近年,わが国は食生活の形態が多様化し,東南アジアからも多くの農産物を輸入するようになった.著者らのマイコトキシンについての汚染実態調査の結果では,これら輸入農産物のうちナツメグ,白コショウなどの香辛料あるいはハト麦などからアフラトキシン(AF)の汚染が高頻度で確認されている.また,1989年にはピスタチオナッツから1,000ppbを超えるAFB
1が検出されるものもあった.このピスタチオナッツの生産国としては,イラン,アメリカ,イタリアなどがあるが,本事件のピスタチオナッツはいずれもイランから輸入されたものであった.最近,消費者の間でナッツ類は美味しく,栄養もあり体に良いと,いわゆる健康食品的にも需要が伸びている.高濃度汚染したものが検出された原因の一つに急激に消費量が増大したため,粗悪なものが輸入された可能性も考えられる. 一方,AFによる汚染の頻度では他を寄せ付けないほど大きなものとしてナツメグがある.全輸入量(年間約400トン)の98%がインドネシア産であり,1988年度の検査では12検体のいずれからもAFが検出され,検出されたものの平均はAFB
1で2.8ppbであり,AFの汚染が広範囲に及んでいることが推察された. 今回,インドネシア共和国を訪れる機会を得たので,AF汚染のバックグラウンド値を知る目的で市販品を直接購入し,それらのAFの汚染実態調査を行ったので,その結果を報告する.
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