水利科学
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62 巻, 2 号
No361
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特集:琵琶湖の保全と再生Ⅰ
  • 「水利科学」編集部
    原稿種別: その他
    2018 年 62 巻 2 号 p. 1-2
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー
  • 浜 一朗
    原稿種別: その他
    2018 年 62 巻 2 号 p. 3-5
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    平成27年9月28日に公布され,同日から施行された「琵琶湖の保全及び再生に関する法律」(平成27年法律第75号)の概要を記述する。

  • 滋賀県琵琶湖環境部琵琶湖保全再生課
    2018 年 62 巻 2 号 p. 6-9
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    平成27年9月に公布・施行された「琵琶湖の保全及び再生に関する法律」では,琵琶湖は後代に継承すべき「国民的資産」と位置付けられた。この法律を受け,滋賀県では平成29年3月に「琵琶湖保全再生施策に関する計画」を策定した。この計画では,「琵琶湖と人との共生」を基調とし,「琵琶湖の保全再生に向けた多様な施策」や,「住民,事業者,特定非営利活動法人等の多様な主体による協働」等を推進していくと規定しており,滋賀県では今後,国や関係機関をはじめ県民,NPO,事業者など多様な主体と連携しながら,全国の湖沼の保全再生の先駆けとなるよう,琵琶湖の保全再生に向けた取組を推進していきたいと考えている。

  • 秋友 和典
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 10-31
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    夏季の琵琶湖表層に見られる環流の実像と形成メカニズムについて,その発見から現在までの研究経過をたどる。1925年8月,神戸海洋気象台によって実施された琵琶湖の総合調査において,三つの環流が北湖全体を覆うように流れていることがはじめて報告された。その後の観測により,環流は5月から11月の成層期(湖面加熱による暖水が冷水の上に存在する期間)に水温躍層(水温が深さとともに急激に低下する層)以浅に現れ,10〜20cm/sの速さで流れていること,地球自転の影響を受けた地衡流で近似できること,また反時計回りと時計回りの2つの環流が卓越していることなどが明らかにされた。環流の形成メカニズムとして,これまでに風を原因とする説(風成論)と熱を原因とする説(熱成論)が提案されているが,その検証は難しく長年にわたり議論が続いてきた。近年,観測データに基づく湖上風や湖面熱フラックスを駆動力とした数値モデル実験が行われ,風による環流の駆動が優勢であることが示された。

  • 小島 永裕, 谷 誠, 川島 茂人, 吉岡 有美
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 32-49
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    滋賀県全域の森林を対象として水源涵養機能を評価し,マップを作成した。 作業においては,これまでの森林水文学の研究をベースに,「気象条件に基づく水資源量」,「森林施業による流出量の増加効果」,「地質による流況安定化効果」,「洪水流出ピークの低下に関する効果」,「斜面傾斜の影響」の5つの評価項目を設定し,それぞれについて数理評価式を作成して評価した。これに基づき,「林業をどこで行うのが良いか」,「どこで森林を伐採せずに重点的に保全すべきか」についての評価目標を設定し,上記の各評価項目に重み付けをして合計した総合評価式を提示することにより,計算結果をレベル分けした評価マップを作成した。

  • 池田 将平, 一瀬 諭
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 50-60
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    琵琶湖では1977年に大規模な淡水赤潮が発生し,湖水が褐色に染まるという衝撃的な事象があった。この出来事を機に滋賀県では,淡水赤潮の原因の一つとされるりんや窒素を規制する「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が制定された。その後,栄養塩類等の流入は抑制され,淡水赤潮などのプランクトンの異常増殖も抑制傾向にある。 我々は1977年の淡水赤潮発生以降,水質分析と併せて植物プランクトン調査を継続して実施している。これまでの長期的な植物プランクトン調査の結果から,植物プランクトン種組成の変化やバイオマスの減少,粘質鞘を有する藍藻類の増加など湖内生産構造の変化をとらえてきた。 本研究では長期的な植物プランクトン調査結果を用いて,統計解析の手法であるクラスター分析を行ったところ,調査開始1978年から2014年までの植物プランクトンの種組成が1986年以前と1987年以降に大きくグループ分けがなされた。さらに主成分分析を用いて関係解析したところ,1986年以前は緑藻類が主体であった種組成が1987年以降は珪藻類や藍藻類が増加していることが明らかとなった。さらに,各種類の植物プランクトンは様々な水質や気象と相関関係が存在することが明らかとなり,環境因子によって変化している可能性が示唆された。

一般論文
  • 末次 忠司, 内田 直希
    2018 年 62 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    大正・昭和戦前時代は世界恐慌や戦争など,グローバルな社会情勢が河川改修事業にも大きく影響した。この期間の水害被害は室戸台風を除けば,比較的少なかったが,治水対策は粛々と進められ,急激な国の発展に対して,水管理も制度や技術面から変貌を遂げていった。昭和初期には荒川放水路が完成し,大河津分水路の復旧工事が終わるなど,大規模治水施設が誕生した。大正10(1921)年には第二次治水計画が制定されたが,経済情勢の悪化で進捗せず,室戸台風の水害により,計画は破綻した。河川事業や下水道事業なども失業救済事業として行われた。経済の発展とともに,建物や道路が増え,小河川や水路が暗渠化され,河川・水路網密度が減少していった。このように,当時の水害,治水技術,洪水対応技術などをはじめとする大正・昭和戦前時代のすぐれた水管理技術を調べて,水管理に関する経験や実績より,現代でも有効な考え方や技術を整理・分析した。

  • 松井 明
    2018 年 62 巻 2 号 p. 74-83
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    本ゾーニング案では,中山間地域を 3区域に分類した。農地として管理する区域(農地管理区域),草地および森林として管理する区域(農地外管理区域),まったく管理しない区域(天然林区域)にゾーニングし,ため池や水路などの水域でネットワーク化することを提案した。なお,本ゾーニング案は,小さな拠点づくりのための一方法を示したものである。条件不利地域にある耕作放棄地は,農地として再生することを諦める決断によって,中山間地域が有効活用されることが重要である。中山間地域で行われる水田農業は,ため池依存度が大きい。ため池は農業用水の確保だけでなく,生物の生息・生育場所の保全,地域の憩いの場の提供,洪水調整や土砂流出の防止など多面的な機能を有している。これらの機能を発揮させるためには,地方自治体が中心となって保全すべきため池を選定する必要がある。その上で,中山間地域と低平地地域が交流を深めることによって,中山間地域が魅力溢れる空間として国民に理解され,必要不可欠な社会的資産として生き残ることができる。

  • 和田 一範
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 84-126
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    アミガサ事件(大正3年〈1914年〉9月15日)と有吉堤(大正5年〈1916年〉 12月18日竣工)の一連の事件の中で,もっとも大きなクライマックスシーンは,神奈川県庁に押し寄せた数100人の大抗議集団の場面,および内務省からの再三の電報による中止命令と,対岸東京側からの連日100人にも及ぶ監視集団の怒号の中で,道路改良工事に名を借りた堤防工事を進めた地元住民の場面である。その後,内務省の調停を受けてこの一大事件は,一気にハッピーエンドの終息へと向かい,有吉忠一知事の譴責処分と,御幸堤防落成式の場での有吉堤の命名で,一大活劇はいったん幕を閉じる。続いて,2 年後の内務省多摩川直轄事業化に向けて大局は動いてゆく。 これら一連の流れには,時の為政者たちの大いなる政策シナリオがある。 この論文は,既報4件の続報である。これまでの論文で一貫して主張をしているのは,防災の主役,自助・共助と,公助との連携が重要であり,そのモデルが大正年間の多摩川で繰り広げられた,アミガサ事件と有吉堤,そして内務省直轄による抜本改修着工に至る一連の顛末にある,ということである。そこには,現代の防災に通ずる多くの教訓が詰まっている。 重要な視点は,一連の事件が,防災の主役,自助・共助から発信され,公助がこれに呼応するかたちで展開してきたことであり,自助・共助と,公助との連携,鉄の結束が生んだ大きな成果であることである。 そこにはヒーローはいない。 地元住民が自ら発信し,共助としての議員団を動かし,公助である様々な行政機関,村役場,郡役所,県庁の役人,県議会,そして神奈川県知事,さらに多摩川直轄化の流れにおいては,東京府側の議員,東京府の役人,東京府知事,そして内務省の役人たち,内務省次官,譴責処分書の発信者である総理大臣大隈重信までが居並ぶ,一連の連携プレーの勝利なのである。 この一連の大活劇の中で,唯一,悪者として登場して去って行くのは,石原健三知事である。しかしこの人は,そんなに治水に理解のない,災害弱者に冷たい小役人ではない。アミガサ事件直後の現地視察から,県議会での対応などに,アミガサ事件の事後処理のシナリオを垣間見ることができる。 有吉知事においても,良く知られた郡道改良事業着工と並行して,多摩川の直轄改修事業化に向けて様々な取り組みを展開しており,この人なりの有吉劇場とも言うべき,ダイナミックなシナリオが見える。 本論文は,アミガサ事件の勃発から,有吉堤着工までの空白の期間,内務省直轄化に向けて,どのようなシナリオが描かれ調整がなされたのか,論考を行ったものである。

「後世に伝えるべき治山」60選シリーズ
  • 小池 新太郎
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    長野県の南部,飯田市上久堅地区(旧上久堅村)は,急峻な地形と風化の進んだ花崗岩地帯のため荒廃が顕著なことから,大正6年(1917年)に長野県によって初めて治水事業が行われ,その後,昭和31年(1956年)まで民有林直轄治山事業等を積極的に実施することで150ha の荒廃地等が森林に復元された。 また,事業実施に当たっては,多くの地元住民が事業に参加し技術の習得にも意欲的であったことから,国及び県等の協力の下,村立の砂防学校を開設し技術者の養成に努める独自の取組を行った。 特に,同校のユニークな点は,講師陣が教育関係者に限らず治山工事実務担当者など専門家が施工現場等で指導に当たることで,即戦力としての治山技術者の養成を積極的に行ったことである。卒業生は,全国の森林管理局(旧営林局)の中堅幹部として派遣され治山事業の発展に寄与した。

連載
  • 〜横浜市金沢地区を中心とした三浦半島周辺の探索調査〜
    山口 晴幸
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 62 巻 2 号 p. 136-158
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル フリー

    金沢地区は神奈川県横浜市の南端部に位置し,鎌倉市と近接する東京湾に面した地域である。鎌倉幕府開設を機に,鎌倉への陸路・海路の要所となり,人物・物資の往来はもとより,幕府武将らが館を構えるなど,一気に賑わいをみせ,中世鎌倉時代から歴史的に発展してきた地域である。鎌倉〜江戸〜明治時期には,殊に,平潟湾の千変万化する風光明媚な海風景が旅人・墨客らを魅了し,全国的に人気の観光スポットとして名を馳せてきた。また,近代の戦前期頃までは,金沢の海風景をこよなく愛した政治家・文化人などが別荘・別邸などを建てて住み着き,海浜保養地としても知られていた。 このような時代的背景と変遷の下,金沢地区では,中世鎌倉時代からの貴重な歴史的構築物や遺跡・文化財などが数多く保全・伝承されてきた。その中でも主に,ここでは,歴史的な人物や遺産・遺構などと関連し,伝説・逸話・口碑などを秘めた古水や史跡水(水場や水辺も含む)にスポットを当てた探索調査を試みている。 本稿では,古き時代からの変遷と共に,地域の生活・習俗・文化等の発展史に深く係わってきた古水・史跡水・水場を「時代水」と称して着目し,先代人に纏わる利水的な遺構や関連する遺物などを中心に取り上げ,関係する人物や歴史的な時代背景などを織り交ぜて,その来歴・変遷・現状などを解説している。殊に,先代人の利水や水工に纏わる「水」への思いや発想・構想における英知・苦難などに触れることで,今後に継承すべき事柄に光を照らし,利水技術や水工物の古事来歴を顧み,再考する機会になればと願っている。

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