ニバレノールの毒性発現メカニズムを解明するために、ニバレノールで24時間処理したヒト白血病細胞HL60を用いて細胞毒性試験を行い、インターロイキン-8(IL-8)分泌誘導を調べた。1 μg/ml ニバレノール処理により、形態的にわずかな損傷が観察された。これに対して3 あるいは10 μg/mlニバレノール処理では、細胞の損傷は顕著であった。細胞増殖を臭化デオキシウリジン(BrdU)の取り込みで測定した結果、ニバレノールの50%阻害濃度(IC
50)は0.16 μg/mlであった。ニバレノールがミトコンドリアのコハク酸脱水素酵素に与える影響をwater soluble tetrazolium-8アッセイで調べた結果、IC
50は0.40 μg/mlであった。細胞質の漏出による培養上清の乳酸脱水素酵素活性は、10 μg/mlニバレノールにおいても非常に低かった。このことは、10 μg/mlニバレノール処理された細胞においては形態的損傷は激しいが、それでも細胞は破裂していないことを示している。細胞内カルシウムイオンのキレーター1,2-bis(2-aminophenoxy)ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acid tetraacetoxymethyl ester (BAPTA-AM)のニバレノールの毒性に対する影響を、最も鋭敏な細胞毒性試験であるBrdU取り込みを用いて調べた。 ニバレノールとBAPTA-AMで同時処理した時の値は、ニバレノール単独処理に比べて高かった。このことは、ニバレノールの細胞毒性発現に細胞内カルシウムイオンが部分的に関与することを示している。ニバレノール処理した細胞の培養上清からIL-8が検出された。このことは、IL-8がニバレノールによる中毒に関与する可能性を示唆するものである。
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