水利科学
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63 巻 , 3 号
No368
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一般論文
  • 太田 雄一郎, 村上 晴茂, 杉山 和史, 長井 斎, 築城 彰良
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 1-22
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    流木・土砂の流出防止対策として最も有効とされる透過型ダムは,満砂後,機能回復のため除石等が必要とされる。しかし,山脚固定を目的とする治山ダムの多くは,従来から不透過型ダムであり,かつ奥地で急勾配,狭隘な谷間では除石等のための道路の設置が困難であることから,兵庫県では,透過型の治山ダムの設置可能な適地が少なくなり,有効な流木対策ができないという課題があった。 このため,流木対策をさらに促進するため,流木捕捉の働きをするスリットによる透過部と山脚固定の働きをする不透過部を併せ持ち,満砂後も透過部からの土砂流出がなく,山脚固定機能が継続するため除石等を不要とする新たな流木捕捉型治山ダムとしての「ひょうご式治山ダム」を検討した。 設計コンセプトとして,流木・土石流を捕捉するため,土石流流体力を考慮することとしたが,設計条件として渓流勾配10度以下とし,また,治山ダムに設置する透過部の幅をレジーム則に相当する長さに設計することにより,土石流流体力等の設計外力が一定以下になる範囲を標準とした。さらに,山脚固定機能の確保や流木浮き上がり防止等の観点から,スリットの構造や空隙率を定め標準化した。 模型実験によりその性能を検証し,流下速度が低下する渓流勾配10度以下の範囲において流木と土砂両方について有効な捕捉率が確保されること,また満砂後においても,透過部からの土砂流出がなく,さらに水圧軽減作用により透過部において捕捉される流木群がダムのようになる(ビーバーダム化)働きにより,堆砂敷等において土砂の貯留現象が見られることから,山脚固定機能が継続されることを確認した。 流木捕捉と山脚固定の機能が満砂後も継続するひょうご式治山ダムは,不透過型治山ダムに比べ,より上流側に奥へ奥へと流木・土砂を貯留する機能が高いことから,今後一層効果的な流木対策の促進を可能とするものである。

  • 宮岡 卓, 中田 亘
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 23-37
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    高知県・徳島県の県境の吉野川上流域に位置する高知県長岡郡大豊町内「南小川地区直轄地すべり防止事業」で施工した,沖(下)地区の地すべり防止工事経過を紹介する。平成7年(1995)度から地すべり調査を開始,平成16年(2004)度の集中豪雨に伴う地表変状現象を踏まえ,主な対策工として地下排水トンネル工や集水井工を計画し平成25年(2013)度からNATM 工法による地下排水トンネル(L=592m)に着手,平成29年度に建上ボーリング工(総延長4,499m)の全工事が完成した。この間,地すべり観測データ及び降雨量と地下水位を観測,平成30年7月の西日本豪雨においても一時的な地下水位の上昇は見られたものの,地すべり活動は抑制され,また,降雨量と地下水位及びトンネル排水量の相関からも,施工による集水効果が確認された。

  • 松井 明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 38-50
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    国民の実感にあった分かりやすい指標で望ましい湾内の状態を表すことにより,良好な水環境の実現に向けた施策を効果的に実施するため,底層溶存酸素量(以下,底層DO)および沿岸透明度に着目したモデル事業が小浜湾で行われた。 著者は,2011年4月から2012年5月まで,小浜湾および流入河川の北川において,水中の水素イオン濃度(pH),溶存酸素量(DO),塩分濃度,水温および透視度を計測した。調査は1週間に1回の頻度で実施した。そのデータを基に,今回新たな指標となる底層DOおよび沿岸透明度について考察した。底層DOに関しては,溶存酸素量は1年間を通して季節変化したため,基準値を設定する場合は1 年間の平均値とするのか,最低値とするのかを決めなければならない。あるいは,季節ごとに基準値を設定するのも一案である。 沿岸透明度に関しては,水域ごとに,地域の意見を踏まえて設定されることになるため地域力が問われることになる。市民参加の動機付けとして,「見える化」が有効である。市民が中心となって調査を継続するためには,調査地点へのアクセスが容易で安全なこと,調査方法が簡便なことが望まれる。 湾内の状態を表す指標として,底層DOおよび沿岸透明度だけでなく,水温を測定することを提案した。

  • 松浦 茂樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 51-72
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    江戸時代,「ヒト」としての「黒鍬」は,幕府職制としての「黒鍬」と,川除普請や新田開発を行った土工のプロとしての「黒鍬」がいた。彼らは直接的には関係がない。天保14年(1843)に行われた印旛沼開削普請で登場した「江戸黒鍬」は,筋骨隆々で全身に刺青が描かれ,その働きは他の人夫と比べ抜群であった。彼らは,隅田川浚渫に従事していたのだろう。江戸時代後期,利根川沿いの各地にも「黒鍬」はいた。彼らは,肉体労働を行うとともに技能者として土工現場を指導していた。一方,出稼ぎの黒鍬集団の地としては尾張知多半島が有名であるが,畿内そして関東にも進出していた。 明治に入ると,鉄道などの社会インフラ整備が進められていったが,大規模工事を担う新たな土工のプロが出現した。職業分類では「土方」と整理されたが,「黒鍬」と「俠客」の中から育っていった。「俠客」は,大勢の人夫をまとめる力をもつ者として参入してきたのである。なお,土を掘削したり運んだり基礎を固める作業を意味する用語「土工」も,earth work を訳したものとして誕生した。

  • 末次 忠司
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 73-81
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    現在,セブン-イレブンは私たちの生活に不可欠なものである。弁当や飲み物はもちろんのこと,日常生活品,公共料金支払いサービス,銀行ATM など,ありとあらゆる消費者へのサービスが繰り広げられている。しかし,それだけではない。高齢者保護・女性や子どもの駆け込みへの対応,Wi-Fi&無線LAN サービス,防災の拠点などの社会インフラとしての役割がある。特に阪神・淡路大震災以降,災害時における支援体制を構築し,東日本大震災では玉突き物流で東北地方へ商品を送り込んだ。また,熊本地震ではプッシュ型支援を行うなど,多様な対策を展開している。本報ではセブン-イレブンのこれまでの防災活動を顧みるとともに,今後につながる防災戦略をとりまとめた。

会議報告:第17回世界湖沼会議
  • ―第17回世界湖沼会議「いばらき霞ヶ浦宣言2018」のメッセージ―
    中村 正久
    原稿種別: 会議報告
    2019 年 63 巻 3 号 p. 82-96
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    2018年10月,茨城県において,「人と湖沼の共生─持続可能な生態系サービスを目指して─」をテーマに「第17回世界湖沼会議(いばらき霞ヶ浦2018)」が開催され,会議の閉会にあたり「宣言」が採択された。「宣言」は前文と主文から成り,前文には,〈これまでの世界湖沼会議の成果〉,〈持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)〉,〈世界の水環境問題の議論〉が紹介されており,主文は「1 生態系サービスを衡平に享受すること」,「2 生態系サービスを次世代に引き継ぐこと」,という二つの項目立てで構成されている。1 の記述には生態系サービスの「均衡が崩れてきている」という文言があり,2 の記述には「自然資源の継承」という文言があるが,本報告では,上記の「生態系サービス」の評価の方法論と共に,これらの文言について考察をした。最後に「湖沼のメインストリーム化」という課題に言及した。

  • 高原 繁
    原稿種別: 会議報告
    2019 年 63 巻 3 号 p. 97-110
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    2018(平成30)年10月15日から19日にかけて,第17回世界湖沼会議が茨城県つくば市において開催され,国内外の湖沼に関する専門家,行政関係者,NGOや市民など多数が参加した。 会議では,約1,000人が参加して開催された開会式のほか,湖沼セッションや政策フォーラム,様々な分科会などが行われ,湖沼の管理に関する活発な意見交換がなされた。本稿では,三村信男・茨城大学学長による,「地球環境の変動と湖沼の未来」と題して行われた基調講演を中心に,会議の模様を紹介する。

ニホンジカシリーズ
  • 三枝 道生, 井上 真吾
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 111-123
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    岡山県内におけるニホンジカ(以下,シカという。)の生息数及び生息域は拡大傾向にあるが,林内でのシカ被害への対策は十分ではない。また,植栽木をシカの食害から守るために防鹿柵を設置しても,その後,管理されず,被害抑制効果が発揮されていない事例が多いため,対策としては不適当との意見もある。一方,管理された防鹿柵の被害抑制効果の検証は行われていないことから,踏査による定期点検及び修復を行った防鹿柵で侵入防止機能の維持効果を調査した。防鹿柵の設置当初は,シカによるネットの損傷が多数発生していたが,点検を繰り返す毎に発生件数が減少し,点検・修復を継続することで侵入防止機能は維持された。また,損傷の発生件数の減少とあわせて,発生箇所も一箇所に集中せず分散され,管理労力も軽減できると考えられた。

海岸林シリーズ
  • 村川 晋, 新田 響平
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 3 号 p. 124-147
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    コンテナ苗は,容器の底面を開けるなどによって根巻きを防止できる容器で育成した苗木で根鉢が容器に沿った形状をしており,平成20年代に入り全国で急激に普及してきた。 コンテナ苗は山地におけるスギの植栽事例が多く,植栽時期を選ばない,植栽コストが低減されるといった効果が期待できるとされているものの,海岸林造成に用いられるクロマツにおいて,コンテナ苗が採用された事例は少なく,海岸砂地という環境条件下でその効果がどの程度発揮されるかは不明である。 そこで,冬季風浪の厳しい北東北の日本海側の海岸防災林造成においても,コンテナ苗に優位性があるのか,そして,海岸防災林に求められる新たな機能である津波の被害軽減効果など様々な視点から検証した。 その結果,コンテナ苗は裸苗に比較して「活着率」,「コスト縮減」,「下刈り削減」,「適応性」,「粘り(根張り)強さ」の点で優位性が高いと考えられた。

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