Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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69 巻 , 3-4 号
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原著
  • 奥谷 喬司
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 115-122
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Cosel & Bouchet (2008) は西太平洋産の深海性ツキガイ科の多数の新属・新種を記載した。そのなかには,元海洋研究所の太田 秀博士がご退官直前に白鳳丸によって採集された二枚貝標本中にそれらに同定される種(死殻)があるほか,極めて特異な未記載の一新種も発見された。また一方,東大の総合研究博物館に収蔵されている故土田英治コレクションとかつて「しんかい2000」によってマヌス海盆から採集された殻もあったので,およそツキガイ科らしからぬ種を含む深海性の数種を紹介する。
    Elliptiolucina ingens n. sp.アツセンベイツキガイ(新種・新称)(Figs. 1A, 2, 3)
    殻長80.1 mm,殻高66.1 mm(ホロタイプ)。殻は亜楕円形で,厚質,左右にあまり膨れない。殻頂は小さい。小月面は明らか。楯面も深く掘れ込む。左殻の交板には弱いC型の擬歯があり,右殻には浅い擬歯槽がある。前閉殻筋痕後縁は鋸歯状。後閉殻筋痕は低位で背側が深く凹む。同心円状肋はない。死殻のみで,証拠はないが化学合成環境に棲むものと推定される。奄美大島沖の水深576~594 m。
    Elliptiolucina magnifica Cosel & Bouchet, 2008 センベイツキガイ(新称:Fig. 1E)
    右殻片。殻長68.5 mm, 殻高68.5 mm。前種よりやや薄手,膨らまず,かつ前後に長くやや方形。スールー海の水深520~1160 m。ホロタイプ以来第2番めの発見。
    Rostrilucina anterostrata Cosel & Bouchet, 2008 シャクシツキガイモドキ(新称: Fig. 1D)
    殻長43.1 mm,殻高33.9 mm前種に似て円盤状の殻表に同心円肋が密に分布するが,前縁がやや嘴状に突出上反する。フィリピン中部~奄美大島沖の水深550~640 m。
    Dulcina musorstomi Cosel & Bouchet, 2008 ウスツキガイモドキ(新称:Fig. 1C)
    殻長19.4 mm殻高16.0 mm。殻は円盤状でやや薄質,膨らみは弱く,ツキガイモドキのような同心円状の肋を持つ。殻頂から後腹隅にかけて浅い放射状溝が走る。小月面は高い襞に囲われる。交板は無歯であるが,前弧に微かな隆起がある。分布はフィリピンの水深205~246 mから奄美大島沖の水深576~594 m。
    インド洋の200~350 ファゾムからE. A. Smithが“Cryptodonphilippinarum (Hanley, 1843)と同定した種に極めて近いが,Cosel & Bouchet はSmithの種は小型で小月面が長く,輪肋が密で,前閉殻筋痕の分岐点は更に長いとし,真のLucina philippinarum (= Austriella corrugata)は大きく,丸みのあるマングローブ湿地にすむシワツキガイであるという。
    Dulcina sp. aff. guidoi Cosel & Bouchet, 2008 (Fig. 1E)
    殻長74.4 mm+,殻高61.5 mm。フィリピン産のD. guidoi Cosel & Bouchet, 2008に近似すると思われるが,不完全な右殻と左殻の破片しかないので最終同定には至らない。マヌス海盆の水深1932 m。
  • 山下博由 , 芳賀拓真 , Jørgen Lützen
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 123-133
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    シャコ類の巣穴に共生することで知られているDivariscintilla属(ヨーヨーシジミ属,和名新称)の新種が,大分県から発見された。これは同属の日本及び北太平洋からの初めての記録である。
    Divariscintilla toyohiwakensis n. sp.ニッポンヨーヨーシジミ(新種,新称)
    殻長約4 mm,殻高約3 mm,膨らみは弱く,丸い亜三角形で,殻頂は僅かに前方に寄り,腹縁中央はごく僅かに窪む。白色半透明,薄質で,殻表は平滑で光沢があり,殻の内側には縁部で強まる多くの放射条がある。両殻に1主歯があり,側歯を欠く。外套膜は殻を覆い,前部に2対,後部に1対と1本の外套触角がある。口の直下の内蔵塊前部に1個のflower-like organ(花状器官:和用語新称)を備える。足は前部・後部に分かれ,後部は顕著に伸張し,その後端背面にbyssal adhesive gland(足糸粘着腺:和用語新称)があるが,組織切片では腺構造は確認できなかった。足の底面にはbyssal groove(足糸溝)が前部から後端まで走っている。フロリダ産のDivariscintilla octotentaculata Mikkelsen & Bieler, 1992に,殻や軟体外形が近似するが,D. octotentaculataは触角が1対多く,花状器官を欠く。ニッポンヨーヨーシジミは,Acanthosquilla acanthocarpus (Claus, 1871) シマトラフヒメシャコの巣穴中に小集団を形成して生息し,その壁面に足糸で付着している。
    タイプ産地:大分県中津市大新田
    付記:ヨーヨーシジミ属は,ニュージーランド・西オーストラリアに1種,フロリダ・カリブ海に5種,日本に1種が分布するが,いずれもトラフシャコ上科の種の巣穴に生息し,同上科との生態・進化上の密接な関係が示唆される。
    種小名toyohiwakensisは,タイプ産地の大分県中津市を含む豊前・豊後地方の古名「豊日別」に由来する。属・種の和名は,玩具のヨーヨーのように足糸でぶら下がり上下する生態に着目して命名されたDivariscintilla yoyo Mikkelsen & Bieler, 1989と,そこから派生した英名yoyo clamに由来する。D. yoyoには,ヨーヨーシジミの和名を与える。
  • 奥谷 喬司, 小島 茂明, 河戸 勝, 瀬尾 絵理子, 藤倉 克則
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 135-144
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    相模湾の初島沖の水深1100 m付近におけるシロウリガイCalyptogena soyoaeとシマイシロウリガイC. okutaniitが混棲する湧水生物群集の中から,形態およびミトコンドリアDNAの塩基配列で識別される種が見つかった。
    Calyptogena (Archivesica) fortunata n. sp. サイワイシロウリガイ(新種・新称)
    殻長43.8 mm殻高26.5 mm殻幅15.4 mm( ホロタイプ)。
    殻は長卵型で同種は形態的にはシロウリガイの若齢個体と紛らわしい。右殻の中央主歯は太い三角錐状で殻頂下前主歯は庇状で,後主歯と約120°をなす。左殻の前後殻頂下主歯は逆V字型で後背主歯は斜位でやや半月型。側歯はなく,殻頂下洞は痕跡的で小月面もない。外套湾入は殆ど認められない。
    初島の標本はかって1999年淡青丸が三陸沖の水深1100~1700 m付近で採集していた未記載の種とミトコンドリアCOI領域の塩基配列が一致した。相模湾の個体は三陸のものに比し,同サイズでも殻が厚く鉸歯も成長段階が進んでいるが如くで,やや異なった表現型を示す。塩基配列(COI)から見ると,本種はテンリュウシロウリガイC. laubieri と単系統をなすことが判った。
  • 窪寺 恒己, 奥谷 喬司
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 145-161
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    国立科学博物館に収蔵品のうち,未同定のヒカリダンゴイカ亜科(ダンゴイカ科)を調査した結果,常磐沖と沖縄近海から3新種を見出した。
    Heteroteuthis nordopacifica n. sp. ヒカリダンゴイカ(新種)
    常磐沖の水深1000 mから。外套長21.3 mm。
    これまで窪寺によってH. sp. aff. atlantisとされていた標本。1個体の雌標本しか得られていないが,同属の他種とは下記の特徴の組み合わせにより識別ができる。
    1)第II腕先端は吸盤を欠く。2)吸盤数は少なく,第IV腕には20個前後しかない。3)腕間膜の発達が悪くDのみが明らか。4)外套腔の発光器は丸みを帯びた菱形に近く,後縁に凹凸がある。今後新たな雄標本を基にした他種との形態比較および分子系統分析が必要とされる。
    Sepiolina petasa n. sp.  ボウシギンオビイカ(新種・新称)
    沖縄県久米島の水深372~375 m及び563~565 m。外套長26.4 mm。
    Sepiolina属はこれまでギンオビイカS. nipponensis唯一種しか知られていなかったので,同属第2種め。形態的諸特徴はギンオビイカに似ているが,外套膜の後端が山高帽のようにやや伸び,従って鰭は相対的に前方に寄る。分子系統分析によるとギンオビイカと3.5%(COI, 605 bp)の遺伝距離が認められた。ギンオビイカの分布南縁で種分化した姉妹種と考えられた。
    Stoloteuthis japonica n. sp. ニホンミミジロダンゴイカ(新種・新称)
    沖縄県久米島の水深563~565m。外套長10.0 mm。
    この標本は次の様な特徴からStoloteuthis leucopteraと非常に近縁な同属種と同定された:1)腹楯の周囲が淡色線で縁取られる。2)外套膜腹縁は浅く凹む。3)外套側縁に銀色の帯が走り,それは外套後端でU字型に癒合する。4)鰭には色素胞を欠き,後縁は外套膜後端のレベルを超えない。5)腕間膜が深い。6)触腕側部に半月膜がある。しかし,S. leucopteraは本来,西大西洋,ビスケイ湾,地中海から知られ,やや不確実な記録がナミビア沖,プリンス・エドワード群島及びケルゲレン諸島などのインド洋がある。本標本は動物地理学的に全く隔絶しているばかりでなく,腕間の傘膜がせいぜい40~50%で大西洋産に比し極めて浅い点から新種とした。分子系統分析でも,大西洋のS. leucopteraとは11.4%(COI, 605 bp)の遺伝距離が認められ,別種であることが強く支持された。
  • 天野 和孝, Robert G. Jenkins
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 163-176
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    青森県の上部中新統赤石層からCalyptogena pacifica Dall, 1891ワダツミウリガイの化石が初めて採集された。この産出は,本種が日本海沿岸地域に後期中新世に出現したことを支持している。また,本種は現在日本海に生息していない。一方,Yokoyama (1925) により茨城県の鮮新統日立層からTapes undulatus (Born)として記載された種は,Archivesica kawamurai(Kuroda, 1943)アケビガイである事が判明した。また,和歌山県の下部中新統敷屋層からAkebiconcha cf. kawamurai KurodaとしてKatto & Masuda (1978) により図示された種は,アケビガイには比較されないことも明らかとなった。アケビガイは,ワダツミウリガイと対照的に中部~西南日本の太平洋側の鮮新統に出現し,現在も同地域に分布している。16種の現生Pliocardiinae亜科(オトヒメハマグリ科)二枚貝のうち,上記の2種のみが化石記録を持つ。
  • 増野 和幸, 鳥越 兼治
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 177-194
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    In Yamaguchi Prefecture, there are found Trishoplita eumenes eumenes and Trishoplita eumenes cretacea, which both belong to the "Trishoplita eumenes" complex. These two subspecies have four forms that were described by the differences in shell coloration. There are some opinions concerning the classification of this complex. In this study, the taxonomic relationship of these two subspecies is investigated based on various morphological characters of the hard parts and on habitat preference. As a result, the distribution areas of the two subspecies have been clearly separated. Both subspecies are arboreal, but Trishoplita eumenes eumenes lives on parts of trees that are up to 1 m in height from the ground, and in meadows. On the other hand, Trishoplita eumenes cretacea lives on trees at from 1 to 3 m from the ground, and in forests. It was revealed that significant differences were found in the t-test for the diameter of the shell, the height of the shell, the angle of the apex, and the thickness of the shell. Significant differences were also found in the Mann-Whitney test for height/diameter and diameter of the umbilicus/shell diameter. In addition, these two subspecies were distinguishable in coloration and the surface quality of the shells. These results strongly suggest that these two subspecies are distinct species. So we think Trishoplita eumenes eumenes and Trishoplita eumenes cretacea are two independent species.
  • 伊左治 鎭司, 加藤 久佳
    原稿種別: 原著
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 195-201
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    A fossil pearl from the Upper Miocene Kubota Formation in the Higashitanagura area, Fukushima Prefecture, northeastern Japan is described. The pearl is spherical in shape and made up of layers of regularly foliated or crossed foliated structure composed of thin lamellar crystallites. It also contains a lenticular sublayer of prismatic structure composed of needle-like crystallites. These correspond to the shell microstructures of Crassostrea gigas, which occurs commonly in the same stratigraphic horizon, indicating that the pearl was formed by this bivalve species. The prismatic sublayer might have been formed as a result of abnormal secretion by the mantle epithelium of the mother shell.
短報
  • 奥谷 喬司
    原稿種別: 短報
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 203-205
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Neilonella kuroshimaensis n. sp.スダレハトムギソデガイ(新種・新種)
    殻長8.9 mm (ホロタイプ)。殻表は同心円状の肋があるところはキラハトムギソデガイに似ているが,殻頂は前から40%の所にあり,後部は嘴状に反り上がらない。また殻皮は同科の他種がオリーブ色であるが,本種はむしろ藁色。石垣島南方の黒島海丘の水深641 mから無人潜水探査機(ROV)ハイパードルフィンによって採集された。また,白鳳丸が奄美大島沖の水深576~594 mから採集した殻長3.1 mm以下の幼殻は本種と思われる。
  • 秋山 吉寛
    原稿種別: 短報
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 206-209
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ヌマガイとの識別が困難なタガイの宿主を明らかにするため,タガイの幼生が放出される10月下旬に,滋賀県彦根市内の稲作用排水路で採集した魚類および甲殻類の飼育を行ない,宿主から脱落したタガイ稚貝の有無を確認した。5種類の魚類と1種類の甲殻類のうち,稚貝の離脱が確認されたのはトウヨシノボリだけだった。離脱したばかりの稚貝は粘性の強い粘液を吐き出し,周囲のデトリタスを軟体部の周囲に吸着させる行動を見せた。さらに,2~3日後にも生存し,軟体部の急速な成長や,振動に対する敏感な反応が見られたことから,トウヨシノボリがタガイの宿主となることが確かめられた。
  • 三本 健二
    原稿種別: 短報
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 210-213
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    高知県西南部の更新統および同県東端部の現世海岸砂から見出された小型のクルミガイ科二枚貝の新種を記載する。
    NuculaLamellinucula kanekoi n. sp. カネコクルミガイ(新種・新称)
    殻は小型で殻長1.9 mmを超えない。胎殻は皿状。終殻の殻表は,最初期の部分には放射条および輪脈があり,他の部分には細い放射細肋(前後の縁辺部を除く)と強い輪肋がある。鉸板は幅広い。弾帯受は小さくて,亜三角形。腹縁内面は細かく刻まれる。
    本種は,オーストラリア近海の現生種N. mayi(Iredale, 1930)およびN. revei Bergmans, 1978 に類似するが,N. mayiとは終殻初期の部分の殻表の放射条,皿状の胎殻および終殻の強い輪肋により,また,N. revei とは放射細肋が終殻の前後縁部にはないことおよびより強い輪肋により区別される。日本産の種の中では下部浅海産のマメシジミナリクルミガイN.L. gemmulata Habe, 1953およびヨセナミクルミガイN. (L.) tokyoensis Yokoyama, 1920に類似するが,殻が小さい。また,前者とは鉸板が幅広いことで,後者とは弾帯受が傾かないことで区別される。
    四万十市平野の中部更新統平野層最下部(タイプ産地)から多くの化石が,また,東洋町白浜の海岸砂から多くの死殻が得られた。
    種名および和名は,更新世の貝類化石研究についてご指導下さった故金子寿衛男先生(1913–2001)に献名する。
  • 佐藤 成祥, 関澤 彩眞, 安房田 智司, 宗原 弘幸, 中嶋 康裕
    原稿種別: 短報
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 214-217
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    同時的雌雄同体であるサラサウミウシにおいて8遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを開発した。これらのマーカーでは,一遺伝子座あたりの対立遺伝子数は1から30,平均が15と高い多型性が認められた。多型性を示す7遺伝子座のマーカーヘテロ接合度の実測値と予測値は,それぞれ0.409から0.905,0.518から0.960の範囲であった。以上,サラサウミウシの親子判定に使用可能と考えられる多様性の高いマイクロサテライトマーカーを特定した。
  • 近藤 高貴, 南 佐知子
    原稿種別: 短報
    2011 年 69 巻 3-4 号 p. 218-220
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    The diel rhythm of glochidial release from gravid mussels of the species Pronodularia japanensis was investigated in the laboratory. Gravid mussels discharged glochidia principally at night, with a peak in the early part of the night. Glochidia formed a mass by entangling their larval threads.
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