卵巣癌は婦人科癌関連死の主要な原因の一つで,卵巣癌の中で漿液性腺癌は高頻度かつ予後不良な組織亜型である.漿液性腺癌は複雑な遺伝子変化を示すが,分子発癌機序は完全には明らかにされていない.一塩基多型を用いて,漿液性腺癌のゲノムワイドな変化とTP53等の遺伝子変異と臨床病理学的特徴との関連について検討した.8q21-24.3にgainを,5q12.1-13.3にloss of heterogeneity (LOH)を,17q21-25にCopy-neutral (CN)-LOHを多く検出した.リンパ節転移陽性群ではCN-LOH領域の総塩基長が有意に長かった. TP53変異は高頻度であったが,他の遺伝子変異はほとんど確認されなかった.TP53変異陽性群ではgain領域の総塩基長が有意に長かった.リンパ節陽性例のgainは6q16.2-16.3, 6q22.31, 16q1, CN-LOHは9p21-23の領域で有意に高頻度であった.これらの知見はゲノムワイドな遺伝子変化を検出することで漿液性腺癌の発症,進行に関わる新規の遺伝子変化を特定することに寄与する可能性がある.
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