水利科学
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63 巻, 1 号
No366
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • ──多摩川築堤期成同盟會の奮闘──
    和田 一範
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 1 号 p. 1-52
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル フリー

    アミガサ事件(大正3年⟨1914年⟩9月16日)の三日後の9月19日,橘樹郡の関係11ケ町村のメンバーが川崎町の橘樹郡役所に集まり,9月29日,「多摩川築堤期成同盟會」が正式に結成された。この期成同盟会は,これまでの陳情が県知事宛であったのに対し,多摩川改修のキーパーソンが内務大臣であることを理解するや,早速内部大臣宛の多摩川新堤塘築造陳情書をまとめあげ,10月29日,神奈川県選出の小泉,井上代議士とともに内務省を訪問,下岡次官に陳情書を手渡し,事情を説明している。アミガサ事件と有吉堤,多摩川直轄改修への道の一連の事件の顚末初期にあたるこの時期,「多摩川築堤期成同盟會」の活動は,多摩川新堤塘築造陳情書をまとめて内務大臣に提出した以降は,川崎市史や多摩川誌をはじめ既往の文献には明確な記述が見られない。 この時期は,アミガサ事件に際して対応した石原健三知事の任期中であり,アミガサ事件から約一年後の大正4年(1915年)9月に有吉忠一知事が赴任をするまでの期間である。期成同盟会のこの時期の活動は,自助・共助の取り組みとして大変重要な意味を持つ。 このたび,神奈川県公文書館に所蔵する武蔵国橘樹郡北綱島村の飯田家文書のなかに,「多摩川築堤期成同盟會報告書」と,「大正4年5月5日付決議録」など,多摩川築堤期成同盟會の奮闘の記録を見いだしたので,ここに活字にして報告する。 防災の主役,自助・共助として,地域住民の様々な代表たちが,多摩川の改修に向けて奮闘する模様が明確に記され,現代の防災に与える大きな教訓が見いだされる。

  • 山口 晴幸, 酒井 裕美
    2019 年 63 巻 1 号 p. 53-92
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル フリー

    車両・工場・焼却施設等から排出される排気ガスや煤煙・煤塵からの窒素・硫黄酸化物を始め,PM2.5などの微小粒子状物質や生活環境の中で幅広く使用されている重金属類等の有害化学物質は,発生源の特定が難しい非特定供給源の汚染物質となる場合が多い。それらは大気汚染の誘発に留まらず,ひいては地表面に降下して吸着・沈着し,土壌・水質汚染等を引き起こすことが指摘される。特に,巻き上げ・飛散や降水による流出・移動性の高い土壌表層部に含まれる粒径75μm 以下の微小粒径土粒子,所謂「微細土粒子(マイクロ土粒子75)」は有害化学物質の吸着性が高く,経口摂取による健康被害や河川・海洋等の水系に流出して,二次的汚染因子となることが懸念される。 本稿では,人為的活動の活発な市街地生活圏での園地,砂場,グラウンド等の地表面の表層部土壌を対象に,特に,土壌に含まれている微細土粒子(マイクロ土粒子75)に着目して,基本的な土質・化学物性を始め,構成する主要元素・酸化物成分組成や重金属類等の含有・溶出性に関する化学成分特性の解明を試みている。さらに,土壌の環境化学的評価への解釈・議論に役立てるために,酸化物成分組成に基づいた新たな土壌分類方法を考案している。

  • 〜岡山・小田川水害を事例として〜
    末次 忠司, 長井 俊樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 1 号 p. 93-104
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル フリー

    平成30(2018)年7月豪雨により,岡山や広島など,特に西日本の広範囲に洪水氾濫や土砂災害が発生した。氾濫などに対して,氾濫情報や適確な避難情報が出されなかったために,被災した住民も多くいた。本報では,岡山・小田川水害を事例として,越水破堤が発生するまでの経緯(河道特性,洪水特性)を分析するとともに,特に避難行動に関する課題を抽出し,減災のための避難行動のあり方についての考察を通じて,減災ツールとしての防災アプリを提案した。

  • 松井 明, 辻川 茂明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 1 号 p. 105-118
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル フリー

    選択取水施設を擁する大津呂ダム(福井県おおい町)において,2016〜2017年度の上流河川および下流河川の水温,2014〜2017年度の貯水池内の層別水温・濁質濃度を測定・比較した。その結果,貯水池内の水温は10〜3月は全層がほぼ同一になった。貯水池内の濁質濃度は一年中各層ともほぼ同一の変化を示した。ダムの影響を受けない10〜3月の上・下流河川の水温差の最大値は3.0℃,ダムの影響を受ける4〜9月のそれは3.3℃であり大差がないことか ら,現在の運用ルール(取水深3.0m)は妥当なものと考えられる。今後の課題として,ダム管理者は毎日の流入水温を考慮して取水深を選定することが望まれる。

「後世に伝えるべき治山」60選シリーズ
  • 古庄 誠司
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 63 巻 1 号 p. 119-128
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル フリー

    桜島における治山事業は,鹿児島県が防災工事として昭和37年(1962年)から昭和50年(1975年)まで実施してきた。その間,火山活動の活発化に伴い,旧桜島側の河川では年数回の土石流の発生があるとともに,山腹の崩壊も年々拡大してきた。 活動火山対策特別措置法成立の昭和48年(1973年)から昭和50年までは桜島全域を対象に国の民有林補助治山事業を実施し,昭和51年からは国による直轄事業を旧桜島町内において実施してきた。 標高1,100m の山頂から標高900m までの区間は絶え間ない火山噴出物の供給・急峻な地形・苛酷な気象条件等の影響で大規模なガリーを伴った裸地が多く立入禁止区域となっている。その下方の標高500m付近まで深くえぐられた火山特有の急峻な侵食渓を呈し,土砂生産の発生源となっている。 この土砂は発生源から短い距離で錦江湾に流入し,その河川の流出口に集落が存在している状況である。 一般的な治山工事対象地と異なり土砂の発生源をそのままの姿で事業を進めなければならない特殊性があり,桜島地区の治山計画を考える際の前提条件となっている。

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