岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
73 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
Original
  • 杉山 育美, 杣悠 華子, 佐塚 泰之
    2021 年 73 巻 4 号 p. 141-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    胃内因子(IF)なしでも経口投与にてビタミンB12(VB12)を吸収できることを目的に,VB12を内封したナノ粒子製剤について検討した.胃の摘出などによりIFを分泌できない患者は巨赤芽球性貧血のリスクが増大するため,断続的にVB12の侵襲的な投与が必要であり患者の負担が大きい.そこで簡便で非侵襲的な方法として経口投与型のナノ粒子が有用であると考えた.ナノ粒子としてリポソームを選択し,リポソーム構成脂質や表面修飾物質がもたらす消化管吸収への影響を評価した.VB12であるシアノコバラミンを内封したリポソームをマウスに経口投与した結果,水溶液投与群に比較して高い血中濃度が認められた.本検討では正常マウスで実施していることより,IFが存在し水溶液投与でもVB12の吸収が可能である.このような環境においてもリポソーム化したほうが血中への移行性が優れていたことより本製剤の有用性が期待された.
  • 石井 修平, 高田  亮, 菊池 光洋, 松浦 朋彦, 加藤 廉平, 加藤 陽一郎, 兼平  貢, 杉村  淳, 中村 隆二, 小原  航
    2021 年 73 巻 4 号 p. 151-163
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は今回,前立腺表面を36分割した部位別放射線量を詳細に測定し,前立腺癌密封小線源療法後の勃起不全との関連を明らかにする.当院で前立腺癌密封小線源療法単独治療を施行した症例81例より,治療前のinternational index of erectile function(IIEF)– 6スコアが21点以上の56例を抽出した.治療後12ヵ月におけるIIEF– 6が22点以上の症例23例と16点未満の症例11例を選択し,それぞれ維持群,低下群と定義した.小線源療法1ヵ月後のCT画像上の前立腺を尖部・中部・底部に3分割,各々の領域を12分割した計36ヵ所の前立腺表面線量を測定,維持群と低下群で比較検討をおこなった.患者背景比較では治療前IIEF – 6スコアで群間に差を認めなかった.ポストプランの放射線量パラメータ比較では維持群と低下群で差は認められなかった.治療後の各部位における部位別放射線量の平均値を維持群,低下群で検討すると,低下群では前立腺中部~尖部2-4時方向での放射線量が有意に高値をとり,この部分への過剰被曝が小線源療法後の勃起不全に影響すると思われた.
  • 宮島 真理, 古和田 周吾, 関  裕葵, 佐藤  剛, 前田 峻大, 阿保 亜紀子, 岡野 良昭, 佐々木 了政, 小宅 達郎, 伊藤 薫 ...
    2021 年 73 巻 4 号 p. 165-176
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    JAK2V617F変異を伴う骨髄増殖性腫瘍患者の血液では,野生型JAK2遺伝子血球(正常造血細胞由来)と,JAK2V617F変異遺伝子をもつ血球(JAK2V617F変異造血細胞由来)の両者が混在する.そして近年,JAK2V617F変異血球に対する抗腫瘍免疫の存在と,免疫チェックポイント分子の関与が示唆されている.今回我々は,JAK2V617F変異クローンの拡大と,血球上に発現する免疫チェックポイント分子の関係性を明らかにする為に,患者26名の末梢血液を用い,JAK2V617F変異血球クローンの割合(JAK2V617F allele burden),PD1陽性CD8陽性T細胞群比率,血小板上のPD-L1発現レベル,を評価した.その結果,JAK2V617F allele burdenはPD1陽性CD8陽性T細胞群比率と有意な逆相関を示した.一方で,血小板上のPD-L1発現量は,JAK2V617F allele burdenやPD1陽性CD8陽性T細胞群と明らかな相関を認めなかった. 結論として,JAK2V617F血球のクローンサイズの増加とともに,PD1陽性CD8陽性T細胞群は減少する.一方で血小板上のPD-L1発現量はJAK2V617F変異血球や抗腫瘍免疫細胞の動態を反映しない.
  • 金野 大地, 村上 秀樹, 遠藤 寛興, 山部 大輔, 千葉 佑介, 安部 悠一郎, 和田 俊太郎, 千田  康, 土井田 稔
    2021 年 73 巻 4 号 p. 177-188
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    腰部脊柱管狭窄症(LSS)患者の歩行能力を簡便に視覚化したパラメーターは確立されていない.我々は歩行非対称性を簡便に視覚的・数値的に捉えることができるLissajous Index(LI)値を使用した.本研究の目的はLI値術前後での歩容変化を前向きに捉え,LSS患者の術後評価が可能かを検討した.当院にて手術を施行したLSS患者32名を対象とした.歩行試験は術直前と,術後3ヵ月時に施行した.加速度センサを貼付し最大歩行速度で直線25mを往復して6分間歩行試験を行った.加えて術前後のLI値とJOA score・ODIとの関係を統計学的に検討した.歩行距離は術前395.1±60.8m,術後455.4±64.4mと有意に延長していた.術前は時系列的にLI値の増大傾向を認めていたが,術後は増大傾向が緩徐となり,1分以降は有意に術前より低値を示した.また,5-6分においてLI値と臨床スコアの間に相関関係を認めた.これらの結果からLI値を用いた歩行試験はLSS患者の術後評価として実臨床応用が期待できる.
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