アフリカ研究
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2017 巻 , 92 号
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論文
  • ─タンザニア3地域乳幼児死亡要因の比較分析─
    阪本 公美子
    原稿種別: 論文
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 1-17
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    アフリカにおける相互扶助や広義の「ケア」の重要性はこれまで議論されてきたが,それらがどの程度乳幼児死亡に寄与しているのかは明らかになっていない。本論ではタンザニアにて5歳未満児死亡率が高かった州で,異なる特徴を持つ3村において詳細な質問票調査を行い,乳幼児の死亡経験との関連を分析した。その結果,第一に,世帯員数や女性数でみた「ケア」は,ザンジバルの農村で乳幼児死亡と負の相関関係があり,生存への寄与の可能性があったが,農牧村ではむしろ逆の様相がみられた。第二に,食料が不足する本土2村では「食料不足の際子どもは親戚宅で食べられること」が,乳幼児の生存に寄与している傾向がみられた。しかしその相互扶助は包括的ではなく,村内において食の平準化が機能していなかった。第三に,子どもの薬への現金支援を他人から得た女性の方が乳幼児の死を経験しており,薬代をめぐる相互扶助は機能していなかった。但し,現金を介する相互扶助は,スワヒリ地域では食費,農牧村では通院費がより頻繁にみられ,地域差があった。結論として,食の相互扶助は子どもの生存に寄与するが,相互扶助から漏れる乳幼児も少なくなく,その死亡率も高かった。

特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
  • ─地域社会の視点から─
    丸山 淳子, 目黒 紀夫
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 19-25
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー
  • ─民族間関係,個人の移動,収入の個人差に着目して─
    八塚 春名
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 27-41
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    タンザニア北部に居住するハッザの狩猟採集生活は,1990年代以降,観光の対象になってきた。観光客はハッザの居住キャンプを訪れ,ハッザと狩猟に行き,射的やダンスを体験し,手作りのみやげものを購入する。ハッザは,入村料と個人のみやげものの売り上げという2種類の収入を得る。本稿では,ハッザが観光とどのように付き合っているのかを考察するために,他民族との関係,個人の移動,みやげもの販売に伴う収入の個人差の3点に焦点を当てて,観光を含むハッザの生活を包括的に分析する。ハッザに関する先行研究のなかで,観光はハッザに対してネガティブな影響をもたらすものだと評価されてきた。しかし本稿では,観光収入によって他民族とのあいだに新しい関係性がつくられていること,個人が頻繁な移動を広域に繰り返すことによって,観光への接続や観光からの離脱を自由に選択していること,みやげものの売り上げには個人差が生じているが,収入の多くは酒のような消えモノの購入に使われ,居合わせる全員で消費されていることが明らかになった。ハッザは観光に対して過度な期待をしておらず,観光は複数ある生計手段の選択肢のひとつとして捉える態度こそ,ハッザの観光との関わりの根幹をなすと考察した。

  • ─新規参入のアクターに着目して─
    西﨑 伸子
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 43-54
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    2000年以降に大規模な開発事業がはじまったことで,エチオピア西南部にマスツーリストを受け入れる一大民族文化観光地が形成された。本稿は,この地域で民族文化観光が発展する背景を地域開発との関係から明らかにし,ホスト側社会がいかなるアクターとの関係性のなかでゲストを受け入れているのかを,ガイドの役割に焦点をあてて明らかにすることを目的とする。その結果,この地域で長く観光に関与してきた農牧民だけでなく,「他民族ガイド」や農耕民アリが新たに観光業に参入していること,一部の人々が観光資源の発掘や観光業に積極的にかかわり,一定の経済的利益を得ていること,ガイドの積極的な関与で,観光空間が拡大していることが明らかになった。今のところこの地域の人々は,農牧業を軸に,観光業をうまく副業にして生活していると考えられる。その一方で,国家による地域開発事業にともなう土地収奪によって,観光業だけでなく主生業に負の影響が出ることが危惧される。

  • ─観光と地域の社会関係のダイナミズム─
    丸山 淳子
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 55-68
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    近年,少数民族が観光に参加することで貧困削減やエンパワーメントが進むことが期待され,南部アフリカでもその一つとして「ブッシュマン観光」がさかんになっている。本論では,ボツワナのハンツィ地域の「ブッシュマン観光」の成立過程と,地域の社会関係にもたらすインパクトを検証した。結果,この観光は,南部アフリカの政治的安定やインフラ整備による観光客の増加を背景に,ブッシュマンと「地元白人」が中心的担い手となって成立していた。そして地域の支配的集団である「地元白人」が力を持ちつつも,観光はブッシュマンにとって高額な現金収入源となり,観光内容や働き方に関する決定権や自由もある程度保証されていること,またブッシュマンのあいだで観光業に関わる人の顔触れが頻繁に変わることにより,観光がもたらす格差が抑えられていることが明らかになった。しかし,「地元白人」の存在は観光業の商業的成功とそれがもたらすブッシュマンの収入増加に欠かせない一方で,それがゆえに白人優位の構造が維持されたり,ブッシュマンの観光業への自由な関わり方と彼らの所得向上や意思決定の範囲の拡大が両立しにくいなど,多くの矛盾を抱えていることも示された。

  • ─「マサイ」民族文化観光の新たな展開─
    中村 香子
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 69-81
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,アフリカにおける民族文化観光においてもっとも長期的に有力な「商品」でありつづけている「マサイ」をとりあげ,彼らが住民主体でおこなう観光業の実態を検証することを目的とする。前半部では,民族文化観光の現場で何がどのように観光資源化されており,それによってどの程度の収益がもたらされているのかを明らかにし,そのうえで,観光業の経済基盤としての脆弱性を指摘する。人びとが「最少努力・最少投資」の姿勢で観光業に対峙していることをふまえて,後半部では,人びとが新たに民族文化観光の資源として利用しようとしているものを分析する。そのひとつは女性の「苦境」であり,もうひとつは子供の「苦境」である。いずれも国際社会による開発支援の定番のイメージであり,観光客が無意識に求めているもうひとつのステレオタイプ─「かわいそうなアフリカ」に合致するものである。「伝統」と「未開」を「光」としてみせ,「苦境」を「影」として聞かせながら,人びとは,観光客から新たな支援を呼び込む場として民族文化観光村を活用しているのである。

  • ─ケニア南部に暮らすマサイにとっての観光の意味─
    目黒 紀夫
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 83-94
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    ケニア南部のアンボセリ地域はアフリカを代表する野生動物観光の目的地である。そこで国際NGOが2000年代に開始した「観光保全エンタープライズ」は,1990年代以降のアフリカで広まる新自由主義的な「保全―開発―観光の連環」の典型として研究されてきた。しかし先行研究は,プロジェクトは目標として掲げる「保全―開発―観光の連関」の実現を目指す,保護区には観光宿泊施設が建設される,住民は契約を順守するといった制度的な前提を疑ってこなかったため,開発援助プロジェクトをめぐる言説と実践のズレや新自由主義的な制度に反する住民の態度を見過ごしてきた。住民はその時々の状況と必要に応じて柔軟に選択するべき選択肢の一つとして観光を捉えており,そこにおいて観光は一時の服用で全ての問題を解決して万全の状態をつくりだす「万能薬」というよりもむしろ,服用する種類を選択したり量を調整したりすることで好調を維持していくことを目指す副次的な「サプリ(栄養補助剤)」に例えられるものと考えられる。ただし,アンボセリ地域は土地権利や生計活動の点でアフリカの中でも特徴的であり,こうした結論が一定の地域性の上に成立している点に留意する必要がある。

  • ─タンザニア,ワイルドライフ・マネジメントエリアの裏切り─
    岩井 雪乃
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 95-108
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    アフリカの野生動物保全政策の潮流である「住民主体の自然資源管理(Community-based Natural Resource Management: CBNRM)」にもとづき,タンザニア政府は,動物保護区周辺の地域住民に対して,観光による経済的な便益を還元する新制度「ワイルドライフ・マネジメントエリア(Wildlife Management Area: WMA)」を,2000年代から開始した。この制度は,複数の村が集まって土地を提供しあって動物保護区を設立し,それを観光企業に貸し出して収益を得る仕組みである。現在,全国で17カ所のWMAが運営されており,148村,約44万人の住民が参加している。

    本稿では,設立から10年が経過したWMAが,目的である「住民への権限委譲」と「観光便益の還元」を達成しているかを検証した。事例として取り上げたのは,「成功モデル」とされるイコナ(Ikona)WMAである。イコナWMAは,年間50万ドルという,他のWMAから抜きん出た多額の収益をあげており,それは年々順調に増加していた。しかし,現地調査からは,4つの課題,すなわち,①WMA設立手続きの複雑さ,②観光便益の減少,③WMA事務局ガバナンスの脆弱性,④土地利用計画の変更の困難さ,が明らかになり,住民はWMAに裏切られたと感じており,脱退を望むほど負の影響が強まっていた。中でも最も深刻な課題は④であり,これによってWMAが土地収奪ツールとなってしまっていることを指摘した。

  • ─ガボン,ムカラバ・ドゥドゥ国立公園における取り組み─
    松浦 直毅, 安藤 智恵子, 新谷 雅徳, 竹ノ下 祐二
    原稿種別: 特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
    2017 年 2017 巻 92 号 p. 109-121
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    アフリカ熱帯林とそこに生息する大型類人猿などの野生動物の減少が大きな問題となるなかで,環境保全と地域開発を同時に達成するとされるエコツーリズムに大きな期待が集まっている。しかしながら,地域の社会的文脈の理解を欠いたエコツーリズム開発は,地域住民の周縁化を助長し,保全に悪影響を及ぼす危険性もはらんでいる。本稿では,住民主体の有効なエコツーリズムのあり方を検討するために,ガボンの国立公園で筆者らが取り組んでいる研究活動とエコツーリズムの基盤整備の事例をとりあげる。

    筆者らが継続してきた大型類人猿の長期調査を基軸とした研究活動と,エコツーリズム開発のための基盤整備事業の過程を分析した結果,以下の2点が明かになった。(1)研究活動を通じて構築される地域住民との相互理解にもとづく協力関係が,エコツーリズム開発を受け入れるコミュニティの形成にむすびつく,(2)地域住民との協力関係にもとづき,さまざまな外部アクターが連携してエコツーリズム開発を進めることによって,住民の意識変化が促進される。エコツーリズム開発にあたって重要なことは,地域住民をふくむそれぞれのステークホルダーが協働し,地域の社会関係を再構築しながらコミュニティの基盤をつくることであるといえる。

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