比較眼科研究
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29 巻
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総説
原著
  • 伊藤 良樹, 前原 誠也, 富田 沙織, 泉澤 康晴
    原稿種別: 原著
    2010 年 29 巻 p. 7-12
    発行日: 2010/12/28
    公開日: 2011/12/16
    ジャーナル フリー
    目的:ビーグル犬の光刺激を用いた視覚誘発電位(fVEP)における散瞳状態による影響、左右の刺激眼による応答の差、および再現性を検討した。方法:7頭の健常なビーグルを対象とした。fVEP記録にはポータブルVEPシステムを用い、鎮静下で散瞳前後に記録を行った。電極には皿形電極を用い、記録電極を後頭結節、基準電極を鼻根部正中、接地電極を側頭部に設置した。fVEP記録は各対象の片眼ずつ薄暗い部屋で実施し、128回の刺激を加算平均した。刺激装置の刺激強度は3.0cd·s/m2、刺激頻度は1.5Hzの設定を用い、対象眼と刺激装置の距離を2cmにして白色光による刺激を行った。fVEP記録結果におけるN2およびP2を計測し、N2潜時とP2潜時、およびN2-P2振幅を算出した。VEP記録の再現性を評価するため、1度目の測定から7日後に同様の対象でfVEP記録を実施した。結果:散瞳前後のfVEP記録結果を比較すると、N2とP2潜時、およびN2-P2振幅には有意差がみられた。散瞳後のN2潜時は32%減弱、P2潜時は19%減弱しており、N2-P2振幅は60%増加していた。右眼刺激より得られた応答と左眼刺激より得られた応答を比較すると、潜時および振幅に有意な差はみられなかった。また、N2およびP2潜時において再現性が認められた。結論:本研究の結果より、我々の方法による犬のfVEP記録においては、散瞳後に記録を実施し、応答の評価には再現性の高い潜時を評価するべきである。また、各眼を刺激して得られた応答を比較することで、視路における障害部位を推測するのに有用であると推察された。
原著
  • 久保 明, 余戸 拓也, 寺門 邦彦, 諏訪 義典, 古川 敏紀
    原稿種別: 原著
    2010 年 29 巻 p. 13-18
    発行日: 2010/12/28
    公開日: 2011/12/16
    ジャーナル フリー
    盲導犬とは視覚障害を持つヒトを誘導するための使役犬であり、そのため、盲導犬自身が視覚障害を生じることは使役を果たすために重大な問題となる。本研究では視覚障害の原因となる白内障の発生を繁殖計画により制御することを目指して、最初の段階として、盲導犬として訓練期間中のラブラドールレトリバーにおける若年白内障の発生状況を調査したのでその概要を報告する。盲導犬として訓練中のラブラドールレトリバー213頭について威嚇瞬目反応、対光反射、眼圧測定、細隙灯生体顕微鏡検査を実施し、白内障が検出された個体ごとに白内障の形成部位、年齢、性別、血縁について調査を行った。若年白内障は12頭17眼に認められ、白内障発生個体の平均年齢は1.24±0.24歳、発生率は5.63%であった。白内障発生個体12頭うち、水晶体後部に白内障が観察されたのは11頭であった。血縁についての調査では、白内障発生個体で同じ両親から生まれた個体は2頭1組(Group A)、父犬が同じである場合が2組(Group B, C)、母犬が同じである場合は3組(Group A, D, E)で認められた。本研究におけるラブラドールレトリバーの白内障の発生率は北米での調査においてコントロール群とされた雑種または交雑種の白内障発生率よりも高く、このことから本犬種における白内障の好発傾向が再確認された。本研究における白内障発生率は英国やオランダにおける本犬種の白内障発生率よりもやや低い成績となった。この原因としてはこれらの研究が全年齢を対象とした報告であったのに対して、本研究が盲導犬として訓練中の若齢犬を対象とした研究であり、より高齢での白内障の発生を検出できなかったことが考慮された。よって、本研究の対象犬については引き続き、追跡調査の必要があると考えられた。白内障の形成部位についての検討では検出された白内障のほとんどが水晶体後部に存在し、この傾向は既報でのラブラドールレトリバーの白内障所見と同様な傾向であった。白内障発生個体の血縁関係の調査では明らかな血縁関係が認められ、遺伝性素因が強く関連していると考えられた。よって、盲導犬の選定においては白内障個体を避けるべきであり、また、今後は更に白内障発生の危険を回避できるような繁殖計画の策定とその改善に努める必要があると考えられた。
原短報
  • 寺門 邦彦, 余戸 拓也, 印牧 信行, 根津 欣典, 原田 恭治, 原 康, 多川 政弘
    原稿種別: 原短報
    2010 年 29 巻 p. 19-24
    発行日: 2010/12/28
    公開日: 2011/12/16
    ジャーナル フリー
    クリアビューとGENESIS-Dfの眼底撮影像を比較したところ,その撮影範囲はクリアビューでは、縦径が視神経乳頭の5.13±0.42倍、横径が視神経乳頭の4.99±0.45倍であった。GENESIS-Dfでは縦径が視神経乳頭の2.99±0.33倍、横径が視神経乳頭の3.54±0.36倍であった。クリアビューとGENESIS-Dfの縦径および横径ともにp<0.01で有意差が認められた。またパノラマ画像作製にはクリアビューでは4.63±0.32視野、GENESIS-Dfでは11.26±1.93視野必要であった。クリアビューとGENESIS-Dfのパノラマ画像作製枚数の間にはp<0.05で有意差が認められた。両方の眼底カメラ共に撮影した画像は鮮明であり、診断に供するに十分な画質であった。クリアビューは1枚の眼底写真で広範囲の撮影が可能であるためスクリーニング検査に適しており、GENESIS-Dfは撮影範囲が狭いものの解像度が高いため詳細の観察に適していると考えられた。
症例報告
  • 小川 竜也, 山本 哲弥, 小澤 直幸, 小松 真彦, 米山 潤, 岡崎 修三
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 29 巻 p. 25-28
    発行日: 2010/12/28
    公開日: 2011/12/16
    ジャーナル フリー
    毒性試験に供するために5週齡で購入したCrl:CD(SD)系雄ラット1例の右眼球角膜に、数本の被毛を伴う白色の円形隆起巣(直径約2mm)が肉眼的に認められた。約1年後、隆起巣はその丸みを増して半球状を呈して被毛が脱落したことを除けば、他の部分の角膜、前眼部、中間透光体あるいは眼底に異常所見はみられなかった。生後59週齢で病理組織学的検査に供した結果、隆起巣はほぼ正常な皮膚に相当する構造、すなわち、表皮、真皮と皮膚付属器(毛包、毛根及び皮脂腺)及び皮下脂肪組織がみられたことから、角膜に発生した典型的な類皮腫と考えられた。
資料
  • Masanobu FUKUI, Hiroshi HIRAMI, Masataka MUKAIDA, Reiko SUZUKI, Masahi ...
    原稿種別: Information
    2010 年 29 巻 p. 29-34
    発行日: 2010/12/28
    公開日: 2011/12/16
    ジャーナル フリー
    ヒト、ウマなどでひろく認められる視束乳頭の陥凹(Optic Disc-Cupping)確認のため、60犬種ほどにつき前記Optic Discの形状を調査した。ほぼ全例の眼内圧(IOP)は正常とされ、また生理的陥凹(Physiologic Cup)も,普遍的に記録された。一方、一部の犬種で有髄神経線維の増殖(Myelination)が、若齢から通常記録された。このため、前記Cuppingはイヌの緑内障(Glaucoma)の初期診断には用いられず、視野狭窄(Vision Field Defect)の簡易診断法、例えばウマでのBlinkerのイヌへの改良した応用で、これを確認するなどの方法の開発が早期に望まれよう。
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