日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
Print ISSN : 2185-2928
ISSN-L : 2185-2928
39 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Editorial
原著(研究)
  • 宮本 みき, 高橋 秀人, 松田 ひとみ
    2016 年 39 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 老年期の人工的水分・栄養補給法 (artificial hydration and nutrition, 以下AHN) の導入について, 高齢者が事前に意思決定できない (「決められない」) ことに関連する要因を明らかにすることを目的とした.
    方法 : 地域で自立した生活を営む単独で外出可能な60歳以上を対象に, 自記式質問紙調査による横断研究 (平成23年8月~11月, 有効回答116人, 有効回答割合90.6%) を行った. AHNに対する事前の意思決定と, AHNの知識, 事前指示や終末期医療に関する意向, 介護経験等との関連を, 多重ロジスティック回帰分析を用いて解析した.
    結果 : 「AHNに対する事前の意思」について, 「決められない」が25人 (21.6%) であり, 「決められる」は91人 (78.4%) であった (「何れかのAHNを望む」は16人 (13.8%) , 「AHNの全てを望まない」は75人 (64.7%) ) . 「決められない」に関連する要因として選択されたのは, (1) 「認知機能の低下に関連する失敗をした経験がない (失敗の経験) 」 (OR=12.0, 95%CI=1.42-100.41, p<.022) , (2) 「家族を介護した経験がない (介護の経験) 」 (OR=3.0, 95%CI=1.04-8.53, p<.042) , (3) 「意思表示不能時には治療の判断を他者に委ねる (他者に委ねる) 」 (OR=5.6, 95%CI=1.95-16.24, p<.001) であった.
    結論 : 「AHNに対する事前の意思」を「決められない」ことに関連する要因として, 認知機能の低下に関連する失敗の経験がないこと, 家族を介護した経験がないこと, 意思表示不能時には治療の最終的な判断を事前指示よりも他者に委ねたいとする意向が見いだされた.
  • 松久 雄紀, 廣瀬 英生, 後藤 忠雄
    2016 年 39 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 健診を受診した80歳以上高齢者の生存期間に関する要因を検討する.
    方法 : 対象は1991年~1995年の間に郡上郡和良村にて健診を受診した80歳以上高齢者のうち検討項目に欠落のない43名とした. 初回受診時を基準日とし2011年3月31日まで追跡した. 年齢, 性別, BMI, 高血圧の罹患, 糖尿病の罹患, 総コレステロール値, HDLコレステロール値, 喫煙との関連を検討した.
    結果 : 検討対象者の登録時の平均年齢は81.9歳であった. COX比例ハザードモデルによる解析を行ったところ, 糖尿病の罹患と生存期間の間に有意な関連を認めた. 年齢, 性別, BMI, 高血圧の罹患, 総コレステロール値, HDLコレステロール値, 喫煙とは有意な関連を認めなかった.
    結論 : 健診を受診した80歳以上高齢者では, 糖尿病に罹患していると生存期間が短くなることが示唆された.
  • 石川 由紀子, 牧野 伸子, 山本 さやか, 石川 鎮清, 松村 正巳
    2016 年 39 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 当学には, 卒後9年間就業を継続するという前提がある. 今回, 当学女子医学生に求められている卒前教育プログラムを調査するため, ワークライフバランスに関するニーズ分析を行った.
    方法 : 全女子在校生187人に自記式調査を依頼した.
    結果 : 回答者104人のうち, 義務年限内に結婚・出産を希望した者はそれぞれ71%, 68.6%であった. 80.0%が「出産」に対して, 78.1%が「家庭との両立」に対して不安が高いと回答した. 回答者の8割以上が希望したプログラムは「卒業生女性医師の経験談」「卒業生女性医師との懇談会」「女性医師支援制度についての情報提供」「キャリアアップについての情報提供」であった.
    結論 : 当学女子医学生の不安は大きいが, 地域医療に貢献する卒業生女性医師との交流を生かしたプログラムを受けられるメリットがある. 当学の卒前教育において, ロールモデルの存在を明確にすることが求められていると考えられた.
  • ─ワルファリン服用患者の服薬アドヒアランスとTime in therapeutic rangeの評価─
    中村 一仁, 渡邊 法男, 今枝 直純, 福井 恵子, 小倉 行雄, 大川 洋史, 浦野 公彦, 山村 恵子
    2016 年 39 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    目的 : ワルファリン (以下, WF) を安全かつ適正に使用するため, 医薬連携に基づく共同薬物治療管理体制を構築し, 服薬アドヒアランスと治療効果に与える影響について評価した.
    方法 : WF服用中の外来及び在宅治療中の患者12名を対象とした. 服薬アドヒアランスは患者のWF治療の理解度を, また治療効果はTime in therapeutic range (以下, TTR) を指標として評価した. 薬剤師は診察前に患者面談しPT-INRを確認するためコアグチェック ®XSを用いたPoint of care testing (POCT) を活用した. 同時にWFの服薬状況及び副作用発現の情報を収集し, お薬手帳あるいは施設間情報連絡書を用いて, 医師へWFの服薬管理状況を報告した. さらに, 診察前面談の開始前後におけるWF服薬アドヒアランス評価とTTRの推移を評価した.
    結果 : 服薬指導前後のWF治療の理解度は, 4.8±1.9 (平均値±S.D.) 点から6.8±2.4点に有意に向上した (P=0.0079, wilcoxon signed-rank test) . 診察前患者面談を開始前及び開始後24週のTTRは, 21.9±29.8 (平均値±S.D.) %から60.5±30.5%に有意に改善した (P=0.0024, wilcoxon signed-rank test) .
    結論 : 薬局の薬剤師が診察前にPT-INRを把握し, 目標治療域の維持を目的として医療機関とプロトコールにもとづく共同薬物治療管理体制を構築することは, 患者のWF服薬アドヒアランス及び治療効果の向上に繋がることが示唆された.
  • 山口 晴保, 中島 智子, 内田 成香, 甘利 雅邦, 池田 将樹, 牧 陽子, 山口 智晴, 篠原 るみ, 高玉 真光
    2016 年 39 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 診療の補助ツールとして, 症状の見落としを防ぎつつ, 認知症各病型の判別や非アルツハイマー型認知症の気づきにも役立つ介護者記入式質問票の開発を試みた.
    方法 : 認知症初期症状11項目 (Q-Dementia11) , アルツハイマー型認知症8 (Q-ADD8) , レビー小体型認知症9 (Q-DLB9) , 血管性認知症8 (Q-VD8 ; DLBと2項目重複) , 前頭葉症状5 (Q-Frontal5) , 尿失禁と発語減少各1の全41項目の認知症諸症状の質問票 (DDQ41) を, 初診時に575名の介護者が記入した (臨床診断が単独の例のみを抽出) . これを臨床診断と照合し, 分析した.
    結果 : 1) Q-Dementia11はMCI群 (n=44) で認知症群よりも有意に低かった. 2) Q-ADD8は他の認知症病型でも陽性傾向があり, これのみでは病型判別には役立たなかった. 3) Q-DLB9は, DLB群が他の認知症病型群より有意に高値で, ROC曲線下面積85.6%, 4項目以上を陽性とすると感度82.6%, 特異度77.7%と, 判別に有用であった.
    結論 : 介護者が記入することで, 認知症診療に必要な諸症状の有無を1枚のシートで確認できる認知症病型分類質問票の開発を試みた. 主要症状を網羅してあるので, 症状の見落としを防ぐことが期待される. さらに, 前頭葉症状や非アルツハイマー型認知症, 特にレビー小体型認知症への気づきに活用できるものと考えられた.
原著(症例報告)
  • 柴﨑 俊一, 谷 直樹, 磯部 隆, 荒木 真, 佐藤 泰吾, 谷内 法秀
    2016 年 39 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    神経線維腫症1型 (Neurofibromatosis types 1, 以下NF-1) は国内患者数が約4万人で, プライマリ・ケア医が遭遇する疾患である. 腫瘍性病変が有名で予後規定因子として知られるが, 他に動脈瘤を合併しうる. これは従来高血圧の結果とされ, また予後規定因子として注目されていない. 今回, 高血圧のないNF-1患者が腰動脈瘤破裂で急激にショックとなった1例を経験した. NF-1の55歳女性が, 突然の左鼡径部痛で救急搬送された. 造影CT, 動脈造影にて腰動脈瘤破裂と診断された. 来院後にショックとなり, コイル塞栓術が行われ, 救命された. 動脈瘤がNF-1の予後規定因子となる可能性, その成因は高血圧以外に, 近年いわれるNF-1自体の血管脆弱性による可能性が臨床的にも支持された.
  • 渡邊 法男, 山田 卓也, 吉田 知佳子, 細川 佐智子, 中川 千草, 安村 幹央, 山村 恵子
    2016 年 39 巻 1 号 p. 40-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は40代男性, 原発不明がん, 肺転移, 脊椎転移 (T5-6) . モルヒネ硫酸塩徐放錠, ナブメトン錠, アミトリプチリン塩酸塩錠で疼痛治療中に, 腫瘍の進展に伴う脊髄圧迫部位以下の麻痺が完成し, 同時期から, 高度の腹部膨満感, 便秘を認めた. 各種腸管蠕動亢進薬を使用したが症状は改善しなかった. そこで, モチリン受容体アゴニストとして, 自律神経系の麻痺による消化管運動障害改善効果が報告されているエリスロマイシン点滴静注 (1回500mg, 3回/日) を開始したところ, 症状が著明に改善した. その後, エリスロマイシン錠 (1回200mg, 3回/日) へ変更し, 良好な排便コントロールを得ることができた. エリスロマイシンは, 各種腸管蠕動亢進薬が無効な腫瘍の脊髄圧迫など麻痺性の消化管運動障害による便秘に対し有用な治療薬の一つであると考える.
活動報告
男女共同参画委員会
ワールド・ヘルス・サミット・パネルディスカッション
ご案内
feedback
Top