アフリカ研究
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最新号
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論文
  • 山田 肖子
    原稿種別: 論文
    2017 年 2017 巻 91 号 p. 1-16
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本論では,ガーナ国アシャンティ州の州都であるクマシにおいて,自動車修理に関連する技能を学んでいる,4つの異なるタイプの職業技術教育(TVET)機関である職業訓練所(VTI),技術研修所(TI),技術高校(STHS),ポリテクニック(技術短大)の494名の生徒に対して行った質問票調査の分析結果を提示する。

    ガーナでは,2000年代の半ばから,大規模なTVET改革を行い,従来の座学重視の教育から,工場等での実習を中心とする実用性重視の技能形成に転換しようとしている。しかし,実際の学校現場,特に生徒自身にとっては,制度が変わったことで,彼らの職業観や教育への期待が影響を受けている様子は見られない。若者が,生業のための技能を身に着けるうえでの選択は,どのような要因に影響を受けているのか。本論では,若者が中卒後に選ぶキャリア形成の過程が多様であり,学校を必ずしも選ぶわけではないと同時に,インフォーマル・セクターでの徒弟と複数の学校の間を往還するなど,複線的かつ長期的な戦略があることを示す。そのうえで,学校外での技能形成の可能性が多くある環境で,学習者は,どのような判断に基づいて,また,キャリア形成のどの段階で「学校」という制度化された場を選択するのかを考察する。

  • 佐久間 寛
    原稿種別: 論文
    2017 年 2017 巻 91 号 p. 17-28
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    ニジェール川におけるカバ狩りは,イブン・バトゥータによる14世紀の旅行記にも記された歴史をもつ活動である。公には,フランス植民地期以降,野生動物の保護の観点から禁止されている。ソルコは,かつてこの狩りに専門的に従事してきたとされる人びとである。現在では細々と漁業を営むにすぎず,農業のみに従事する者も少なくない。

    2006年,地元住民の死亡事故をきっかけに集団的なカバ狩りが組織された。狩りには首都から派遣された治水林野庁のハンターが多数参加したが,最終的に獲物を仕留めたのは彼らの銃ではなく,地元のソルコの銛だった。銛は,名前と意思と人格を持ち,ソルコの呼びかけに応じて標的を貫く呪物だった。ソルコは漁師から呪術師へと変身したのである。

    ニジェール川のカバとは単なる野生動物ではなく,川という御しがたい自然を体現する力である。ソルコの変身はこの力を「畏れる」人びとの呼びかけに応じて生じ,銛はそのソルコの呼びかけに応じて呪物と化す。本稿では,カバ狩りが人と動物の直接的な命の奪いあいではなく複数の意思や力に媒介されている点に着目し,畏れという情動によって動物-人間関係の複数化・間接化が促されることを指摘する。

研究ノート
  • 藍澤 淑雄
    原稿種別: 研究ノート
    2017 年 2017 巻 91 号 p. 29-38
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    鉱物資源が豊富なアフリカ諸国における零細鉱業を取り巻く支援環境についてはこれまで多くの研究が見られる。しかし零細鉱業それ自体の実態を捉えている研究は十分に蓄積されていないと言える。そこで本論は零細鉱業の実態を明らかにすることを目指して,零細鉱業の主要アクターが採鉱現場において相互にどのように認識し合っているのかについて考察することを目的とした。このためタンザニアのゲイタ鉱山地区の零細金鉱業の採鉱場で行ったフィールド調査の結果を基に,主要アクターである採鉱権保有者,採鉱管理者,採鉱作業者の相互認識について分析した。

    その結果,採鉱権保有者,採鉱管理者,採鉱作業者の相互認識度は高い一方で,相互認識度とそれらアクターの採鉱サイト村での在住期間の間には一定程度の関係性が認められた。さらに,採鉱サイト村での在住期間の長さは,採鉱権保有者,採鉱管理者,採鉱作業者間における,ボス,監督者,仕事仲間,友人といった相互関係性にも影響を及ぼしている可能性があることもわかった。

  • 味志 優
    原稿種別: 研究ノート
    2017 年 2017 巻 91 号 p. 39-46
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    現況において全世界的に推進されるグッド・ガバナンスの議論の中で,汚職はアフリカにとって排除すべき「癌」として広く認識されている。他方で,汚職を単に是正すべき対象として考えるのではなく,汚職という概念そのものの意味を問い直し,あるいは汚職状況の是正を促す我々の言説自体の見直しをも強いる研究も少なからず存在する。本稿は,このような研究群を概観し,汚職というイシューに関する分析が必要とする複雑性を改めて提起するとともに,筆者自身の今後の研究課題を提示するものである。

    具体的には,代表的な先行研究を紹介しながら,本稿はこうした研究群を(1)アフリカ特有の価値体系を措定し汚職を捉え直すもの(文化・規範的観点),(2)汚職への関与の実態を人々の日常的な生活の文脈から観察するもの(日常的観点),(3)全世界的な反汚職政策や,汚職自体に関する認識枠組み自体を問い直すもの(ポスト・コロニアル的観点)の3つに大別した。その上で,法と慣習的なモラルという,しばしば対立する異なる「公」の概念に対して,アフリカの人々がいかにして今後向き合うのか,という研究課題を提示した。

  • 宮木 和
    原稿種別: 研究ノート
    2017 年 2017 巻 91 号 p. 47-54
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,タンザニア北部の牧畜社会において土地利用の方法がいかに変化し,また,土地の囲い込みがどのように拡大したのかを明らかにすることを目的とする。東アフリカの牧畜社会では従来,土地を私有せずに共同で利用してきたが,近年には個々人が共有の放牧地を私的に囲い込む現象が拡大している。その原因としては,農地や自然保護区の拡大および人口と家畜数の増加によって,放牧地の希少性が高まったことが指摘されてきた。すなわち土地の囲い込み現象は,牧畜社会をめぐる現代的な諸問題と深く関連している。

    本研究は,タンザニア北部のエヤシ湖岸に住む牧畜民ダトーガを対象とする。彼らは,農地の拡大や近隣民族との争いのなかで旧来の放牧地を失った結果,湖岸地域に定住し始めた。その後にこの地域では,人口と家畜数が増加して放牧圧が高まるなかで,主として仔ウシの放牧地を確保することを目的として,人びとが共有地を私的に囲い込む現象が拡大している。2005年と2013年の衛星画像の分析と現地調査によるデータ収集の結果,この8年のあいだに多くの世帯が囲い地をもつようになり,その総面積は1.8倍に増加した。こうした個人による土地の囲い込みが,共同体による規制をどのようにうけているのかを明らかにすることが,今後の課題である。

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