土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
72 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.32
  • 高尾 敏幸, Jae Hyeng LEE, 柴木 秀之
    2016 年72 巻2 号 p. I_301-I_306
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     韓国西岸に位置する始華潮力発電施設は,大潮時に9 mにも達する大きな干満差を利用して発電を行う施設である.潮力発電所では,満潮時前後の湖外から湖内に海水を取り込む際に発電を行っており,干潮前後に湖内から湖外に排水を行っている.
     本報告では,潮力発電所排水時に,水門から約2 km沖側においても2 m/sを超す強い流れが観測されたことを紹介する.また,流況シミュレーションによる潮汐・潮流と潮力発電所排水時の流れの再現結果から,排水時の強い流れは,水門から帯状に沖に向かって伸びており,潮時に伴い流軸が変化していたという点を紹介する.再現モデルの感度解析から,大規模な排水施設の流況のアセスメントにおいて,地形近似精度を確保する必要性がある点と人工粘性を大きくする差分スキームは適さないという点を明確にした.
  • 兒島 正典, 武若 聡, 福元 正武, 石野 芳夫, 坂井 良輔, 小野 信幸, 黒木 敬司
    2016 年72 巻2 号 p. I_307-I_311
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     金沢港に隣接する内灘海岸では,離岸流による海難事故がたびたび発生しているため,現地観測を実施し,離岸流の発生状況を把握することが安全管理上重要である.そこで,本研究ではXバンドレーダにより水際と砕波帯を連続観測した結果を解析し,離岸流の発生,これと海岸地形,海象等の関係を調べた.レーダ画像には,離岸流発生に伴う沖向きの流れが捉えられる.さらに,レーダ画像には沿岸の水際付近の海底地形において水深が局所的に大きくなる箇所(リップチャンネル)が砕波帯の途切れとして捉えられる.この研究では,離岸流の諸元,リップチャンネルの位置,入射波浪等の関連性を検討した.
  • 山口 龍太, 高山 隼斗, 金 洙列, 加藤 将也, 藤木 秀幸, 中條 壮大
    2016 年72 巻2 号 p. I_312-I_317
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     2009年2月に観測された九州西岸域における顕著なあびきを対象に,その要因とされる微気圧変動との対応を定点観測資料から調べた.また,気象庁再解析値を外力条件に用いた長波伝播計算により,メソスケールの気象因子が及ぼす影響を調べた.また,理想的な微小気圧波を仮定し,その移動により生じる水位変動から微小気圧波のみの作用による影響を調べた.最後に潮汐変動があびきに及ぼす影響について,同様に理想的な微小気圧波を用いた数値実験を実施した.その結果,メソスケールの気象要因からは顕著なあびきの発達は確認できず,また数hPa程度の振幅を持った理想的な微小気圧波は短期的に生じる顕著なあびきを表現し得ることが示された.また潮汐変動の有無によってあびきの振幅や減衰までの時間に顕著な変化が見られた.
  • 仲井 圭二, 橋本 典明, 額田 恭史
    2016 年72 巻2 号 p. I_318-I_323
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     副振動は西日本での出現が話題になることが多いが,全国的に発生している現象である.しかし,全国での出現特性を調べ,その海域特性について検討された例は少ない.そこで,本研究では,気象庁の検潮所における観測資料を用いて,全国沿岸における副振動の出現特性を調べた.
     副振動の出現回数の経年変化は,地点によって異なり,近傍の地点でも必ずしも良く似ているとは限らない.逆に距離が離れていたり,海域が異なったりする2地点でも,特性が似ている場合がある.
     一方,出現回数の季節変化をみると,北海道や沖縄,内湾の一部を除き,全国的に非常に似た特性を示す.副振動の原因となる低気圧や台風の影響は,毎年局地的に変動するが,長期間を通してみると,全国的にほぼ同じであるということができる.
  • 新原 亜希子, 谷川 正覚, 山城 徹, 加古 真一郎, 城本 一義
    2016 年72 巻2 号 p. I_324-I_329
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     観測と数値計算の結果を用いて,鹿児島湾で夏季に発生する副振動の特性を調べた.観測結果からは,鹿児島湾では周期17分と24分の副振動が卓越していることを示した.数値計算からは,周期17分の副振動は2つの腹と1つの節を持って鹿児島湾の北部海域で発生し,周期24分の副振動は2つの腹と節を持って南部海域で発生していることを明らかにした.また,副振動発生時の台風の進路を示した.
  • 平山 克也, 相田 康洋
    2016 年72 巻2 号 p. I_330-I_335
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     浅瀬やリーフ等が発達した複雑な海底地形を対象としつつも海岸構造物の概略設計を行う際には,既存の実験式等を用いて波浪外力の概略値を得ることも有用である.そこで本研究では,長いリーフを対象とした系統的な数値実験をブシネスクモデルにより行い,リーフ上の波高・平均水位に対する再現性を確認した上で,数値実験で得られたサーフビート波高の分布特性を基本波の波高分布と関連づけて整理するとともに,既存の実験式を適用してリーフ上のサーフビート波高を推定する際に留意すべき事項等について考察した.なお数値実験には,斜面及びリーフ上の波高分布に関する既存の実験結果を用いて乱流スケールの与え方を一部修正した砕波モデルを用いた.これらの結果,非砕波時にはリーフ上で単調増加するサーフビートの波高分布は,砕波時にはリーフ入射直後に減衰すること等が明らかとなった.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 井内 国光, 日野 幹雄, 畑田 佳男
    2016 年72 巻2 号 p. I_336-I_341
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近年,気象庁によりMSM(Meso Scale Model)に基づく日本周辺の高空間解像度風資料が公開されているが,海上風に関しては比較に用いるべき観測資料が不足していることから,その精度の検証は十分でない.本研究では,異なる期間をもつ10年前後のブイロボット観測風資料や衛星観測結果に基づくblended sea winds資料,さらにGPSブイにおける2台風時の観測風速資料を用いてMSM風資料の精度を間接的または直接的に検討した.得られた知見はつぎのようである.1)期間が異なる10年前後のblended sea winds資料とブイロボット観測風資料およびMSM風資料の相互比較から,MSM風資料がブイロボット観測風資料と概略で対応する特性が間接的に推測される.2)MSM風速は継続時間5日程度のGPSブイ観測風速に経時的に追従するが,減衰期には観測風速ほど急減せず,大きめの値を与える.
  • 横田 雅紀, 中尾 直幸, 児玉 充由, 橋本 典明, 山城 賢
    2016 年72 巻2 号 p. I_342-I_347
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究ではA1Bシナリオが仮定された高解像度全球大気モデルMRI-AGCM3.2Hの気候予測値(海面更正気圧,6時間毎)から台風を抽出し,日本列島の周辺海域に来襲する台風の平均的な強度や経路の出現特性の将来変化について検討した.その結果,海面水温分布の変化パターンによらず日本列島の周辺における台風の平均的な強度は増加するものの,個数については必ずしも将来で減少せず,台風が増加する海面水温変化パターンも存在することが明らかになった.また,MRI-AGCM3.2SとMRI-AGCM3.2Hの解像度のみが異なる条件での比較から,海域毎の平均的な中心気圧や個数の増減については概ね同様の傾向を得たが,台風の中心が各緯度線を通過する際の通過経度の平均値から推定した平均経路については両者の結果がばらつき,台風経路を平行移動させるような将来変化を仮定するのが難しいことが改めて示唆される結果であった.
  • 山城 賢, 園田 彩乃, 百合野 晃大, 久保 貴之, 横田 雅紀, 橋本 典明
    2016 年72 巻2 号 p. I_348-I_353
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     九州北岸は,同じ九州地方の有明海,八代海,周防灘沿岸域に比べると高潮が発生しにくい条件にあることから高潮に関する検討例は非常に少ない.しかし,将来的には地球温暖化によりこれまで以上に強大な台風が来襲するといわれており,九州北岸においても高潮災害の甚大化が懸念される.本研究では,九州北岸において最も高潮の危険性が高いと思われる博多湾について,高潮の発達特性を理解することを目的に,数値シミュレーションによる基礎的な検討を行った.その結果,風向風速に応じた最大高潮偏差の分布パターンや,沿岸各地の風向に対する最大高潮偏差の変化,最大高潮偏差に達するまでの時間など,博多湾における高潮の発達特性を明らかにした.
  • 畠 俊郎, 阿部 廣史
    2016 年72 巻2 号 p. I_354-I_359
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     波浪による海底パイプラインの浮上や,海底砂地盤の液状化による海底地すべり等の災害が報告されている.加えて,新しいエネルギー資源として注目されているメタンハイドレートの生産においても表層地盤の崩壊が危惧されるなど海底地盤を対象とした防災技術の重要性が高まっている.本論文では,海底砂地盤の液状化現象に着目し,底泥および海水中に既に生息している微生物の機能を活用して砂の間隙中に炭酸カルシウムを析出させることにより,低環境負荷で液状化強度改善効果を得る新しい原位置地盤改良技術に着目した.本文では,富山・新潟県境付近の海底で採取した底泥中に生息しているウレアーゼ活性陽性微生物の働きを高め,豊浦砂表面にカルサイトを析出させることで液状化強度を改善する微生物固化技術の有効性について検討した結果を報告する.
  • 大矢 陽介, 小濱 英司, 佐伯 嘉隆, 佐藤 成
    2016 年72 巻2 号 p. I_360-I_365
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震の際,空港誘導路において地下構造物周辺の直上地盤で局所的な沈下被害が発生した.本研究では,このような地下構造物周辺で発生した沈下被害の原因を明らかにすることを目的に,1g場模型振動実験において液状化地盤のひずみ履歴と地表面沈下の関係性を検討した.その結果,地下構造物近傍の地盤において軸差せん断ひずみの最大値,累積値が他の位置と比べ大きくなること,地表面沈下量が大きくなると地盤内のひずみ分布に対応した沈下分布になることが分かった.
  • 小林 孝彰, 佐々 真志, 渡辺 啓太, 山崎 浩之
    2016 年72 巻2 号 p. I_366-I_371
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本震で発生した過剰間隙水圧が残留する地盤が,余震を受けて液状化する状況を想定し,2種類の応力制御による非排水繰り返し中空ねじりせん断試験を行った.段階載荷試験では,試験前半に一定振幅の正弦波によって目標とする過剰間隙水圧比を発生させた.その後,段階的に振幅が増加するせん断応力波形を与え,過剰水圧が再上昇するせん断応力レベルを評価した.不規則波載荷試験では,2011年東北地方太平洋沖地震の地震動に基づいた本震,余震波形を連続して与えた.両試験の比較より,段階載荷試験より求まる水圧が再上昇するせん断応力比の閾値を用いることで,不規則波に対しても水圧上昇程度を予測できる可能性を示した.
  • 竹之内 寛至, 佐々 真志, 山崎 浩之, 足立 雅樹, 高田 圭太, 岡見 強, 金子 誓, 善 功企
    2016 年72 巻2 号 p. I_372-I_377
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     静的圧入締固め工法(CPG工法)は,低流動性モルタルを地盤に静的に圧入して地盤の密度を増大させる液状化対策工法のひとつである.CPG工法は,既設構造物の直下や近傍での適応が可能であることから,東京国際空港をはじめこれまでに多くの施工実績を積み重ねてきている.しかし施工にともなう地盤変位,特に隆起が問題であり,その抑制が課題となっている.本研究では,新しい圧入方法であるアップダウン施工(U/D施工)に関する各種の模型実験の実施を通じて隆起抑制効果,改良効果および液状化対策効果が向上した新たなCPG工法を開発した.本施工法によると,従来の圧入方式であるボトムアップ施工法に比べて,平均隆起量にして8割以上の低減,液状化強度にして1.5倍以上の効果が得られた.
  • 佐々 真志
    2016 年72 巻2 号 p. I_378-I_383
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本論文では,波による残留水圧の蓄積による液状化ならびに海底液状化流動の特性・機構に関する筆者らの近年の成果・知見を取纏めて提示すると共に,両者のメカニズムの重要性を端的に示した最新の事例分析を示している.2014年末に生じたイベントに対して,これまでに得られた知見をふまえた定量的な検討を行った結果,浚渫土の沖捨てにより形成されたシルト質地盤が高波による残留水圧の蓄積により液状化し重力流に遷移した結果,長距離流動・再堆積したことを明らかにした.又,これらの被災リスクを評価・予測するための基盤を提示した.
  • 喜古 真次, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 神戸 泉慧, 引地 宏陽, 平尾 隆行, 竹本 誠
    2016 年72 巻2 号 p. I_384-I_389
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     管理型海面廃棄物処分場跡地の高度利用を考えた場合,底面遮水基盤(粘性土地盤)を貫通するような杭の打設が必要になるものと考えられる.この場合,処分場内の一部の廃棄物,特に大きな塊やひも状の廃棄物が,杭の打設に伴って連れ込まれることが現地施工において懸念されている.そこで本研究では,杭の先端形状を変えることで廃棄物の連れ込み状況が変化するのではないかと考え,遮水基盤上の廃棄物層を模擬した地盤に先端形状の異なる模型杭を貫入することで,各先端形状の杭を貫入した時の廃棄物の連込み状況を確認した.実験結果から,杭先端の内側を細くした形状が塊状の廃棄物の連込み抑制に効果があることがわかった.ひも状の廃棄物に対しては,杭の実質部の先端面積を狭くすることが効果的であると考えられるが,実験結果には明確な差が認められなかった.
  • 倉科 孝, 菊池 喜昭, 兵動 太一, Janaka J. Kumara, 中野 彰子, 原 宏幸
    2016 年72 巻2 号 p. I_390-I_395
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     港湾における杭基礎を用いた構造物では,施設の大型化や構造形式の変化に伴い,杭に大きな支持力が期待されるようになっているため,杭の長尺,大径化が進んでいる.ところが,開端杭の閉塞の問題と深度に依存する杭の支持力評価の問題が複雑に絡み合っているため,長尺,大径化した開端杭の支持力評価方法は定まっていない.本研究では開端杭の閉塞問題に着目し,特に,杭先端部の内周面摩擦力に着目し,杭先端部の肉厚とその長さを変えた模型杭を相対密度の違う地盤に貫入する実験を行った.実験結果から,杭内部の土圧係数Khを推定し,内周面摩擦力分布を推定した.その結果,杭先端付近の内周面摩擦力は杭先端付近ほど大きく,杭軸に沿って上方に行くほど急激に小さくなることがわかった.
  • 水谷 崇亮, 松村 聡
    2016 年72 巻2 号 p. I_396-I_401
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     鋼管杭を打撃施工する場合,ハイリー式等の杭打ち式による施工管理が行われることが一般的である.しかしながら,ハイリー式は杭の軸方向抵抗力の推定手法としては精度が低いことが知られている.これに対し,近年,杭の衝撃載荷試験の結果を用いてハイリー式を補正し,従来よりも精度の高い施工管理を行う方法が提案されている.本稿では,水島港で実施された多数の衝撃載荷試験結果を基にハイリー式の補正係数を試算し,その適用性について検討を行った.検討の結果,全橋脚のデータを用いて補正係数を決定する場合には,ばらつきが大きいため安全上の余裕を確保するために補正係数の決定方法を工夫する必要があることを示した.一方,個々の橋脚毎に補正係数を決定する場合には,ばらつきは一定の範囲にとどまり,施工管理に十分に適用可能であることを確認した.
  • 中道 正人, 山口 誠, 梅山 崇, 山本 修司, 川原 修, 大石 幹太, 片桐 雅明
    2016 年72 巻2 号 p. I_402-I_407
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     浚渫土砂処分場の受入容量を拡大する嵩上堤体の構築のために,浚渫土砂が堆積した超軟弱粘土地盤に対して真空圧密工法による地盤改良工事が行われた.本稿では,施工された真空圧密工法の地盤改良設計,施工時の動態観測結果,観測結果による地盤改良設計の評価を示し,設計手法を提案する.次に,改良後の地盤上で行われた観測施工による堤体盛立工事とその時の地盤挙動を報告する.
     本検討から,浚渫粘土が堆積した土砂処分場内の粘土地盤は未圧密状態で,それを考慮した地盤モデルを用いて真空圧密工法の設計を行う必要があること,地盤モデルの設定には土砂処分場の履歴を考慮した埋立解析手法が有効なこと,安全に盛り立てるための方策として観測施工が有効であることが得られた.
  • 新舎 博, 堤 彩人, 熊谷 隆宏, 竹山 智英, 北詰 昌樹
    2016 年72 巻2 号 p. I_408-I_413
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     真空圧密は粘土地盤の圧密改良工法として広く利用されているが.ドレーンから粘土への負圧伝播過程を実験と解析とで解明したものは少ない.そこで,軟弱な浚渫粘土を対象とした真空圧密土槽実験を行い,沈下および負圧の伝播過程を実験と解析とで比較した.その結果,弾塑性構成式を搭載した圧密解析プログラム「DACSAR-MC」を用いると,平均圧密度が70%程度までは,実験と解析での沈下および負圧挙動がよく一致する結果が得られた.圧密後期において両者が異なったのは,実験での制約によるものと考えられる.
  • 三原 一輝, 末次 大輔, 笠間 清伸, 畠 俊郎
    2016 年72 巻2 号 p. I_414-I_419
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近年,セメントを用いた固化処理工法が盛んに利用されているが,セメント改良土は海水に接触すると,固化成分であるカルシウム(Ca)が海水中に溶出し劣化することが既往の研究から明らかになっている.そこで,本研究では,海水曝露条件下における劣化と温度の関連を明らかにするとともに,微生物由来の尿素加水分解酵素を利用し,セメント改良土から溶出するCa分をCaCO3としてセメント改良土中に再固定する新しい劣化抑制技術について検討した.試験の結果から,セメント改良土は海水曝露される温度条件が高いとより劣化が促進されること,微生物機能を利用すると温度条件に関わらずCaの溶出を抑制することが明らかとなった.以上より,セメント改良土の海水環境下での劣化抑制技術として微生物機能の併用が有効であると考えられる.
  • 中本 健二, 井上 智子, 松尾 暢, 渡辺 健一, 樋野 和俊, 日比野 忠史
    2016 年72 巻2 号 p. I_420-I_425
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     石炭灰と高炉セメントB種を混合し,造粒・固化した海砂代替材(石炭灰造粒物)がリサイクル材料として製造されている.港湾工事用のサンドコンパクション材や海域の覆砂材として活用され,その適用範囲が拡大されることにより循環型社会形成への寄与が期待される.海砂代替材は,石炭灰とセメントおよび水の化学反応により硬化しており,天然材料と異なり長期的な化学反応および,緩やかであるが海水中での浸漬に伴い組成物質が変化すると想定される.しかし,石炭灰とセメントの配合比率に基因する長期的な化学反応特性と海域で長期間浸漬した場合の経時的な組成変化は十分に明らかにされていない.本研究では,この海砂代替材の配合比率による化学組成の変化と海域で長期的に浸漬した後の組成物質の最終形態を明らかにした.
  • 堂本 佳世, 笠間 清伸, 平澤 充成, 善 功企, 中道 正人, 山口 誠, 梅山 崇, 片桐 雅明
    2016 年72 巻2 号 p. I_426-I_430
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近年,土砂処分場の延命化が急務となっており,浚渫土砂の減容化が求められている.著者らは,浚渫土砂のリサイクルを目的として,浚渫土砂にセメントを混合した直後に高圧脱水固化処理装置を用い,高圧脱水し,直方体形状のブロックを作製した.また,セメント混合した浚渫土砂を高圧フィルタープレスによって脱水処理し,土塊を作製した.本研究では,高圧脱水固化処理装置によって脱水固化処理した浚渫土砂ブロックと高圧フィルタープレスによって脱水固化処理した機械脱水処理土の材料特性の比較を行った.
  • 堤 彩人, 田中 裕一, 山田 耕一
    2016 年72 巻2 号 p. I_431-I_436
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     製鋼スラグ混合土の脆性的な破壊特性を短繊維により改善し,海面処分場の土質遮水材として適用することを検討した.本研究では,含水比160 %の名古屋港浚渫土,粒径9.5 mm以下の製鋼スラグ,およびポリエステル製短繊維(直径14.8 μm,長さ20±5 mm)により短繊維・製鋼スラグ混合土を製造した.一軸圧縮試験では短繊維・製鋼スラグ混合土はひずみ硬化型の応力-ひずみ関係を示し,短繊維を混合することで固結した製鋼スラグ混合土のクラックの発生を抑制できることを確認した.三軸圧縮・透水試験により軸ひずみを受けた短繊維・製鋼スラグ混合土の遮水性を評価した結果,軸ひずみとともに透水係数は増加し,その増加傾向はせん断時の有効拘束圧に依存することが明らかとなった.例えば,製鋼スラグと短繊維の混合体積比をそれぞれ30 vol%と0.5 vol%として製造した短繊維・製鋼スラグ混合土は,2.2×10-9m/sの初期透水係数を有し,50 kN/m2の有効拘束圧が作用する条件下において17 %の軸ひずみを受けても,1.0×10-8m/s以下の透水係数を維持できることが確認された.
  • 梁 順普, 佐々 真志
    2016 年72 巻2 号 p. I_437-I_442
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では、韓国済州道の北東部陸上と海上,南東部の海上および北西部の海上で採取された玄武岩の岩石に対して三軸圧縮試験を行い,その結果から算定されたMohr-Coulomb破壊基準の粘着力及び内部摩擦角と玄武岩の多孔質構造を表すパラメータである空隙率(有効間隙率)との関わりを分析した.その結果,玄武岩の空隙率と粘着力の関係は,空隙率と見掛け比重の二つの相異なる関係に基づいて,その関係を明確に区別することができ,空隙率の増加につれて粘着力は急激に減少した.一方,玄武岩岩石の内部摩擦角は,空隙率が増加するにつれて徐々に減少する傾向にあった.
  • 本田 秀樹, 土田 孝, 谷敷 多穂, 林 正宏, 山田 耕一, 熊谷 隆宏, 柳橋 寛一, 牧野 常雄
    2016 年72 巻2 号 p. I_443-I_448
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     従来の捨石を用いた潜堤の腹付け材にカルシア改質土を組み合わせた人工干潟構造を考案した.この人工干潟構造は,カルシア改質土の強度特性などを活用することで,従来構造よりも潜堤部の地盤改良幅の縮小によるコスト削減,潜堤背後に投入する浚渫土の増量などが可能となる.ここでは,提案した人工干潟構造の安定性の実証を目的として,遠心模型実験を行った.その結果,提案構造の変形量は,従来構造と同程度であったことから,従来と同等の安定性を有していると考えられる.また,提案構造の安定計算法として,現行の円弧すべり計算が適用可能であると考えられる.本研究では,カルシア改質土を腹付け材とした人工干潟構造の概要や特徴,地盤改良幅の縮小効果,および遠心模型実験による安定性の検討内容について述べる.
  • 渡部 要一, 佐々 真志, 金子 崇, 橋本 裕司
    2016 年72 巻2 号 p. I_449-I_454
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     浚渫土砂に覆砂が施された人工干潟において,多チャンネル型表面波探査(MASW)による継続的モニタリングを実施し,物性の変化をせん断波速度によって把握してきた.干出時にジオフォンを使って実施してきたこれまでの調査では,圧密沈下によって干潮時にも水没するようになったエリアのモニタリングは継続できなくなってしまう.そこで本研究では,人工干潟の維持管理にMASWを適用する上での課題となる水没エリアへの対応を目的として,水没してしまった(あるいは将来水没するであろう)エリアにおいてハイドロフォンを使ったMASWの適用を試みた.ハイドロフォンを使ったMASWの結果は,ジオフォンを使ったMASWの結果とほぼ同様のものが得られたが,軟弱層での減衰の影響を受けやすく,覆砂厚を薄く評価する傾向があること,軟弱層の厚さを捉えられない傾向があることに留意が必要である.
  • 仁科 晴貴, 中本 健二, 樋野 和俊, 中下 慎也
    2016 年72 巻2 号 p. I_455-I_460
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     石炭灰造粒物はヘドロが集積する閉鎖性内湾などへの覆砂材として活用され,底質・水質改善効果が確認されている.石炭灰造粒物を浅場へ設置するにあたり,設置水深,断面形状などを設計するために,流れ・波浪による移動特性を把握し,数値シミュレーション等による移動予測が望まれる.本研究の目的は,砂礫と材料物性の異なる(比重が小さい,球形)石炭灰造粒物について,波浪による岸沖方向の移動状況を確認し,数値シミュレーションにより海浜変形の再現および浅場造成時の設計を可能にすることである.水理実験および平衡断面予測モデルによる再現計算の結果,混合粒径の石炭灰造粒物における海浜変形を予測でき,浅場設計へ適用可能となった.更に移動抑制を目的として潜堤を設置した水理実験と再現計算により,その断面変化を検討した.
  • 玉井 昌宏, 辻本 剛三, 細山田 得三
    2016 年72 巻2 号 p. I_461-I_466
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     新潟県内の諸海岸の砂の色彩の特徴を定量的に明らかにするとともに,それと海岸近傍に河口を有する河川の砂の色彩,その河川の流域や海岸周辺地域の地質特性との関係について検討した.同県内の地質構造は構造線や大地溝帯,火山岩類等の影響により極めて多様である.荒川以東の地域の海岸が,朝日帯の珪長質深成岩により県内で最も明るい色彩を持つこと,大地溝帯地域では米山の火山岩類や新潟油田地域の堆積層によって暗い色を持つこと,非アルカリ苦鉄質火山岩類が多い地域の海岸砂は茶色系統の暗色を持つこと等,地質特性が海岸砂の色彩に強く影響することが確認できた.
  • 宇野 州彦, 三好 俊康, 荒水 照夫, 大塚 久哲
    2016 年72 巻2 号 p. I_467-I_472
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     民間事業者が保有する桟橋は地震対策の対応が遅れがちであるが,港湾法の改正により今後民間施設においても耐震補強工事の必要性が高まると思われる.しかし民間施設の耐震補強工事においては,施設を供用しながら実施できる工法により施工する状況も考えられる.そこで著者らは橋梁等の分野で利用されている制震ダンパーを桟橋に設置する耐震補強工法を考案し,模型振動台実験においてその効果を把握することを本研究の目的とする.
     実験結果から,橋梁等と同様に桟橋においても制震ダンパーで適切に地震エネルギーを吸収できることが示され,桟橋上部工の応答変位や杭に発生する断面力を大幅に低減でき,耐震補強工法として非常に有効であることが示された.
  • 寺島 彰人, 長尾 毅, 大澤 史崇
    2016 年72 巻2 号 p. I_473-I_478
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     現行の港湾基準では,桟橋のレベル1地震動に対する設計は震度法で実施し,耐震強化施設等では動的相互作用を考慮した非線形有効応力解析によりレベル2地震動に対する照査を行うこととなっている.レベル2地震動のような大規模地震時には上部工に作用する慣性力だけではなく地盤変形等の影響が卓越し,杭の地中部で大きな断面力が発生するが,通常の簡易な骨組解析ではこの現象を再現できないと考えられる.本研究は,桟橋構造の簡易な設計手法の確立に向けた基礎的な検討として,周波数特性がフラットなホワイトノイズ波を基盤入力波形とした二次元動的有効応力解析(FLIP)を実施し,この解析による桟橋の鋼管杭に発生する曲げモーメントの分布及び値に着目して,弾塑性骨組計算による再現計算を試みたものである.
  • 長尾 毅, 伊藤 佳洋, 山田 雅行, 森田 真弘
    2016 年72 巻2 号 p. I_479-I_484
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     琉球弧の中央部に位置する沖縄島の地層構成は,琉球層群,島尻層群が堆積している.琉球層群のうち琉球石灰岩層は,標準貫入試験により得られるN値のばらつきが大きいことが特徴である.このためS波速度は非常に範囲の広い値が報告されている.これは固結の程度のばらつきによると考えられるが,標準貫入試験やPS検層の実施においてはボアホールを形成する段階で基本的に地盤の固結構造を破壊するため,非破壊状態の地盤剛性が必ずしも適切に得られているとはいえない可能性がある.本研究では,非破壊状態での那覇港周辺の地盤のS波速度構造を評価するため,常時微動アレイ観測を行って空間自己相関法により表層から地震基盤に至るS波速度構造を推定した.
  • 長尾 毅, 福田 健, 伊藤 佳洋, 山田 雅行
    2016 年72 巻2 号 p. I_485-I_490
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     港湾構造物の設計地震動は,震源特性,伝播経路特性,サイト増幅特性を考慮して設定されている.このうちサイト増幅特性は,強震記録の解析により評価する方法が推奨されているが,強震記録が得られていない地点については,常時微動観測により評価する方法が提案されている.更に,より簡易な方法として,地震基盤に至る地盤構造をもとにした周波数伝達関数を補正することでサイト増幅特性を評価する方法も近畿地方を対象に提案されている.本研究ではこの方法を九州地方の港湾にも適用するとともに,クリギング法を適用した補正方法について検討し,両者の精度について相互比較を行った.
  • 鈴木 直樹, 石原 行博, 磯部 雅彦
    2016 年72 巻2 号 p. I_491-I_496
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,耐津波構造物には粘り強さが求められている.大きな津波については一つの構造物で完全に防ぐのではなく多重防護とするのが現実的であり,杭式透過型防波柵が津波対策に有効であると考えられる.そこで,杭式透過型防波柵の津波低減効果について簡単な理論的考察をおこない,水理模型実験にて,空間率と柵素材の効果を確認した.実験の結果,防波柵に作用する波力および防波柵の下流側に流入する津波の流量はトレードオフの関係にあり,素材が持つ摩擦損失係数および空間率によって表される損失係数の関数となることがわかった.これを踏まえ,損失係数を適切に設定することで効果的な防波柵を設計できることを示した.最後に,フルード則を用いて実験結果を実物大の事例に適用し,実物の防波柵の設計事例を示した.
  • 中村 文則, 田中 泰司, 工藤 進平, 細山田 得三
    2016 年72 巻2 号 p. I_497-I_502
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波において,津波の揚力等の鉛直波力による橋桁の流出事例が多数報告されている.本研究では,岩手県陸前高田市に位置する沼田跨線橋を対象に東北地方太平洋沖地震津波による橋桁への作用波力の再現を行い,鉛直波力による橋桁の流出について検討を行った.さらに,被災前後の地形で数値解析を行い,津波による地形変化が橋桁に及ぼす作用波圧への影響についても検討を行った.その結果,計算で再現した鉛直波力は橋桁の水中重量に達していないが,橋桁下部に残留している空気の浮力を考慮することで,鉛直波力が水中重量を上回ることが明らかになり,橋桁に作用する波力が被災前後の地形の違いで差が生じることが示された.
  • 秦 吉弥, 湊 文博, 小山 真紀, 鍬田 泰子, 中嶋 唯貴, 常田 賢一
    2016 年72 巻2 号 p. I_503-I_508
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     和歌山県広川町では,南海トラフ巨大地震の発生によって,強震動の作用だけでなく巨大津波の来襲も予想されている.本稿では,広川町の津波来襲予想地域における強震動予測地点(476地点)から指定避難場所までの歩行所要時間に関する計測実験を行うことで避難歩行時間を評価した.そして,避難困難度の指標に基づき広川町の街地内における津波避難困難区域の抽出を行った.さらに,抽出した津波避難困難区域に避難施設が今後新設された場合の減災効果についても言及した.
  • 湊 文博, 秦 吉弥, 中嶋 唯貴, 小山 真紀, 鍬田 泰子, 山田 雅行, 常田 賢一
    2016 年72 巻2 号 p. I_509-I_514
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近未来に発生が懸念されている南海トラフ巨大地震の震源域では,強震動の作用のみならず,本震発生数分後に巨大津波の来襲が予想されていることから,避難余裕時間に基づいた津波避難困難区域の抽出手法の提案が行われている.近未来の地震である南海トラフ巨大地震と近年の歴史地震である1993年北海道南西沖地震は,共通点が非常に多い.そこで本稿では,1993年北海道南西沖地震によって甚大な被害を受けた奥尻島青苗地区を対象フィールドとした強震動評価ならびに避難歩行実験を実施し,得られた結果と人的被害のデータを比較することによって,津波避難困難区域の抽出手法の適用性について確認を行った.
  • 阿部 幸樹, 高野 伸栄, 田原 正之, 長野 章
    2016 年72 巻2 号 p. I_515-I_520
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災においては,全国において漁港及び漁村に319港 815,059百万円の大被害をもたらした.特に岩手県,宮城県及び福島県においてはそれぞれ,108港 278,488百万円,142港 423,780百万円,10港 61,953百万円の壊滅的な被害となった.この甚大な漁港災害復旧工事を実施していくためには,技術者,資材及び作業船などの機材の不足をどのように克服するかが大きな課題であった.本研究は,復旧工事の経過を整理し,全国に渡る大規模災害が生起した場合,被災直後からの工事,受発注体制の整備及び資材,機材,技術者の確保について検討したものである.そして,今後発生が予想される全国規模の災害発生時における漁港災害復旧工事に対応すべきことを整理した.
  • 井上 翔太, 笠間 清伸, 平澤 充成, 善 功企, 古川 全太郎, 八尋 裕一
    2016 年72 巻2 号 p. I_521-I_526
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     津波による防波堤の被災要因には3つあるといわれているが,なかでも越流・浸透流による港内側マウンドの洗掘については研究がなされてこなかった.そこで,筆者らは防波堤の越流ならびに捨石マウンド内に発生する浸透流を考慮して,港内側マウンドを形成する捨石の安定重量を算出する式を提案した.越流・浸透流による港内側マウンドの洗掘を防止するためには,浸透流を逃がしつつ,越流に耐えうる被覆ブロックを港内側に設置することが有効だと考えられるため,本研究はその最適な形状を,提案した式を用いて求めることを目的としている.本論文ではまず理論的に開口部を持つ被覆ブロックの最適な形状や配置を求め,その形状を持つ模型被覆材を用いて水理模型実験を行い,その妥当性を検証した.
  • 多田 毅, 宮田 喜壽, 藤本 和隆, 大城戸 秀人
    2016 年72 巻2 号 p. I_527-I_532
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,マウンド等の構造物の被覆材としての鉄線籠マットレスを対象として,津波を想定した流れに対する安定性を評価するために,水理模型実験によりイスバッシュ定数を算定することを目的とした.
     水平に設置された開水路中にステンレス製のマウンドを設置し,その天端上に鉄線籠マットレスを敷設し,流量を段階的に増加させながら定常流を与え,被災の進行度合いを流速と被災個数との関係を調査した.籠マットの配置を様々に変化させた実験を行うことで,被災プロセスとマットの配置との関係を明らかにした結果,天端の端部を適切に処置した場合や法面まで同じ条件が延長された場合などに相当する,材料および配置パターンに固有の安定性を反映した安定性の指標としてのイスバッシュ定数を算定することができた.
  • 佐藤 昌宏, 大村 厚夫, 柴田 大介, 上原 甲太郎, 及川 隆, 青木 伸之
    2016 年72 巻2 号 p. I_533-I_538
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     ケーソン式防波堤に津波が来襲する場合,津波による防波堤の内外水位差に伴い,基礎捨石マウンドには浸透流が発生し,支持力が低下する.この現象を定量的に把握するために,地盤解析汎用プログラム「GeoFem」の適用性を検討するとともに,腹付工による支持力増加効果を計算した.また,浸透力の有無を考慮可能なGeoFemによる適用結果と,浸透力の影響を考慮していない簡易ビショップ法を用いた円弧すべり解析結果を比較した.本検討では,GeoFemによる浸透力の効果を簡易ビショップ法での耐力作用比の低下と捉えて,簡易ビショップ法を用いて浸透力の効果を見込んだ耐力照査を行うこととし,簡易ビショップ法とGeoFemで求めた耐力作用比を比較した結果,高い相関性がみられた.これにより,簡易ビショップ法の結果に安全率を乗じることで,浸透力を踏まえた検討の可能性が示唆された.
  • 本田 隆英, 小俣 哲平, 織田 幸伸, 伊藤 一教
    2016 年72 巻2 号 p. I_539-I_544
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     津波越流による海岸堤防の被災に,堤体の法肩での被覆工のめくれ上りや法尻部の洗掘などが指摘されている.本研究では,堤体模型を用いた固定床水理実験と数値解析を行い,津波越流時に生じる局所的な圧力分布を詳細に把握するとともに,堤体の粘り強さを向上させる対策工について検討を行った.実験では堤体の裏法肩および裏法尻で圧力変化が大きく,特に裏法肩では大きな負圧が働いていることが確認された.そこで,裏法肩端部と裏法尻の下流側にそれぞれ小型の堰型対策工を設置することで,裏法肩での負圧や裏法尻での流速を大きく低減する効果が得られ,堤体の粘り強さを向上できる可能性が示唆された.また,OpenFOAMにより行った数値解析は,局所的な圧力・流速変化を含め,実験結果をおおむね良好に再現できることを示した.
  • 西畑 剛, 前田 勇司, 桝尾 孝之, 山本 浩二
    2016 年72 巻2 号 p. I_545-I_550
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,空気を注入して起立する空気袋構造形式の堤防に対し,その耐津波性能を水理模型実験から検証した.陸上遡上時の水深が比較的小さい津波を対象とし,実スケールの実験を実施した.半地下土倉を壁で仕切った上で,壁面開口部に試験体堤防を設置して注水し,設計津波波圧分布を模擬した静水圧を膜体の堤防に作用させて,膜の歪みや変位,内部気圧の変化などを計測した.
     実験の結果,空気袋構造形式では,津波作用時に袋内の空気圧縮と内部圧の上昇に伴う材料変形や空気圧を介在した背面側の袋体の変動,初期内部気圧と大気圧のずれによる材料歪みの変化などに留意が必要である.一方,津波作用時の袋内の圧力上昇は,膜体前面の歪みを緩和するため,耐津波性能は向上する.
  • 小野 信幸, Jae Hyeng LEE, 柴木 秀之
    2016 年72 巻2 号 p. I_551-I_555
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     韓国西岸では2011年8月より始華潮力発電施設が稼働を開始した.発電施設前面では,干潮時前後に,湖内の海水が水門から排水され,水門前面海域で最大2.5m/sの流れが帯状に生じる.この強い流れは,前面海域のシルト・泥質で構成された海底の地形を顕著に変化させた.本報告は,施設稼動後の短期間で生じた海底地形変化について,現地調査データに基づく解析を行った.排水時の強い流れの作用下において,前面海域では深掘れと底質の粗粒化が生じることが確認された.また,施設前面の流速と底質粒径より移動限界水深を検討し,今後生じる侵食と粒径変化を推定した.
  • 菅 紘毅, 辻本 剛三, 柿木 哲哉, 宇野 宏司, 小林 薫
    2016 年72 巻2 号 p. I_556-I_561
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     水産系副産物(ホタテ貝殻など)の利用法の一つとして降雨浸透制御技術であるキャピラリーバリアへの活用が検討されている.通常,キャピラリーバリアには砂と礫が用いられるが,近年では水産系副産物である貝殻を用いる研究・開発も進められている.このキャピラリーバリア機能を砂浜に適用することで砂層内に浸透した海水をより迅速に沖へ排水し,砂の侵食を低減する効果と共に,砂の堆積を促進する効果も期待できる.
     本研究では,ホタテ貝殻を用いたキャピラリーバリアの海浜断面変化に及ぼす影響について検討することを目的とし,室内実験による一定水深条件と変動水深条件での実験を行った.その結果,貝殻の設置による海浜断面変化への影響を確認し,砂の侵食低減効果および堆積促進効果を実験的に明らかにした.
  • 鷲見 浩一, 岡野谷 知樹, 山崎 崇史, 中村 倫明, 武村 武, 落合 実
    2016 年72 巻2 号 p. I_562-I_567
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では水理実験を実施して,不規則波の人工リーフ堤体への作用時に基礎マウンド上へ設置される被覆材の有無,中詰工の粒径の相違が人工リーフの断面形状に及ぼす効果を検討した.その結果,被覆堤体と捨石堤体の断面形状の比較により透過率の低減には,波浪の作用に伴う天端水深の縮小のような形状的な変化が寄与した.また,今回の実験では捨石堤体の断面変化の規定には,相対天端水深によりも天端水深の絶対値としての距離が支配的であった.中詰工として一般的に用いられる自然石の質量範囲内であっても,被覆ブロックの転倒による中詰工の流出により,法肩周辺域では侵食域が拡大する可能性があることが判った.
  • 宇多 高明, 石川 仁憲, 芹沢 真澄, 宮原 志帆, 石野 巧, 鈴木 悟, 岡本 光永
    2016 年72 巻2 号 p. I_568-I_573
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     富士海岸の沼川第二放水路吐口での堆砂機構についてBGモデルを用いた数値計算により検討した.計算では,放水路形状を2連ないし3連とするとともに,吐口の先端水深を3,5m,敷高を-3,-5mと変えて検討した.さらに放水路内堆砂の全量を除去した後の再堆砂の計算も行った.吐口内堆砂は,波浪侵入に伴う漂砂により函渠内へと砂礫が押し込まれることによる.その際,東端の放水路で最も堆砂量が多く,水路内へと約30m砂礫が押し込まれることが分かった.また,放水路内への堆砂を除去しても直ちに再堆積が起こり,砂礫の除去前の姿に戻ることも明確になった.
  • 野口 仁志
    2016 年72 巻2 号 p. I_574-I_579
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     網チェーン式回収装置は,港湾及び海岸等に設置されている既設消波ブロックを作業員や潜水士の玉掛けの作業の支援無しに,ブロック脚にチェーンを玉掛けして回収できる装置である.消波ブロックには40種類以上の形状があるが,最も回収が困難と考えられるブロックは錨型ブロックで作業員による玉掛け作業では撤去が困難である.このブロックの撤去に,網チェーン式回収装置を用いて模型実験により取り組んだ.その結果,運用方法において絡みを解消する要素・工程を付加することにより,錨型ブロックを連続的に撤去することが可能であった.模型実験結果より実工事での作業時間効率を試算すると標準的な施工歩掛かりよりも効率的な値となった.
  • 金澤 剛, 辻北 智志, 中村 友昭
    2016 年72 巻2 号 p. I_580-I_585
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     グラブ浚渫を行う際のバケットの種類と操作方法に着目し,水理模型実験と実施工現場における現地計測により,バケットの巻下げ・巻上げ時の流動場の特性を明らかとし,濁りの発生と拡散を抑制する操作方法を検討した.その結果,一律の巻下げ速度でバケットを操作するより,途中で一時停止させ,その後の巻下げ速度を減速させると底面に発生する流速を抑制できることを確認した.密閉型バケットに比較して通常型バケットの場合は,バケット上面の開口部からバケット内部の水塊が抜けるため,この巻下げ時に発生する流動が小さいことも判明した.また,巻上げ操作時においても,バケットの離底時の速度を低減させると周辺に発生する流動を抑制できることを確認した.こうしたバケットの巻下げ・巻上げ速度の減速の効果は現地計測においても確認された.
  • 秋本 早紀, 鈴木 崇之, 小竹 康夫, 後藤 潤也
    2016 年72 巻2 号 p. I_586-I_591
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     防波堤築造工事等の海上工事においては,近年作業員の高齢化や減少,技術の継承が問題となっている.これまで,ケーソンの動揺や自動据付に向けた検討は行われているが,実務適用には十分とは言えず検討の余地がある.そこで本研究では,作業指示者の動きに着目し,据付時における波浪やケーソンの動揺と作業指示との関連性を見出すことを目的とする.ケーソンの位置変化と,作業指示者によるウィンチ操作者への指示状況を解析し,作業工程を引き寄せ段階,着底段階に分類した結果,ケーソン引き寄せ段階では移動に伴う動揺が顕著となり,また,着底段階では引き寄せ時より高頻度の指示を出しケーソンを制御していた.加えて,作業指示者へのヒアリングを行い,指示の内容,タイミングや指示者の感覚等について把握した.
  • 川村 大徳, 水木 裕人, 竹内 貴弘, 木岡 信治, 宮崎 均志
    2016 年72 巻2 号 p. I_592-I_597
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     鋼構造物表面を冬期間に海氷が損耗させる条件にあれば構造物表面が繰り返し活性化されることで腐食摩耗が促進される.結果として氷海域では通常の海域にある鋼構造物に比較して摩耗速度が大きくなる.実際,オホーツク海沿岸の導流堤鋼矢板に被害が発生した.このため,室内及び現地で錆層を施した鉄供試体を用いた低温室内での滑り摩耗試験を実施することで,各種因子(介在砂,載荷圧力,氷温)が摩耗率に与える影響を検討した.介在砂が定常摩耗時の摩耗率に与える影響が比較的大きく,さらに,そのばらつきも大きいことが示された.また,介在砂が存在しない場合には定常摩耗時の摩耗率は室内と現地で錆層を施した鉄供試体間に整合性がみられ,さらに,Holmの摩耗式が成立する可能性も示唆された.
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