岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
74 巻, 3 号
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  • 清原 千貴, 伊藤 薫樹
    2022 年 74 巻 3 号 p. 95-106
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    多発性骨髄腫は,難治性の形質細胞性腫瘍であり,治癒が困難であるため新規薬剤の開発が求められている.スタウプリミドは転写因子non-metastatic cells 2と結合し,c-Mycの転写を抑制する.c-Mycは骨髄腫細胞の生存に重要な転写因子であるためスタウプリミドの抗骨髄腫細胞効果を検討した.骨髄腫細胞株KMS-28PEとRPMI 8226において,スタウプリミドは増殖を抑制しアポトーシスを誘導した.また,細胞周期解析ではG2/M期停止を誘導した.KMS-28PEではインターフェロン制御因子4(IRF-4)およびc-Mycの発現を抑制し,caspase 3の活性化を認めた.さらに,protein kinase C α(PKCα)のリン酸化を阻害し,c-Jun N-terminal kinase(JNK)の活性化とc-Junの発現を誘導した.以上から,スタウプリミドは骨髄腫細胞において,IRF-4の発現およびPKCαのリン酸化を抑制,JNKの活性化を介して増殖を抑制し,カスパーゼ依存性にアポトーシスを誘導することが示唆された.
  • 佐々 航, 西村 行秀, 坪井 宏幸, 佐藤 光太朗, 阿部 貴弥, 土井田 稔
    2022 年 74 巻 3 号 p. 107-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者人口の増加や糖尿病の有病率の上昇により,慢性腎臓病‹CKD›や血液透析‹HD›の患者数は世界的に増加している.CKD患者やHD患者は筋力低下を伴っていることが多く,日常生活の活動性や生活の質の低下に大きく寄与している.先行研究では末期腎疾患でHD治療を受けている患者においてⅠ型筋線維,Ⅱ型筋線維それぞれの筋萎縮について報告されており,統一された見解が得られていない.このように,HD患者で萎縮を起こす筋線維の種類については不確実性があり,そのような患者における適切な筋力トレーニングについては普遍的な合意は存在しない.今回,我々の研究の目的は筋電図周波数パワースペクトル解析を用いてHD患者の腰背部の筋繊維の割合と筋疲労について評価した.その結果,女性のHD患者において健常者に比べて腰背部の筋疲労性が高く,持久力の低下が示唆された.女性のHD患者には早期からのリハビリテーションの介入の必要であると考えられた.
  • 阿部 弘昭, 鈴木 悠地, 村嶋 亜紀, 柿坂 啓介, 宮坂 昭生, 佐々木 登希夫, 木村 英二, 人見 次郎, 滝川 康裕
    2022 年 74 巻 3 号 p. 117-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    肝障害組織では,肝細胞が失われた肝小葉内に細胆管と呼ばれる幼若な胆管構造が出現し,この細胆管は肝組織修復過程で胆汁ドレナージ機能という重要な意義を持つ.発生学的に,胆管は先立つ門脈の形成に伴い構築されることから,細胆管と血管新生は密接に関連していると推察されるが障害肝における両者の3次元的な位置関係は明らかとなっていない.本研究では,臓器透明化手法を用いて,肝内胆管と血管の3次元的な構造解析を行った.結果,細胆管増生を誘導したマウス障害肝の解析では,胆管増生に伴い門脈系の血管新生が生じていた.また,細胆管増生誘導時にVEGFR-2抗体により血管新生を抑制したマウス障害肝の解析では,血管新生と同時に胆管増生も抑制された.今回の結果,肝障害時には門脈周囲の血管は,胆管構造の変化と同時的に構造変化を示すことが明らかとなった.また,病的肝臓における細胆管と血管新生の両者に細胞間相互作用が存在する可能性が示唆された.
学位報告
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