岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
73 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Review
  • 髙宮 正隆
    2021 年 73 巻 5 号 p. 189-201
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/07
    ジャーナル オープンアクセス
    DNA鑑定は血縁関係の確認,身元の確認を目的に行われ,PCR, 電気泳動などの手法を用いて該当者の各座位のDNA型を検出する.さらに該当者のDNA型から肯定確率または尤度比を算定することにより血縁,身元の尤もらしさを評価することがあるが, これら肯定確率・尤度比の算定は鑑定内容によっては計算量が膨大であり,手計算では作業が煩雑になる.一方, 近年は計算機の個人使用が普及しており,各人がプログラムを記述することにより大規模な計算を行うことが可能となっている.本綜説では父子鑑定(父-子-母), 父子鑑定(父-子),両親鑑定, 祖父鑑定, 同胞鑑定, 半同胞鑑定, 叔父鑑定における肯定確率および尤度比の算定をRを用いて記述した.また本綜説で提示しているプログラムは改変が可能で,鑑定への関与人数の増加など鑑定内容の拡張にも容易に対応できると考えられる.
  • 阿部 志津香, 村嶋 亜紀, 人見 次郎
    2021 年 73 巻 5 号 p. 203-213
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/07
    ジャーナル オープンアクセス
    肺循環は,動物の陸棲による肺呼吸の成熟に伴い確立された循環経路である.進化過程での体循環系から肺循環系の確立には心臓と肺との協調的な発達が必要である.肺血管の個体発生は古くより議論されているが,肺静脈形成に関わる正確な過程,その分子制御については不明な点も多い.肺静脈還流異常症は,正常では左房へ還流する血液が,肺静脈の形成異常により体循環の静脈系に還流する.この異常症の肺静脈の特徴は,肺血流の還流路が初めに体循環の一部として形成された後,左房への還流路を確立するという系統発生学的な知見と相反しない. ここでは肺とその血管系の発生についてこれらの論点を要約する.さらに最近の遺伝学的研究に基づき,肺静脈形成過程の分子機構についても概説する.この総説は,肺循環の確立に関して,系統進化学的,個体発生学的な考察を深め,肺静脈還流異常症などの先天性心疾患の理解のために必須であろう視点を提示する.
Original
  • 筒井 章太, 松田  豪, 武田 航太, 佐々木 真理, 藤本 健太郎, 柳原  晋, 幸治 孝裕, 久保 慶高, 小笠原 邦昭
    2021 年 73 巻 5 号 p. 215-226
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/07
    ジャーナル オープンアクセス
    脳動脈瘤をもつ症例では,開頭クリッピング後にしばしばMRIを撮像する.本研究の目的は,7T MRI上種々の形状のチタン合金製動脈瘤クリップが作る磁気アーチファクトの大きさを種々の撮像法で定量することであった.短い,長い,まっすぐ,曲がりあるいは有窓の組み合わせからなる5つの異なる形状の動脈瘤クリップを植物オイルで満たしたファントムに入れ,5つの異なる撮像法で撮像した.アーチファクトを含むピクセルあるいはボクセルを決定し,アーチファクト距離・体積を算出した.アーチファクト距離・体積は他の撮像法に比して3D T2*-weighted with spoiled gradient recalled acquisition in the steady state imagingが大きく,3D zero time-of-echoが小さかった.各クリップ間では,長い直のクリップのアーチファクト距離・体積が最大であった.どのクリップにおいても,両端,曲がり,有窓部はまっすぐな部分よりアーチファクトが大きかった.
  • 福田 一央, 木澤 純也, 橋浦 哲哉, 工藤 利子, 木澤 明実, 五日市 そら, 黒坂 大次郎
    2021 年 73 巻 5 号 p. 227-235
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/07
    ジャーナル オープンアクセス
    白内障手術により多くの例で視機能が回復するが,1~3割は後嚢混濁により視機能が低下する.後嚢混濁は,眼内レンズ光学部が前嚢切開縁で完全に覆われていない場合に起こりやすく,眼内レンズの種類も影響する.そこで,前嚢切開縁が眼内レンズ光学部を覆っていない範囲(NCC)や眼内レンズの種類のどちらが,後嚢混濁のうち視機能に影響しやすいElschnig’s pearls (EPs)により影響するか,診療録により30眼を後ろ向きに検討した.EPsの評価は,EPsの眼内レンズ光学部後面への侵入部位と程度,侵入時期やneodymium-yttrium aluminum garnetレーザー施行時期で行った.これらの指標は,NCC部の範囲に影響を受けなかったが,眼内レンズの種類では,EPs発症時期に有意に影響した.EPsは,前嚢切開縁が眼内レンズ光学部を覆っていない程度よりも眼内レンズの種類により影響されると思われた.
Case Report
  • 五日市 そら, 三善 重徳, 村上 陽子, 田中 三知子, 野田 実香, 黒坂 大次郎
    2021 年 73 巻 5 号 p. 237-242
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/07
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は高度な眼瞼腫脹が遷延し,眼窩リンパ管腫内血腫を除去した症例を経験したので報告する.患者は14歳男児で5歳時に右眼窩リンパ管腫の急性増悪の既往がある.今回は外傷を契機に右眼瞼が高度に腫脹し開瞼不能となった.リンパ管腫の急性増悪と診断し,保存的治療を行ったが,3ヵ月後も十分な開瞼が不能であった.リンパ管腫は筋円錐内・外の眼窩内上方から眼瞼におよんでいたが,血腫を伴う嚢胞は筋円錐外の皮下に近い部分に位置していたため,皮膚からのアプローチによる血腫除去術を施行した.術中から眼瞼腫脹は改善し,術後に開瞼が可能となった.現在まで16ヵ月間再発を認めない.
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