岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
70 巻, 4 号
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研究
  • 阿部 珠美, 黒田 英克, 藤原 裕大, 宮坂 昭生, 滝川 康裕
    2018 年 70 巻 4 号 p. 113-123
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル オープンアクセス
    C慢性肝疾患診療において,患者の予後や肝癌発生率に密接に関係する肝線維化の状態を評価することは極めて重要である.これまでの肝線維化診断のゴールドスタンダードは肝生検であったが,侵襲性やサンプリングエラーなどの問題から非侵襲的肝線維化診断法の確立が期待され,超音波弾性イメージング法が注目を集めている.本研究では超音波エラストグラフィの中でも最新の2D-shear wave elastography(2D-SWE)を用い,C型慢性肝疾患における肝線維化診断能に関し既存の血清線維化マーカーと比較し評価した.2D-SWEを用いて測定したshear wave velocityは,肝線維化進展と共に段階的に上昇し,肝線維化診断能は曲線下面積でF4:0.952,F3以上:0.932,F2以上:0.871,F1以上:0.824であり,いずれも血清線維化マーカーより有意に優れていた.2D-SWEは,C型慢性肝疾患における肝維化診断に有用と考えられた.
  • 深川 智之, 菅井 有, 幅野 渉, 永塚 真, 上杉 憲幸, 刑部 光正, 菅 安寿子, 永沢 崇幸, 板持 広明, 杉山 徹
    2018 年 70 巻 4 号 p. 125-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル オープンアクセス
    卵巣癌は婦人科癌関連死の主要な原因の一つで,卵巣癌の中で漿液性腺癌は高頻度かつ予後不良な組織亜型である.漿液性腺癌は複雑な遺伝子変化を示すが,分子発癌機序は完全には明らかにされていない.一塩基多型を用いて,漿液性腺癌のゲノムワイドな変化とTP53等の遺伝子変異と臨床病理学的特徴との関連について検討した.8q21-24.3にgainを,5q12.1-13.3にloss of heterogeneity (LOH)を,17q21-25にCopy-neutral (CN)-LOHを多く検出した.リンパ節転移陽性群ではCN-LOH領域の総塩基長が有意に長かった. TP53変異は高頻度であったが,他の遺伝子変異はほとんど確認されなかった.TP53変異陽性群ではgain領域の総塩基長が有意に長かった.リンパ節陽性例のgainは6q16.2-16.3, 6q22.31, 16q1, CN-LOHは9p21-23の領域で有意に高頻度であった.これらの知見はゲノムワイドな遺伝子変化を検出することで漿液性腺癌の発症,進行に関わる新規の遺伝子変化を特定することに寄与する可能性がある.
  • 後藤 奈緒美, 中西 真弓
    2018 年 70 巻 4 号 p. 139-146
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル オープンアクセス
    破骨細胞の形質膜に局在する液胞型ATPase(V-ATPase)は,細胞外へプロトンを輸送することにより,骨吸収に必要な酸性環境を形成する.破骨細胞への分化に伴いV-ATPaseの発現量が増加することが報告されている.本研究では,分化におけるV-ATPaseの酵素活性の関与を明らかにすることを目的とし,培養ディッシュ上で分化誘導した破骨細胞を用いて,分化前後でのATP加水分解活性とサブユニットの会合状態の変化を解析した.予想に反し,分化した後の酵素活性は減少しており,会合していない状態のサブユニットが増加していた.分化に伴い本酵素の発現が誘導されるが,サブユニット同士が会合しておらず,プロトンポンプとしては機能していないことが示唆された.サブユニットが会合し骨吸収窩を酸性化するには,破骨細胞が接着した骨から何らかの刺激を受取る必要があると考えられる.
学位報告
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