比較眼科研究
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34 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 奥原 裕次, 塚本 俊平
    2015 年 34 巻 p. 1-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    網膜電図検査(ERG)は網膜機能を定量的に評価できる有用な評価系である。近年、獣医臨床及び医薬品の安全性評価においては、International Society for Clinical Electrophysiology of Vision(ISCEV)のヒト臨床における国際的標準プロトコールに従って評価する傾向にある。本実験では、異なる2施設において網膜毒性物質であるSodium Iodate(SI)をウサギに投与し、全視野型光刺激装置であるGanzfeld dome型光刺激装置(Ganz)及び白色LED内蔵コンタクトレンズ型電極(LED)をそれぞれ用い、記録条件をISCEVプロトコールに可能な限り合わせて、杆体系応答、混合応答、律動様小波、錐体系応答及びフリッカー応答を記録し、ERGの変化に対する光刺激方法の違いによる差異について比較検討した。SI投与群では、Ganz及びLEDとも投与3時間後に杆体系応答及び混合応答b波の振幅の増加あるいは減少を示した。投与8時間後に、Ganzでは振幅の増幅を示したが、LEDでは振幅の減少を示した。また、Ganz及びLEDとも投与3時間後より律動様小波を除く全ての応答で潜時の延長あるいは延長傾向が観察された。投与48時間後にはGanz及びLEDとも杆体系応答及び30Hz Flickerが消失し、これ以外の応答も96時間後には全て消失した。病理組織学的検査においても差は認められず、両施設ともに網膜色素上皮細胞から外顆粒層へと続く、SIによる網膜組織障害が経時的に観察された。以上の結果から、Ganz及びLEDともにSI投与によるウサギ網膜機能の毒性変化を投与初期より検出することが可能であり、ERGの変化に対する光刺激方法による顕著な差違はないことが示唆された。

短報
  • 厚見 育代, 木藤 学志, 倉田 昌明, 榊 秀之
    2015 年 34 巻 p. 11-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    眼科製品の非臨床試験では、日本白色(JW)種、ニュージーランド白色(NZW)種及びダッチ(DB)種の3品種のウサギがよく用いられる。眼の解剖学的特徴について品種間差や加齢変化を横断的に比較した報告は現在のところ限られている。本研究では、異なる週齢[(幼若期(6週齢)、青年期(13-22週齢)及び成熟期(80-96週齢)]におけるこれら3品種のウサギ眼の解剖学的特徴(眼球、水晶体及び硝子体の大きさ)を比較した。

    その結果、眼球の解剖学的パラメータは週齢の増加に伴って3品種とも増加した。品種間で各パラメータを比較すると、JW種及びNZW種が同程度の値を示し、DB種は他の2品種に比べて概して低値を示した。眼球パラメータに品種間差が生じた原因は体重の差異のみではなかった。加齢変化に関しては、眼球の成長率に品種間差はなく、眼球は幼若期から青年期にかけての方が青年期から成熟期より著しく成長した。水晶体重量及び容積の成長率は他のパラメータより高値であった。

    本研究は、ウサギの品種及び週齢に関連する眼球の解剖学的特徴の基本的な情報を提供するものであり、ウサギを用いた眼科研究において眼球サイズを考慮して試験を計画し、試験結果を正確に評価するために有用であると考えられる。

    Editor's pick

症例報告
  • 重山 純子, 望月 一飛, 安部 勝裕
    2015 年 34 巻 p. 17-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    ミニチュア・ダックスフンド、11歳、避妊雌の左眼強膜上に3ヵ月前から徐々に増大する10×8 mmの軟らかい黒色腫瘤が認められたため、腫瘤とともに強膜全層を切除した。強膜欠損部に同種のグリセリン保存強膜全層を移植した。術後の経過は順調で、術部の結膜縫合部が一部離開した以外に合併症や移植片の拒絶反応は認められなかった。術後1年7ヵ月経過する現在も腫瘍の再発はなく、視覚も維持されていた。摘出腫瘤の病理組織学的診断は輪部黒色細胞腫であった。高齢の犬においても、同種グリセリン保存強膜全層移植術を適用することで視覚に影響をおよぼすことなく輪部黒色細胞腫を摘出することができた。

  • 小川 竜也, 岡田 由美子, 久世 博, 花見 正幸, 鈴木 穂高
    2015 年 34 巻 p. 21-27
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    スナネズミは英語名でMongolian gerbil(Meriones unguiculatus)と呼ばれ、日本で実験動物化された数少ない動物のひとつである1)。アルビノであるMGW近交系スナネズミの4ペアから出発した約1年間の自家繁殖過程において、686例中5例に片側の眼球が腫大した産仔がみられ、そのうちの4例について眼科学及び病理組織学的検査を行った。腫大した眼球では虹彩の前癒着がみられた。そのうち1例では、混濁した水晶体が頭部の向きに応じて眼球内を移動するのが観察され、残る3例でも水晶体が毛様体付近に偏位あるいは後方に位置していたことから、水晶体脱臼と診断した。病理組織学的には、毛様体及び毛様小帯(チン小帯)の形成不全がみられ、水晶体の支持体である毛様小帯の形成異常が水晶体脱臼の直接的な要因と考えられた。しかしながら、眼圧上昇やそれに伴う眼球の腫大、角膜浮腫、角膜及び網膜の菲薄化、視神経の萎縮、視神経乳頭の陥凹などいわゆる緑内障を示唆する病変を伴っていたことから、毛様小帯の異常及びその結果としての水晶体脱臼は緑内障に続発して発現した可能性も考えられた。病変の発生率は低いが、4症例とも少数の動物に由来する同一コロニーの動物にみられたことから、遺伝的な背景の関与が示唆された。

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