比較眼科研究
Online ISSN : 2185-8446
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36 巻
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短報
  • 西 健吾, 樺山 浩二, 坂田 恵美, 荒木 智陽
    2017 年 36 巻 p. 1-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/03/29
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    網膜電図検査(ERG)は網膜機能を定量的に評価できる有用な評価方法であるが、全視野刺激型ERG検査で得られる電位は網膜全体の総和であり、部分的・局所的な異常の検出は難しいとされている。そこで今回、我々はカニクイザルにおける局所ERG検査の有用性について検討した。基礎データ収集として、雌雄各15例の両眼の黄斑部及び耳側網膜の局所ERGを測定した。また、塩化コバルト(CoCl2, 0.40 mg/mL, 30 µL/eye)の網膜下投与により網膜変性モデル動物を作製し、全視野刺激型ERG検査と局所ERG検査の結果を比較・検討した。併せて、光干渉断層計(OCT:optical coherence tomography)検査、蛍光眼底検査(FA:fluorescein angiography)及び病理組織学的検査を実施し、その結果を比較した。局所ERG検査の基礎データにおいて、明らかな雌雄差や眼球左右差はみられなかった。測定部位の比較では、a波・b波ともに耳側網膜より黄斑部の方が高電位を示した。網膜変性モデルにおける全視野刺激型ERG検査と局所ERG検査の結果比較では、全視野刺激型ERG検査では異常を検出できなかったが、局所ERG検査では CoCl2投与後1日目から応答の消失がみられ、その変化は投与後28日目まで継続し、回復はみられなかった。このERG変化はOCT、FA及び病理組織学的所見との関連性がみられた。これらのことから、局所ERG検査は従来の全視野刺激型ERG検査に比べて、限局的な異常を伴った視覚器毒性を評価する上で有用であることが示された。

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