水資源・環境研究
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最新号
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特集 市民科学と水環境保全のフロンティア
特集にあたって
特集論説
  • 高田 秀重, 大垣 多恵
    2018 年 31 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    インターナショナルペレットウォッチとは、海岸漂着レジンペレットを用いたボランティアベースの残留性有機汚染物質(POPs)の地球規模モニタリングである。2005年の開始以来、2018年までに世界中から180人が参加し、40ヵ国、700地点以上からレジンペレットが採取された。参加者の職業・階層および居住国を解析し、インターナショナルペレットウォッチの市民科学としての特徴を解析した。ペレットの採取・送付の簡便さ、e-mailでの直接の連絡、参加者のバックグランドにあわせた分析結果のフィードバックにより専門家以外の広範な市民がモニタリングに参加し、採取地域のPOPs汚染の状況とマイクロプラスチックの化学的なリスクについての理解が促進されることが明らかになった。さらに、分析データはオープンデータとして活用され、POPs汚染やマイクロプラスチックについての意識啓発に利用されている。
  • 伊藤 浩子
    2018 年 31 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    河川での清掃活動は各地で盛んに行われているが、川ごみは一向に減らない。荒川での清掃活動事例、河川ごみに関するアンケート結果からも、なかなか改善できない川ごみの現状がみえてくる。川ごみの根本対策に向け、誰でも簡単に取り組むことができる「全国水辺のごみ調査」を紹介する。全国的に調査することにより、各地の水辺には大量のペットボトルなどが散在している状況を示す。川ごみは様々な発生要因が絡み、その解決がすぐにできることは困難である。しかし、身近な川でのごみ調査をきっかけに、多くの流域住民が川やごみへの関心を高め、大きな動きとなって社会の仕組みや制度としてごみ削減を推進することが解決策の一つとなると考察する。 
  • 西野 ひかる
    2018 年 31 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    沿岸透明度の目標は、2013年より水質汚濁にかかる環境基準の追加に関して検討された後、2015年の中央環境審議会答申を受け、水環境の実態を国民が直感的に理解しやすい指標として、地域の合意形成により地域にとって適切な目標(地域環境目標)として設定することとなった。環境省は地方自治体向けのガイドラインの作成のために、2017年1月~3月に小浜湾と諏訪湖でモデル事業を実施した。「小浜湾における沿岸透明度の目標設定検討会」では、小浜湾の特性に関する情報整理の後、①水生植物の保全・再生の観点から、対象種の選定と設定範囲、目標値の設定、②親水利用の場の保全の観点から、親水利用の行為を踏まえた目標値の設定、③両者を重ね合わせた水域あてはめと目標値の決定、④結果の活用方法の検討などがなされた。この検討会に参加する機会を得たので、地域の環境保全団体の立場から、この新しい指標について、特に地域の合意形成についての意見を記す。
  • 菊地 直樹
    2018 年 31 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    兵庫県但馬地方では、一度は野外で絶滅したコウノトリを飼育下で繁殖させ、生息環境の再生をすすめることにより、コウノトリの個体群を確立しようとする野生復帰が実施されている。2005年からコウノトリを野外に放し、現在では100個体以上が生息するにいたっている。野生復帰とはコウノトリを軸に多様な人びとが協働しながら自然とのかかわりと順応的につくりなおすプロセスである。豊岡市に拠点を置くNPOコウノトリ湿地ネットの活動の例から、野生復帰を順応的プロセスとして動かすために市民調査が果たす役割について考えてみた。市民調査とは何らかの当事者性をもった専門家ではない人びとが行う解決志向の調査活動であるが、その意義として第1に目線が多くなること、第2に市民目線の参加のルートができること、第3にデータが開放的であること、第4に順応的であること、第5に参加意識や当事者性が醸成されることを指摘した。
  • 瀬川 貴之
    2018 年 31 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    水環境の改善を進めるには自然・行政を相手にするため、長い期間で持続的に関われる方法をとる必要がある。いくつかの関わり方があるが、ここでは川や湖等の内水面に関し、直接利益を享受する漁業協同組合と関連する事業をまず形作り、その関わりをベースとし、発眼卵放流への切り替えや、C&R区間(キャッチアンドリリース。釣った魚は持ち帰らず放すよう決められた区間)の設置等、コンサルタント的役割をポジション取り河川の生物環境の改善に繋げていく取組みを紹介する。
  • 清野 聡子
    2018 年 31 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    九州西部沿岸域は、海ごみ被害が深刻な地域である。対馬暖流は対馬海峡を経て東シナ海から日本海へ流入する過程でごみを輸送している。冬季の季節風は、ごみの輸送、漂着、堆積、分解に強く作用している。越境環境問題に直面している当地では、多様な地方自治体の環境政策や市民活動が、当地の自然社会条件に合わせて工夫されている。福岡県の玄界灘沿岸では、万人単位での清掃活動が毎年各地で開催され、地域の清掃活動と研究、技術開発とのつながりが深くなっている。国境離島の対馬、壱岐、五島では韓国、中国との交流も進んでおり、海ごみを通じて蓄積された人的ネットワークが地域振興にも発展するなど、原点である海ごみを生物多様性、教育、歴史・文化、観光などの取り組みに内包している。また、海洋保護区ネットワークの考え方は、多様な主体の参加を前提とした総合的な沿岸、海洋環境管理につながる可能性を秘めている。
論説
  • Mami Shiono, Koichi Ikegami, Tadasu Tsuruta
    2018 年 31 巻 1 号 p. 42-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    This paper analyzes economic and social factors as determinants of water saving activities in two Land Improvement Districts (LIDs) in Shiga Prefecture, which have contrasting approaches to water resource conservation. One LID with a volumetric pricing system succeeded in establishing water saving activities at the village level. Villagers had a keen awareness of water conservation and cooperated in water monitoring activities. This may be attributed to the volumetric pricing, as well as to the social structure of the LID as a federation of affiliated village communities. A subsidy from the prefectural government acted as an additional encouragement to water monitoring activities. The other LID with an area-based pricing system was characterized by its top-down approach to saving water, reflecting the LID’s characteristic as a technocratic water-providing agency in addition to a discordance between irrigation blocks and existing village communities. These facts suggest that, in order to achieve sustainable conservation of water resources, economic measures such as volumetric pricing have to be complemented by a collective action based on self-governing village communities.
研究ノート
  • 在間 正史
    2018 年 31 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    木曽川水系河川整備基本方針では、木曽川の河川維持流量として成戸地点50m³/sを設定している。これは先行農業用水に加えて、新規水利の制限流量となっていて、ダム開発の根拠になっている。その策定において木曽三川協議会が木曽三川水資源開発計画をまとめたときに下流の漁業に配慮して成戸地点基準流量50m³/sを設定したと説明され、利水の歴史を踏まえ上記河川維持流量が設定された。しかし、この説明の根拠資料はなかった。その後に発見された木曽三川水資源開発計画の資料によれば、上記成戸地点基準流量は舟航用水や工場排水による汚濁を希釈するためのもので、現在では河川維持流量の根拠にならないものであった。利水の歴史を踏まえて設定されたという上記河川維持流量は、水田面積の大幅減少により必要水量が減少している先行農業用水とともに、根拠不十分なものであった。
  • 山添 史郎, 野田 浩資
    2018 年 31 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    本稿では、NPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として、「政策提言・対案の提示者」、「実践的な活動の担い手」、「主体間の繋ぎ役」、「市民活動の事業体」という4つの役割からアプローチを試みる。「びわこ豊穣の郷」の展開プロセスの「第Ⅰ期:設立・整備期」、「第Ⅱ期:成長・定着期」、「第Ⅲ期:成熟・転換期」ごとに、NPOの役割について検討した結果、「第Ⅰ期:設立・整備期」では、「政策提言・対案の提示者」と「実践的な活動の担い手」の役割が高く、「第Ⅱ期:成長・定着期」では、「主体間の繋ぎ役」と「市民活動の事業体」の役割が高くなっていた。一方、「第Ⅲ期:成熟・転換期」では、「市民活動の事業体」の役割はやや低下したものの、「主体間の繋ぎ役」の役割を維持し、「実践的な活動の担い手」の役割は高くなっていた。「びわこ豊穣の郷」においては、地域社会のニーズや期待に応え、多面的役割を担い、個々の役割の比重を変化させていくことで、持続的に活動を展開してきたといえよう。
  • 原田 禎夫
    2018 年 31 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/04
    ジャーナル 認証あり
    近年、急速に深刻化する海洋ごみ問題は、海のプラスチック汚染ともいうべき状況にあり、プラスチックごみの海洋への流出を防ぐための国際的な対策も急速に進みつつある。本研究では、オオミズナギドリの繁殖地として天然記念物の指定を受けている京都府舞鶴市の冠島とその対岸の野原地区で2017年9月に実施した飲料用ペットボトルを指標とした流出地の推定について報告する。2つの調査地点におけるペットボトルは、冠島では59.4%、野原地区では49.2%を日本製のものが占めており、環境省が2016年に実施した調査と比較しても日本製のペットボトルが多くを占める結果となった。また、特に日本製ペットボトルの特徴として、小型ペットボトルが占める割合が極めて高く、これは全国的な傾向と同じであった。小型ペットボトルが市場シェアの大半を占める国内での有効な発生抑制対策として、早急なペットボトルのデポジット制度の導入が望まれる。
特集 水資源・環境研究 30巻を振り返って(30巻2号未掲載論文)
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