マイコトキシン
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56 巻, 2 号
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原著
  • 荒川 京子, 田中 憲穂, 高鳥 浩介, 澤田 拓士
    2006 年56 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    飼料から分離した8種53株のFusarium の培養抽出物について、Salmonella を用いた変異原性試験を実施したところ、5種13株の培養物から強い変異原性を検出した。これらは同一物質と推定されたので、特に強い変異原性を示した菌株について、さらにヒト末梢血リンパ球を用いる染色体異常試験と、マウスを用いる優性致死試験を実施した。その結果、ヒト末梢血リンパ球に対しては染色分体型の異常を誘発し、マウスに対しては後期精子細胞から成熟精子の時期に優性致死を誘発することが確認され、Fusarium 培養物中に含まれる物質はヒトならびに哺乳動物に対して遺伝毒性を誘発する可能性が示唆された。
  • 長嶋 等, 中川 博之, 岩下 恵子
    2006 年56 巻2 号 p. 65-70
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    ニバレノールの毒性発現メカニズムを解明するために、ニバレノールで24時間処理したヒト白血病細胞HL60を用いて細胞毒性試験を行い、インターロイキン-8(IL-8)分泌誘導を調べた。1 μg/ml ニバレノール処理により、形態的にわずかな損傷が観察された。これに対して3 あるいは10 μg/mlニバレノール処理では、細胞の損傷は顕著であった。細胞増殖を臭化デオキシウリジン(BrdU)の取り込みで測定した結果、ニバレノールの50%阻害濃度(IC50)は0.16 μg/mlであった。ニバレノールがミトコンドリアのコハク酸脱水素酵素に与える影響をwater soluble tetrazolium-8アッセイで調べた結果、IC50は0.40 μg/mlであった。細胞質の漏出による培養上清の乳酸脱水素酵素活性は、10 μg/mlニバレノールにおいても非常に低かった。このことは、10 μg/mlニバレノール処理された細胞においては形態的損傷は激しいが、それでも細胞は破裂していないことを示している。細胞内カルシウムイオンのキレーター1,2-bis(2-aminophenoxy)ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acid tetraacetoxymethyl ester (BAPTA-AM)のニバレノールの毒性に対する影響を、最も鋭敏な細胞毒性試験であるBrdU取り込みを用いて調べた。 ニバレノールとBAPTA-AMで同時処理した時の値は、ニバレノール単独処理に比べて高かった。このことは、ニバレノールの細胞毒性発現に細胞内カルシウムイオンが部分的に関与することを示している。ニバレノール処理した細胞の培養上清からIL-8が検出された。このことは、IL-8がニバレノールによる中毒に関与する可能性を示唆するものである。
ワークショップ
  • 横山 耕治
    2006 年56 巻2 号 p. 71-76
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    カビの分類は,形態的な特徴により分類され,その違いを記載して種を命名してきた.我々の社会的な重要度から,それぞれの菌属の研究者の数が決まり,重要な菌属には多くの研究者が携わり,その菌属を観察する眼が多いことになる.この眼の多さは,形態的な違いを細かく観察でき,その属の種の数の多さに反映している.Aspergillus 属,Penicillium 属,Fusarium 属菌に種の数が多いのはこのためと考えられます. 種を決めた形態的違いが遺伝的に安定であれば問題は起こらないが,不安定な表現形質,生育過程,培養条件などによって変化する場合には混乱を生じる. 一方,遺伝子の塩基配列による分類では,解析した塩基の数に応じて塩基置換の数が拡大し配列の違いも増加する.DNA型の分類や同定には有効であるが,種を決める場合には,どの範囲で種を決めるかが問題となる. 進化の過程を反映した分子時計的な遺伝子が有れば,その遺伝子配列を指標に分類,同定,分類が可能と考えられる.我々は,病原真菌とその関連菌のミトコンドリア・チトクローム 遺伝子を解析しており,この遺伝子は進化時計として有用と考えられた.
  • 久米田 裕子
    2006 年56 巻2 号 p. 77-84
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    近年,カビの同定にも分子生物学手法が使用されるようになってきた.標的遺伝子として分類・同定に最もよく使用されているのがリボゾームRNA遺伝子(rDNA)である.本稿では筆者らが考案した迅速簡便なAspergillus section Flavi の種の同定法であるHeteroduplex Panel Analysis(HPA)法を中心に紹介する.また,最近,苦情食品等から分離したカビを同定する方法として,BLASTプログラムによるrDNAのホモロジー検索が利用されるようになってきた.これは16S rDNAの情報により分類体系が再構築されている細菌でよく用いられている同定法である.本稿では、分子生物学的手法でカビを同定する場合の利点と限界点についても考察する.
  • 一戸 正勝, 梅原 佑佳, 瀧川 緑, 松丸 恵子
    2006 年56 巻2 号 p. 85-90
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    穀類加工品などの菌類の分布調査において分離されたPenicillium 菌株などを対象に、分離菌の炭素源の資化性の差異を利用して菌種の同定を行う、MicroLog system (BIOLOG社)を適用した。各ウェルに95種類の炭素源を付加したカビ検索用96穴プレートFF MicroPlateに一定量の供試菌分生子懸濁液を接種後、25℃で培養し、48時間、72時間、96時間経過したときの各ウェルの発色をフィンガープリントとして、プレートリーダーで読取り、接続したコンピュータに設定したデータベースにより菌種の同定を行った。 一般に形態学的観察のみでは同定の難しいとされるPenicillium類のうち、マイコトキシン産生菌として知られるP. citreonigrum, P. citrinum, P. expansum, P. islandicum 及び P. verrucosum などがMicroLog systemの適用で同定が可能であった。しかしながら、重要なマイコトキシン生産菌であるAspergillus flavus, A. parasiticus, A. nomius に関してはMicroLog systemでは正確な同定ができなかった。
シンポジウム
  • 宮崎 茂
    2006 年56 巻2 号 p. 91-98
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    植物が病原菌の感染を受けたときに産生する低分子の抗菌性化学物質であるファイトアレキシンや,エンドファイトが産生する生理活性物質は,植物の生育に有用であり,植物の病害防除への積極的な利用が図られている.しかし,一部のファイトアレキシンやエンドファイトが産生する生理活性物質は,哺乳動物に対して強い毒性がある.我が国では,エンドファイトに感染した輸入ライグラスストローによる牛のライグラススタッガーが散発している.本総説では,ファイトアレキシンや,エンドファイトが産生する生理活性物質の家畜に対する毒性について概説するとともに,飼料稲に発生する稲こうじ病菌核の毒性についても言及する.
  • 渡辺 樹, 足立 吉數, 中島 弘美
    2006 年56 巻2 号 p. 99-103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    Alternaria 属菌によって産生される代表的な2次代謝産物には、dibenzo-α-pyrone誘導体であるアルタナリオール、アルタナリオールモノメチルエーテルおよびアルタヌエン、tetramic acid誘導体であるテヌアゾン酸、perylene誘導体であるアルタトキシン群などが知られている。Alternaria マイコトキシンは、穀類、青果類、リンゴジュースおよびトマト加工品などから検出されている。Alternaria マイコトキシンはまた培養細胞、微生物および実験動物に毒性であることも知られているのでヒトと動物に健康被害をもたらしているかもしれない。Alternaria は環境中からよく分離されるため、ヒトや動物の健康に対するAlternaria 暴露のリスクは高いだろう。
  • 小西 良子, 窪崎 敦隆
    2006 年56 巻2 号 p. 105-115
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/23
    ジャーナル フリー
    食品中に汚染するマイコトキシンは、大量に摂取した場合にあらわれる急性毒性よりも長期暴露による慢性的な健康被害が懸念されている。このような自然毒は食品汚染を完全に防御することが不可能であることから、各国で健康被害が懸念される食品を対象に基準値を設定している。しかし、各国での基準値の違いによる貿易摩擦を防止するために、国際的にもコーデックス規格を設けている。これらの基準値案は、FAO/WHOにおいての科学者の国際的集まりであるJECFAなどによって、問題となっているマイコトキシンを対象に毒性評価が行われている。本稿では、いままでJECFAで評価されたマイコトキシンを中心に実験動物を用いた毒性評価を紹介するものである。
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