岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
72 巻, 5 号
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  • 野々口 マリア, 高橋  学, 菅  重典, 秋丸 理世, 児玉 善之, 横藤  壽, 下山  賢, 森野 豪太, 稲田 捷也, 井上 義博
    2020 年 72 巻 5 号 p. 181-189
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    エンドトキシン測定法は少量の血球を含んだ血清を用いて測定する比濁時間法が利用されるが,高い測定精度を報告できていない.我々はこれまで多くのエンドトキシンは白血球と結合あるいは白血球内に取り込まれた状態で存在することに着目し,多白血球血漿を用いた測定で測定値が高くなることを報告してきた.今回は多白血球血漿を用いて比濁時間法と生物発光法を用いたエンドトキシン測定について比較した. 測定は当院に搬送された感染が疑われる患者検体24検体と健常者8検体を使用し,多白血球血漿検体を作成して比濁時間法と生物発光法で行った. 測定時間は生物発光法において比濁時間法に比較して有意に短時間で測定値を得た.エンドトキシン測定値は,生物発光法において高値となった.また多白血球血漿検体を用いることで重症度と測定値が相関した. 生物発光法は測定時間と測定精度で感染症の診断マーカーとして有意に優れているという結果であった.
  • 鈴木 啓生, 大浦 一雅, 山原 可奈子, 金  正門, 田口 啓太, 高橋  海, 高橋 健太, 岩岡 和博, 前田 哲也
    2020 年 72 巻 5 号 p. 191-204
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    パーキンソン病における骨粗鬆症は骨折のリスクのため予防が重要である.骨代謝は性別,年齢,栄養状態や活動度に影響される.パーキンソン病は運動障害が主徴であり,これらを一致させた上で比較が必要だが,同様の検討はない.本研究は慢性期脳血管障害を疾患対照とし,骨密度と骨代謝マーカーを用いて病態を検討した.両群50例を前向きに登録した.パーキンソン病は骨密度低値,酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ高値,血清総ホモシステイン高値,活性型ビタミンD低値であった.骨粗鬆症を有する両群間比較ではパーキンソン病は活性型ビタミンD低値であった.パーキンソン病で骨粗鬆症を有する群はない群より女性が多く,body mass index低値,臨床重症度高値,1型コラーゲン架橋N-テロペプチドと酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ高値であった.パーキンソン病の骨粗鬆症の病態には一般的リスクに加え骨吸収亢進とビタミンD関連骨形成不全,パーキンソン病自体の重症度の関与が示唆された.
  • 伊藤 歩惟, 藤田 友嗣, 和田 泰格, 豊島 浩志, 松本  敦, 小山 耕太郎
    2020 年 72 巻 5 号 p. 205-215
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    経腟分娩及び帝王切開で出産した母親の母乳中微量元素濃度の違いが児の成長に及ぼす影響は明らかではない.本研究の目的は,経腟分娩及び帝王切開で出産した母親の母乳中微量元素濃度の違いを明らかにし,母乳中微量元素濃度と新生児期における児の成長との関連を評価することである.母親から移行乳(産後4-6日)と成乳(産後28-43日)を採取し,誘導結合プラズマ質量分析法を用いて,母乳中のマンガン(Mn),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),セレン(Se),ルビジウム(Rb),ストロンチウム(Sr),モリブデン(Mo)の濃度を測定した.移行乳中のMn濃度のみが帝王切開群よりも経腟分娩群で有意に高値だった.全ての微量元素濃度は成乳よりも移行乳で高値を示した.成乳中のZn濃度は児の1日あたりの身長増加量と,成乳中のSr濃度は児の1日あたりの体重増加量と正の関連を認めた.正常範囲内における高濃度のZnとSrは児の成長を促進する可能性がある.
  • 田中 うみ, 黒坂 大次郎, 村井 憲一, 橋爪 公平, 福田 一央, 五日市 そら, 三部  篤
    2020 年 72 巻 5 号 p. 217-230
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    網膜色素上皮細胞(RPE)における上皮間葉移行(EMT)は,増殖硝子体網膜症や滲出型加齢黄斑変性に関与する.トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)刺激により,Rho活性化を介し myocardin関連転写因子A(MRTF-A)が細胞質から核内に移行しEMTが生じるが,RPEにおけるRho/MRTF経路の働きは知られていない.本研究で,TGF-β2はヒトRPE(ARPE-19)においてEMTの指標であるα平滑筋アクチン(α-SMA)とI型コラーゲン発現を促進し,これはMRTFのノックダウンにより阻害された.MRTF阻害薬であるCCG-203971はMRTF-Aの核内移行を阻害し,両者の発現を阻害した.Rho関連タンパクキナーゼ阻害薬であるY-27632も,同様に核内移行と両者の発現を阻害した.Rho/MRTF経路がTGF-β2によるRPEでのEMTで重要な役割を果たすことが示唆された.
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