目的 衣服の洗浄性を評価するための模擬実験には, バンドルテストや人工汚染布を用いた実験がある. しかし, 実際の洗浄系は非常に複雑で, これらの方法では洗浄性に及ぼす基質や汚れの種類, 洗浄液組成, 機械力, 時間, 温度などの要因を系統的に解析することは難しい. そこで, 幾何学的にシンプルなモデル系を用いて洗浄性を評価し, 得られた結果を検討した.
方法 モデル基質にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ188 μm)を使用した. 基質の表面処理は, 大気圧プラズマ照射装置を用いて行った. 固体粒子汚れのモデルとしてカーボンブラック(CB, 平均粒径264 nm), および油汚れのモデルとしてステアリン酸(SA)を用いた. 洗浄媒体には, 超純水, エタノールおよびn-デカンを使用した. 水には中性塩, アルカリ, または界面活性剤を添加した. 洗浄液(20 ml)を入れた怦量瓶に汚れを付着させたフィルム(40×10 mm
2)を垂直に浸漬し, 機械力として撹拌(600 rpm)と超音波(38 kHz)を与えた. 洗浄前後の基質の顕微鏡画像をコンピュータソフトで二値化処理したのち, CBの個数やSAの付着面積を計測して洗浄率を算出した.
結果 未処理基質からのCBの洗浄率を調べたところ, 撹拌洗浄ではどの洗浄液中でも10%前後であった. 超音波洗浄では, 撹拌洗浄に比べて洗浄率は増大し, 界面活性剤無添加系では80%以上となった. しかしながら, 界面活性剤添加系での洗浄率は50~60%であった. SAは, 有機溶剤中では超音波洗浄, 撹拌洗浄ともに100%近く除去され, 水溶液中では超音波による洗浄率は撹拌洗浄の2倍以上になった. 汚れを付着させる前に基質のプラズマ処理行ったところ, いずれの汚れも撹拌による洗浄率が増大し, この傾向は水/エタノール混合溶液中で顕著であった.
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