本研究では, 芝草害虫の生物的防除法を探る一つの段階として, オサムシ科の地表性甲虫に着目し, その生息状況および捕食性天敵としての役割を評価することを目的とした。
静岡県下の各ゴルフ場において, 1997~1998年の6月から10月下旬まで地表性甲虫の採集を行い, その種構成および個体数推移を調査した。また併せて, フェロモントラップを用いて鱗翅目害虫であるスジキリヨトウおよびシバツトガの発生消長を調査した。野外調査の結果, 菊川カントリークラブでは, カケガワオサムシが最も多かったが, その個体数は年度によって異なった。次いで
Ilaenchusspp.が全個体数の2割を占めた。各ゴルフ場における地表性甲虫類の発生は, その周辺の環境条件や害虫類に対する防除体系などによって大きく異なる可能性が示された。しかしながら野外調査においては, 地表性甲虫と鱗翅目害虫の個体群間の影響について評価することは出来なかった。
カケガワオサムシおよびエゾカタビロオサムシを供試虫としてスジキリヨトウ幼虫に対する捕食試験を行った。その結果、両種は多くのスジキリヨトウ幼虫を捕食することが確認され, 野外条件下においても捕食性天敵として鱗翅目害虫の個体群に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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