昭和60年度までに完成している多目的ダムは267ダムに達するが,本論文では建設中のダムを含め,データの得られた353ダムについて,洪水調節機能を中心として地域的,経年的特徴をみたものである。
まず,目本全国を9地域区分に大分割し,そこにおけるダム群の有効貯水容量・洪水調節容量を降水量との関係において特徴をみた。その際,ダム容量はダムの支配流域面積と相対評価する必要があるので,それを流域に降った雨のうち何mmまで貯留できるかという値,即ち,相当雨量に換算して評価を行った。次に,その相当雨量の経年変化をみると,近年,洪水調節容量の相当雨量は200~400mmと大きくなってきており,ダム下流に洪水を流下させないですむダムが出現していることを示した。さらに,洪水調節容量確保方式について検討を加え,洪水調節容量確保方式は予備放流方式が減少し,サーチャージによる確保方式が増えていることを,また,洪水調節方式は洪水時にゲート操作の頻繁な一定率・一定量放流方式から,ゲート操作のほとんど要らない一定開度方式・自然調節方式が増えてきていることを示した。
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