成人脊柱変形に対して側方進入腰椎椎体間固定術を併用した手術による術中合併症の一つとして腰椎前縦靭帯(anterior longitudinal ligament;ALL)損傷があり,近年,これに伴う術後instrumentation failure症例が報告されている.3次元有限要素法を用いてALL損傷によるinstrumentへの影響を検討した.CT画像から3次元有限要素法腰椎モデルを作成し,至適にinstrumentを設置されたL1-S1固定モデルも作成した.これらに対して実際の手術手技のようにL3/4高位で椎間板部分切除を模擬し,同高位でALLを25%ずつ損傷させたモデルとした.これらの伸展方向への変位量(mm)と椎間板,スクリュー周囲の椎体,instrumentへのかかるvon Mises 応力(MPa)を評価した.ALL損傷率が上昇するほど伸展方向への変位量が増加した.同様に椎間板,スクリュー周囲の椎体,instrumentへの応力が上昇した.またinstrumentへの応力は損傷高位と隣接する高位においても上昇した.ALL損傷の程度が増加するほど脊椎不安定性が生じ組織とinstrumentへの負荷が上昇した.ALL損傷は術後instrumentation failureのリスクとなり得る.
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