岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
75 巻, 4 号
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  • 金野 寛史, 長谷川 豊, 那谷 耕司, 石垣  泰
    2023 年 75 巻 4 号 p. 123-131
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    褐色/ベージュ脂肪細胞は,熱産生機構を備えた脂肪細胞で,寒冷時の体温維持やエネルギー消費,代謝調節に関わり,肥満やそれに伴う代謝疾患の治療ターゲットとして注目されている.MAPK regulated corepressor interacting protein 2(MCRIP2)は,褐色脂肪細胞で高発現している蛋白で,この遺伝子をノックアウトしたマウスでは耐寒能が低下することが知られている.しかしながら,未だ不明な点が多いため,その機能を明らかにするため研究を行った.In vitroにおいてMcrip2遺伝子をノックダウンした褐色脂肪細胞では,細胞への分化・成熟には明らかな影響が認められなかったが,脂肪細胞の熱産生に関与する脱共役蛋白質1 uncoupling protein 1(Ucp1)遺伝子の発現が低下していた.さらに,ミトコンドリア活性が低く,ミトコンドリア関連遺伝子の発現が低下していた.以上から,MCRIP2は,褐色脂肪細胞における熱産生機能に重要な役割を果たしており,ミトコンドリア機能を制御していることが示唆された.
  • 伊藤 浩平, 佐々木 章, 岩谷  岳
    2023 年 75 巻 4 号 p. 133-145
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    進行食道癌治療では初回治療として化学療法が行われ,治療前効果予測はきわめて重要である.本研究では食道癌61例を対象としNFE2L2変異の有無が治療効果予測因子となりうるかを検討した.原発巣変異解析では,61症例中NFE2L2変異は13例 (21.3%)に認め,エクソン2に集中していた.初回化学療法を施行した50例では,奏効はNFE2L2変異例で8例中2例(25.0 %)で,野生型42例中30例 (71.4%)に比し有意に低かった.また初回docetaxel/cisplatin/5-fluorouracil療法を施行した43例中NFE2L2変異例5例は他の38例に比較し有意に全生存割合が低かった.食道癌細胞株11株では4株(36.4%)にNFE2L2変異を認めた.変異株では野生型株に比較し抗癌剤による増殖抑制効果が有意に低かった.食道癌ではNFE2L2変異検索により効率的な治療抵抗性の予測が可能である.
  • 高橋 義彦, 長谷川 豊, 金野 寛史, 石垣  泰
    2023 年 75 巻 4 号 p. 147-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    運動によって糖代謝に有益な脳由来神経栄養因子(BDNF)が増加する.BDNFの一塩基多型(rs6265; G→A, Val66Met)と身体活動(PA)が,ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬(DPP-4I)の効果に及ぼす影響を2 型糖尿病173 人を対象に検討した.DPP4I無効は投薬開始3-4ヵ月後のHbA1c低下が0.2%未満と定義し,活動量は質問票で評価した.メトホルミン内服例を除外した99名においてPAが低いG/*,PAが高いG/*,PAが低いA/A,PAが高いA/Aの各群の無効例の割合は,それぞれ56.8%,28.6%,25.0%,20.0%(n = 99, p = 0.037)で,多変量モデルでも同様であった.G/*遺伝子型患者では活動量依存性BDNF分泌が保持され,それが障害されるA/A型患者に比してDPP-4阻害薬への反応性にPA が重要であると考えられたが,結論づけるにはさらに研究を要する.
学位報告
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