岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
71 巻, 4 号
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研究
  • 長母指屈筋腱の栄養血管と掌側プレートのスクリュー位置の検討
    菊池 祐樹, 佐藤 光太朗, 田島 吾郎, 燕   軍, 村上 賢也, 三又 義訓, 土井田 稔
    2019 年 71 巻 4 号 p. 115-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートで,術後合併症として長母指屈筋腱(以下FPL)損傷が報告されている.その原因としてプレートが橈骨掌側の隆起より突出して設置されることにより,腱とプレートとの間に器械的摩擦が生じ断裂すると考えられている.そのため腱を刺激しない位置にプレート設置することが望ましいが,その位置に設置した際の骨折保持能力については報告されていない.またFPL腱の脆弱化の原因として,手術時の操作によるFPLの栄養血管損傷の影響についてもいまだ解明されていない.本研究の目的はFPLの機械的摩擦が生じない位置にプレートを設置した際にインプラントの骨折保持能力の妥当性を検証すること,またFPLの栄養血管を同定して手術による血管損傷の可能性を検討することである.
  • 伊藤 浩平, 鳴海 新介, 山下 典生, 鈴木 隆史, 宮澤 晴奈, 名取 達徳, 佐々木 真理, 寺山 靖夫
    2019 年 71 巻 4 号 p. 127-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,血圧日内変動の異常が脳小血管病のリスクであることが報告されている.そこで、血圧日内変動正常化作用を持つ新規angiotensin II receptor blocker (ARB)アジルサルタンが,従来のARBと比し脳小血管病の進行抑制に有効か前向きに検討した. 高血圧で従来のARB内服中の患者を対象に,登録時にMRIと24時間自由行動下血圧測定を施行,6ヵ月後にアジルサルタンへの変更群と従来ARB継続群に割り付け,18ヵ月後にMRIと自由行動下血圧測定を再施行し,変更群と継続群におけるラクナ梗塞,微小出血,白質病変の変化を比較した. 104例中71例が解析対象となった.変更群では継続群と比し平均収縮期・拡張期血圧の有意な低下と血圧日内変動の有意な正常化を認めたが(p <0.05),脳小血管病の経時的変化に差を認めなかった.しかし,18ヵ月後血圧日内変動正常例では,白質病変体積の増加が有意に抑制された(p <0.05). 今回の検討では,アジルサルタンによる脳小血管病の進行抑制は認めなかった.
  • 出口 博之, 尾関 雄一
    2019 年 71 巻 4 号 p. 139-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    血管新生は癌の増殖や転移に必須である.一方,非小細胞肺癌は組織型によってその性質は大きく異なるが,血管新生に関わる因子のvascular endothelial growth factor (VEGF) やthrombospondin-1 (TSP-1) 発現と予後について,組織型別の評価はなされていないため,本研究で検討した.肺癌切除検体206例(腺癌 116例,扁平上皮癌 90例)に対して,免疫染色を行い,VEGFおよびTSP1発現と予後との相関を検討した.VEGF低発現群,TSP1高発現群において肺腺癌の予後は有意差をもって良好であった. Cox比例ハザードモデルで肺腺癌においてVEGFが有意な独立した予後因子であった.VEGFおよびTSP1は肺腺癌の予後と相関した.特にVEGFは肺腺癌の独立した予後因子であった.
症例
  • 伊藤 歩惟, 松本  敦, 塩畑  健, 和田 泰格, 高清水 奈央, 鳥谷 由貴子, 小西  雄, 外舘 玄一朗, 小山 耕太郎
    2019 年 71 巻 4 号 p. 151-158
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    非特異的な症状で発症し,診断が遅れたことで死亡した中腸軸捻転症の1例を経験したため,過去10年間に新生児集中治療室で経験した新生児期発症の4例について初発症状と臨床経過を検討した. 1例は生後20日に哺乳不良と不機嫌,不活発,腹部膨隆で発症し,胆汁性嘔吐は認められなかった.発症20時間後に手術が行われたが,腸は広範囲に壊死しており死亡した.3例は出生当日または翌日に胆汁性嘔吐で発症した.腹部超音波検査によりwhirlpool signが確認され,中腸軸捻転症と診断された.捻転解除により症状は改善した. 中腸軸捻転症の典型例は,生後1週以内に腹部膨満を伴わず,胆汁性嘔吐で発症する.非典型例は腹部膨隆や不機嫌,不活発および哺乳不良のみを認める場合があり,これらの症状の新生児を診察する場合には中腸軸捻転症を考慮すべきである.腹部超音波検査でwhirlpool signを確認することが診断に有用である.
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