岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
70 巻, 1 号
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原著
  • 天野 怜, 肥田 圭介, 千葉 丈広, 佐々木 章
    2018 年 70 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢がん患者はサルコペニアに陥りやすい状態となっている.今回,岩手医科大学外科(以下,当科)の胃癌胃切除患者におけるサルコペニアが,術後6ヵ月までの短期成績に及ぼす影響について検討した.Asian Working Group on Sarcopenia in Older Peopleのアルゴリズムで65例中12例(18.5%)がサルコペニアと診断され,高齢者,女性,低体重に有意に多かった.サルコペニア群では術前アルブミン値が有意に低値を示していたが,術前後の比較では,サルコペニア群で術後有意に上昇していた.また,術前併存疾患,Clavien-Dindo分類gradeⅡ以上の術後合併症で両群間に有意差は認めなかったが,gradeⅣb(縫合不全)に関してはサルコペニア群で有意に多かった.今回の検討により,当科での周術期管理の有効性も示唆され,サルコペニアは日常生活動作,栄養状態,筋肉量,代謝などの悪影響が報告されており,今後サルコペニア予防に関し,術前および術後長期にわたる医学的介入を検討する必要がある.
  • 佐藤 美浩, 小林 隆史, 本郷 修平, 鈴木 健二
    2018 年 70 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本邦にて2013年10月,第3世代人工膠質液hydroxyethyl starch (HES) 130/0.4が使用可能となり,これまでのHES 70/0.5と比較して,より高用量の投与が可能となった.今回我々はHES 70/0.5の代わりにHES 130/0.4を用いた輸液管理が,術中の血液製剤投与必要性に及ぼした影響を,後ろ向きに調査した.対象は2012年10月から2014年12月の間に,岩手医科大学附属病院で心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)が施行された患者とした.同病院でHES 130/0.4が採用される以前にHES 70/0.5が投与された患者(HES 70/0.5群)と,HES 130/0.4が投与された患者(HES 130/0.4群)について,患者背景,術中水分バランス,輸血およびアルブミン製剤投与必要性そして術後経過を比較した.結果は,術中の輸血およびアルブミン製剤使用量と使用頻度および術中水分バランスがHES 130/0.4群において低下した.術後経過に有意な差は認められなかった.結論として,OPCABにおけるHES 70/0.5の代わりにHES 130/0.4を用いた輸液管理は,術中水分バランスを減少させ,術中の血液製剤使用量および使用頻度を減少させた.
症例
  • 佐々木 純, 栗原 英夫, 小谷 康慈, 秋山 有史, 佐々木 章
    2018 年 70 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は51歳,男性.左頸部に8×9 cm の腫瘤を主訴に来院した.胸部X線撮影では異常所見を認めなかった.その翌日から頸部腫瘤が退縮し始め,7日後には小さな腫脹リンパ節を残してほぼ消退した.同時にCTで左肺門癌が確認された.試験摘出した頸部の腫脹リンパ節は腺癌と扁平上皮癌の成分を含んでいた.更に1週間後に頸部腫瘤は再び増大し始めたが,化学療法と放射線治療によって消失し,8ヵ月間出現しなかった.これらの治療は肺癌に対しては効果を認めず,患者は16ヵ月後に癌死した.いわゆる自然退縮した癌は原因は不明とされているが,本症例の消失した頸部腫瘤は,初診時の胸部X線撮影による少量の放射線照射が,肺癌のリンパ節転移を退縮させたものと推定した.
  • 藤井 仁志, 佐々木 章
    2018 年 70 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    77歳,男性.2015年6月に胃癌に対して胃全摘術,Roux-en-Y法再建術を施行した.2017年10月上旬に上腹痛を自覚し近医の救急外来を受診した.診察上は心窩部から右季肋部にかけて疼痛と圧痛を認めた.腹部CTでは,十二指腸の切離断端からY脚吻合部付近まで著名な腸管の拡張を認めた.腸閉塞の診断で入院し,翌朝に輸入脚閉塞症の診断で緊急手術を施行した.術中所見は,輸入脚腸管が挙上空腸とY脚の吻合部付近で時計回りに360°回転し捻転していた.捻転を解除したが,虚血腸管の血流が改善しなかったため,虚血腸管を切除後にY脚の再吻合を行った.輸入脚閉塞症は胃切除後のBillroth-Ⅱ法やRoux-en-Y法の再建後に見られる比較的稀な合併症であり,時に致命的な経過をたどることがある.特徴的なCT所見を認めるため,本疾患を念頭に置いた検査を行い,早期診断による早期治療に心がけることが重要である.
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