岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
74 巻, 1 号
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Original
  • 山田 直人, 鈴木 健二, 櫻庭  実
    2022 年 74 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    頭頸部癌に対する遊離皮弁移植手術は長時間かつ高侵襲のため,麻酔管理は困難となる.  手術の成功には皮弁血流の維持が重要となるが,術後に皮弁血流の循環不良が起こる場合がある.術後低血圧は皮弁血流不良の原因になると仮説を立て,その予測因子と皮弁合併症頻度について診療録を用いた後方視的調査を行った. 遊離皮弁手術を受けた頭頸部癌患者を対象に術後低血圧発症(収縮期血圧90mmHg未満)の有無で術後低血圧群46例,非低血圧群36例に分けて,患者背景,麻酔管理,集中治療管理,検査データ,術後合併症頻度について群間比較を行った. 両群で皮弁壊死の頻度に有意差は無かったが,低血圧群は術中水分バランス,術後皮弁血流不良と全身性炎症反応症候群の発症頻度,循環作動薬必要量が有意に多い結果となった. 本研究結果より,術後低血圧は手術中から起こる強い炎症に由来し,皮弁血流不良の原因となることが示唆された.
  • 宮坂 昭生, 吉田 雄一, 鈴木 彰子, 滝川 康裕
    2022 年 74 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    C型肝炎ウイルス遺伝子型1型に対するエルバスビルとグラゾプレビルによる12週間治療の有効性と安全性を実臨床で評価する目的で67人のC型肝炎ウイルス遺伝子型1型慢性肝炎または代償性肝硬変患者をエルバスビルとグラゾプレビルにて12週間治療後12週間追跡した.治療終了後12週の時点でHCV RNAが検出されない場合をSVR12と定義し,この12週間治療の有効性と安全性について解析した.その結果67人(男性39人,女性28人)がこの治療を受けた.このうち23人(34%)が代償性肝硬変で,1人のみ(1%)が以前に他のDAA治療を受けたが非SVRであった.全体のSVR12率は97% (95%信頼区間0.896 – 0.996)であった.SVR12は治療開始時の年齢,性別,肝硬度,Fib-4 index,CKDステージによる影響を受けなかった.重篤な有害事象も発生しなかった.ALT値の上昇が最も多い有害事象で,4人(6%)に認められた.結語:実臨床において,C型肝炎ウイルス遺伝子型1型慢性肝炎または代償性肝硬変患者に対するエルバスビルとグラゾプレビルの12週間治療は効果的で安全であった.
  • 西島 光茂, 西島 浅香
    2022 年 74 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ヘプシジンを中心とした母児間の鉄動態を解析するため,分娩時母体静脈血と臍帯静脈血の全血算検査,ヘプシジン,血清鉄と網状赤血球,鉄代謝関連4物質を測定した. ヘプシジンは母体血値が臍帯血値より有意に低く,母体は,血清鉄の供給を容易にしており,胎児は血清鉄を蓄積する方向を示していた. 臍帯血でヘプシジンとフェリチンが正の相関,トランスフェリンとフェリチンが負の相関を示しており,胎児は既に鉄を蓄積し,過度の輸送を防いでいると考えられた.網状赤血球とエリスロポエチンの正の相関は出生後の赤血球産生の準備が整っていることを示していた.重回帰分析で母体ヘプシジンと胎児の鉄代謝指標は関連が無く,胎児ヘプシジンは母体血清鉄だけと有意な関連を認めた事から,母体と胎児では,鉄の供給と蓄積は血清鉄の母体から胎児への輸送を除き,独立して管理されている.
Case Report
  • 伊藤 浩平, 石岡 秀基, 塩井 義裕, 佐々木 章
    2022 年 74 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は69歳男性.右下腹部痛を主訴に当院を受診し,腹部単純レントゲンにて鏡面像を伴う大腸ガス像,腹部CTで上行結腸の捻転を認めたため,上行結腸軸捻転を疑い緊急手術を施行した.上行結腸の長軸方向に捻転し,かつ頭側へ反転していたが,腸管壁の虚血性変化は認めなかった.回盲部切除後に,機能的端々吻合して手術を終了した.術後8日から経口摂取を開始し,術後14日に経過良好で退院した.術後2ヵ月経過したが,再発は認めていない.上行結腸軸捻転は内視鏡的な整復術や盲腸固定術などの非侵襲的な治療では再発するリスクがあり,腸管壊死の有無に関わらず,捻転腸管の切除を行うことを念頭に治療を進める必要がある.上行結腸軸捻転は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
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