一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
選択された号の論文の266件中201~250を表示しています
口頭発表 5月12日 被服
  • 道明 美保子, 久保田 奈純
    セッションID: 2E-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的藍草に含まれるインジゴは泥藍やすくも藍に加工して染色に用いられるが、多くの手間と精巧な技術が必要なため一般には普及し難い。そこで本研究では、乾燥藍葉を前述の加工をせず染色に用いる方法を検討し、藍製造行程を簡略化するとともにと新たな染色方法を示した。
     方法試験布には平織綿布を用いた。染浴の作製には、タデアイ乾燥藍葉および市販インド藍粉末、ロート油あるいは温湯(40℃)、水酸化ナトリウム(以後NaOHと略記)、ハイドロサルファイトナトリウム(以後ハイドロと略記)を使用した。NaOHとハイドロの適正量、染色時間、浴比、染色温度などを変化し最適染色条件を決定した。染着性の評価はK/S値とa*b*値により行なった。
     結果得られた結果を以下に示した。1)乾燥藍葉の粉砕粒子の大きさは染着量K/S値および染色物の色相に大きな影響を与えないが、微粉末にすることにより扱いやすくなる。2)アルカリ・還元浴作製はNaOH:0.6 g/L、ハイドロ:1.5 g/L が適切である。3)染色時間は10分間で染着量はほぼ一定になる。4)染浴温度は24~60℃では染着量K/S値に大きな影響を及ぼさず、染浴温度の上昇と共に僅かに減少する。5)別浴で染色すると、染色回数の増加に従い染着量は直線的に増加した。同浴での染色でも、別浴染色に比べ僅かに染着量は劣るが同様に増加した。6)綿布のカチオン化処理により、染着量は約2倍に増加する。7)市販インド藍粉末の染着量はタデアイの約58%と少ない。 
      本研究は文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号22500720[平成23年度])により行なった。
  • 大矢 勝
    セッションID: 2E-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 洗剤の水生生物毒性は主として洗剤の主成分である界面活性剤によって引き起こされていると考えられている。しかし、洗剤の毒性が界面活性剤のみによって説明できるか否かの点については明確にはなっていない。そこで本研究では、市販洗剤とそこに含まれる界面活性剤の毒性を求め、両者の関連性について検討した。
    方法 LASを主成分とする2種の市販洗剤とLAS試薬を用い、オオミジンコを用いた毒性試験を行った。市販洗剤成分のLASとLAS試薬はHPLC(蛍光検出・紫外検出)で定性した。また両者の水溶液のオオミジンコに対する毒性試験を行い、カルボキシメチルセルロースやゼオライトについても単独の毒性試験を行った。水の硬度はイオンクロマトグラフィーを用いて測定した。
    結果 HPLCの結果、用いた市販洗剤のLASは試薬LASと炭素鎖長分布や各鎖長でのベンゼン環付位置の分布がほぼ同一であることを確認した。単純な毒性試験の結果、市販製品は低硬度(25ppm)ではLAS試薬よりも毒性が強くなり、やや高い硬度(125ppm)ではLAS試薬よりも毒性が弱くなることを認めた。また25ppmではゼオライトでもミジンコの死亡が確認された。よって、市販洗剤の低硬度でのミジンコ毒性は金属イオン封鎖剤によるカルシウムイオンの捕捉が原因になっていると考えられる。一方、高硬度では硬度成分の捕捉が水の硬度を下げ、LASの毒性を弱めたものと考えられる。洗剤製品の水生生物毒性を評価する際には、金属イオン捕捉剤と水の硬度との関係に注意する必要があることが分かった。
  • 牛腸 ヒロミ, 荒井 美帆, 上西 朋子, 小見山 二郎
    セッションID: 2E-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 天然の汗汚垢布を用いて、洗浄方法によって生じる汗汚垢布の黄変や水に対する寸法変化率等の測定から、水洗い不可表示のある夏季着用衣服の汗汚れに対する効果的な除去方法を検討した。
    方法 洗浄実験には、天然の汗汚垢布を用いた。汗汚垢布は、夏の日中に6時間、20代の女性、のべ11名の襟に試験布を装着して得た。天然の汗汚垢布の半分を水系で洗浄して放置し、残り半分は対照として洗浄せずに放置した。洗浄方法は2種類である。洗浄-放置を7日間継続して行い、洗浄布、未洗浄布の表面の状態の評価を、測色と目視で行った。水に対する寸法変化率をJIS L1096(C法)などで測定して、天然の汗汚垢の汚れ落ちの評価に加えて、洗浄による寸法変化を検討した。  
    結果 洗浄実験の評価方法の一つとして布表面のL*a*b*値を測定した。b*値の経時変化から、未洗浄布とS法で洗浄した汚染布は黄変が生じたが、A法で洗浄した汚染布は黄変が生じなかったことが分かった。もう一つの評価法である5段階目視評価でも、S法で洗浄した汚染布は未洗浄布よりはよかったが、A法で洗浄した汚染布の評価がさらによく、目視でも黄変が抑えられていることが分かった。水に対する寸法変化率の測定から、最も変化の大きかったレーヨンモスリンで比較すると、S法で洗浄した布の寸法変化率は0.1%だったのに対し、A法のそれは7.5%、JIS L1096(C法)7.1%と大きな値を示した。S法よりA法が汗汚れを効果的に除去できたが、レーヨン布では洗浄後の寸法変化率は大きかった。これらのことから、洗浄に使ったタオルの含水率と洗浄の際に加える力を再考する必要があることが明らかになった。
  • 永井 悠, 田川 由美子, 後藤 景子
    セッションID: 2E-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 衣服の洗浄性を評価するための模擬実験には, バンドルテストや人工汚染布を用いた実験がある. しかし, 実際の洗浄系は非常に複雑で, これらの方法では洗浄性に及ぼす基質や汚れの種類, 洗浄液組成, 機械力, 時間, 温度などの要因を系統的に解析することは難しい. そこで, 幾何学的にシンプルなモデル系を用いて洗浄性を評価し, 得られた結果を検討した. 
    方法 モデル基質にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ188 μm)を使用した. 基質の表面処理は, 大気圧プラズマ照射装置を用いて行った. 固体粒子汚れのモデルとしてカーボンブラック(CB, 平均粒径264 nm), および油汚れのモデルとしてステアリン酸(SA)を用いた. 洗浄媒体には, 超純水, エタノールおよびn-デカンを使用した. 水には中性塩, アルカリ, または界面活性剤を添加した. 洗浄液(20 ml)を入れた怦量瓶に汚れを付着させたフィルム(40×10 mm2)を垂直に浸漬し, 機械力として撹拌(600 rpm)と超音波(38 kHz)を与えた. 洗浄前後の基質の顕微鏡画像をコンピュータソフトで二値化処理したのち, CBの個数やSAの付着面積を計測して洗浄率を算出した.
    結果 未処理基質からのCBの洗浄率を調べたところ, 撹拌洗浄ではどの洗浄液中でも10%前後であった. 超音波洗浄では, 撹拌洗浄に比べて洗浄率は増大し, 界面活性剤無添加系では80%以上となった. しかしながら, 界面活性剤添加系での洗浄率は50~60%であった. SAは, 有機溶剤中では超音波洗浄, 撹拌洗浄ともに100%近く除去され, 水溶液中では超音波による洗浄率は撹拌洗浄の2倍以上になった. 汚れを付着させる前に基質のプラズマ処理行ったところ, いずれの汚れも撹拌による洗浄率が増大し, この傾向は水/エタノール混合溶液中で顕著であった.
  • 原山 こころ, 後藤 景子
    セッションID: 2E-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 衣服に付着した疎水性汚れは水洗濯で落ちにくく, とくにポリエステルのような疎水性繊維からの汚れ除去は難しいとされている. さらに, 通常の水洗濯では被洗物に与える損傷が大きい. そこで本研究では, 水系洗浄における機械力として超音波を利用し, その有効性を検証するために人工汚染布を用いて洗浄率および再汚染の程度を評価した.
    方法 モデル汚れとしてカーボンブラックまたはオレイン酸をポリエステル平織布(50×50 mm2)に付着させて人工汚染布を作成した. 汚染布と原白布を各1枚ずつ一組にして種々の浴比の洗浄水溶液中で機械力(震盪, 超音波またはウエスケーター)を与えて洗浄した. 洗浄液には, 中性塩, アルカリおよび各種界面活性剤を添加した. 洗浄前後の布の表面反射率を測定してクベルカムンク関数を求め, 洗浄率および再汚染の程度を算出した. また, 機械力評価布(MA布, WAT布およびEMPA306)を用いて布の損傷を調べた.
    結果 界面活性剤水溶液中で, オレイン酸はどの浴比でも超音波洗浄で80%程度除去されるが, 震盪洗浄では洗浄率が超音波洗浄の半分以下となった. カーボンブラックはオレイン酸と比較して洗浄率が小さく, 洗浄時間の経過とともに再汚染が増加した. また, オレイン酸, カーボンブラックともに浴比の低下により再汚染が助長される傾向が認められた. どの洗浄液中でも超音波洗浄が, 震盪洗浄よりも高い洗浄率を示したが, 再汚染も大きかった. また, ウエスケーターを用いてISO 6330 4Aに準拠して洗浄したところ, 超音波を用いた場合よりもやや高い洗浄率を示したが, 布の損傷も著しく大きかった. 一方, 超音波洗浄では出力の増大により洗浄率向上の可能性が示唆され, 布の損傷もほとんど見られないことがわかった.
口頭発表 5月13日 被服
  • 川端 博子, 山田 祥子, 鳴海 多恵子
    セッションID: 3D-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    【緒言】衣生活の面から授乳期の女性の負担を減らし、母乳育児がスムーズに続けられるよう支援することを目的に、授乳ブラに焦点をあてた研究に取り組んでいる。本研究では、市場調査・実態調査をふまえ、継続着用による授乳ブラの消費性能に関する資料を提示することを目的とする。
    【方法】(1)インターネットの通信販売サイトに記載されるブラ(5社、97種)について、用途・形状・授乳機能・価格・サイズ表示などを調べた。(2)2011年秋、保育園児の女性保護者など335名を対象とした質問紙調査(価格・枚数・形状・授乳機能などの購買行動、ブラの不都合と耐久性への意識など)を行い、着用実態および問題点を整理した。(3)調査をもとに、授乳機能の異なるハーフトップ型のブラ4種を選定した。授乳期の女性7名の着用評価によるブラの特性把握と、使用前と25回使用後でのブラの変化をとらえた。
    【結果】形状ではブラジャー型とハーフトップ型、授乳機能ではクロス・フロント・ストラップオープンに分類し、授乳ブラの製品動向と利用の傾向について考察した。質問紙調査からは、サイズの不都合と耐久性が問題点としてあげられた。サイズ表示については、ハーフトップ型ではトップのみでアンダー記載のないものが多数ある、サイズ範囲がメーカー間で異なる、サイズ展開が十分でないことが分かった。同一製品でも出来上がり差が確認され、これらがサイズの不都合の要因とみなされる。着用評価においても、締め付け感には一定した傾向がとらえられなかった。授乳機能では、フロントオープンではボタンが留めにくい、ストラップオープンではホックの開閉に手間取るといった不便があげられた。25回使用後には、たて方向の収縮、ひもがとれる、縫い目が解ける、外観の低下がみられた。
  • 平井 千尋, 鳴海 多恵子, 生野 晴美, 川端 博子
    セッションID: 3D-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    【目的】妊娠期、授乳期の女性の体型変化に対応させ、授乳機能を有する補整下着として、授乳ブラジャーが販売されているが、消費者の視点に立つ消費科学的性能に関する研究・報告はほとんどみられない。本研究では形態安定性の変化に着目し、洗濯および着用の繰り返しによる消費科学的性能の視点から授乳ブラジャーの特徴を把握し、快適な育児生活となるよう母親となる消費者への情報提供を目的とする
    【方法】
    試料にはクロスオープンタイプA(綿57%,ポリエステル43%、2目ゴム編み)とB(綿95%,ポリウレタン5%、横メリヤス)の2種のブラジャーを使用した。(1)継続着用実験では、被験者が日常生活において着用・授乳と洗濯を20回繰り返す事による形態変化と外観の変化をとらえた。(2)AとBの未使用の試料から、2.5㎝×15cmの試験布を採取し、授乳の実態から設定した引張条件である30%の伸長10分、緩和5分を5回、その後洗濯・乾燥を1サイクルとし、20サイクル繰り返した。サイクル毎に寸法計測と30%伸長に要する荷重を確認した。
    【結果】(1)では、Aでは収縮していたが、Bでは変化が少なかった。両方とも母乳の染み付きが残り、色落ちや黒ずみがみられ外観の状態は低下した。(2)では、Aは10サイクルの後、9%伸長し、荷重に関しては6回目で増加し、その後は減少傾向にあったが、Bは寸法および荷重に大きな変化はなかった。Aはポリウレタンが入っていないため戻りが悪かったと考えられる。一般的に授乳ブラジャーは肌に優しいとされる綿製品が多く、形態が変化しやすく、収縮が起きたり残留ひずみが生じたりしやすいことが明らかとなった。
  • 伊藤 海織, 椎葉 美咲
    セッションID: 3D-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 現在の身体障害者向けの衣服は,機能や介護者の便宜を優先して作られていることが多い.しかし身体障害者の自立を支援する上で,機能のみならず好みで様々な衣服を選択してもらうことは重要であると考える.そこで片腕拘縮者に焦点を当て,4種の袖形状について,動作の容易さと見た目の好ましさを両立する設計指針を得ることを目的とした.
    方法 5名の女子学生の右肘を固定し,(1)タイトスリーブ,(2)シャツスリーブ,(3)ビショップスリーブ,(4)レッグオブマトンスリーブのブラウス着用実験を椅座位で行った.官能評価では着衣動作,右上肢動作,デザインに関する質問に対し5段階評価させた.衣服圧は左右の肩先点,後腋窩点,肘頭点,前腕部で測定した.相関と主成分分析から,普段着への活用との関連を考察した.
    結果 全種の袖に対する官能評価より,袖幅と袖のゆとりに,さらに袖のゆとりと2種の動作の容易さ,普段着への活用に関連があった.袖幅を太くすると肘屈曲時に袖口が近位に引っ張られなくなり,ゆとりがあるように感じられるためだと考えた.各袖における普段着への活用との関連は,次の通りであった.(1)着衣動作の容易さが関連していた.(2)見た目の好ましさが関連していた.(3)官能評価の得点が全体的に高かったが,強く関連する項目はなかった.(4)見た目の好ましさ,袖付け部分の縫い目に負の相関があった.被験者になじみのない袖形状であるため,袖付けの縫い代が厚くなるためだと考えた.衣服圧は普段着への活用に大きな影響を与えていなかったが,着衣動作の官能評価と肘頭点,後腋窩点の衣服圧に関連が見られた.また動作時に,負荷がかかる場所と感じる場所が異なっていた.
  • 柴田 優子, 布施谷 節子
    セッションID: 3D-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的
    若者が容易に行うことができるズボンの着脱であっても、高齢者にとっては必ずしも容易ではない。容易で安全な着脱のためには安定した姿勢が必要であろう。そこで、ズボンのデザインや着脱時の姿勢によって重心動揺に違いがあるのかを明らかにすることを目的とし、まずは若者を被験者としてデータを収集することとした。これにより、着脱の難易性の指標を捉えることとした。
    方法
    ズボンのデザインは前あきストレート・横あきストレート・総ゴムストレート・ワイド・スキニーの5種類とした。着脱する姿勢は立位・椅座位・壁に寄りかかる姿勢の3種類とした。被験者は女子学生20名とした。着衣および脱衣時の重心動揺を重心動揺計(UM-BARⅡ)により計測した。同時にビデオカメラでその様相を撮影した。得られた軌跡長・X座標値・Y座標値・外周面積・所要時間について分析した。
    結果および考察
    (1)ズボンのデザインによる比較: 軌跡長ではスキニーが最も長く、前あきストレートおよび総ゴムストレートは短いことがわかった。所要時間についても同様の結果であった。一方、立位姿勢ではズボンの種類による動作域の差異はほとんどみられなかった。
    (2)姿勢による比較: 椅座位が最も軌跡長は長く、所要時間が長いことがわかった。また、立位は左右方向の動きが大きく、椅座位は前後方向の動きが大きい傾向がみられた。一方、壁に寄りかかる姿勢は他の姿勢に比べ前後および左右の動きが小さい傾向がみられた。姿勢によって必要な動作域が異なるという結果から、身体機能が低下した高齢者ではそれぞれに合った着脱姿勢を選ぶことで、より安全にそして容易にズボンを着脱できる可能性あることが示された。
  • 布施谷 節子, 柴田 優子
    セッションID: 3D-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的:高齢女性のズボンの着装には、おしゃれより安全性や体型カバーなどの機能性を優先させると言われている。そこで、実態を把握するため、高齢女性の求めるズボンの丈やデザインについて、高齢女性のズボン着装写真を資料として高齢者の評価を調査することとした。同時に若者の評価も調査することにした。また、着装を評価する際に着目している身体部位について視線追尾により明らかにすることを試みた。
    方法:ズボンのデザインはスタンダード、ワイド、スリムの3タイプとした。丈は床丈を基準として、それより4cm、8cm、12cm短いものを準備した。モデルは80歳女性1名で、前面と側面の全身写真から評価用の写真票を作成した。
    (1)評価調査:高齢女性30名と女子学生77名を調査対象とした。脚が長く見える丈、脚が細く見える丈、痩せて見えるシルエット、おしゃれに見えるシルエット、普段着として履くもの、おしゃれ着として履くものの6項目について評価調査をした。
    (2)視線追尾調査:視線追尾システム(View Tracker)を用い、評価調査項目を回答する際の視線の動きを追跡した。調査対象は女子学生30名である。データは正面では胸部・上腹部・下腹部・大腿部・ふくらはぎ・踵、側面ではさらに臀部を加えてエリア設定し、滞在した時間を捉えた。
    結果および考察: 評価調査の結果、正面と側面では結果が全く同じではないことがわかった。正面は側面よりも評価がしにくい傾向がみられた。質問項目によって高齢女性と女子大学生の回答には差異がみられた。視線追尾の結果、いずれの質問でも上腹部、下腹部、大腿部に集中する傾向にあったが、質問項目によって着目する体の部位の違いも明らかとなった。
  • 高部 啓子, 青木 恵理子, 阿部 さとみ, 高木 綾音
    セッションID: 3D-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的:日本の高齢人口は増加の一途をたどり、超高齢社会に近づいている。それに伴い、社会で活躍する高齢者も増えてきている。オフィシャルウエアとしてのスーツなどの重衣料の需要も高まってくると思われるが、高齢者の体型に適合させたスーツなどの既製衣料は少ないのが現状である。加齢とともに体幹部の形状変化が顕著であることは、多くの研究が指摘するところである。そこで、本研究では平均的形状の被験者1名の腰腹部を再現し、スカートを取り上げ、衣服型紙設計上の問題点を明らかにすることを試みた。研究方法:平成23年9月~10月に、60歳から70歳の高齢女性70名の三次元計測と直接計測を行い、三次元画像と計測値から平均的形状の1名を選び出し、ウエスト上部から殿溝までの腰腹部52横断面形状を採取し、発泡スチロールでボディを復元した。このボディを用い、既存のスカート原型製図法数種を取り上げて各方法を当てはめ問題点を探った。結果:高齢になると、女性では後面では大臀筋などの筋の衰えによる腰部の扁平化が進み、前面では脂肪の沈着による腹部の突出が顕著である。正面から見た形状ではウエスト部の入りや腰部の横の張りが減少するため、若年女性の台形的形状に比べて四角形に近づく。そのため、脇のカット量を減らし、脇線のカーブを強める必要が生じた。側面から見た形状では腹部突出の位置が比較的高いので、ダーツ止まりの位置を上げ、方向を脇側に修正した。またウエスト部での前彎が減少するため後面のダーツ量を減らし、ダーツ止まりも上げた。今回は1例での試みであるが、今後この結果を一般化するべくデータを増やして検討する予定である。
  • ―2009年から2011年の変化を通して―
    村上 かおり, 川口 順子, 丸田 直美, 後藤 景子, 土肥 麻佐子, 田川 由美子, 増田 智恵
    セッションID: 3E-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    【目的】近年のスマートフォンやタブレットパソコンの普及などにより,従来の百貨店,マ-ケット,専門店のような実店舗による販売手法ではない方法で,衣服を購入することも多くなっている。また同時に古着やオークションによる衣服購入も利用されている。このような衣生活の形態の変化のなか,個々の衣生活を快適に過ごすための,環境保護も踏まえた衣服選択情報を,教育現場や消費社会に提供する必要があると考えられる。我々はこれまで被服教育に携わる立場として,最も身近な衣生活を育成している女子大学生を中心に,衣服選択に関する意識と実態の調査を行ってきた。そこで本研究では,昨年発表した調査(2010年度実施)を継続して2011年度も行い,また2009年度の結果も加えて比較し,女子大学生の衣服選択に関する意識と実態の変化を分析した。【方法】関東,関西,北陸,中国,四国地区の大学に在籍する女子大学生878名(平均年齢19.2歳 SD=1.29歳)を対象に,日常の衣生活行動や衣服観について購買行動と購買意識合計85項目を5件法で回答する質問紙調査を行い,分析を行った。調査時期は2009年4月~2012年1月である。【結果】ファッションに関心があると回答した学生は2009年,10年11年で93,95,87%と非常に多かった。ファッション情報源については,ファッション雑誌を参考にしていた人が2009年,2010年では85,89%いるのに対し,2011年では79%と減少する傾向がみられた。その反対にインターネットを情報源としている人がやや増加していた。また購入時にTPOを考えて衣服選択をしているかについては,2009年68%,2010年78%,2011年72%であった。着装時での意識は購入時に比べ高く,2009年96%であったが,2011年には91%とやや減少する傾向がみられた。
  •  -男子大学生との比較による-
    川口 順子, 村上 かおり, 與倉 弘子, 鋤柄 佐千子, 井上 真理, 増田 智恵
    セッションID: 3E-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    【目的】現状を生かした広範囲で共通に利用できる被服教育情報を得るため,一昨年より女子大学生の衣服選択に関する意識と実態を全国的に調査を実施してきた。昨年の女子大学生471名の衣生活の調査結果では,女子大学生はファッションに対する関心は高いが,関心の高さが衣生活行動の積極性に反映されているとは限らないことが明らかとなった。そこで本研究では,男子大学生の衣服選択に関する意識と実態を把握し,その特徴を分析することを目的に調査を行った。本報告では男子大学生の結果と女子大学生の結果と比較することにより,それぞれの衣生活の特徴について述べる。【方法】北陸,関西,中国,四国地区の大学に在籍する男子大学生288名(平均年齢20.2歳 SD=3.00歳)を対象に,日常の衣生活行動や衣服観について購買行動ならびに購買意識を5件法で回答する質問紙調査を行い,分析を行った。調査時期は2009年4月~2012年1月である。【結果】ファッションに関心があると回答した男子大学生は,59%と女子と比較して著しく少なかった。ファッション情報源については売り場の陳列商品が61%と最も多く,ファッション雑誌が45%であった。雑誌以外の情報源において,女子が参考にしている割合ほど高くなく,様々な情報源から積極的に情報を取り入れる傾向は見られなかった。衣服選択においてTPOを考えるかについては,購入時に65%,着装時に80%と着装時の方が高い結果は,女子と同様であったが,その意識の高さについては,女子に比べて低い傾向がみられた。また衣服購入時に意識するのは男女ともにデザインが最も多く,次いで色であったが,女子の方が意識する割合が多く,男女に有意な差が認められた。着回しも男女に有意な差が認められた。男子は着回しよりも価格を意識している割合が多かった。
  • 杉浦 愛子, 森 俊夫, 木本 晴夫
    セッションID: 3E-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 人には顔がある。顔は着装した身体と組み合わされることによって自己をより明確に表現する。そのため、衣服には顔の印象をより良くみせるための効果や、顔の印象を損なわないようにするための配慮が求められると考えられる。そこで、本研究では顔と衣服選択の関係を明らかにすることを目的に、女子大学生の自己の顔に対する認識度および意識度と衣服選択の関係について検討した。
    方法 2011年4月~7月に、女子大学生143名(平均18.95歳)を対象とし、「自己の顔に対する認識度」および「自己の顔に対する意識度」についての各項目を5段階で評価させた。これを主因子法による因子分析およびグループ内平均連結法によるクラスタ分析を用いて分析を行った。また、衣服選択の際に意識する項目を選択させ、平均値を求めた。
    結果 女子大学生の自己の顔に対する認識度は「肌」「目」「鼻」「形」「口」の5因子構造であった。被験者は大きく2群に分けられたが、衣服選択の際の顔への意識について、この2群による違いはみられなかった。また、女子大学生の自己の顔に対する意識度は「肌」「目」「眉」の3因子構造で、被験者は「低意識群」と「高意識群」の2群に分類された。「高意識群」は衣服選択の際に顔を意識することが多いが、「低意識群」はそれほど意識していないことがわかった。これらのことから、自己の顔に対してどのような認識をもっているかということよりも、自己の顔に対する意識そのものが高いほど、衣服選択の際には顔と衣服の関係について注目していると考えられる。
  • 辻 幸恵
    セッションID: 3E-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 男子大学生の中には、おしゃれな装いの者とそうではない者がいる。その装いの違いは何が原因であるのかに着目をした。つまり、男子大学生の装いには何が影響をしているのか、その要因を明らかにすることが本報告の目的である。
    方法 2011年11月下旬から12月にかけて本学を含めて関西圏にある3つの文系大学に所属する男子大学生530人を対象に質問紙による調査を実施した。回収率は69.6%で369人であった。記述ミスを12省いたので有効回答数は357となった。基本属性と装いに関する質問項目に対する解答データをもとに、クラスター分析をおこなった。
    結果 おしゃれな男子大学生のグループとそうではないグループには次ぎの項目に有意差が得られた。友人に異性が多い、通学途中に繁華街がある、スマートフォンの所持率が高い、大学の帰り道にそのままアルバイトに行く等であった。また、おしゃれではないグループの方が今回の調査では人数が多くなった。このグループはさらに細分化ができた。
    考察 おしゃれな男子大学生に属している者は、異性からの情報をはじめインターネットなどからも装いの情報を得ていることが考えられる。また、遠距離通学や繁華街が通学路にあると、寄り道することも多く、外界からの装いの情報を得る機会がある。個人の価値観があるとはいえども、本報告の結果からはアイシャワーや外界からの情報摂取の多少が男子大学生の装いに影響を与える要因であることがわかった。おしゃれではないグループの特徴は、装いのシーンが単調であることが特徴であり、装いはシーンと密接に関係があることが考えられた。
  • 松本 由香, 佐野 敏行, ビンティ・ムハマド・ザイン ヘラワティ
    セッションID: 3E-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 本研究では、インドネシアの西端に位置するアチェ州(ナングロ・アチェ・ダルサラーム州)の事例をとりあげ、衣服・布づくりが、人間にとってどのような意味をもつのかを考察する。
    方法 2009~2011年度に行ったアチェ州各地でのフィールド調査におけるソンケット(緯糸紋織)、バティック(臈纈染)、刺繍などの手工芸工房、仕立屋、ブティック、裁縫教室等の52の施設でのインタビュー資料を用いる。
    結果 アチェでの衣服・布づくりは、アチェ州各地で、会社・工房経営者が1集団(1 kelompok)のディレクター(pengusaha)となり、近辺に住む職人(pengrajin)の女性たちの生産を管理し、彼女らは、育児・家事の合間に内職するという方法で行われてきた。そしてpengusahaはできたものを集めて市場などに出して売り、売り上げから工賃をpengrajinに渡す。手工芸品は、女性公務員および公務員の妻で構成される各州、各県の推進組織DEKRANAS(全国手工芸品協議会)によって、生産する人々の生活支援と伝統的民族文化の保存を目的として、デザインの洗練、生産・販売の促進がはかられてきた。このようなアチェの手工芸は、2004年のスマトラ島沖地震・津波で被災した人々の生活・心をケアする役割を果たし、人々の自立を支援するものとなってきたといえる。またDEKRANASの振興活動にたずさわる女性たちは、そのソシアル(sosial 社会貢献)な活動を楽しみであると語る。さらに民間の工房経営者の中には、自らの伝統的民族文化の重要性を認識し、伝統文化を保存することに生き甲斐を感じて仕事をする例がみられる。以上のように、手工芸は、アチェの女性たちの生計の手段であるとともに、楽しみ、生き甲斐であるといえる。
  • 平田 未来
    セッションID: 3E-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    【目的】20世紀初頭、イギリスで婦人参政権運動が盛んとなった。1903年にマンチェスターでエメリン・パンクハーストによって結成された女性政治社会連合(Women’s Political Social Union:略称WPSU)では、1908年頃より衣服問題が生じた。これまでの研究では、女性史や教育史の中で婦人参政権運動の政治的な動きが注目されており、近年では消費社会と関連していたとの見解もある。本発表では、20世紀初頭のイギリスで起きた婦人参政権運動で着用された衣服の社会的文化的役割と意義を明らかにする。

    【方法】分析の中心となるのは、1907年10月にローレンス夫妻によって刊行されたWPSUの機関紙『婦人に参政権を!』(Votes for Women)である。また女性参政権協会全国連合の『コモン・コーズ』(Common Cause)と比較検討する。さらに、同時代の新聞、雑誌、自伝や現存する衣服を用い、衣服の機能や役割を検証する。研究の対象期間は、1908年から第一次世界大戦がはじまる1914年である。

    【結果】婦人参政権論者たちは、エドワード朝時代の白いブラウスに裾の長いスカート、それにつばの広いピクチャー・ハットを取り入れ、女性らしさを保持しつつ、活動に参加していた。さらに「紫、白、緑」という「純潔、希望、それに威厳」を意味するカラーズのついたバッジ、ブローチそれにバナーズが運動の団結心を高める機能を果たしていた。これらの衣服やアイテムは、彼女たちの自立心を育て、団結心を与えると共に、婦人参政権運動への実現を果たす役割を担っていた。
  • 山村 明子
    セッションID: 3E-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 19世紀に着用されたクリノリンはかご状になっており、スカートの裾は軽く持ち上がりやすいため、内部の脚をさらに包むためのリネン製のドロワース(またはパンタレッタ)を着用している。それは人目に触れることを前提としたものではない。さらに19世紀後半に流行したスポーツ用のスカートの場合には、外衣とアンダーウェアの中間としての脚衣が合わせて着用されてきた。本発表ではこれらのスカートの内部の着装を検討することで、スカートの表現について考える。 方法 資料として当時イギリスにて発行されたThe Queen”, “The girl’s own paper”, “Graphic” などの婦人雑誌、一般誌を主に使用する。 結果 スカートの内部にニッカボッカーズはアンダーペチコートの代わりとして着用された。それはドロワースのように肌着としての脚衣ではなく、テーラーがデザイン設計したスーツの一部としてのニッカボッカーズであり、スカートの裾を短くしたときには表層に現れる。スポーツ用として提案されたスカートはショート丈であるとともに、腰回り、裾周りのボリュームが抑えられ、それが新規の「格好の良さ」を示していた。スカートのシルエットがプレーンでスリムになれば、その下に着用するニッカボッカーズもおのずとボリュームが少ないものが求められた。ニッカボッカーズは本来は男性の服飾品である。しかし、イギリス女性たちが着用したそれは、外衣として単独で成立しているのではなく、あくまでもスカートと組み合わせて、内部に着用するものであり、女性のアンダーウェアの発展形の服飾品であると考える。
  • 與倉 弘子, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 3E-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    [目的] 滋賀県湖西の伝統織物である高島ちぢみは、日本の盛夏に最適な素材として愛用されてきた。本研究では、織物技術を生かした地域ブランドの創成を企図して、高島ちぢみの触感の評価と素材特性の関係を捉え、高島ちぢみの性能設計に関する基礎資料を得る。
    [方法] 織構造と加工の異なる高島綿織物12種類を選定した。ブラウス等に用いる場合を想定して、手触りによる触感の主観評価を夏期と冬期に行った。夏期の被験者は大学生男女39名、室温は26~28℃、冬期の被験者は大学生男女32名、室温は15~18℃である。評価項目は「滑らか」「柔らかい」「シャリ感がある」「ドライな」「好き嫌い」の5項目としてSD法による5段階評価を実施した。試料の基本力学特性、表面特性はKES-FB計測システムの婦人用薄手布測定条件により計測した。また、KES-SE表面試験機を用いて、表面に凹凸のあるちぢみ織物の評価のための特性値の選定について検討した。
    [結果] 高島綿織物の触感評価では、全評価者の平均評価値を主観評価値とした。柔らかさ、滑らかさの評価は評価者間の一致性が高く、柔らかく滑らかなものが好まれる傾向を確認した。シャリ感やドライ感の評価は一致性がやや低く、触感評価の季節差は明確ではなかった。触感評価と高い相関が得られた特性は、布の厚さT0と曲げ特性、せん断特性であった。布表面のしぼによる凹凸が小さくT0の小さい薄い試料や、曲げ剛性Bやせん断剛性Gが小さく柔らかい試料が好まれた。摩擦特性については、布を指で撫でる時の水平方向の抵抗摩擦力FHが小さい試料は滑らかで好まれる傾向が示され、FH値は凹凸のある織物の触感評価に有効な特性値であることが確かめられた。
  • 柚本 玲, 神谷 昌沙 , 森川 陽
    セッションID: 3E-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的:陣羽織は戦国時代から江戸時代末期にかけて、武士が具足や鎧の上に羽織ったものである。本研究は、奈良県磯城郡田原本町K家に伝わる陣羽織(以下本資料)について、形態・構成や素材を明らかにすることを目的とした。
    方法:本資料の形態・構成、加飾技法、裂(文様、組織・繊維・測色)を調査した。色名は色見本との目視の比較により示し、測色はNR-3000(日本電色)により実施した。
    結果:本試料は身丈815 mm、肩幅556 mm、裾幅545 mmで標準的な寸法であった。構成は袖がなく、衿は立衿と胸衿から成り、背割りがあり、この形態は江戸時代中期以降に多く見られた。加飾技法には裂の接合部に切付け、短冊形の前留めに釦とボタンホール、衿留めとして八つ組の組紐などが見られた。素材は絹と一部箔糸が使用されていた。立衿は錆浅葱色(L*=51.09、a*=1.12、b*=-4.09)の平織、裏地は珊瑚朱色(L*=53.32、a*=34.42、b*=26.04)の繻子織であった。胸衿には宝尽くし、身頃には桐に鳳凰、背の飾りに雲鶴文などの吉祥文様が用いられており、各地組織では斜文織が見られた。身頃や胸衿など数箇所で、撚りのない糸をひきそろえてたて糸に使われていた。地色は身頃で茄子紺(L*=27.20、a*=26.44、b*=0.88)、胸衿で洗朱(L*=45.23、a*=35.04、b*=29.71)、身頃下部と胸衿下部で白練(L*=73.13、a*=4.76、b*=15.75)、背の飾りで猩猩緋(L*=43.20、a*=43.50、b*=29.36)であった。これらの地組織に白練、銀煤竹、木賊色、活色、朱色、勿忘草色などで文様が織られている。
  • 井上 真理
    セッションID: 3E-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 タオル購入の際に最も消費者が重要視しているのは実際に触った時の手触りではないかと考えられる。そこで、本研究では、タオルの素材や密度の違いによる風合い評価の相違点を調査し、またその物理特性を調べることで、手触りによる評価が高いタオルの条件を明らかにすることを目的とした。
    方法 愛媛県今治市のタオル工場で一般的に製造されている計40点の白色パイル地のタオル試料を用いた。試料の繊維組成は綿100%(n=16)、ポリエステル100%(n=6)、麻100%(n=6)、ポリエステル50%綿50%(n=6)、綿50%麻50%(n=6)であり、各素材において密度(筬数×打込数)が異なる試料である。KESを用いて試料の圧縮特性(LC、WC、RC)、表面特性(MIU、MMD、SMD)、熱伝導特性(最大熱流速qmax、熱コンダクタンスK)、熱損失(標準条件Qd、湿潤条件Qw)、構造特性(通気抵抗AR、厚さT)を測定した。主観評価として、学生被験者29名(男性8名、女性:21名)を対象に、「やわらかさ」、「ふっくら感」、「なめらかさ」、「あたたかさ」、「心地よさ」、「総合評価」の6項目について、5段階評価で触感評価を行った。
    結果
    手触りによる評価では、ポリエステルを含む素材のタオルが高い評価を得、麻を含む素材のタオルが低い評価を得た。綿素材はその中間であった。このことは物理特性の中でも圧縮特性が大きく、表面特性が小さいほど高い評価を得ることと対応している。また機能性として吸水性の重要性が明らかとなり、手触りによって吸水性の高さを感じさせるような素材が、消費者の購買意欲をより刺激するものと推察される。
  • 菅沼 恵子
    セッションID: 3E-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 布の滑りやすさは美しい装いや衣服の着脱をスムーズにするなどの点で重要な性質である。この目的で裏地やスリップなどが用いられるが、汗などで湿潤状態になるとかえって滑りにくいと感じられることもある。先の研究によって布が含む水分によって摩擦係数が大きくなり、滑りにくくなること、またこの影響はナイロン、ポリエステルに比べて綿、レーヨン、キュプラでは大きいことがわかった。今回布の水分率と摩擦係数の関係を詳細に調べ、水分率による影響を数値で表した。方法 1)摩擦係数の測定 摩擦感テスターKES-SEを用いて、ピアノ線センサーにおける布の摩擦係数を測定した。ナイロンタフタ、ポリエステルタフタ、ポリエステルサテン、ポリエステルモスリン、キュプラ2種、レーヨンタフタ、スフモスリン、綿金巾、絹羽二重などの布を用いた。2)水分率の測定 水分率の自然対数に対して摩擦係数がほぼ直線的に変化する範囲の水分率(~約70%)を数段階調整し、摩擦係数測定後直ちに秤量ビンに移して重さをはかり、乾燥して絶乾質量から水分率を算出した。結果 水分率の自然対数―摩擦係数の曲線は①水分率に従って摩擦係数が増加する領域と②やがて飽和し、③その後過剰な水分によってやや摩擦係数を減じる領域に分けられる。水分率による影響の大きさは主に①に依存し、その領域では直線近似が可能である。そこでこの直線の傾きを求めて水分率の影響の指標とした。その結果、ポリエステルが織り方に依存せず最も小さく、次いでナイロン、その他の布はかなり大きく、ほぼ一定の範囲内の値となった。
  • 安川 あけみ, 後藤 景子
    セッションID: 3E-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 最近の繊維製品には紫外線遮蔽(UVカット)機能を施してあるものも多い。UVを吸収,または反射する性質をもつ物質を,繊維製造時に練り込む前加工に比べ,後加工は環境や人体への影響少ないが,洗濯や摩擦により処理効果が低下しやすい。こうした中でより優れたUVカット法の開発が望まれている。本研究では,UV領域に吸収をもつナノメートルオーダーの無機微粒子を調製し,後加工により各種の布に付与する方法を検討する。
    方法 試料布は綿,ポリエステル,ナイロン(いずれも日本規格協会,染色試験用添付白布)を用いた。布に付与する微粒子として,アパタイトを合成して用いた。Ca(OH)2,5種のレアアース(Ln : La, Ce, Pr, Nd, Sm)の硝酸塩(Ln/(Ln+Ca) (XLn) = 0, 0.01, 0.03, 0.05, 0.10, 0.15),リン酸を水中で混合して生成した懸濁液を100℃で2日間熟成してレアアース含有アパタイト(以下LnCaHap)粒子を得た。粒子の構造と性質をXRD、TEM、ICP-AES,N2吸着,UV-vis等により調べた。さらに、粒子を付与した各種の布のUV-vis測定を行った。
    結果 XLn = 0のカルシウムアパタイト(CaHap)は約20×60 nmの米粒状粒子であった。5種類のLnを添加した粒子では,いずれの系でも粒子の長さがXLnとともに一旦増加した後,再び短くなったが,粒子の幅はほとんど変化しなかった。XRD測定の結果,粒子の結晶相はXLn ≤ 0.1 – 0.3で混合物のないLnCaHapであった。UV-vis測定によりセリウム(Ce)含有アパタイト(CeCaHap)粒子は紫外領域に強い吸収を持つことがわかった。そこで、この粒子を綿,ポリエステル,ナイロン布に付与したところ,紫外領域に吸収を持ち,UVカット機能を有する布が得られることがわかった。
  • 山下 稚香子, 高橋 哲也, 小倉 孝之, 田中 啓友, 服部 俊治, 工藤 栄, 伊村 智, 神田 啓史
    セッションID: 3E-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的
    現在、南極上空ではオゾン層の破壊が進行し、春先ではオゾン量が平常のおよそ半分から1/3にまで低下している。今後、オゾン量の減少に伴い、より短波長領域の紫外線まで地上に照射されることも懸念される。紫外線は、皮膚のコラーゲンにダメージを与え、しわ、たるみ、しみのような皮膚障害を生じさせる。本研究では危険な紫外線から被服によって人体を守るべく、コラーゲンシート(以下、コラーゲン人工皮膚と記す)に紫外線カット素材を貼り合わせてオゾンホール発生時の南極で曝露し、紫外線カット素材の防御効果について調べた。
    方法
    紫外線カット素材として、異なる量の酸化亜鉛を添加したポリプロピレンフィルムを作製した。コラーゲン人工皮膚をフィルムで覆って、南極にて屋外曝露し、春季と秋季を比較することによって、オゾンホール発生時の紫外線防御効果について調べた。曝露後のコラーゲン人工皮膚から酢酸抽出液を採取した後、ニンヒドリン分析、ビューレット分析、電気泳動分析を実施した。
    結果
    オゾンホール発生時である春季曝露の場合は、秋季曝露に比べて、曝露後のコラーゲン人工皮膚は酢酸に抽出されやすく、抽出液中の総アミノ酸量は2.8倍程度も多かった。つまり、春季曝露の方が秋季曝露に比べて紫外線による損傷が大きかった。しかし、酸化亜鉛を添加して作製したポリプロピレンフィルムで覆って曝露した場合、酸化亜鉛添加量が0.40v%の場合では末端アミノ基濃度が1/5、総タンパク量は1/3にまで減少した。つまり、オゾンホール発生時でも、酸化亜鉛の添加によってコラーゲン人工皮膚の劣化を有効に抑制できた。これらのことにより、酸化亜鉛を添加した繊維素材はオゾンホール発生時でも紫外線を有効に防御し得ることがわかった。
  • 高橋 哲也, 鶴永 陽子, 山下 稚香子
    セッションID: 3E-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    消臭繊維に対する社会的ニーズが非常に高まっている。近年、環境浄化の技術として光触媒酸化チタンが注目を集めている。しかし、繊維に酸化チタン粒子を練り込んだ場合、繊維内部に包埋されやすいために消臭効果が現れにくい。アクリル繊維は、菊花形の断面構造をしているために比表面積が大きい。そこで、繊維に酸化チタン粒子を練り込み、消臭性を有するアクリル繊維の開発を試みた。
    方法
    酸化チタンの添加効果を高めるため、アクリロニトリル(ANと略)とは非相溶性で且つ親水性も高いセルロースジアセテートをブレンドして湿式紡糸を行った。さらに、得られた繊維に対してアルカリ鹸化処理を用い、ジアセテート成分をセルロース化させて繊維の親水性を高めた。
    結果
    AN共重合体に酸化チタン粒子を添加して湿式紡糸しても、繊維には光触媒機能が充分には発現しなかった。そこで、AN共重合体にジアセテートを30%加えて紡糸したところ、その繊維の公定水分率は2.0%から4.0%へと増加した。その繊維に酸化チタン粒子を添加すると、光触媒機能が大きく現れるようになった。さらに、その繊維にアルカリ鹸化処理を行うと、繊維の公定水分率は処理前に比べて2.5~2.8%程度も高まった。これらのアクリル系繊維に対して、アンモニアガスによる消臭性を調べた。その結果、ジアセテートを添加することによって、6時間後までの初期に良く消臭することがわかった。さらにアルカリ鹸化処理を行うと、1時間後であっても酸化チタンを5.0%添加したものでは臭気残存率が僅か3.0%にまで低下した。以上のことより、ジアセテートの添加やアルカリ鹸化処理によって、優れた消臭性アクリル系繊維が得られることがわかった。
口頭発表 5月12日 住居、震災
  • 瓜生 朋恵, 西本 由紀子, 梶木 典子, 上野 勝代
    セッションID: 2I-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 少子高齢化社会の現代では、より幅広い分野での子育て支援や子育てしやすいまちづくりの実現が課題となっている。中でも、子育て中の親が社会から孤立しないためにも、社会参加を支援することは重要であり、そのために子連れ外出者が安全・安心・快適に外出できる環境を整備する必要がある。本研究では、鉄道利用者を対象にベビーカー利用者と非利用者間に生じている心理的バリアを明らかにし、鉄道における子連れ外出活動を支援する方策について検討することを目的とする。
    方法 関西在住の鉄道利用者を対象に、鉄道におけるベビーカーを利用しての子連れ外出について、タブレット端末のアンケートアプリを使用してイベントや団体への街頭調査を実施した(一部質問用紙調査を併用)。調査は2011年10月~12月にかけて行い、配布数372票、回収数322票、回収率87%であった。
    結果 意識調査の結果、ベビーカー利用者が鉄道を利用することに対しては、全体的に肯定的な意見が多く、車両内でのベビーカー利用者に対する優先者対応についても肯定的な意見が多かった。これらの意識に対し、子育て経験の有無による有意な差はみられなかった。しかし、回答者の年齢による意識の違いがみられ、特に20年以上前の子育て経験者はベビーカー利用者の外出行為に理解を示しつつも、「ベビーカー利用者は周囲への配慮に欠ける」等の厳しい意見を持っており、世代間ギャップの存在が明らかとなった。また、回答者の年代に関わらずベビーカー利用者の鉄道の利用円滑化のために、車両と旅客施設の整備を望む声があった。以上の結果より、心理的バリアを改善するためにはベビーカー優先スペースの設置やマナー講習などのハード・ソフト両面の整備を検討していく必要がある。
  • -全国児童養護施設調査による-
    二井 るり子, 今井 範子, 牧野 唯
    セッションID: 2I-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、児童養護施設は、多様な問題を抱える入所児童に個々に対応したケアを提供するため、ケア形態1・ケア単位2の小規模化及び個室化の傾向にある。その一方で、少人数の固定化された職員と、子どもとの生活において、双方の閉塞感や職員の疲弊等の問題が生じている。そこで本研究では、ケア形態からみた子どもの住生活の現状と小規模化の動向を把握し、今後の小規模化のあり方を明らかにすることを目的とする。【方法】〈全国調査〉全国の児童養護施設580施設に悉皆調査(質問紙調査・郵送法)実施。回収率59.3%(2011年7月)。〈事例調査〉ケア形態等の異なる3施設を選定し、観察・ヒアリング調査実施(同10月)。【結果】大舎制施設には、中舎や小舎を併せ持つもの、6名以下のケア単位を持つものが存在し、大舎のケア形態を残しながらケア単位の小規模化が行われている。大舎では職員の相互扶助の空間とその体制が評価されるが、個室化や私物管理、中学生の就寝様式に問題が存在する。小舎では小規模のケア単位内で調理や洗濯等の家事行為が行われることから、家庭的雰囲気とケアの個別化が評価され、一方、調理体制、職員の配置基準・質等に課題があり、共用の遊び場や学習室の必要性が指摘できる。今後、小規模化を進める上で(1)ケア単位を超えた共用空間の充実、(2)年齢に応じた個別空間の確保、(3)職員の負担を軽減する施設全体の厨房や洗濯設備の設置等の計画的考慮が必要である。1) ケア形態:1舎あたりの定員数による分類。大舎(20名以上)、中舎(13~19名)、小舎(12名以下)のケア形態がある。2) ケア単位:日々の生活プログラムを共にする集団の単位※本研究は、科学研究費補助金(基盤研究C:研究代表者 今井範子)によっている。
  • 藤居 由香
    セッションID: 2I-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 過疎化及び高齢化が深刻な中山間地域において,今後の居住継続のためには,いわゆる買い物弱者への方策も必要とされている.本研究では、居住者の買い物に対する意識や希望を探ることから,今後の住生活支援策を検討することを目的とする.
    方法 居住者の意識を明らかにするため島根県西部地区の中山間地域住民に対して配票留置調査を実施した.一部の地域では郵送による配票回収を行った.調査は2011年9月~12月にかけて実施し,配布数740,有効回収数515,有効回収率69.6%であった.
    結果 調査対象者の属性は,男性41.6%,女性58.4%,後期高齢者37.3%,前期高齢者23.1%,64歳以下39.6%であった.また,同居状況については,一人暮らし23.8%,二人暮らし35.3%,三人暮らし20.2%,四人以上20.4%であった,自家用車所有率は82.8%,自己運転率は77.3%であり,普段バスを利用しない77.1%であった.自宅付近で買い物が可能な移動販売車については,事前注文の希望が42.2%見られ,方法としては電話による注文希望最も多かった.移動販売車を利用する環境が整ったとしても,たまに利用したい63.6%,利用したくない30.8%と,常に依存する買い物手段とは捉えていない.自宅に居ながら買い物が可能な配達の料金の支払い方法の希望は,逐次現金払いの希望と口座振替であった.新たな注文方法としてタブレット端末を試してみたい69.4%であった.配達及び移動販売車で購入したい食料品は,肉,魚,豆腐,野菜,調味料等が多く,日用品の購入希望は,トイレットペーパー,ティッシュ,洗剤類に限定されていた.
  • 藤平 眞紀子
    セッションID: 2I-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】住宅の長寿命化を実現させるためには、住宅を構成する部材の品質や耐久性などからの対応とともに、適切な維持保全計画および計画に基づく維持管理が必要不可欠である。長期優良住宅の認定においては、維持保全計画の作成が義務づけされているが、適切に実行されるかどうかは、住宅を建設したメーカーや工務店とともに居住者自身に任されている。そこで、居住者の維持管理の実態を把握するとともに、住宅の長期使用、長寿命化に対する意識や維持保全計画のあり方について検討した。【方法】1980年代から段階的に宅地開発、住宅建設が進められている奈良県内の住宅地の居住者を対象として、アンケート調査を行った。有効回答数は76であった。【結果】回答者の平均年齢は67歳であり、女性が67%であった。持ち家が96%と多数を占め、入居形態は建売り新築入居が41%、注文新築入居が37%、中古入居が21%であった。築後20年以上の住宅が半数以上を占め、築後10年未満は約3割であった。長期優良住宅は10軒であった。住宅の定期的な点検は築後年数の浅い時期に実施されているものの、築後10年が過ぎると不具合の発生に対応して修繕が行われている。長期優良住宅認定における税制の優遇措置に対して魅力を感じる居住者は多いものの、維持保全計画については「必要」と「わからない」と意見が分かれた。また、メンテナンスを計画的に行っている住宅について、資産価値は保たれるものの、中古住宅として活用されるかについても評価が分かれた。日頃の維持管理の取組みや今までの維持管理とのかかわりがみられたことから、築後まもない時期から居住者の維持管理意識を高め、計画に従った維持管理が実施されるしくみを整備していくことが求められる。
  • ―キッチンに対する満足度と食生活行動の関連―
    齋藤 友貴, 高田 宏
    セッションID: 2I-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】家庭を離れ単身居住をしている大学生は,食生活を自己管理することが求められている。そこで,彼らの住居環境と食生活の実態を調査し,それらの関連を明らかにする。本報では,大学生のキッチンに対する満足度と食生活行動に着目し,自立した食生活を営むことができる住居環境について考察する。
    【方法】調査対象者を東広島市のアパート・マンションで一人暮らしをしている広島大学平成22年度入学生とした。調査対象期をⅠ期(4月),Ⅱ期(7月),Ⅲ期(10月),Ⅳ期(1月)とし,7月にⅠ期,Ⅱ期,10月にⅢ期,1月にⅣ期のアンケート調査を行った。アンケート調査は,学生生活,周辺環境や部屋の間取り,設備などの住居環境,調理や食事に対する意識や考え,購買行動および外食傾向に関する内容であった。調査方法は,留置法を用いた。
     【結果】キッチンに対する満足度と食生活行動の自炊頻度や調理済み食品などの利用頻度について考察を行った。満足度について対象者は,キッチン空間の「広さ」に不満を抱いており,キッチンの空間的充実が自炊をしやすくすると考えていることが明らかとなった。自炊頻度は4期にわたって増減したり,変化が少なかったりと,様々な対象者がいたが,性別間の差異はあまりみられなかった。また,調理済み食品などの利用頻度は,4期にわたり増加する傾向にあり,自炊頻度の関係について考察を行った。キッチンに対する満足度が高い対象者の自炊頻度は,高い水準である傾向が明らかとなった。大学生の住居環境について,「広い」キッチン空間を提供することや「広く」使うことのできる工夫を提案することが,自立した食生活を営むことに関連していると考えられる。
  • 五十嵐 由利子
    セッションID: 2I-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】1Kプランの学生アパートにおいて、空間の有効利用の観点からベッドとして使用できるロフト付きアパートがある。しかし、実際にベッドとして使用していない学生も多いことから、ロフトがどのような使い方がされているのか、また、ベッドとして使用されていない要因について検討することを目的とした。【方法】ロフト付きアパートとロフト無しアパート(自宅生も含む)居住の大学生を対象に、アパートの選択理由、ロフトの印象、入居時と現在のロフトの使用実態、使用状況が変化した理由などについてのアンケート調査を行った(有効回答数:195)。さらに、ロフト付きアパート4戸(1戸のみベッドとして使用)を対象に夏季の温熱環境の実測調査を行った。調査期間は、2011年6月~8月末までである。【結果】アンケート調査から以下のことが分かった。①ロフトの印象として、おしゃれ、近代的と回答したものが多かった。②ロフト付きがアパートの選択理由の上位ではなかった。③ロフト付きアパート居住者は入居時ベッドとして使用していたものが73%であったが、現状ではベッドが30%、物置が49%と、ベッドの使用が少なくなった。③入居後にロフトの使用方法が変わったもの37人のうち、物置へ変更が33人と最も多く、その理由として夏の暑さが多かった。また、温熱環境の実測調査の結果、ロフトをベッドとして使用している住戸のみ、夜間のロフト温度が冷房停止後も30℃を超えにくかったが、他の3戸は冷房中でも30℃を超えていた。
  • -生活管理の視点からみた収納様式の研究-
    中村  久美
    セッションID: 2I-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 戸建住宅において持ちモノの見直しや生活規範の設定などの生活管理的行為と、集中収納空間の使いこなしによる収納様式の確立が重要であると指摘してきた。本報は収納空間の制約が厳しい集合住宅において、住宅内に増えていくモノへの保有管理も含めた収納様式のあり方を、実態の検証から探ることを目的とする。
    方法 京都市内の公団の分譲集合住宅団地において、供給時に3LDKの間取りの住戸を対象に質問紙調査を実施。調査期間は2011年5月30日~6月11日。有効票163を得た。
    結果 納戸を設置している世帯は、分譲時に計画されていたケースを含み54世帯(33.2%)で、戸建住宅に比べ設置率は低い。その使い方をみると、日用品、非日常品、衣類、不用品など多様な品目をまとめる複合的な使い方をしている割合が戸建住宅に比べ多く、各室の収納空間の制約を納戸で受け止めている様子がうかがえる。持ち物の見直しなどのモノに関わる生活管理の状況は戸建住宅と変わらない。納戸を保有し、定期的な見直しをしている世帯の空間秩序や収納に対する総合評価は高く、集中収納空間と生活管理による収納様式の構築は集合住宅においても求められる。ただし間取りの制約がある集合住宅の問題として、収納空間の絶対量の不足、衣類や書籍など住宅内に増えていくものの処遇の問題が指摘され、実際に「実家」など住宅外に収納空間が拡散している実態が判明した。衣類や書籍などについては、保有の「節制」のほか社会サービスを利用して保有を調整する状況が明らかになった。集住のメリットを活かしたモノの共有、循環のシステムへの一定の要望もあることからも、外部の協同システムやサービスを視野にいれた収納様式の検討が望まれる。
口頭発表 5月13日 住居、震災
  • 在宅介護におけるにおいの評価と臭気濃度
    光田 恵, 村田 順子, 棚村 壽三
    セッションID: 3I-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高齢期に要介護状態になってもできるだけ長く在宅生活の継続が求められている現在、介護者の介護負担の軽減及び、介護環境の改善は欠かせない。本研究は在宅での介護環境の質的向上を図るためにおいに焦点をあて、においの原因となる諸要因を明らかにし、適切な臭気対策を提案することを目的としている。本報は、在宅介護中の介護者のにおいの評価と介護環境の臭気濃度とを比較検討した結果である。
    方法 事前に実施した介護者に対するアンケート調査の回答者で、訪問調査への同意が得られた人の中から対象者を16名選定し、自宅を訪問して2時間程度の聞き取り調査、間取りの把握および臭気試料の採取方法の説明を行った。調査対象者には後日、居間、高齢者の寝室、玄関の3か所の臭気を採取・返送してもらい、嗅覚パネルにより臭気濃度を求めた。調査期間は2011年11~12月である。
    結果 介護者にとって排泄物のにおいは困りごととして捉えられており、対策が必要である。その発生源には「高齢者の部屋(以下、寝室)」、「トイレ」があげられている。「寝室」の臭気濃度は、7.4~98(室内犬のにおいが強烈な1軒を除く)で、平均値は21である。排泄物のにおいの発生源に11名が「寝室」をあげており、その臭気濃度の平均値は25と全体の平均値よりも高い。また、排泄物の臭気レベルが「強い」と評価された5件の寝室の平均値は23であったが、「弱い」場合(6件)の平均値は27だった。介護者の評価と測定値が一致していない。これは、おむつ交時や保管場所のふたを開けた瞬間といった介護者が最もにおいを強く感じる時の測定値ではないことと、通常時は意識的な換気により臭気濃度が低くなっているからと考えられる。
  • 在宅介護の実態と介護者のにおい意識の事例報告
    村田 順子, 光田 恵
    セッションID: 3I-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本報では、在宅介護における介護環境の質的向上を目的として、特に、快・不快に大きな影響を与えるにおいに焦点をあて、その適切な対策方法について検討することを目的としている。
    方法 研究の方法は、その1と同様である。調査で介護生活の実態を伺った結果をもとに、特に介護者のにおい意識に関し、生活との関係性についてみる。調査内容は、介護生活の実態、住宅の状況、家族関係、住宅内の気になるにおいなどである。
    結果 「高齢者の部屋(以下、寝室)」の臭気濃度の平均値は21であるが、これは築2年の病室の臭気濃度31より低い1)。寝たきりで要介護5の2名は常時おむつを使用しているが、寝室の臭気濃度はそれぞれ23、7.4と低く、同じ要介護5でトイレ使用者の寝室の臭気濃度は74と高い。また、平均臭気濃度21以上の7件のうち、ポータブル1件、おむつ1件の他は基本的にトイレを使用しており、排泄の自立度と寝室の臭気濃度との関連性は低い。ほとんどが換気には気を配っているが、臭気濃度の高い家は対面に窓がないなど有効な換気がなされていない可能性もある。臭気濃度は低いがヒアリング時に寝室のにおいの問題を訴えていた介護者は、「寝室の掃除をさせてもらえない」など高齢者に対し不満を抱いている場合があり、高齢者との人間関係の善し悪しが、においの意識に影響を与えることもあると考えられる。
    1)板倉朋世、光田恵、医療施設における病室内の臭気のレベルに関する研究、日本建築学会環境系論文集№625、2008、p.327-334
    その1、その2の研究は、平成23年度科学研究費補助金(課題番号:22360244、研究代表者:光田恵))の助成を受けて実施されたものの一端である。
  • -共学・女子大生を対象としたアンケート調査より-
    東 実千代, 佐々 尚美
    セッションID: 3I-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】生活環境の様々なにおいに対し、近年では消臭のみでなく香りづけを目的とした製品が数多く開発されている。本研究では、大学生を対象とし、生活環境中のにおいに対する意識およびにおい関連商品の使用実態やその評価を把握することを目的とする。
    【方法】近畿圏の共学および女子大生を対象とし、質問紙調査を実施した。講義終了後に調査の主旨を説明し、同意が得られた学生に配布し、その場で記入させ回収した。調査は2011年12月に実施し、共学156部、女子大学126部、計282部の有効回答を得た。
    【結果】においに敏感かどうかについては、男子学生に比べ女子学生が敏感と回答する割合が高く、気になるにおいをすぐに消したいと思う割合は、男子・共学女子学生が5約0%、女子大学生が約70%であった。室内空気の汚れやにおいが気になった時の最初の行動については、窓開けや換気をすると回答した学生が約70%であったが、芳香剤・消臭剤を使用するとの回答も10%以上あった。生活臭が気になる割合は、女子大学生が高く、心地よいと感じるにおい環境については、香りがある空間・日常的な生活臭がある空間・無臭の空間に意見が分かれた。近年普及した布製品用除菌・消臭スプレーについては、洗濯・天日干しに対して半分程度の効果と評価する学生が多かった。男子学生・女子学生とも他人のにおいより自分のにおいを気にする割合が高く、衣類に香りを付加したいという割合は全体で約45%程度あった。今後は在宅時間やにおいに対する感受性などの観点からも意識の違いを分析する予定である。
  • 萬羽 郁子, 中山 亜友美, 五十嵐 由利子
    セッションID: 3I-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 改正建築基準法で内装仕上げ材の規制や機械換気設備の設置が義務付けられて以降、新築住宅のホルムアルデヒド濃度は低下傾向にあるが、生活用品による室内空気汚染や、居住者の機械換気設備の使用状況に関する問題が報告されている。筆者らは、一人での生活を始めてからの期間が短い大学生の住まいを対象に室内空気質濃度の実測調査を行っており、本報では生活行動との関連について検討した。
    方法 対象住戸は新潟市内の木造の学生アパート10戸で、築年数の内訳は1年以内が6戸、3~5年が3戸、17年が1戸であった。夏期の室内閉鎖状態での濃度として、2011年7~9月に、検知管法によるホルムアルデヒド濃度とポータブルVOC分析装置を用いた簡易GC分析によるVOC(トルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレン)濃度を測定した。また、生活行動と室内空気質の関連性について検討するため、2011年9~10月に夏期・秋期調査、2011年12月に冬期調査として、ホルムアルデヒド・アセトアルデヒドとVOC(上記4物質+パラジクロロベンゼン)をパッシブ法で24時間捕集した。アルデヒド類はHPLC、VOCはGC-MSで分析した。測定中は、生活行動記録を行うとともに室内の温度・相対湿度を連続測定した。
    結果 検知管法による夏期閉鎖状態のホルムアルデヒド濃度は10戸中6戸、VOCについても一部で厚生労働省の室内濃度指針値を超えていた。パッシブ法による24時間平均濃度については、指針値を超えていた住戸はみられなかったが、窓開放頻度の低い住戸ではホルムアルデヒド濃度が指針値に近い濃度であった。また、木製家具の量や換気設備と室内濃度の関連性についても示唆された。
  • 都築 和代, 安岡 絢子
    セッションID: 3I-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 冬季の住宅温熱環境に関する調査では、新省エネ基準施行以前の住宅で廊下や脱衣室などが10℃以下となり、在宅時間のうち暖房器具を使用しない時間が40%あった(濱中他、2010)。居間や浴室など暖かい空間から脱衣室等へ移動した場合、身体への負荷が大きいと考えられ、効果的な暖房を行うことが求められる。
    方法 25℃の前室から冬季の脱衣室を模擬した10℃の環境で投入エネルギーを500W一定にして3種の暖房器具(カーボン、セラミック、カーペット)で20分間暖機運転した温熱環境の分布を測定した。また、そこに前室から被験者が移動して20分間滞在した時の皮膚温、血圧などともに温冷感や許容度などの主観申告を尋ねた。被験者は高齢男性と青年男性6名ずつとし、年齢差を検討した。
    結果 前室の平均皮膚温33℃よりも高くなったのはカーボン(33.6℃)であり、セラミック(31℃)、カーペット(30.5℃)、暖房なし(29℃)の順であった。拡張期(最低)血圧には年齢差、条件差が認められなかったが、収縮期(最高)血圧は両群とも前室に比べ、脱衣室で有意に高くなった。群別では、高齢群で暖房条件による有意な差はなかった。しかし、青年群の収縮期血圧は、カーボンでカーペットと暖房無しに比べ有意に低くなった。青年群の方が高齢群よりも暖かく感じていたが、カーペットと暖房なしで有意な差は無く、それらよりも、カーボンとセラミックで有意に暖かく感じていた。高齢群では暖房方式のうちカーボンヒーターがやや許容されたが、満足感は得られなかった。一方、青年群ではカーボンとセラミックが許容され、満足であったのはカーボンヒーターのみであった。500Wでは高齢者への良い効果は認められず、投入エネルギー量を変えるなどの検討が必要であったが、青年群ではカーボンでも許容された。
  • - 夏期と冬期の比較 -
    安岡 絢子, 久保 博子, 都築 和代, 磯田 憲生
    セッションID: 3I-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】快適な温熱環境を提案する上で、実生活で体験するような室温変化時の生理心理特性の把握は重要である。本研究は、中等度温熱環境下での室温低下が、体温調節反応と温熱的快適性に及ぼす影響の個人差を検討するため、青年女性を室温低下の環境に曝露し、生理心理反応を測定した。本報では特に夏期と冬期に行った結果の比較を行う。【方法】実験は人工気候室において椅座安静で行った。実験条件は「33℃40分間一定→40分間で25℃まで低下→25℃40分間一定」とし、相対湿度は50%一定とした。測定項目は環境温、相対湿度、グローブ温度及び生理反応として皮膚温、直腸温、心拍等、心理反応として温冷感や快適感を5分間隔で回答を得た。実験は、2009年9月に夏期実験を、2010年2月に冬期実験を13~16時の時間帯で実施した。被験者は好みの気温を選ぶ選択気温実験に参加した健康な青年女性14名で、夏期、冬期で同一被験者とした。なお、被験者は中等度の気温(25~29℃)を好む青年女性(=M group) と高い気温(29℃~)を好む青年女性(=H group)に分類し検討した。【結果】M groupは室温低下時に手背皮膚温に季節差が認められ、冬期の方が皮膚温低下は速く、有意に低くなった。冬期の低温環境への寒冷適応が、夏に比べて血管収縮をより促進したためと考えられる。一方で、H groupの手背皮膚温に季節差は認められず、冬期の寒冷適応能が弱い可能性が示唆された。H groupは手温冷感に有意差が認められ、冬期の方が寒い側に評価した。既報で、室温低下に対する血管収縮能の弱さが示唆されていたH groupは、季節適応能も弱い可能性が示された。
  • 松尾 光洋, 上野 勝代, 平田 陽子
    セッションID: 3I-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的と方法
    本研究は、緑のカーテンを特徴として販売された民間のマンション(以下エコヴィレッジマンションと称す)において、緑のカーテンを活用した居住者コミュニティ活性化の可能性について検討するもので、①分譲会社、管理会社および居住者へのヒアリング調査。②現地視察。③居住者アンケート調査(1349戸に配布、311戸から回収)を行なった。
    2.調査結果
    エコヴィレッジマンションの管理会社は分譲会社と提携しており、入居後に緑のカーテンに関する講習会などを行い、共用部分の管理だけでなく住民同士の交流を図っていることが特徴的である。 アンケート調査によると、緑のカーテン実施率は8割にも及び、そのうち毎年実施している人が半数である。実施の動機は「涼しそう」52%、「楽しそう」46%、「植物が好き」44%などが多かった。緑のカーテンの効用としては「楽しかった」71%、「食材になった」57%、「やすらぎを感じた」50%などが上位を占め、一定の満足感を得ていることがわかった。 また、ヒアリングによって、緑のカーテンの講習会に参加することにより居住者同士のコミュニケーションが取れていることがわかり、集合住宅のコミュニティ活性化の手法として有効と思われる。
    3.まとめ
    この事例に習って、一般の集合住宅においても緑のカーテンの普及に務め、講習会や共有空間の緑化に関するイベントなどによって居住者同士の交流ができる機会を提供し、それを継続していくことによって、コミュニティが広く形成されているものと考えられる。なお、本研究は神戸女子大学の滝井智子氏の卒業研究としても行なわれた。
  • 久保 博子, 木佐貫 美穂
    セッションID: 3I-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的: 快適な睡眠を得るために寝具は大きな役割を果たしており、毎日長時間の連続使用をおこなっているが、寝具による睡眠への影響に関する知見は少なく明確ではない。そこで、本研究ではベッドマットレスの硬さが異なる場合の終夜睡眠時の寝姿勢・体動、生理心理反応を明らかにすることを目的とし、前報に引き続き、男女を被験者として終夜睡眠実験を行った。
    方法: 健康な若齢者女性8名、男性7名を被験者とし、奈良女子大学人工気候室にて23時~翌朝7時まで8時間の終夜睡眠をとらせた。実験は実験中は被験者の好みの気温に設定した。ベッドマットレスは硬さの異なる3種類 (A:90±19N、B:130±23N、C:50±15N低反発素材)を用いた。測定項目は寝姿勢・体圧分布、生理反応として心拍数・体動回数・脳波など、心理反応として睡眠前後に寝心地評価・快適感評価など、起床時にOSA睡眠調査票による睡眠感評価である。その他日常睡眠に関するアンケート、身体計測を行った。
    結果 (1)男性では寝姿勢回数はA、手足の微細な体動はBにおいて有意に多かった。起床時にはBにおいて「硬い」「寝心地が悪い」と評価した。(2)女性では寝姿勢の変換回数はBで最も多く、A及びCでは同一の寝姿勢が長く持続し、手足の微細な体動はが多い傾向が認められた。Cでは、OSA睡眠調査票において睡眠維持の因子の得点が有意に低く、起床時に「重々しい」と評価した。(3)男性では女性に比べ寝姿勢変換回数が多かった。また、OSA睡眠調査票による評価では女性の得点が低い傾向にあった。(4)男女とも、脳波計測から求めた睡眠深度出現割合、心拍数等には有意な差は認められなかった。
    文献:木佐貫美穂、久保博子:ベッドマットレスの硬さが終夜睡眠時の寝姿勢・体圧分布に及ぼす影響、家政学会大会要旨集、2012
  • ―奈良県奈良市「奈良町北地区」における―
    牧野 唯, 今井 範子
    セッションID: 3I-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】奈良町北地区は,江戸期から昭和初期の伝統的なファサードを現在に残す町家が点在する街区であり,空き地や駐車場が増える一方,現代的な住宅やマンションが混在する現状である.地区の持続的発展を検討するため,居住者の住宅形態からみた居住地に対する意識や要求を明らかにする.
    【方法】1)2000年調査対象の奈良町北6地区(一戸建・長屋建)に質問紙調査を実施(世帯票配布数212,回収数182,回収率85.8%).加えて,マンション(回収数111票),アパート(同108票)居住者に質問紙調査を実施した(2011年10月).
    【結果】1)2000年調査対象595例中76例が居住者の入れ替り,空き地・駐車場・空き家に変化.子の遠居や高齢夫婦の増加による家族形態の変化が,外観変化,空き家・空き地化として表出.2)一戸建・長屋建では定住者が5.5割,世帯主年齢は平均64.2歳,単身と夫婦のみがあわせて3割強.マンションでは転入者が7.6割,40代以下の世帯主が2.6割,夫婦と子が3割,子育て世帯が多い.アパートでは20代の単身,女子学生が多い.3)①転入世帯の地域活動・交流は少なく,自治会所有の「会所」を知らない者も多いが,転入者は町の歴史性を高く評価.②居住者は観光も考えた住宅地としての将来を希望.③子育て施設と観光客が利用可能な空間の要望がある.4)居住地の持続性のためには,新規転入をうながすことが重要であり,転入者が望む子育て空間,観光を考慮した町として観光客が利用できる空間を整備し,現存する会所や町家の活用が期待される.
    ※本研究は科研費(基盤C:家族形態・居住形態の変容にともなう歴史的居住地の持続性に関する研究)による.
  • 芥見東自治会連合会の取り組みについて
    柳井 妙子, 中山 徹
    セッションID: 3I-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)若者から高齢者までが住みやすいと感じる地域は誰もが願うものである。上手くいく時期があっても時間の経過と共に変化してくることは自然なことである。これは、ボールを投げ上げたときの放物線のごとく必ず上がればピークを境に落ちてくるのと類似している。まちづくりの仕掛けをある間隔ごとに実施し続けることが持続可能な地域づくりには欠かせないものと考える。今回研究対象である岐阜市芥見東地区は高経年化した郊外型団地であり、現在コミュニティバス(コミバス)を本格運行している。3年半前試行運行時に誕生したコミバス運営協議会は自治会連合会の一環の取組でもある。乗車率を高め、継続的にそれを維持する手法をみつけることが、芥見東地区を持続可能なまちにすることの一助と考え、その手法を知見することを目的とする。(方法)コミバスへの取り組みと、そこから派生している自治会連合会の活動が地域住民へ浸透していっていることを、月刊紙の自治会だよりと2012年1月に芥見東自治会連合会会長、副会長の5名への聞き取り調査からみていく。(結果)住民の足であるコミバスを継続運行するための仕掛けづくりは、格安回数券の販売とボランティアであるヘルパー制以外にも日々の住民同士の繋がりから生まれてきている。高齢化が進んでいる芥見東地区では、ほとんどの連合会役員たちは第一線を退いた方たちで構成されている。退職後に地域活動をすることで遣り甲斐を感じ、汗を流して人と人との輪が広がることを日常の楽しみとしている人が増えてきている。また里山づくりや歌声喫茶など活動は広がっている。これは毎月発行している自治会便りを通して連合会活動を住民に情報公開し透明性を図っていることからと考える。
  • 神戸市湊川児童館における実践より
    三科 綾, 梶木 典子, 上野 勝代
    セッションID: 3I-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、犯罪や交通事故だけでなく、2011年3月に発生した東日本大震災のような大規模な地震や津波など未曽有の自然災害も発生している。子どもが自分の身を守るためには、常日頃から、地域の特徴を知り、危険を回避する力をつけることが重要であると考えられるようになってきた。その方法の一つに、地域安全マップ活動があるが、一過性の行事として終わることが多く、継続的に取り組まれることは少ない状況にある。そこで本研究では、児童館において、児童館職員が負担なく地域安全マップ活動に取り組むことができ、継続的に実施することのできる「普及版プログラム」のあり方について検討する。
    【方法】地域安全マップ活動を2011年10月に神戸市立湊川児童館(兵庫区)において実施。活動内容は、防犯だけでなく防災についても楽しく学べるように工夫をした。普及版プログラムを開発するために、活動終了後に参加者対象アンケート調査を実施し、活動内容に対するニーズを抽出した。そして、児童館職員に対するヒアリング調査から実施方法を検討した。
    【結果】児童館職員を対象としたヒアリング調査の結果から、「危険個所を重点的に」という意見があげられ、危険に対する意識が強いことがわかった一方で、まちの特徴や魅力を再確認するといった本活動のもう一つの趣旨が十分に伝わっていなかった。地域安全マップ活動を児童館職員が主体的に取り組むためには、活動の内容や目的を共通理解するための事前指導マニュアルなどのツールが必要である。また、活動をコーディネートし、ファシリテーションできる児童館職員の育成するために研修会の実施が必要であることも明らかになった。
    *本研究は、梶木研究室2011年度卒業生:辻麻純との共同研究で行った。
  • 藤本 佳子
    セッションID: 3I-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    研究の目的:東日本大震災における分譲マンションの建物等被害状況の把握と管理組合の対応を明らかにすることを目的とする。
    調査の内容:東日本大震災における分譲マンションの被害と復興過程を、宮城県仙台市、多賀城市と茨城県水戸市、ひたちなか市、日立市を対象に、前者は聞き取り調査で、後者はアンケート調査と聞き取り調査で明らかにする。調査内容は、建物・設備・構内の被害実態と管理組合の対応、自治体の支援状況などである。調査時期は2011年5月から2012年2月末。
    調査結果:①被害状況は、阪神・淡路大震災と比較して分譲マンションの被害は少なかった。しかし、6割のマンションで何らかの被害があった。②地震保険の入っているかいないかが、震災復旧工事にスムーズに取り組めるかいなかが決まる。③地震保険の被災認定が3段階であり、マンションの被害状況に適合していない。③被災者生活再建支援制度の基礎支援金は、世帯に支給され管理組合ではない。
    ④加算支援金も被災した住宅再建や復旧辞退を目的としていない。
  • 武井 玲子, 鍋山 友子
    セッションID: 3I-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 東日本大震災によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の事故、それに続く放射性物質の人間や食品、生活環境等への汚染が社会問題となっている。事故発生当時から、政府の「ただちに健康に影響を及ぼす値ではない」との報道を始め、放射性物質のリスクに対する様々な情報が発信され続け、風評被害も見られている。そこで、安全、安心な社会構築のためのリスクマネジメント研究の一環として、放射性物質汚染に対する意識と行動に関するアンケート調査を実施した。
    方法 郡山女子大学学生189名を対象として、2011年12月集団調査法で調査を実施した。評価は、単純集計、クロス集計にて行った。
    結果 約9割以上の学生は、「テレビ・ラジオ」から情報を入手していた。①政府・行政機関、②東京電力、③マスコミからの情報発信の内容、タイミング、わかりやすさの3点に対する評価は、①②は「大変悪い」と「悪い」とする割合は6~7割、③は4割であった。また、政府発表の「ただちに・・」の表現に対しては、「わかりにくい」5割、「信じられない」3割であった。また、約6割が放射性物質汚染を気にしていたが、約3割は気にしておらず、被ばくに対して気にしている割合は、内部被ばくは3割弱、外部被ばくは数%、両方は約6割であったが、汚染防止対策については、特に実施していない学生は、5~6割であった。風評被害に対しては、「偏見・差別と思う」60.3%、「仕方ない」24.9%、「わからない」14.3%という回答結果であった。
     以上より、リスクコミュニケーションに問題があること、実態を十分に理解できずに不安に感じている傾向が見られ、安心な生活とは程遠い状況であることが懸念された。
口頭発表 5月13日 家政教育
  • 高血圧の人に配慮した食事作り
    岡崎 由佳子, 岡崎 佳子, 高瀬 淳
    セッションID: 3H-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高等学校家庭科教育における調理実習は,食生活の自立に必要な知識と技術の習得を主な目的としており,教科書における実習の献立は,青年向け,幼児向けといった特定の集団を対象に構成されている。我々はこれまでに,盛り付ける量や食事形態を少し工夫することで,摂食能力が低下した人や糖尿病の人が家族と同じ献立の食事を楽しむことができるという調理実習を行ってきた1)2)。本研究では,高血圧の場合でも家族と一緒に楽しむことのできる食事作りを実施し,家庭科教育における調理実習への応用の可能性を検討することを目的とした。
    方法 藤女子大学人間生活学科の「調理学実習」の授業において,学生33名を対象に4時間(1時間は90分)の授業を行った(2011年12月~2012年1月)。まず,高血圧の人の食生活上の留意点について講義した。次に,献立を変えなくても主食,主菜,副菜の盛り付けを工夫することで,家族とほぼ同じ食事が楽しめることを栄養計算によって理解させ,調理実習を行った。授業後のアンケート調査から,学習内容を考察した。
    結果 高血圧に配慮した食生活を知っていた学生は10名で,理由として「家族に高血圧の人がいる」という回答がみられた。また,「一人だけ別の料理を食べるのではなく,盛り付け等を工夫することで家族が同じメニューを食べることができると分かった」「作る側の手間もかからず,日常生活に役立つ」という感想がみられた。以上より,高等学校の家庭科教育では,基礎的な知識と技術の習得に加えて,食べる人の状況に配慮できるような調理実習を実践することが必要であると推察された。1) 岡崎他,日本家庭科教育学会第52回大会要旨集,p.86–p.87 (2009) 2) 岡崎他,日本家政学会第63回大会要旨集,p.171 (2011)
  • 高校生の意識調査より
    浅見 静香, 速水 多佳子
    セッションID: 3H-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 学校教育で命に関する授業が行われる背景には、自他の命を軽視する行為である自殺や青少年犯罪の増加などがある。中でも自殺は深刻な問題であり、小中高校生の自殺者数が毎年300人前後で推移している。学校教育の中で家庭科は、生徒の「生活の自立」を目指しており、そのために必要な基礎的・基本的な知識及び技術を習得させ、生活の向上を図る。家庭や地域の中で自分の役割を果たすことが、自分の存在を確立させ、命あることや、命の尊さ・意義を認識できることにつながると考えられる。そこで本研究は、家庭科教育における「命の授業」の実践を行うための基礎資料としてアンケート調査を行い、生徒の自己の存在や命に対する意識を把握することを目的とした。
    方法 H県のI高等学校1年生315名(男子159名,女子156名)を対象に、質問紙による5段階法と自由記述式で、生徒の自己に対する意識、学級や家庭及び地域での自分の存在、また、これまでに受けてきた命の授業の経験に関する調査を実施し、分析を行った。
    結果 各質問項目に対して、「よくあてはまる」「あてはまる」「どちらともいえない」「あてはまらない」「全くあてはまらない」で回答を求め、5~1の各得点を与え平均値、標準偏差を求めた。「命は大切なものだと思うか」という問いでは平均4.49(SD=0.88)と、小・中学校時代の授業や自身の経験などによってほとんどの生徒が命は大切であると認識している。しかし、「人の役に立っているか」「クラスの中で仕事や役割があるか」「家族を支えている存在か」といった自己有用感に関する項目では、平均値が低くなるという傾向が見られた。
  • 佐藤 ゆかり, 小高 さほみ
    セッションID: 3H-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    <問題関心と目的>教員養成課程において教員としての力量形成をどのように行うかが課題とされている。授業をコミュニケーションととらえた場合,教師に求められる基本的な力量として授業事象の認知があり,経験教師と教育実習生の認知には違いがあることが明らかにされている。本報告では中学校家庭科の授業観察とその後の演習を事例として,学生がどのように授業をとらえているのかを明らかにし,家庭科の授業実践力育成のための課題について考察することを目的とする。
    <方法>中学校家庭科の授業観察後に,観察者による観察事象の可視化と共有化を行い,その過程をICレコーダにより記録した。分析対象は観察者の記述及びICレコーダによる記録内容である。授業観察は2011年10月18日に実施した。観察対象はJ中学校2年1組「題材名:賢い消費者を目指して‐消費者の権利と責任を考えよう‐」の「大切にしてほしい!あなたの権利と責任」をテーマとした授業であった。観察者による観察事象の可視化と共有化は,2011年10月26日に行った。観察者(以下,学生)は中学校家庭科の教育実習を経験している大学院生3名であった。
    <結果・考察>観察事象の共有化において,学生は,子ども,教師,教材等の複数の視点から授業をとらえていた。これらの視点は個々の学生にみられたわけではなく,観察事象の共有化において生じたものであった。教師としての技術や実践的知識の形成には,実践場面で観察した事象を複眼的視点により構造化し,その意味するところを洞察する力が必要である(澤本,1998)ならば,家庭科の授業力実践育成の一方法として,観察した授業について共同で考える時間及び方法の検討が必要であると考える。
  • 三井 隆弘
    セッションID: 3H-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    背景と目的:日常的に使われている測定単位や接頭語の重要性は認識されているものの理解度の調査研究はほとんどない.分数がわからない大学生がめずらしくなくなった今日,時速から秒速への換算,カロリー(cal),ワット(W),パスカル(Pa)など単位を,正確に説明できる大学生は,どれだけいるのだろうか.
    方法
    302名の地方国立大学生を対象として,小学校から高校1年までの学習内容についての長さ,質量,速度,力,エネルギーおよび有効数字に関する10の質問を行った.学生を所属によって分類し,高等学校での理科の選択科目も調査項目に加えた.
    結果文科系学生は2.7 ± 1.5点(標準偏差)(n = 138),理科系学生は4.6 ± 1.9 点 (n =164) と予想を大きく下回った.文系学生の半数以上が,5 m2 を 5 × 104 cm2 (50,000 cm2)に変換できず,理系学生で1ニュートン(N)を1 kg m /s2に変換できたのは10 %以下だった.
    考察
    本調査は,比較的学力が高いと考えられる地方国立大学生であったが,小学生程度の単位の理解が十分でない現状は,憂慮すべきである.初等中等教育での授業時間数と内容の減少や不適切な指導内容が背景にあるものと推察される.家庭科では,食物や被服の分野で,mgとµgやkcal(現在は理科で学習しない)などの指導をていねいに行うのがよいのではないだろうか.
  • 小林 陽子, 岳野 公人
    セッションID: 3H-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/18
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    目的 本研究は、生活設計教育モデル案を作成し、当該モデル案の諸能力に関する質問紙調査を実施することで、大学生のための生活設計教育カリキュラム開発への示唆を得ることを目的とする。
    方法   質問紙調査は、関東、東海、関西地方の大学4校の1~4年生701名を対象として実施した。欠損値を除いた有効回答率は90.7%であった。調査時期は、2011年12月~2012年1月である。構想したモデル案をもとに、「経済生活」「能力」「人間関係」「生活空間」「生活時間」の5資源に関する25項目と、生活設計を実現するためにつけるべき能力「自己分析」「意思決定」「プランニング」の3能力領域に関する15項目を作成した。また、5資源については、大学生の生活の実態と生活設計意識に差があるのか明らかにするために、それぞれの回答を得た。       
    結果 質問紙調査の結果、「経済生活」「能力」「人間関係」「生活空間」「生活時間」の5資源に対する大学生の意識と実態に差のあることが明らかとなった。有意に5資源に対する意識は、実態よりも得点が高い結果となった。つまり、大学生は、生活設計の5資源は重要であると意識するものの、実態がともなっていないことが示唆される。また、「自己分析」「意思決定」「プランニング」の3能力について自己評価の高い学生と低い学生について、それぞれ5資源に対する意識と実態の差を検討した結果、3能力の自己評価の高低に関わらず、「生活空間」資源について有意差は認められなかった。つまり、大学生は生活空間については、能力に関わらず実態をともなった資源を有していると考えることができる。
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