水利科学
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62 巻 , 6 号
No365
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特集:平成29年7月九州北部豪雨と流木災害
  • 黒川 潮
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 1-9
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    平成29年(2017年)7月九州北部豪雨では,24時間雨量で500mmを超える記録的な大雨により福岡県朝倉市,東峰村,大分県日田市を中心に山地斜面の崩壊が多発し,それに伴って大量の流木が発生した。この豪雨による死者は40名,行方不明者2名となっている(平成30年1月17日現在)。林業関係の被害額は福岡県約318億円,大分県約33億円となっている(平成29年10月2日現在)。災害発生直後に上空から調査を行った結果,数百箇所に上る山腹崩壊及び流木が確認できた。今回の豪雨による林地被害は,特定の箇所に集中した雨水が要因となり,森林の有する土砂崩壊防止機能や土砂流出防止機能の限界を超え,山腹崩壊等が発生したものと考えられ,雨水及び地形・地質による要因が大きいものと推察される。流木は上流域の山腹崩壊に伴い巻き込まれた立木が流下したものと考えられる。

  • 久保田 哲也
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 10-22
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    平成29年(2017年)7月に発生した九州北部豪雨災害では,過去に類を見ない豪雨により多量の流木を含む洪水と土砂災害が生じた。この豪雨では,福岡県朝倉市・東峰村,大分県日田市を中心に山地に膨大な数の森林斜面崩壊が発生した。また,その後の台風などでも森林斜面崩壊の拡大や洪水も発生している。これらの地域は,林業が盛んで,山地の広範な部分がスギを主体とした人工林を構成し,斜面傾斜は平均的に大きく,地質も片岩・花崗岩類など脆弱なものから成る。このような地域に,戦後の拡大造林による伐期に達したスギ・ヒノキの大木が立地し,崩壊などで生じた大量の流木が下流河川に流入,大洪水の強い水流により平地まで運ばれて被害を大きくした。一部では砂防堰堤など防災施設の効果も認められたが,今後の課題も多い。そこで,ここでは現地調査とデータ解析に基づき,多量の流木とその発生源の特性について報告する。

  • 芦田 真亜
    2019 年 62 巻 6 号 p. 23-35
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    平成29年(2017年)7月に発生した九州北部豪雨においては,脆弱な地質帯に記録的な豪雨が重なり,多くの山腹斜面がその上に生育していた立木とともに崩壊し,大量の流木が発生した結果,下流に甚大な被害をもたらした。 この災害に対し,林野庁は「流木災害等に対する治山対策検討チーム」を設置し,「中間取りまとめ」を発表した。その後,全国の山地災害危険地区等について緊急点検を実施し,緊急的・集中的に流木対策が必要な箇所約1,200地区を抽出し,「流木災害防止緊急治山対策プロジェクト」として,流木捕捉式治山ダムの設置,樹木の根や下草の発達を促す間伐等の森林整備,流木化する可能性の高い流路部の立木の伐採などを推進し,流木災害の防止に努めている。

  • 染谷 哲久, 藤村 直樹, 石井 靖雄, 西井 洋史
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 36-55
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    平成29年(2017年)7月九州北部豪雨災害では,複数の土石流危険渓流等を含む広い流域で大量の流木が発生し,下流の市街地へ流出して被害を発生させた。今後,広い流域における流木対策を検討する上で,本災害の流木の発生や流出の特徴を把握することは重要である。本論では,福岡県朝倉市の奈良ヶ谷川を対象に,流木の発生および堆積,流出の特徴を調査した結果を報告する。 流木の発生原因は斜面の崩壊によるものが主体で,過去の流木災害報告と比較すると本災害では同程度の流域面積における発生流木量が多く,特に崩壊による流木発生面積率が高い値となった。流木の堆積は支渓流では倒木が多く,主渓流では流木が多い傾向が認められた。また支渓流で発生した多くの流木は土石流により主渓流に流出し,主渓流では流水の水面付近を浮遊しながら流下したと推定された。

  • 末次 忠司
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 56-69
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    平成29(2017)年7月の九州北部豪雨災害で特徴的なように,最近の水害では洪水氾濫だけでなく,土砂災害と複合して被害を助長する事例が多く見られる。平成23(2011)年以降で見ても,紀伊半島水害,伊豆大島土砂災害など,多くの水害事例で豪雨に伴い,土砂崩れや土石流が発生し,土砂や流木が水害被害に大きな影響をおよぼした。本報では一連の水害被害の降雨原因や被災状況などを比較しながら整理・分析するとともに,土砂流出状況や流木の発生・捕捉状況から,土砂・流木が水害被害におよぼす影響について分析を行った。 その結果,被災規模や土砂流出量は紀伊半島水害が最も大きかったが,平成29年7月九州北部豪雨災害における流域面積あたりの流木発生量は,従来の水害に比べて非常に多かったことが分かった。また,いくつかの事例では砂防堰堤による流木等の捕捉効果が見られたので例示した。最後に今後のハード対策として,土砂氾濫流対策には石積みが考えられ,またソフト対策としては,減災効果が高いと考えられる愛知県岡崎市や熊本県の避難対策を示した。

  • 太田 猛彦
    原稿種別: 再録記事
    2019 年 62 巻 6 号 p. 70-83
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー
一般論文
ニホンジカシリーズ
  • 庄司 亜香音, 後藤 拓弥
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 99-118
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    尾瀬国立公園は1990年代頃から本格的な調査でニホンジカの生息が確認されはじめ,貴重な湿原植物の採食や湿原の裸地化が問題視されるようになった。 それらの問題に対して環境省では①行動生態の把握のための調査,②尾瀬内での捕獲及び③モニタリング調査という三本柱による対策を行っている。①については2008年より,GPS首輪によるシカの行動追跡調査を実施し,日光と尾瀬を行き来する個体群の存在が明らかになっている。②については2013年より,尾瀬内のくくりわな及び銃器を用いて尾瀬ヶ原を中心としたニホンジカの捕獲を実施し,2017年は合計43頭を捕獲した。また,秋よりも春,くくりわなよりも銃器の捕獲効率が高いことが分かっている。③については個体数変動,植生被害の把握,裸地の遷移状況の把握及び植生保護柵の効果検討を行い,5 月下旬から6月にニホンジカの湿原への出没が多いことや採食場所を変化させているといったことが分かっており,柵による植生被害防止について一定の効果が認められた。

「後世に伝えるべき治山」60選シリーズ
  • 櫻庭 英明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 62 巻 6 号 p. 119-124
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    えりも岬の海岸林は,北海道の太平洋側に面する海岸線の中央部に突き出た岬の先端部に位置しています。 原生林が消失したえりも岬が「えりも砂漠」呼ばれている中,昭和20年代に入って,「見渡す限りの禿げ山をなんとかしてほしい。砂まみれの生活に別れを告げ,元の豊かな海を取り戻したい。」という,住民からの緑化に対する要望が高まったことから,昭和28(1953)年に治山事業による緑化事業が開始されました。えりも岬では,強風など厳しい自然環境の中,試行錯誤を繰り返した結果,「えりも式緑化工法」により,今ではこうした民国連携した緑化の努力により,延長約10km,面積約195ha の海岸林がよみがえりました。えりも岬の緑化事業は,2018年も地元の小中学生をはじめ高校生や住民の協力により植樹や育樹を行っており,地域と一体となって,民有林と国有林の治山事業を進めています。

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