岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
72 巻, 3 号
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  • 米澤 剛広, 柿坂 啓介, 鈴木 悠地, 金沢  条, 滝川 康裕
    2020 年 72 巻 3 号 p. 89-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    欧米及びアジア諸国ではメタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の罹患率が飛躍的に増加している.果糖の過剰摂取はNAFLDの増悪因子とされるが,脂肪毒性における果糖の影響は不明である.本研究は脂肪毒性における果糖の細胞障害機序を解明することを目的とした.果糖の効果は蔗糖添加及び無添加の高脂肪食(HFDS/HFD)を与えたマウスとHepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)で評価した.HFDSを与えたマウスは対照群と比較して肝臓の線維化が進展し,ヘムオキシゲナーゼ-1発現も有意に増加した.細胞増殖アッセイで不飽和脂肪酸は果糖添加処理した培養液で培養したHepG2細胞の細胞死を誘発した.細胞死はカスパーゼ3の活性化を伴わない経路で誘発され,活性酸素種(ROS)の発生を増加させた.これらはN-アセチルシステイン添加処理を加えると改善した.不飽和脂肪酸は果糖の過剰摂取によりROS産生を介して脂肪毒性を促進する可能性がある.
  • 大津 瑛裕, 古和田 周吾, 関  裕葵, 村井 一範, 清原 千貴, 宮島 真理, 泉田  亘, 人見 次郎, 石田 陽治, 伊藤 薫樹
    2020 年 72 巻 3 号 p. 103-113
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombo-cytopenia, ITP)は,抗血小板自己抗体を介した血小板の破壊の亢進と,血小板産生の減少による血小板減少によって特徴付けられる.確定的な検査方法を欠くことが診断を難しくしており,診断はその他の血小板減少疾患の除外によって成される.今回我々は,ITPを含む血小板減少症の患者でautophagosome形成血小板比率(autophagosome rich platelets%, ARPs%)を測定し,ITP診断における有用性を検討した. 血小板減少症患者86名の末梢血血小板をCytoID®で染色しフローサイトメトリーでCytoID®陽性血小板割合を測定しARPs%とした.ITP患者では他疾患と比較して,ARPs%は有意に高値を示した(p ‹ 0.01).ITP患者において,ARPs%と網状血小板比率(reticulated platelets%, RPs%)は正の相関があった(r = 0.58).また,RPs%は血小板数と強い負の相関を示し(r = -0.71),ARPs%は平均血小板容積と正の相関示した(r = 0.55). 血小板減少症患者におけるautophagyの亢進はITP患者で特徴的であり,autophagosome形成血小板比率の測定が血小板減少症の鑑別の一助となる可能性が示唆された.
  • 本多 笑奈, 福本 健太郎, 三條 克巳, 岩城  忍, 小泉 文人, 小泉 範高, 遠藤  仁, 山家 健仁, 大塚 耕太郎
    2020 年 72 巻 3 号 p. 115-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    うつ病から双極性障害へ診断変更後の転帰および転帰の関連因子を明らかにすることを目的とした.1年以上大うつ病性障害として治療を受けた患者66名を対象にミラーイメージ試験で検証を行った.診断変更日を基準日とし,前後12ヵ月間の気分エピソード回数,入院歴の有無,自殺企図歴の有無を比較した.また気分エピソード改善群(n = 36),非改善群(n = 30) に分け,2群間比較をした.診断変更後, 気分エピソード回数 (p = 0.011),自殺企図歴がある患者の割合 (p = 0.016) は有意に減少した.二項ロジスティック解析で改善群出現の関連因子として精神疾患の家族歴があること [OR = 3.962, (95%CI: 1.143- 13.740), p = 0.030] が抽出された.双極性障害の診断まで時間を要した患者でも,適切な治療で良好な転帰を辿ることが分かった.
研究会抄録
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