マイコトキシン
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73 巻, 1 号
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Part I (Papers in English)
Research Paper
  • 岸本 真凜, 古川 智宏, 林 菜月, 唐澤 敏彦, 森光 康次郎, 矢部 希見子, 久城 真代
    2023 年 73 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/03/04
    [早期公開] 公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,種々の共存微生物を含む圃場土壌試料中の,アフラトキシン(AFs)産生菌の生残を調査するために,培養後に寒天培地全体を抽出する手法を検討した.ジクロルボス(DV)塗布もしくはDVフリーの寒天培地に,既知のアフラトキシン産生型のAspergillus flavus菌株を添加したコントロール実験では,土壌からのコロニー回収率に有意差はなく,一方でDVはAFs蓄積を顕著に阻害した.そこで,保管中の土壌サンプルに含まれるAFs産生菌の生残を調査するために,DVフリーの培地を用いて培地全体を回収する方法を採用した.異なる温度(4°C,-20°C,-80°C)および期間(3~12ヶ月)で保存した各土壌サンプルについて,培養後のAFB1蓄積量を3連で分析した.各土壌サンプル懸濁液を培養後,培地全体を回収してメタノールで抽出し,AFB1蓄積量を分析した.AFB1は,すべての温度において,4ヶ月目以降に有意な減少を示した.5ヶ月目以降,4°Cで保存したサブサンプルのAFB1量は,-20°Cまたは-80°Cで保存したサブサンプルと比較して有意に減少しており,土壌試料の長期保存には-20°C以下の温度が望ましいことが示唆された.この培地全体抽出法は,取り扱いが容易であり,産地や条件の異なる様々な土壌試料中のAFs産生菌の菌密度を推定するために応用可能と考えられる.

Mini Review
  • Anthony C. Sales, Elizabeth Marie Z. Velasco
    2023 年 73 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/03/04
    [早期公開] 公開日: 2022/11/17
    ジャーナル フリー

     フィリピン諸島は,温暖湿潤な熱帯に位置し,かび毒産生菌の生育に適していることから,かび毒汚染のリスクが高い環境下にある.かび毒産生菌は,かび毒汚染に加えて農産物の収穫量・品質低下をもたらしうる.長年にわたり,種々のフィリピン産農産物に存在するかび毒産生菌の分離とかび毒(アフラトキシン,フモニシン,ニバレノール,オクラトキシン,ゼアラレノン)検出の研究が行われてきた.かび毒防止と低減のための政府の介入策として,行動規範が存在する.それらは,生産者,輸出入業者,製造業者,小売業者を,適正な生産と収穫後の手順に導くものである.本稿では,過去の研究と現在入手可能なデータをまとめ,フィリピンにおけるかび毒汚染と制御の現状を俯瞰する.

Proceedings
  • Kyu Kyu Hlaing
    2023 年 73 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/03/04
    [早期公開] 公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

     アフラトキシンはアスペルギルス属の2種の常在菌(Aspergillus flavus, A. parasiticus)によって,菌の毒素産生に適した条件下で産生される天然物である.アフラトキシンは,毎日の食料・飼料を汚染し,ヒトや動物に健康被害をもたらす可能性があり,世界中で行政機関が食料・飼料の規制値を設定している.今回,各地方の唐辛子,ピーナッツ,ならびに関連商品中のAFB1濃度を調査した.検出にはHPLCを用いた.2021年1月から2022年3月の間に集められた350点の唐辛子,ピーナッツ,ならびに関連商品について,当部局のラボで分析した.20 ppbというFDAの基準からすると,約20%が基準値を超えていた.本稿では,これら商品のAFB1検出に際し,前処理,方法,設備,消耗品,人的資源,施設を含む課題について考察する.

パート II(日本語論文)
原著論文
  • 戸塚 知恵, 上垣 隆一
    2023 年 73 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     これまで報告のない岩手県内の自給飼料のかび毒汚染の実態を調査するため,114検体のFusarium属菌産生かび毒5種類;ニバレノール,デオキシニバレノール(DON),T-2トキシン,ゼアラレノン(ZEN),フモニシン(FUM)についてLC-MS/MSで測定した.FUM,DON,ZENの検出率が高く,特にトウモロコシのDON,ZENは高濃度を示した.2検体が管理基準値を超過したが,直ちに牛の健康に影響を与える値ではなかった.FUMは全種類の自給飼料から検出されたが,その濃度は低かった.よって,粗飼料給与による家畜の事故の原因がかび毒である可能性は低いと考えられる.

ミニレビュー
  • -二次代謝を中心に-
    浦山 俊一, 黒木 美沙, 二宮 章洋, 萩原 大祐
    2023 年 73 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     真菌には様々な寄生体が共存している.DNA/RNAウイルスやプラスミド,プリオンが知られており,中でもRNAウイルスは高頻度に見出されている.これら真菌を宿主とするRNAウイルス(以下マイコウイルス)の特筆すべき特徴は,宿主真菌細胞を死滅させることはなく,宿主細胞と共存状態を維持しているという点にある.このようなマイコウイルスは宿主真菌の菌糸成長や胞子形成,気中菌糸形成,色素沈着といったマクロな表現型に留まらず,酵素や二次代謝物の産生,種々のストレス耐性,遺伝子発現などあらゆる形質に影響を及ぼし得ることが明らかになっている.本稿では特にマイコウイルスがマイコトキシンをはじめとする真菌の二次代謝物の産生に及ぼす事例を紹介する.

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