水資源・環境研究
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集 水資源・環境研究 30巻を振り返って
特集にあたって
特別寄稿
論説
  • 村上 一真, 平山 奈央子
    2017 年 30 巻 2 号 p. 54-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    早崎内湖周辺住民の琵琶湖に対する価値認識、現在の琵琶湖の利用状況、今後の早崎内湖の利用意欲の関係を、質問票調査データを用いた共分散構造分析により明らかにした。結果、琵琶湖の生活価値を高く評価している人は、現在琵琶湖をよく利用しているが今後の早崎内湖の利用意欲にはつながっていないこと、琵琶湖の環境価値を高く評価している人は、今後の早崎内湖の利用意欲が強いこと、早崎内湖は琵琶湖と異なり生活価値の機能発揮は求められておらず、環境価値の機能発揮が求められていることが明らかになった。加えて、多母集団同時分析により、早崎内湖の現状や自然再生事業の状況の認知水準が高い群のみが、琵琶湖に対する価値認識に基づき今後の早崎内湖利用を考えていること、居住年数高群は環境価値認識に基づき、今後の早崎内湖利用を考えていること、居住年数低群は生活価値認識に基づき、今後の早崎内湖利用を考えていることが明らかとなった。
研究ノート
  • 在間 正史
    2017 年 30 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    2002年の独立行政法人水資源機構法の制定に伴い、同機構の水資源開発施設において、利水者が自ら発意して施設建設事業から撤退できることと撤退時の費用負担額算出方法が整備された。事業からの撤退通知者は、その意思表示の効果として「流水を水道等の用に供しようとする者」でなくなり、「事業からの撤退をした者」となるので、事業参加者が負担しなければならない水道等負担金の負担義務がなくなる。そして、事業からの撤退通知により通知者の事業からの撤退の効果が生じ、事業は撤退通知者の部分を除いたものに縮小し、従前事業の工事はできず、縮小事業の工事をするには事業実施計画を縮小事業に対応するように変更しなければならない。事業実施計画の変更前も、工事がされないので水道等負担金はゼロで発生しない。事業からの撤退通知者は水道等負担金の支払義務がないのである。
  • NPO法人「びわこ豊穣の郷」の会員アンケート調査の3時点比較
    山添 史郎, 塚本 利幸, 霜浦 森平, 野田 浩資
    2017 年 30 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本稿では、NPO法人「びわこ豊穣の郷」の展開プロセスにおける「参加層」の変化を明らかにし、住民参加型の水環境保全の成功要因について検討する。約20年間の展開プロセスを「第Ⅰ期:設立・整備期」「第Ⅱ期:成長・定着期」「第Ⅲ期:成熟・転換期」という3つのフェーズに区分し、各フェーズに対応する1999年/2007年/2015年に実施した会員アンケート調査の結果をもとに、「参加層」の変化を明らかにする。1999年/2007年/2015年の3時点比較を行った結果、「地付層」は、「第Ⅱ期:成長・定着期」においては、活動から距離を置く傾向がみられたものの、「第Ⅲ期:成熟・転換期」においては、再び活発に参加していることが明らかとなった。住民参加型の水環境保全の成功要因としては、第1に、設立当初から、地域のニーズを代弁する「地付層」の参加を得たこと、第2に、活動展開後も、地域のニーズに応じた活動に取り組み、「地付層」の共感・参加を得たこと、の2点が指摘できよう。
  • 川村 志満子, 福島 武彦
    2017 年 30 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、NHKアーカイブス学術利用トライアル研究を利用した研究である。NHKに保存されたテレビ番組のうちで日本の湖沼の水利用と水環境に関する番組を選び、その内容から湖沼環境問題への焦点と変化の分析をおこなった。その結果は次のようにまとめられる。(1) 湖沼環境問題に関する番組は1969年から出現して、1970年代から1990年代にかけて増加し、2000年以降は減少した。(2) 番組に取り上げられた湖沼は琵琶湖が最も多く、次いで霞ケ浦だった。(3) 湖沼環境問題の内容は、1970年代は飲み水、1980年代は水質汚染、1990年代は湖沼環境保全や環境問題解決に関する内容が注目された。2000年以降は酸性雨や地球温暖化の影響など環境問題の多様化がみられた。これらにより、湖沼環境問題への一般的な関心には変化があるとわかった。
  • 坪井 塑太郎
    2017 年 30 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    わが国における洪水被害においては、人的被害は減少傾向にある反面、経済被害は必ずしも減少しておらず、都市域に拡大する被害の影響を受け、2000年代以降において単位面積当たりの被害額は上昇傾向がみられた。また水害発生の要因別では「内水」に起因するものが最も高い割合を占め、特に東京都心部においては床上浸水率の上昇がみられたほか、被害全体に占める割合は小さいものの、人命損失リスクの高い土石流や急傾斜地崩壊などの土砂災害も継続して発災していることが明らかになった。
  • 田渕 直樹
    2017 年 30 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    1960~80年代四国3県で計画された原発立地の中で、映画「シロウオ」で描かれた徳島県阿南市椿町の蒲生田原発立地計画は、四国電力株式会社が2度目に撤退したものである。住民は個人から隣組、傍示へと反対運動を拡大し、漁村の椿泊町では漁協総会で反対の議決が行われた。市議会と県議会では推進派が多数であったが、反対派議員が活発に活動した。そして住民は集団で県知事や県議会、市長や市議会に陳情・請願を行い、県外から専門家を招いて活発な学習会を行った。つまり強力な住民運動の上に、労働組合や市外の自治体や漁協、県外の専門家や市民の支援を得て、「原子力ムラ」と対峙することを可能にしたのである。更に、スリーマイル島原発事故や四国電力株式会社の醜聞も重なり、市長・県知事は立地計画を白紙撤回した。
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