2000年の第2回世界水フォーラムでのGWPによる「水の安全保障」の問題提起から25年になろうとしている。日本においては、「水の安全保障戦略機構」が2009年1月に発足し、「チーム水・日本」として動きつつある。2023年には、UNUINWEHによる「Global Water Security 2023 Assessment」が出され、世界の国別レベルの評価が行われる段階に至っている。一方では、ウクライナ侵攻に関連して、カホフカダム破壊が現実化し、現時点において、「水の安全保障」論をどのように展開するかは焦眉の課題である。本論では、「水の安全保障」論研究の新展開を目指すべく、フィンランド、シンガポールの理論・実践の経験を学び、研究の方向性を探った。とくに、「水の安全保障」をめぐる関連要素を整理し、水の多様性・複雑性を考慮した研究のあり方を提案した。