Serriphaedusa属はNordosieck (2001) によって,四川省のClausilia serrata Deshayes, 1870をタイプ種として創設された。この属は,殻口の上板の大部分が螺状板から分離していること,下板が急激に上行することや,縫合に3~8の腔襞をもつか,それらの一部が連結して月状襞となることで特徴づけられる。本属はこれまでのところ中国固有であり,20以上の既知種もしくは亜種が四川省,雲南省,貴州省や広西チワン族自治区に分布している。著者は成都の劉正平氏が四川省雅安市滎経県龍蒼溝国家森林公園から採集した本属の標本を研究した結果新種と認めたので,ここに記載する。
Serriphaedusa zhengpingi n. sp.
貝殻は大型で濃い褐色,ホロタイプの殻長は41.2 mm,螺層は12½層。原殻は細かく刻まれる。初期成殻には細かい成長脈が密に並ぶが,体層に近づくにつれて不規則で疎らとなる。殻口は斜めの紡錘形で外唇は厚く反転して次体層から離れる。殻口上部の湾入は鋭い角度を形成する。主襞はよく発達し,奥部では徐々に弱まって螺状板に接続し,下板は上板から大きく離れて位置する。下軸板は明瞭に現れ,主襞は腹後側から背側に位置する。縫合襞は存在し,腹外側から背側に走る。上腔襞と斜めに位置する月状襞は三角形を形成する。閉弁は殻口から見えない。
本新種は大型で細長い貝殻をもつことでSerriphaedusa marteli (Dautzenberg, 1915)とSerriphaedusa boisseaui Grego & Szekeres, 2011に類似するが,縫合襞をもつこと,主襞や月状襞がより奥部に位置すること,上腔襞を1本しかもたないことでこれらの種から区別される。また,殻口の周りには結節が生じない。
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