Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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80 巻, 3-4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 酒井 治己, 栗原 善宏, 古内 友樹, 岡田 あゆみ, 竹内 基, 柿野 亘, 須田 友輔, 後藤 晃
    原稿種別: 原著
    2022 年 80 巻 3-4 号 p. 47-66
    発行日: 2022/08/26
    公開日: 2022/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    カムチャツカ・サハリン・千島・日本列島地域から記載されたカワシンジュガイ属 Margaritifera 担名タクサのタイプ標本を調査した結果,この地域を通して2種の存在が確認され,それぞれカワシンジュガイMargaritifera laevis(Haas, 1910)及びコガタカワシンジュガイM. kurilensis(Zatravkin & Starobogatov, 1984)に同定された。前種は前閉殻筋痕上縁が丸く擬主歯が比較的小さいこと,一方後種は前閉殻筋痕上縁が角張っており擬主歯が比較的大きく頑丈なことによって特徴づけられる。コガタカワシンジュガイにしばしば適用されてきたM. middendorffi (Rosén, 1926)は M. laevisの新参異名であると判断された。また,M. middendorffi の新参異名とされてきた M. togakushiensis Kondo & Kobayashi, 2005 は,M. kurilensis の新参異名と判断された。

  • 延原 尊美
    原稿種別: 原著
    2022 年 80 巻 3-4 号 p. 67-76
    発行日: 2022/08/26
    公開日: 2022/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    シラスナガイ科二枚貝 Limopsis belcheri(Adams & Reeve, 1850)は Samarang号航海において南アフリカの喜望峰沖水深120尋より得られたとされる標本をもとに創設された名義タクソンである。原著者のA. Adamsは後にそのタイプ産地が “Korean Islands” であるとの訂正を示唆したがその根拠については明示されておらず,東アジア周辺産の外見が類似する Limopsis tajimae G. B. Sowerby III, 1914 オオシラスナガイ,L. uwadokoi Oyama, 1951 ミノシラスナガイ,L. tokaiensis Yokoyama, 1910 トウカイシラスナガイとL. belcheriとの分類学的な関係をめぐっては研究者間で混乱が生じていた。本研究は,ロンドン自然史博物館に収蔵されているLimopsis belcheriのシンタイプを再検討し,L. belcheriは弾帯受が繊維状靭帯のみで充填されることと腹縁内面の刻みをもつことにより,L. tajimae, L. uwadokoi, L. tokaiensisとは明瞭に区別できる別種であることを再確認した.また,これまで日本,韓国および中国からL. belcheriとして図示された標本は,いずれも上記の形質に合致するものはなくL. belcheriではないことが明らかとなった。一方,同じく喜望峰沖周辺の深海域から記載された Limopsis chuni Thiele & Jaeckel, 1931は L. belcheriのタイプ標本と形質がほぼ合致することから,L. belcheriの新参異名となることがわかった。これらのことから L. belcheri のタイプ産地は韓国周辺ではなく原著で指定された通り南アフリカ喜望峰沖である可能性が高いと判断される。

  • 高見 明宏
    原稿種別: 原著
    2022 年 80 巻 3-4 号 p. 77-86
    発行日: 2022/08/26
    公開日: 2022/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    The karyotypes of four species and one form of the genus Semisulcospira in Lake Biwa, Japan were examined. The observed diploid chromosome number of each taxon was as follows: Semisulcospira niponica and S. niponica form biwae, 2n=26 (20M+4SM+2ST); S. decipiens, 2n=26 (22M+2SM+2ST); S. takeshimensis, 2n=26 (18M+6SM+2ST); S. shiraishiensis, 2n=28 (18M+8SM+2T).

短報
  • 奥谷 喬司, 藤倉 克則
    原稿種別: 短報
    2022 年 80 巻 3-4 号 p. 87-90
    発行日: 2022/08/26
    公開日: 2022/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    海洋研究開発機構の無人探査機「ハイパードルフィン」が2009年,相模湾のシロウリガイ調査を行った際に採集された微小な原鰓類が新種と認められたのでYoldiella sagamiana n. sp.サガミコソデガイ(新称)と命名し,記載した。殻長は3.9 mm(ホロタイプ)で殻頂は後傾。前縁は丸い曲線を描くが,後端はややつまみ出したが如く微かに翼状となる。鉸歯は前弓に15歯,後弓に10歯がある。相模湾の初島沖と沖の山斜面の水深1,100 m前後。

    本新種は大西洋産のYoldiella biguttata Allen, Sanders & Hannah, 1995やYoldiella minuscula Verrill & Bush, 1898と外形は類似するが,これらの鉸歯は前後の歯弓に5~6歯があるに過ぎず,殻頂も傾かない。北大西洋の亜北極圏に産するYoldiella nana(Sars, 1865)も比較されるが,鉸歯は前後の歯弓に6~7歯で異なる。太平洋産では,東太平洋の深海産のYoldiella sp. A(Coan, Valentich-Scott & Bernard, 2000)に似ているところもあるが,鉸歯は8+8で本新種の交歯は15+10とは異なる。

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