Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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74 巻 , 3-4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 矢野 重文, 松田 春菜, 西 邦雄, 川瀬 基弘, 早瀬 善正
    原稿種別: 原著
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 51-59
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    高知県日高村の猿田洞に流入した裂罅堆積物よりアツブタムシオイ属の化石個体が発見され,サルダアツブタムシオイとして報告されたことをきっかけに,猿田洞を形成している石灰岩層の延長部を調査したところ,同属の生貝が発見され,その後猿田洞周辺でも生貝が見つかった。詳しく調べた結果,殻の特徴が化石個体と一致し,同一種であることが判明した。本種は既知種とは形態的に区別できたため,新種として記載した。また,九州の熊本県北部の玉名郡の石灰岩地において見つかっていたアツブタムシオイ属の一種を確認したところ,これまで同定されてきたタダアツブタムシオイとは形態的に区別できると判断されたため,新種として記載した。


    Awalycaeus yanoshokoae Yano & Matsuda n. sp.サルダアツブタムシオイ(新種)

    殻長2.17 mm,殻幅4.32 mm(ホロタイプ)。同属では大型。殻は扁平な円錐形で黄白色を呈し,後生殻には成長脈が見られる。体層は虫様管始端の前方で螺層から離れ,殻底がくびれた後,下方に曲がって殻口を形成する。殻口は円く,殻口縁は二重になり,外側は外方に広がってやや反曲する。蓋は石灰質で,直径1.2 mmの円形で,内側はキチン質の膜で覆われ光沢を持ち,中央部には複式火山のような形状の起伏(周辺が外輪山のように高まり,中央部にかけてはやや低く,さらに中央には火山丘のような高まりがある)が見られる。外側は多旋型で角質の膜で覆われる。本種は同属の他種に比べて殻が大きく,成長脈が虫様管までは同属の他種よりも粗いが虫様管横から殻口にかけて密に現れること,虫様管始端の前方で体層が螺層から離れることにより区別できる。タイプ産地は高知県日高村沖名。


    Awalycaeus shiosakimasahiroi Yano, Matsuda & Nishi n. sp.クマモトアツブタムシオイ(新種・新称)

    殻長1.91 mm,殻幅3.57 mm(ホロタイプ)。殻は円錐形で黄白色~やや赤褐色がかった白色を呈する。同属ではやや殻長が長い。後生殻には成長脈が見られ,最初は密に現れるが徐々に粗くなり,虫様管横には再び密に現れ,殻口にかけてはやや粗くなる。臍孔は広い。殻口は円く,殻口縁は二重になり,外側は肥厚する。体層は虫様管の前方で螺層から離れる。蓋は石灰質で,直径1.0 mmの円形で,内側はキチン質の膜で覆われて光沢を持ち,中央部にはサルダアツブタムシオイと同様の,それよりもやや小さな起伏が見られる。一方,外側は多旋型で,角質の膜に覆われる。本種は従来タダアツブタムシオイと同種とされてきたが,タダアツブタムシオイに比べて殻口があまり反転しないこと,虫様管横の成長脈がより多く現れること,殻口にかけて螺管がやや細くなる傾向があることにより区別できる。タイプ産地は熊本県玉名郡玉東町。

  • 山岡 勇太, 近藤 康生, 伊藤 寿恵
    原稿種別: 原著
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 61-69
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    酸素同位体比分析を用いて,土佐湾産のトドロキガイとタマキガイの成長様式を推定し,両種の比較を行った。トドロキガイとタマキガイは殻形態がよく似ており,過去に同種あるいは地理的な亜種として扱われたことがある。本研究では,土佐湾産のトドロキガイとタマキガイを用いて両種の成長様式を比較することを目的とした。酸素同位体比分析の結果,両種の成長阻害輪の位置が夏季の高水温期に一致していたことが明らかになった。このことから,両種の殻表面に観察される成長障害輪は夏季に形成される年輪であると考えられた。続いて,殻頂から年輪までの長さを年齢ごとの殻高と仮定し,年齢と殻高の関係を考察した。今回確認できた最大殻高は,トドロキガイで43 mm,タマキガイで62 mmであった。また,確認された最大の年齢は,トドロキガイで15年,タマキガイで30年以上となった。さらに,トドロキガイはタマキガイに比べ初期の殻成長速度が大きい一方で,タマキガイはトドロキガイに比べ長期間にわたり成長速度が減衰しないことが明らかになった。このように,トドロキガイとタマキガイの殻成長様式は大きく異なっている。このことは,両種は殻形態や色彩だけでなく,殻の最大サイズや成長障害輪の間隔によっても区別することが可能であることを示唆する。このことから,トドロキガイとタマキガイは独立した別種である可能性が高いと考えられる。

  • 中山 健太朗, 近藤 康生, 佐藤 武宏
    原稿種別: 原著
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 71-78
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では佐藤・他(2009)が1999年11月25日に採集し,成長分析をおこなった相模湾産の2標本について,酸素同位体比分析の手法を用いて,ダンベイキサゴの殻成長を推定した。酸素同位体比分析を行った結果,両個体は類似した酸素同位体比プロファイルの変動パタンを記録しており,δ18Oの変動は3回の極小値と3回の極大値を含む,全体として緩やかな増加と比較的急な減少を示した。相模湾のダンベイキサゴは生息場所から淡水の影響は限定的であると推定される。つまり,殻に記録されているδ18O の値は海水温の変動を示すことから,両分析個体は相模湾の1997年春季から1999年秋季の海水温を記録していることになる。殻に記録される酸素同位体比値と殻表面に見られる明瞭な成長輪の関係から、この明瞭な成長輪は急激な海水温の低下に伴って形成されることが明らかとなった。相模湾のダンベイキサゴは主に海水温が低下する時期である秋季から冬季にかけて放精・放卵を行うことが知られている。つまり,殻表面の明瞭な成長輪は放精・放卵によって形成されていると考えられる。これらの成長輪は同時期に採集された個体にも同様に見られることから,本地域におけるダンベイキサゴは秋季に1回もしくは2回の放精・放卵が生じていると推定された。しかしながら,分析個体の前半部分のδ18O の値から春季もしくは夏季の前半にも放精・放卵が生じていると推定され,殻前半部分に放精・放卵に伴う明瞭な成長輪が形成されないのは成長速度が速いためであると考えられる。本研究の酸素同位体比分析から推定される成長速度は,幼貝部分において,先行研究の推定よりもわずかに速いことが明らかとなった。

  • 伊藤 寿茂, 上杉 翔太, 柿野 亘
    原稿種別: 原著
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 79-88
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    Host species for the glochidia of the freshwater unionid mussel Cristaria plicata (Leach, 1815) were identified by determining whether the glochidia infected 27 fish taxa. The fishes were kept in tanks for 11–17 days after glochidial infection, and the numbers of glochidia and metamorphosed juveniles detached from the hosts were counted. Living juveniles of C. plicata detached from Tribolodon hakonensis, Pseudorasbora parva, Oryzias sp., Anabas testudineus, Trichogaster trichopterus, Trichopodus microlepis, Macropodus opercularis, Odontobutis obscura, Acanthogobius flavimanus, Gymnogobius urotaenia, G. castaneus, Tridentiger brevispinis, Rhinogobius giurinus, R. nagoyae and Rhinogobius sp. Therefore, these fishes were identified as suitable host species for the glochidia of C. plicata. Some native fishes that inhabit Anenuma Lake (e.g., Gy. castaneus) are considered to be useful local hosts. Moreover, some labyrinth fishes such as Anabas testudineus, which can climb out of the water and crawl over wet land, may disperse glochidia and juveniles over land in southern areas.

短報
  • 亀田 勇一
    原稿種別: 短報
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 89-93
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    文献調査などを進めている際に,以下の琉球列島産陸産貝類の有効名に改訂が必要であることが判明したため,分類学ならびに命名法の観点から論議する。


    オキノエラブヤマタカマイマイGanesella sororcula okinoerabuensis Pilsbry & Hirase, 1905

    本学名は,現在エラブシュリマイマイEulota (Euhadra) okinoerabuensis Pilsbry & Hirase, 1904の新参二次同名となっている。これに対する置換名として提唱されたものにはGanesella erabuana Kuroda, 1958とLuchuhadra erabuensis Kuroda, 1963がある。黒田(1958: 145–146)は改名の対象となる“okinoerabuensis”の著者と日付を明示していないが,これがPilsbry & Hirase (1905)の名前であることは明らかであり,有効な置換名であると判断できる(国際動物命名規約第4版,以下ICZN条13.1.3, 72.4.1.1)。したがって,オキノエラブヤマタカマイマイの学名および著者はSatsuma eucosmia erabuana (Kuroda, 1958)に改訂され,ICZN条59.3に従いGanesella sororcula okinoerabuensis Pilsbry & Hirase, 1905は永久に無効となる。なお,種小名erabuensisの著者は多くの文献においてMinato, 1978 とされているが,黒田(1963: 46)がICZN条13.1.3を満たす有効な置換名の提唱であるため,著者はKuroda, 1963とすべきである。


    チャイロキセルモドキ属Yakuena Habe, 1956とリュウキュウキセルモドキ属Luchuena Habe, 1956

    この2属は生殖器形態を検討した湊(1977a)により同属と見なされた。その際,前者を後者の新参異名としたが,後に湊(2001a: 38)は「属の定義の記載順序がLuchuenaよりもYakuenaの方が先に行われたためにその先取が認められる」と訂正した。しかしながら,同日に公表された全く同一な階級の学名の優先権は,頁の前後ではなく第一校訂者の決定に基づく(ICZN条24.2)ため,湊(1977a)に従いLuchuenaに優先権が認められ,Yakuenaはその新参異名となる。


    サメハダヘソアキアツマイマイNesiohelix omphalina proximata Kuroda & Emura, 1943とオオアガリマイマイNesiohelix bipyramidalis Kuroda & Emura, 1943

    両者はともに南大東島産の現生個体に対して付けられた名で,近年では同一の分類群とみなされており,黒住(2005)は記載の順序を根拠に前者を後者の異名とした。しかし,同日に公表された異名関係にある学名については,「より高い階級で公表された学名が優先権をとる(ICZN条24.1)」ため,この2つを同一の分類群とみなす場合には,種として記載されたN. bipyramidalisが有効名であり,N. o. proximataは新参異名となる。


    オキナワヤマタニシCyclophorus turgidus (Pfeiffer, 1851)とリュウキュウヤマタニシ C. t. angulatus Pilsbry, 1902

    両者とも琉球産として記載されたもので,ほとんどの日本の文献では沖縄島産の小型個体をオキナワヤマタニシC. t. turgidus,大型個体をリュウキュウヤマタニシC. t. angulatusとして紹介している。しかし,原記載やタイプ標本によれば,C. turgidus は沖縄島産の個体としては大型で,現在日本でC. t. angulatusとして認識されている個体に該当する。したがってリュウキュウヤマタニシの和名で呼ばれているものこそがC. turgidusであり,C. t. angulatusはその新参異名と考えられる。

  • R. Houart, 知野 光雄
    原稿種別: 短報
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 94-98
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    パイプヨウラク亜科Typhinaeは現在現生14属・亜属で構成される。このうちトサパイプヨウラク属Monstrotyphis Habe, 1961は当初単型monotypyであったが,現在ではインド・西太平洋に10種,西大西洋に1種の合計11種が含まれる。本邦産種はM. imperialis ミカドパイプヨウラク,M. montfortiiパイプヨウラク,M. teramachiiテラマチパイプヨウラク,M. tosaensis トサパイプヨウラクの4種が数えられる。

    今般,伊豆大島秋の浜よりSCUBAによって得られた標本より本属の1新種を認めたので記載する。本新種を加え本邦産は5種となる。


    Monstrotyphis takashigei n. sp. ノコギリバパイプヨウラク(新種・新称)

    タイプ標本:ホロタイプ,殻長6.4 mm(国立科学博物館NSNT-Mo 78955);パラタイプ,殻長7.3 mm(仏国立自然史博物館IM-2000-31739),殻長7.3 mm(R. Houart),殻長8.5 mm(知野光雄),殻長9.3 mm,殻長7.5 mm(高重 博)。

    産地:タイプ産地は伊豆大島秋の浜,水深55 m。他には,同所の水深20~55 mから得られた。

    同属種の中ではやや小型,殻長は最大9.3 mm。殻長/殻幅比は1.7~2.0。外形は幅広の両円錘形,殻表は滑らか,縫合下の斜面は広く,やや傾斜するがほぼ平坦である。殻色は褐色,黄褐色,白黄褐色。縫合下の斜面,後水管は濃褐色,前水管基部に褐色小斑を生じることがある。殻口部は白色,軸唇から殻口内部は黄褐色,原殻は淡色になる。

    原殻はやや大きく,1.5~2層。後生殻は4.25層で,縫合は明瞭,初層は小さく肩が張り体層は丸い。螺層には4列の低く狭い水掻き状で,鋸歯状の薄板縦張肋を生じ,殻口縦張肋に5本の縮れとなる(Fig. 2N: P2-P5)。螺条(Fig. 2N: P1)は後水管となる。殻口は小さく,丸く,筒状に突き出し,連続した囲口を呈する。内唇は広く突き出し滑らか。外唇も突き出し内側は滑らか。前水管はやや長く狭い,先端部が背側に強く反り曲がる。後水管は腹側で密閉され殻頂側に狭く開く。短く狭い小棘を生じる。

    蓋は丸く同心円状の隆起,下端に核がある。舌歯は不詳。

    比較:本種は最近似種のM. montfortii(A. Adams, 1863)パイプヨウラクに比べやや小型,初生殻はややキールを生じる。前水管先端部は背方に反り返る。後水管は鋸歯状を呈し,基部は狭まる。また,生息環境はパイプヨウラクが水深50~200 mの砂地であるのに対し,本種は20~55 m岩礁上であることで異なる。その他,テラマチパイプヨウラクはより短小であること,ニューカレドニア産のM. singularisとはより大型で初生殻が尖らないこと,後水管が刻まれることで区別される。

    種小名は本種を発見された東京都在住の高重 博氏に因む。和名は後水管が鋸歯状に刻まれる本種の特徴による。

  • 幡野 真隆, 石崎 大介
    原稿種別: 短報
    2016 年 74 巻 3-4 号 p. 99-104
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    Feeding experiments on juveniles of the freshwater pearl mussel Hyriopsis schlegeli were conducted using upwelling chambers. Growth of juveniles mainly fed with a mixture of two green algae, Chlorella homosphaera and C. vulgaris, in 2013, was compared with that of specimens fed only with C. vulgaris in 2012. Juveniles in 2013 grew much faster than those in 2012 and their mean shell length exceeded 20 mm, achieving record maximum size. The result implied that using upwelling chambers and feeding small green algae are effective for successful culture of H. schlegeli.

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