岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
73 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特別講演
  • 旭  浩一
    2021 年 73 巻 6 号 p. 243-250
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    厚生労働省より2008年に発出された腎疾患対策検討会報告書「今後の腎疾患対策のあり方について」,さらに 2018年新たに発出された「腎疾患対策検討会報告書〜腎疾患対策の更なる推進を目指して〜」の下,腎臓病対策の社会実装が進められている.この間学会とアカデミアが主導して様々な公的研究班が組織され,対策の中心的な役割を担ってきた. 2008年から始まった特定健診における慢性腎臓病の制度的位置付けと健診制度の改善を目的とする数次にわたる公的研究班の活動成果は,2018年からの第3期特定健診・保健指導における血清クレアチニン(Cr)の詳細検査項目への位置付け,尿蛋白や血清Crに関するフィードバック文例の改訂,さらにかかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準などに実際に反映された.同研究班で収集された全国規模の特定健診受診者データは貴重な研究資源として活用され,わが国発の貴重な成果発信が現在も続いている.
  • 齊藤  元
    2021 年 73 巻 6 号 p. 251-257
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    肺がんにおける外科治療対象の多くは非小細胞肺がんである.その標準術式は肺葉切除(+肺門・縦隔リンパ節郭清)であるが,早期発見は切除率向上による予後改善を目指すのみならず,積極的縮小手術が可能な症例では肺切除容量の減少・QOL維持にもつながる点で極めて重要である. 手術適応は,「腫瘍学的適応」と「耐術能」で評価される.進行肺がんの腫瘍学的手術適応は臨床病期IIIAの一部(縦隔リンパ節転移が単一領域)までとする施設が多い.また切除肺容量に準じた呼吸機能を失うという必然性から,耐術能評価には呼吸機能検査が重要であり,術後致命的合併症低減のため喫煙者では術前からの適切な禁煙期間設定を要する. 日常診療では肺炎随伴性胸水をしばしば経験するが,一部は遷延化・重症化し,膿胸へ移行し致命的病態へ進展する場合がある.発症時期に応じた適切かつ早急な処置を必要とすることがあるため,注意を要する.
  • 西島 嗣生
    2021 年 73 巻 6 号 p. 259-265
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea : OSA)は,睡眠中の反復性の上気道虚脱により,無呼吸,低呼吸を起こし,睡眠の分断に伴う自覚症状を有する疾患である.過体重あるいは肥満は,OSAの最も重大な発症要因である.世界的に拡大している問題である肥満は,OSAの有病率と重症度をさらに高める可能性が予測される.高度肥満に対する治療手段として減量・代謝改善手術があり,減量・代謝改善手術は最も効果的治療で,持続的体重減少およびOSAを含む肥満関連の併存症と死亡率の減少をもたらす.本稿では主に日本人における高度肥満に合併したOSA有病率と減量代謝手術における効果について概説する.
  • 大塚 耕太郎
    2021 年 73 巻 6 号 p. 267-276
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    精神医学では世界的な潮流としてWHOによりアンチスティグマ(偏見除去)運動が推進され,自殺予防が世界の課題とされた.自殺対策のための戦略研究(J-MISP)の地域介入班(NOCOMIT-J)では複合的介入プログラムの有効性が証明され,救急介入班(ACTION-J)では自殺未遂者へのケース・マネージメントの自殺企図再発防止効果が明らかとなった.さらに,自殺未遂者ケア・ガイドラインの策定や,日本医療機能評価機構での院内自殺予防とスタッフケアの普及,国家的ゲートキーパー養成の推進など国家的な自殺対策の推進や,メンタルヘルス・ファーストエイドの普及と効果検証が進められてきた.一方,東日本大震災津波以後,岩手県の保健医療計画や県民計画復興推進プランにおいても被災地のこころのケアは重要な位置づけで,岩手県の委託事業として本学での岩手県こころのケアセンター事業を担い,コロナ禍においても推進している.
feedback
Top