視覚障害を引き起こす薬物を投与したイヌに対して,障害の進行および回復を客観的に評価するため,局所麻酔のみで網膜電位図(electroretinogram, ERG)を測定し,a波,b波ならびに律動様小波について検討した。
視覚障害を引き起こす薬物にはethambutolおよびsodium iodateを用い,いずれも日局生理食塩液に溶解した。ethambutolは250mg/kgを腰背部皮下に4週間連日,sodium iodateは30mg/kgを前腕橈側皮静脈に単回,それぞれ投与した。
ERGの測定は,局所麻酔下でethambutol投与例が投与前,投与第5, 7, 14, 21および28日,sodium iodate投与例が投与前,投与後1, 3, 5, 24, 48, 72時間および7, 14日に誘発反応記録装置を用いて行った。光刺激は単回刺激とし,キセノンランプを用い,刺激強度20ジュールで被検眼の前方30cmより行った。時定数は0.3および0.003秒とした。また,ERG測定と同日に眼底検査を実施した。
その結果,ethambutol反復皮下投与例では,投与期間を通してERG各波に明らかな変化はなかったが,眼底検査で投与第5日よりタペタム部の褪色が認められた。
Sodium iodate単回静脈内投与例では,投与後1時間よりa波およびb波の電位が減少し,減少は投与後48~72時間に最も顕著になり,それ以降回復傾向を示した。律動様小波は,a波およびb波とほぼ同様の推移を示したが,回復傾向は明らかでなかった。また,眼底検査において,投与後24時間よりタペタム部に限局性の変色域が認められた。
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