肝不全は致死的な病態であり、肝臓移植のみが唯一の救命手段である。しかしながら、世界的にドナー臓器の不足は明らかであり、iPS細胞から治療用ヒト臓器を人為的に創出するための技術開発が吃緊の解決課題となっている。我々は、これまでに器官発生プロセスを模倣することにより、iPS細胞を用いてヒト肝臓原基(肝芽)の創出を可能とする革新的な三次元培養技術を確立してきた(Nature 499:481-484, 2013、Nature Protocols 9:396-409, 2014)。すなわち、ヒト肝前駆細胞・血管内皮細胞・間葉系細胞の共培養により、二次元平面上において三次元構造を有するヒト肝臓原基が自律的に再構成されることを明らかにしている。さらに、この三次元培養技術が肝臓以外の膵臓や腎臓などの再構成にも活用することが可能であることを示している(Cell Stem Cell 16:556-565, 2015)。
現在、ヒトiPS細胞由来肝芽の大量調製・品質評価・移植操作技術の開発を推進中であり、臨床研究の早期実施を目指して準備を進めている状況にある。一方、この新規3次元培養系を新たな研究支援ツールとして活用するための技術開発も実施しており、B型肝炎ウイルス感染系への応用、薬剤耐性を有するがん組織の再構成への応用などについて成果が得られつつある。
本講演では、我々のヒトiPS細胞を用いた肝芽創出から始まったヒューマン・オルガノイド研究の新展開について紹介する。
1. Takahashi Y, Taniguchi H, et al: Cell Rep 23:1620-1629, 2018
2. Zhang RR, Taniguchi H, et al: Stem Cell Reports 10:780-793, 2018
3. Sekine K, Taniguchi H, et al: Nature 546:533-538, 2017
4. Takebe T, Taniguchi H, et al: Cell Stem Cell 16:556-565, 2015
5. Takebe T, Taniguchi H, et al: Nature Protocols 9:396-409, 2014
6. Takebe T, Taniguchi H, et al: Nature 499:481-484, 2013
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