I_951
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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過剰な有機物の流入により底生生物(マクロベントス)が生息できなくなった海底から堆積有機泥を採取して低次生態系の再生実験を現地で行った.還元化した土壌での生態系の再生に,CaO,SiO
2を主な成分とする鉄鋼スラグ,土壌から直接電子を回収する微生物燃料電池(SMFC)が用いられた.鉄鋼スラグの混合に合わせて,SMFCを用いることで生態系が崩された土壌を底生生物が生息できる土壌に再生できた.生態系の再生ができた土壌の有機泥性状と生物量を分析し,土壌内の生物再生と有機物の分解過程について検討した.この結果,鉄鋼スラグ混合にSMFCを併用することで有機物の分解により泥層内に蓄積された電子が効率的に回収され,COD,硫化物の減量させて生態系の再生を促進させていることが明らかにされた.
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樋野 和俊, 増田 龍哉, 及川 隆仁, 中本 健二, 光田 和希, 滝川 清
2016 年72 巻2 号 p.
I_952-I_957
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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有明海東岸に位置する百貫港では浚渫土砂を有効活用し干潟・浅場を造成することにより生物生育環境を改善することを目的として百貫港海域環境創造事業を行っている.現在,投入した浚渫土砂に覆砂を施す工事を進めているが,熊本県内産の海砂採取が規制されたことから覆砂に代わる材料の確保が課題であるとともに,軟弱な泥質浚渫土砂の上に覆砂する場合には砂の食い込み等により本来下層にあるべき浚渫土砂の露呈が懸念される状況にある.このため,砂の代替として使用実績のある軽量な石炭灰造粒物を地盤安定材として試験的に採用している.本研究は地盤安定効果と底生生物生息基盤としての適用効果について報告するものである.
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小林 薫, 鈴木 ひかり, 進藤 里歩, 村上 哲, 松元 和伸, 森井 俊広
2016 年72 巻2 号 p.
I_958-I_963
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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土のキャピラリーバリア(CB)を生かした降雨浸透制御技術は,廃棄物最終処分場閉鎖時や極低レベル放射性(L3)廃棄物処分場などの覆土として採用・検討されている.しかし,砂層と礫層で構成されるCBは,乾燥,地震力の作用などにより,上部の砂が下部礫層の間隙に移動し,CB機能の喪失が危惧される.この課題に対し,筆者らは礫代替材として破砕貝殻を下部層に用いることで,CB機能と共に,上部の砂が下部の破砕貝殻層の間隙に移動することも同時に防止できることを見出した.
本論文は,長期安定性が求められる廃棄物最終処分場の覆土などに,礫代替材として破砕貝殻を採用した場合,浸透水と接触した際の破砕貝殻からのカルシウム溶出量ならびに浸出水のpHに及ぼす影響を2種類の室内土槽実験により明らかにし,破砕貝殻の最終処分場覆土への適用性を明らかにした.
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作野 裕司, 前田 晃宏, 宮本 康, 森 明寛, 岡本 将揮, 畠山 恵介, 九鬼 貴弘
2016 年72 巻2 号 p.
I_964-I_969
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究の目的は,鳥取県中央部に位置する汽水湖の東郷池において,非接触でChl
aを推定する手法を検証することである.この検証のために2013年5月から2015年7月までに取得された42個(4時期)の実測分光反射率/Chl
aデータセットが取得された.その結果,「湖山池モデル」(672 nmと704 nmの2波長比)では40μgL
-1以上の高濃度部で大きな誤差が生じた.この誤差を抑制するために,水中の生物光学的な理論に基いた新しい3波長モデルを取り入れて,この湖に適した計算式や設定波長について検討した.最終的には,適切に波長選択された3波長(650 nm,703 nm,740 nm)を使った場合,Chl
a推定誤差は「湖山池法」と比較して約8%の大幅な精度向上があった.
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田中 陽二, 杉本 佑奈
2016 年72 巻2 号 p.
I_970-I_975
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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富栄養化した閉鎖性海域ではしばしば赤潮が発生し,漁業被害に発展する場合もある.本研究の目的は,水質自動観測データと気象データを使用してリアルタイムに植物プランクトンの大量発生(赤潮)を予測するシステムを構築することである.赤潮予測システムは実用性を考えて,当日の6時から18時の水質・気象データから翌日の赤潮発生を予測するものとした.予測システムの構築にあたって,赤潮発生情報と水質データの比較により,赤潮は表層溶存酸素濃度が150%以上と定義することを提案した.また,表層水温・表層塩分・海上風速・全天日射量が赤潮の前兆現象として確認され,それぞれのSIモデルを提案した.当初の赤潮予測システムは,連続して発生する赤潮の予測が困難であったが,改良された赤潮予測システムの予測適中率は59%(通常の赤潮発生率の2.8倍)であり,実用的なレベルであると判断された.
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大塚 文和, 末永 友真, 弘中 真央, 川西 利昌, 増田 光一
2016 年72 巻2 号 p.
I_976-I_981
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究は,アサリ幼生の遊泳能力に起因する鉛直移動および幼生の個体差を考慮した鉛直移動モデルを用いて東京湾を対象に3次元浮遊シミュレーションを実施した.その結果,大きさ別の鉛直分布については改善の必要性は残るが,計算結果は観測結果を概ね再現できることが検証された.また,着底域の試算についてもシミュレーション結果をスポット的ではあるが稚貝の採取結果と検証することが出来た.
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田多 一史, 中山 恵介, 所 立樹, 渡辺 謙太, 桑江 朝比呂
2016 年72 巻2 号 p.
I_982-I_987
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本研究では,北海道コムケ湖の春季出水期における水質変動解析と大気-海水間CO
2フラックスの推定を行った.はじめに,2013年春季のコムケ湖の現地観測データを用いて,塩分とDIC(溶存無機炭素濃度)の関係から生物過程(光合成,呼吸・分解等)による海水中CO
2分圧への影響を検出し,その生物過程の有無や大小により,CO
2分圧にどの程度影響を与えるかについて検討した.次に,3次元流動解析によりコムケ湖の再現計算を行い,湖内の流動および水質変動特性を把握した.最後に,生物過程を考慮した海水中CO
2分圧と塩分の関係式から,海水中CO
2分圧の湖内平面分布を求めるとともに,風速等の諸条件を与えたバルク法を用いて,コムケ湖全体の大気-海水間CO
2フラックスの経時変化を推定した.
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佐野 史弥, 中山 恵介, 山田 俊郎, 佐藤 之信, 丸谷 靖幸, 駒井 克昭, 尾山 洋一, 若菜 勇
2016 年72 巻2 号 p.
I_988-I_993
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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阿寒湖チュウルイ湾に生息するマリモは,回転運動しながら光合成することによって,球状の集合体を形成している.成長した球状のマリモは世界でも阿寒湖でしか確認することができないことから,わが国では特別天然記念物に指定されている.マリモを回転させる外力として,風波が関係しており,阿寒湖上に適度な南風が発生すると,マリモが回転し始めることが分かっている.しかし,地球規模での環境変動の影響により,将来の風のパターンが変化し,マリモの回転運動に影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究では,波高計と風向・風速計を設置し,風波と風の特性の把握を行った.その後,全球気候モデルを用いて将来の風のパターンを予測した.その結果,マリモの球状化に影響がある強い南風の発生頻度が将来気候において増加することが確認できた.
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宇多 高明, 芹沢 真澄, 宮原 志帆
2016 年72 巻2 号 p.
I_994-I_999
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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閉鎖水域内に島あるいは州島がある場合における風波による地形変化について検討した.実例としてKazakhstan東部に位置するBalkhash湖と福島県猪苗代湖の例を取り上げた.島(州島)がある場合,島陰では波の遮蔽域形成に伴う地形変化が起こる.しかし州島の場合には島自体が風波の作用で変形し,それに応じて波の遮蔽域自体も変化するので,より複雑な地形変化が起こると考えられる.本研究では,このような問題を取り上げて島周辺での風波による地形変化をBGモデルを用いて予測した.
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芹沢 真澄, 宇多 高明, 宮原 志帆
2016 年72 巻2 号 p.
I_1000-I_1005
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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韓国南西部の黄海に面した複数の島と,RussiaのKara Seaに面した海岸沖45 kmにある複数の島の例を取り上げ,島の端部に形成された砂州の干渉と融合による地形変化ついて調べた.複数の島が千鳥状にずれている場合,島端部の砂州は他方の島の砂州による波の遮蔽を受けつつ変形する.本研究では,砂州の変形に必要とされる十分な量の砂を供給可能な四角錐台で与えられる砂島(複数)に対し,上方下方から波が同一確率でrandomに作用した場合の砂州の変形をBGモデルを用いて予測した.
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堀江 岳人, 小畑 雄大, 橋本 孝治, 野坂 弥寿二, 田中 仁
2016 年72 巻2 号 p.
I_1006-I_1011
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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北海道南西部の噴火湾内に位置する多くの漁港では,航路や泊地の埋没が顕著に発生しており,継続的な漂砂対策が必要不可欠な状況にある.そこで本研究では,噴火湾内の南西部に位置する落部(栄浜)漁港を対象として,波浪・流況・砂面高等の現地連続観測(1時間毎)を実施し,航路および泊地埋没の要因となっている波浪・流況特性の把握を試みた.その結果,同規模の有義波高および有義波周期が発生した場合でも砂面変動に違いが見られ,その要因として(1)波浪特性として波群性の違い,(2)水位すなわち水深の違い,(3)平常時と高波浪時での流速の違いなどが挙げられた.本事例を整理することにより,今後の噴火湾内における漁港漂砂対策の一助になると考えられる.
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山城 賢, 折敷瀬 翔耶, 八尋 蓮, 横田 雅紀, 橋本 典明, 平澤 充成, 宮﨑 啓司, 的野 一郎
2016 年72 巻2 号 p.
I_1012-I_1017
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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関門航路ではサンドウェーブによる局所的浅所が大型船舶の航行の支障となる可能性があり,国土交通省関門航路事務所は,年数回の深浅測量により浅所の発生を監視している.本研究では,今後の関門航路の維持・整備に資することを目的に,長年に亘り蓄積された貴重な深浅測量データをもとに,サンドウェーブの特徴を明らかにし,その発生要因について検討した.その結果,関門航路のサンドウェーブの発達過程を明らかにし,地区による特徴の違いを整理した.また,主要な外力である潮位変動に数年周期の潮位偏差の変動が含まれていることを示し,これがサンドウェーブの発達と有意な相関を持つことを明らかにした.
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山下 俊彦, 瀬戸 岳史, 佐藤 仁
2016 年72 巻2 号 p.
I_1018-I_1022
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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周辺海域で磯焼けが進行している寿都漁港背後小段を対象として,まず2015年の現地調査により各種海藻の繁茂特性を定量的に把握し,過去の調査結果も加えて2008~2015年の8年間の海藻現存量変化と波高・水温変化の関係を明らかにした.次に,海藻着生時期を2月1日,物理環境データに10日平均値を用いた予測法により,8年間の現地海藻現存量をよく説明できることが分かった.さらに,この予測法を用いて背後小段の水深1mまでの嵩上げの効果を検討した結果,近年と同程度の環境変動の範囲では大型海藻の安定した着生が可能となることが推定された.
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杉本 憲司, 高濱 繁盛, 中野 陽一, 山本 民次, 土田 孝, 関根 雅彦, 岡田 光正
2016 年72 巻2 号 p.
I_1023-I_1028
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本研究は,山口県岩国市由宇町神東の地先において,化学的・物理的特性の異なる製鋼スラグを海域に投入し,岩礁性藻場形成について検証を行った.また,製鋼スラグによって造成した藻場生育基盤に不陸形状を作ることで,藻場機能である魚類蝟集効果について検証を行うことを目的とした.岩礁性藻場生育基盤造成から1ヵ月後にはシオミドロを中心に海藻は着生し,6ヵ月後には藻場造成区域(不陸なし)で大型海藻,18ヵ月後には周辺天然藻場の優占海藻であるクロメが出現した.2015年6月に着生した海藻の湿重量は,製鋼スラグの種類によって差はなく,粒径によって差があった.製鋼スラグによって岩礁性藻場生育基盤を造成することで,藻場造成前よりも魚類の個体数は増加した.しかしながら,0.5m程度の不陸の有無による魚類蝟集の効果は確認できなかった.
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村上 智一, 谷野 賢二, 南 秀樹, 三浦 博, 崎原 健, 水谷 晃, 下川 信也, 河野 裕美
2016 年72 巻2 号 p.
I_1029-I_1034
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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沖縄県西表島の浦内川は,日本の重要湿地500に選定されるなど重要なマングローブ河川である.しかしながら,河岸域に生育するマングローブの定量的評価が行われておらず,浦内川のマングローブ林やそこでの生態系の保全を検討するためにも現状を明らかにしておく必要がある.そこで本研究では,浦内川河岸域のマングローブの代表種であるオヒルギの植生域やそこでの物理環境などの調査を実施した.
その結果,浦内川河岸のオヒルギの植生域,立ち枯れが生じている場所やその面積などの現状が示された.また,魚群探知機を用いた深浅測量によって,立ち枯れが顕著であった場所の前面で水深が浅くなる傾向が確認できた.流速計および可搬型多項目水質計を用いた調査では,流速,水位,水温,塩分,濁度およびDOなどの時間変化や鉛直変化が明らかとなった.
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前里 尚, 椎原 康友, 岩村 俊平, 片山 理恵, 高橋 由浩
2016 年72 巻2 号 p.
I_1035-I_1039
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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港湾,漁港等の整備にあたってはサンゴ群集への影響を回避・低減・代償することが求められる.国内では30年以上にわたってサンゴの移植が行われてきた.しかし,移植の詳細な方法を示した指針はない.したがって本報告では,那覇空港の滑走路増設の環境保全措置として2014年に行われたサンゴ移植の内容と方法をレビューした.特に,台風に伴う移植サンゴへの物理的ダメージを回避するための移植先の設定方法と効果的なサンゴの固定方法を提案した.
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湯本 裕之, 佐々木 香織, 鷲田 正樹, 南里 吉輝, 蛸 哲之
2016 年72 巻2 号 p.
I_1040-I_1045
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究の目的は,養浜事業が実施されている神奈川県七里ガ浜海岸に生育する絶滅危惧種エビアマモ(
Phyllospadix japonicus Makino)の分布,生育状況,生育環境について調査し,生育実態を明らかにすることにある.ライン調査と面的調査を行った結果,エビアマモは沿岸方向約2.5km,岸沖方向20~150mの範囲に分布し,T.P.-0.8m~-2.7mの潮下帯で確認された.エビアマモの生育場の底質は,砂礫が1~3cm程度被覆した岩盤であった.過去に投入された養浜砂は4年間で4,500m
3であり,粒度組成調査の結果から,養浜砂がエビアマモの生育範囲にまで移動している可能性も考えられたが,エビアマモの分布面積は減少していないことが分かった.
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倉原 義之介, 増田 龍哉, 田中 ゆう子, 滝川 清
2016 年72 巻2 号 p.
I_1046-I_1051
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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八代港に造成された人工干潟「八代港なぎさ線」で造成後3年間の追跡調査を行った.八代港なぎさ線では,底質の違いにより異なった種が生息し,さらに造成後の覆砂材の移動による底質の粒度組成の変化や,潮溜まりや微地形の形成により新たな種が加入し,場の多様さにあわせて多様性に富んだ生態系が構築された.
こうした海岸事業による物理的な改変(インパクト)に対する海岸環境への影響(レスポンス)について,「護岸整備」と「なぎさ線の造成」を例にインパクトレスポンスフローをまとめた.レスポンスは物理環境と生物環境に分け,その事象がどの程度明確になっているかを併せて示した.知見を集約し,レスポンスフローをまとめることは,明らかとなった事項の整理や解明すべき事象を明らかにするとともに,知見の有効利用につながる.
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井口 薫, 相馬 昇, 松﨑 忠彦, 岡田 知也, 細川 恭史, 藤原 建紀
2016 年72 巻2 号 p.
I_1052-I_1057
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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大阪湾奥部に位置する堺泉北港堺2区に,海域の環境改善の一方策として3タイプの生物共生型の護岸を実験的に設置した.水質調査および生物調査を設置後から6年間にわたって実施した.実験海域の水質は8月から9月にかけて底層から水深2 mまで貧酸素化する程,富栄養化が進行していた.実験水域は生物生息には厳しい水環境であるにもかかわらず,生物共生型護岸の設置1年目から生物が加入した.準絶滅危惧種のホソアヤギヌ(海藻)やヤマトシジミ(貝類),ウナギやアユ等の幼稚魚が加入した.また,6年経過後もその生物生息場としての機能を維持していた.
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梁 順普, 佐々 真志, 渡辺 啓太, 高田 宜武
2016 年72 巻2 号 p.
I_1058-I_1062
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本論文では,日本海沿岸の砂浜の保全・再生上,重要となる典型的な3種の小型甲殻類を対象として,砂浜の底生生物生態に果たす地盤環境の本質的役割に関する近年の研究結果を,室内試験による検証と合せてまとめて提示・分析すると共に,高波イベントに伴う生物生息分布の変化と常時およびイベント過程を通じた各種生物の地盤環境適合場の一般性について明らかにした.これらの知見は,砂浜の水産資源等の保全・管理に有効に活用することが期待できる.
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中山 恵介, 駒井 克昭, Robert W. ELNER, 桑江 朝比呂
2016 年72 巻2 号 p.
I_1063-I_1068
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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VancouverのRoberts Bankには広大な干潟が存在し,世界有数の渡り鳥(シギ・チドリ類)の飛来地となっている.Roberts Bank tidal flatにおける渡り鳥の飛来の大きな要因として餌資源となっているbiofilmの存在が指摘されているが,如何なる物理・塩分環境にて存在するか等,不明な点が多い.そこで本研究では,biofilmが形成される大きな要因であると考えられる塩分環境に注目し,干潟上面および干潟の土中深さ0.2mにおける塩分濃度の測定を行い,いかなる塩分環境が形成されているかを計測・解析した.その結果,常に陸側から海側にかけて負の水面勾配が形成されており,沖に向けて増加している土中の塩分濃度は長期間にわたって維持されており,biofilmの安定した形成に重要な役割を果たしている可能性が示された.
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園田 吉弘, 滝川 清
2016 年72 巻2 号 p.
I_1069-I_1074
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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八代海は極めて閉鎖性の高い内湾であり,近年,底質環境の悪化と生物多様性の劣化が顕著になっている.本研究は,既往の調査研究成果により,底質項目と底生生物分布の時系列変動,底質の栄養塩と海面養殖の関連性,含泥率と球磨川流量の関連性,含泥率分布と最下層の平均流の関連性,底質項目と底生生物出現種による海域特性等について検討し,八代海を7海域に区分した.八代海は容体積が小さく湾口幅は狭い.一方で,北流する黒潮分岐流に対し南に開口するため外洋水が侵入しやすい.このような地形的特性から,球磨川の影響や東シナ海の海洋環境変動の影響を受けやすく,湾奥と湾口とで底生生物分布と底質環境に大きな違いがあることを明らかにした.八代海の再生策を検討するに当たっては,このような地域特性の違いを十分に考慮する必要がある.
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中村 明日人, 石橋 一樹, 市村 康, 末永 慶寛, 城越 徹矢, 山地 功二
2016 年72 巻2 号 p.
I_1075-I_1080
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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大阪府では,撹拌機能を有する人工魚礁を海底に設置し,海水の鉛直混合を促進し,貧酸素水塊の発生を軽減する試みを行っている.これらの人工魚礁は,流動制御機能,撹拌機能,餌料培養機能を併せ持っており,その効果については,既往の研究の中で有用性が確認されている.しかし,魚礁構造物設置後の環境改善機能を定量的に評価した例や魚礁構造物による流動制御機能と周辺環境の変化を関連付けた研究成果は乏しい.本研究では,実海域において,この人工魚礁の流動制御効果を濁度拡散状況で実証するとともに,流動制御機能効果による底質改善機能の検証を行った.
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梶原 瑠美子, 大橋 正臣, 三上 信雄, 南部 亮元, 桑原 久実
2016 年72 巻2 号 p.
I_1081-I_1086
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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近年の漁獲量減少に対して効率的な漁場再生を行うためには,水産有用種の生息地としての環境適地評価を行った上での漁場特性に応じた対策が重要ある.そのためには,基礎情報として海底被覆物の空間配置を広域に把握する必要がある.広域海底被覆物マッピングに最近では衛星画像が活用されているが,光透過度が低く複雑な地形を有する岩礁海藻域では,水柱影響の除去や教師設定などが課題となる.本研究は,漁場再生を念頭に,衛星画像を用いた海底被覆物マッピング手法とともに,得られた海底被覆物マップを用いて漁場特性を統計的に解析する手法を検討することにより,漁場環境の評価手法について検討した.その結果,赤色バンドやDI指標を用いた衛星画像からの海底被覆物マップや統計解析による漁場環境評価手法の有用性が示唆された.
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井上 太之, 村上 智一, 南條 楠土, 水谷 晃, 河野 裕美
2016 年72 巻2 号 p.
I_1087-I_1092
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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西表島網取湾ウダラ川汽水域において,潮汐に伴う塩分,水温,濁度,および優占魚類3種(リボンスズメダイ
Neopomacentrus taeniurus,アマミイシモチ
Fibramia amboinensis,およびオオクチユゴイ
Kuhlia rupestris)の分布の変化を調べた.汽水種のリボンスズメダイは,満潮時には塩分26-34‰となる汽水域下流と中流の様々な水深に分布したが,干潮時には塩分29‰となる底層(水深50cm以下)に分布した.一方,汽水種のアマミイシモチおよび降河回遊種のオオクチユゴイの分布は,潮汐に伴って変化せず,アマミイシモチは塩分が19-32‰の範囲で変動する中流に,オオクチユゴイは塩分が常に3‰以下の上流にそれぞれ分布した.これにより,熱帯汽水域では好適な塩分環境を適時選択する種や,ある範囲の塩分耐性を持つことで狭い範囲に生息する種など,環境変化に対する応答が魚種間で異なることが明らかになった.
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竹山 佳奈, 佐々 真志, 梁 順普, 渡辺 啓太, 齋藤 輝彦
2016 年72 巻2 号 p.
I_1093-I_1098
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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干潟造成の整備目標の一つとしてアサリ成育場の維持・管理があげられる.大島人工干潟では,干潟造成後に魚類や巻貝による食害が続いており,対策として干潟上に被覆網を設置している.しかしながら,潮下帯付近では被覆網では防止できないツメタガイによる食害が続いていた.水槽試験を実施した結果,10-20mmの砕石を100mm以上の層厚で覆礫することで,本種による食害防止効果を得ることができた.そこで,大島人工干潟にて小規模な実証試験を実施した.その結果,覆礫区は被覆網(砂)区よりも倍以上のアサリが生残しており,ツメタガイをはじめとする食害を防止できることが明らかとなった.以上の結果より,造成した干潟を部分的に覆礫あるいは礫を混合した底質とする地盤環境を考慮したアサリ成育場の新たな維持・管理手法を開発し,その有効性について実証した.
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中本 健二, 井上 智子, 仁科 晴貴, 樋野 和俊, 日比野 忠史
2016 年72 巻2 号 p.
I_1099-I_1104
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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広島湾沿岸域では,還元有機泥が堆積し底質環境の悪化を招いている干潟がある.この底質改善に石炭火力発電所から産出される石炭灰を造粒・固化した海砂代替材(石炭灰造粒物)が覆砂材として活用され,底質改善に併せてアサリ生息基盤の回復が期待されている.しかし,石炭灰造粒物はアサリ生息基盤としての適用性は十分明らかにされていない.本研究では,還元有機泥が堆積する干潟へ石炭灰造粒物を覆砂した場合のアサリ生息基盤としての適用性について,対照基盤(在来底質,自然砂礫)との比較による室内外での実験と調査により検討した.その結果,石炭灰造粒物と還元有機泥が混合されると還元有機泥のみと比較しアサリ成貝の生息基盤に適することが明らかとなった.またアサリの潜入しやすさを砂・自然礫質材と比較し定量的に評価した.
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赤倉 康寛, 小野 憲司
2016 年72 巻2 号 p.
I_1105-I_1110
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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高度に発展したグローバル・サプライチェーンによって,一地域で発生した災害が,世界中の経済に影響を及ぼすようになった.このため,平常時の効率性を損なうことなく,災害の経済被害の波及をできる限り押さえることが可能な物流網の構築が急務である.
本稿は,2014~2015年の米国西岸港湾の混乱が,国際海上コンテナ輸送,特に,日・米間輸送に与えた影響について,基礎的な分析を行ったものである.その結果,米国西岸港湾での荷役効率の低下状況を推定し,日・米間の輸送日数の増加及び航空輸送・東岸港湾利用へのシフト状況から直接被害額を試算した.
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木下 拓真, 野口 孝俊, 藤田 順史
2016 年72 巻2 号 p.
I_1111-I_1116
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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横浜港におけるコンテナターミナルは,本船荷役効率が高くコンテナターミナルのサービス水準が高いと言われる.基幹航路を有しているターミナルとして,コンテナ船の大型化に対応することは必然であるが,荷役効率のみでなくターミナル水準指標であるターンタイムについても高い水準を構築することが必要とされる.
本稿では,横浜港各コンテナターミナルのターンタイムを定量的に分析し,コンテナ搬出入業務におけるコンテナターミナルの改善点について考察した.
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塩谷 茂明, 寺井 克年, 柳 馨竹
2016 年72 巻2 号 p.
I_1117-I_1122
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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我が国の主要湾内および港内などの閉鎖海域は,多数の船舶が航行する.また,入出港の船舶と航路が交差するなどの交通の要衝となって,危険な海域である.これらの海域において,船舶の運航者は極度の緊張感から判断を誤り,海難の原因となることがある.
本研究では,このような状況の対策として,著者らは陸上から船上の操船者に対し,操船支援を行うシステムの第一段階を構築した.システムの第一段階の検証は実海域における実船実験で実施し,その有効性を論じた.その結果,本手法がシステムとして第一段階であるが、今後の改良により有効であることを,確認した.
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塩谷 茂明, 村上 麻衣, 柳 馨竹
2016 年72 巻2 号 p.
I_1123-I_1128
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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瀬戸内海は,我が国の主要港を有する,交通の要衝である.多数の船舶が瀬戸内海の主要港に入出港し,さらに九州や東海方面からの海上交通の航路でもあるため,交通量は多い.また多島海であり複雑な地形を有するので,航路が複雑に交差し,危険な海域である.
航行船舶の船種は多種多様であり,タンカーや化学物質などの危険物搭載船舶も多く,もしこれらの船舶による衝突や座礁等の海難が発生すれば,周辺海域に甚大な被害を与える.
本研究では,瀬戸内海における,特に危険物搭載船舶の海上交通の実態調査を実施した.調査の結果,危険物搭載船舶の海上交通の実態の把握が可能になった.
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